ここ最近、戦闘指揮の続いたドクターに休暇の必要性が判断され、同じく出撃や業務の続いたアーミヤにも、タイミングを同じくして休養が与えられることとなる。
 共に旅行に出かけた二人は・・・


前編後編


 ここ最近、戦闘指揮の続いたドクターに休暇の必要性が判断され、同じく出撃や業務の続いたアーミヤにも、タイミングを同じくして休養が与えられることとなる。
 その際、綺麗な田舎の旅行地を進められ、二人はなし崩し的にバカンスへ向かうこととなるのだが、アーミヤはそのために意識していた。
(ドクターと、二人きり……)
 彼と行動を共にするのは慣れている。
 とっくに免疫が出来ているはずだと思ったのだが、出発直前にブレイズから言われた言葉が頭に深く突き刺さり、そのせいか余計な意識をしてしまう。
(まったく、どうしてあんなことを……)
 ブレイズから言われたのはこうだった。

「せっかくのチャンスだし、押し倒しちゃいなって」

 などと気軽に言われても、困るわけで――。
 始末の悪いことに、他のオペレーターは来ておらず、旅館にも二人きりで泊まることになっている。良い部屋を取っているので、ベッドは別々にあるとはいえ同室予定で、それがもう余計に意識を煽ってくる。
 これではブレイズの言っていた通り、本当にチャンスではないか。
 だが、アーミヤはどうにか気持ちを切り替え、今はおかしなことなど考えず、もっと純粋な気持ちで休暇を楽しもうと考えていた。
 そして、到着した時だ。
 基地から飛行装置で出発し、その着陸先の地に降り立ち、のどかな景色が目の前に広がった時、アーミヤは思わず感激していた。
「いいところですね! ドクター!」
 周囲を山に囲まれて、田畑や牧場の多い土地である。
 近代都市のような目立ったビル群は見当たらず、まさに田舎といった地域だが、旅行地として栄えるだけの、宿や観光地、お土産屋さんや外食店など、退屈せずに済むものは十分に揃っている。
 大きな湖をドッソレスの浜辺のように解放しており、旅行者達が水着ではしゃぐ。各地のレストランにはそれぞれ腕の良い料理人が働いていて、どこも評判が良いという。
 アーミヤとドクターが立っているのは、そんな湖を左手に、遠方には綺麗な山並みの聳えた景色だ。透き通った空気の広がる晴天の下、水着の若い男女が湖の浅いところで水を掛け合いはしゃいでいる。
 浅瀬の範囲が広く水も清潔なので、プール代わりには持って来いらしい。
 まだ見ぬ宿泊予定の旅館は大きいらしく、内装施設も充実しているので、何なら宿泊先から一歩も出ずとも、休暇の満喫は可能だと聞いている。
「行こう、アーミヤ」
「はい! ドクター、どこから回りますか? あ、お土産もいっぱい並んでいますね!」
 二人がまず最初に歩くのは、湖を海に見立てた海岸沿いの、海の家のようにして並んだ小屋の店だった。それぞれの店に木彫りの像やアクセサリー、木刀やら何やらと、普段はあまり見る機会のないものが並んでいる。
「そうだね。みんなにお土産を買っていこう」
「ケルシー先生には何がいいですかね。ブレイズさんにも何か――」
 と自分で口にして、そのブレイズに言われた言葉をアーミヤは思い出す。
(は、はわわわわ……)
 脳裏に再生すらされていた。

「せっかくのチャンスだし、押し倒しちゃいなって」

 押し――倒す――。
 倒すはともかく、誘う機会は本当にあるという事実を思い知り、アーミヤは慌てふためいたような、焦燥じみた赤らみを頬に浮かべていた。
「どうした? アーミヤ」
「い、いえ! いやぁ、本当にどれにしましょうねぇ! 迷いますねぇ!」
 無理にでも誤魔化して、商品の陳列に視線をやる。
 その時だった。
「お、夫婦かい?」
 おもむろに店員が迫ってきて、声をかけてきたのだ。
「ふ、夫婦!?」
 アーミヤは気を動転させる。
 そういう風に、周りから見えているのだろうか。
「違ったのかい? ああ、ただのカップルか」
「いえ、夫婦です……」
 小さな小さな声で、アーミヤは恥ずかしそうにそう答える。
 本当に結婚しているわけではない。
 だが、ロドスの重要メンバーが二人同時にバカンスの地に訪れるなど、下手に情報として出回っては都合が悪い。ドクターに恨みを持つ人間がどこからか現れたり、ロドスによからぬ感情を抱く者を呼び寄せないとも限らない。
 そこで行った偽装こそ、夫婦という設定だ。
 この土地に存在する情報は、ロドスから二人の人間が訪れた――ではなく、夫婦がバカンスにやって来た、という内容である。
 書類上は平凡な企業勤めの一般人二名、ということになっている。
 確かにドクターの格好は、いつも通りにフードを被ったものなのだが、来客情報の中に「ロドス」の文字は入らなければ、当面の問題はないとの判断だ。
「ってことは、新婚ホヤホヤってところか。うちにはああいうもんも置いてあるから、まあ必要なら見てってくれや」
 その店員は、他の買い物に迷う客を見つけるなり、そちらの接客へと移ってしまう。
「ああいうもの?」
 ドクターはとある陳列棚に目を向けていた。
 店員が言い残した言葉に釣られ、アーミヤもまた同じ棚を見ていたが、そこに置いてある包装箱のパッケージは、避妊具――つまりコンドームのものだった。
「え、ええっと! 他の店にも行ってみましょうか! ドクター」
「そうだね。アーミヤ」
 何かを誤魔化すようにして、二人はまた隣の店へ行く。
 その時、アーミヤは歩いていくドクターの、すぐ隣にある肩を見ながら、視線をだんだんと下へ下へと、手の方へ移していき、ある一つのことを考え始めていた。
 夫婦という設定で、今二人はここにいる。
 設定とは、守るべきものではないか。
「あの……ドクター…………」
 恥ずかしそうな小さな声で呼び止めると、ドクターは真横からアーミヤの顔を覗き込む。
「何か欲しいものがあった?」
「いえ、そういうのではなく……」
「なら、一体――」
「あ、あのですね? 私達って、なんていうかその――周りからその通りに見られるべき、というか、ですね……」
 直接的な明言は避けながら、言い訳気味に、何かを誤魔化そうとするような口ぶりでアーミヤは言っている。まともには伝わりにくい、しどろもどろな喋りであったが、ドクターにはこれで十分だった。
「僕達、夫婦だものね」
 意図すら伝わり、ドクターは手をそっと出して来る。
「は、はい! ドクター!」
 アーミヤはその手を掴んだ。
 カップルであるように、二人は手を繋いで歩いていく。
(周りにもカップルは多いですし――)
 だから、これはおかしいことではない。
 夫婦という設定も、疑われるべきではない。
(ですから、これは当然の措置というか、何というか――)
 悪いことをしているわけではない。
 しかし、便利な言い訳が欲しくてたまらないようにして、アーミヤは自分に対して言い聞かせているのであった。

     *

 やがて、とうとう旅館に着く。
 受付で予約の確認を行って、手続きの末にカードキーを受け取ると、アーミヤとドクターの二人は部屋を訪れていた。
 それぞれの荷物を下ろし、広々とした部屋の中を見て回ると、窓ガラスの向こうには先ほどの湖が広がっていた。広大な湖面には、山脈が反射して、波紋に揺らめいていた。
 素敵な場所である。
 景色はもちろん、内装もおしゃれなもので、浴室も広々としていて高級感に溢れている。これだけ良い場所なのなら、雰囲気が出るというか、気分になるというか。
(どう……しましょう……)
 この部屋で一晩過ごすのかと思ったら、アーミヤの脳裏にはあらぬ情景ばかりが浮かび、一人で赤くなってしまう。いやらしいものを頭から振り払おうと、首を軽く振ってみたり、何か他のことでも考えようと必死になるが、なかなか心は安定しない。
(ドクター……私…………)
 そもそも、自分はどうしたいのか。
 単に寝泊まりの部屋を同じにするだけではない、それ以上の夜を本当に過ごすのか。その迷いを胸に抱え、どこか気が気でないまま昼食を共にしたり、また外を出歩いたりしているせいで、楽しい時間にのめり込めない。
 素敵な時間を過ごすはずが、妙なことに気が散るばかりで、ドクターもそんなアーミヤの様子を気にかけている。
(勘違い、しちゃいますよね……)
 あまりおかしな様子ばかりを見せていると、本当は楽しくないのか、実は一緒に来るのは嫌だったのか。困った勘違いをされては最悪で、そればかりは回避したい。
 しかし、無理にいつも通りの振る舞いを意識すると、その無理をしている雰囲気がかえって溢れ、これでは危惧した通りの勘違いを加速させかねないと、アーミヤ自身が感じていた。
 そうして夕方になり、夕食の時間を済ませ、そうやって少しずつ、夜の時間は迫ってくる。
(どうしましょう……私、私は…………)
 何も答えが決まらないまま、そのうち風呂の順番の話になって、ドクターに先を譲った。
 そして、一人になるなり考え込み、頭を悩ませているうちに、そもそも自分は一体どうして、ドクターをベッドに誘うか否か、それを真剣に迷っているのかを思い出す。
(本当にもう! ブレイズさんのせいですよ!)
 とはいえ、それを真剣に悩むだけ、アーミヤの中でドクターの存在は大きなものだ。
 体を求められても、きっと嫌ではない。
 嫌でないなら……。
(そろそろ、ですかね)
 ドクターが風呂に入ってから、だいぶ時間が経ったところで、アーミヤは荷物から自分の着替えを用意する。
(あ……)
 その時、思い出した。
 出発前、ブレイズが妙なことを言うせいで、妙な想像をしながら荷物の準備をしていたアーミヤは、何かに釣られたように、気でも触れたようにして、それなりの下着を用意していた。
 見栄えするオシャレな下着が、この服の内側にある。
 一体、なんてものを持って来てしまったのか。
(でも、つまり私は――)
 アーミヤの中で、これをきっかけに気持ちがまとまり始めていく。
 わざわざ夜に備えた衣装を意識するほど、アーミヤの中で実際に、捧げても構わない心は固まっている。
 ただ、いざ実際に捧げる瞬間が近づくことで、あたふたしてしまっていただけなのだろう。
 今日一日、緊張し続けていたのだ。
(よし、決めました)
 そう思った時、少しだけ気が抜けた。
 硬く張っていた体が多少は柔らかくなって、肩から石も取れたような気がする。
 そして、ドクターが風呂から上がってきたところで、アーミヤは入れ替わりで浴場へ入っていき、自らの身を丹念に、それはもう丁寧に清めるのだった。





 アーミヤは高級な下着を身に着けていた。
 湖を海に見立てた浜辺と聞いて、もし行き先がドッソレスだったなら、と思いながら選んだのは、爽やかな水色の上にイルカを刺繍したものだ。
 青い糸を縫い付けて、いわば糸で色を塗って作られたそのイルカは、水面から飛び上がってきたように見せかけられている。
 布地にもグラデーションが施され、下へいくほど色は濃く、上ほど爽やかに薄い色だ。
 右上にイルカが飛んでいる一方で、左上には太陽の陽射しのような色が差し込み、海を照らしたように仕立ててある。だから深い海から飛び出して、空に出て来たイルカという演出になっているのだ。
 ブラジャーも下が濃く、上が薄い。グラデーションにさらに飾りを付けだして、内側には白いレースがかかっている。
 そして、それらをパジャマに隠した。
 まともに服を着た格好で出て行くわけだが、これから自分が取ろうとしている行動を思うと、まるで裸を晒しに行くように恥ずかしい。
 しかし――。
「よし」
 心を決めたアーミヤは、決心の顔で脱衣所から出ていって、ドクターに微熱のこもった視線を向ける。
「あ、アーミヤ……?」
 ドクターの驚きが、フードの下にあるバイザー越しに見えている。人をベッドに誘おうとしているアーミヤの、いつもとは違う雰囲気をドクターは既に感じているのだ。
「あの、私……。私達は今、夫婦です」
 恥ずかしさを押し殺し、一生懸命になってアーミヤは言う。
「あ、ああ。それは、そうだけど……」
「ですから、その……。ドクター、単なる偽装だけではなくて、もっときちんと、夫婦らしいことをしてみませんか?」
 本当に物凄く、恥ずかしいことを言ってしまっている。これでは引かれても仕方がない。いざ口にしてみてしまってから、薄らとした恐怖が湧いてきた。
 もし、言われてしまったらどうしよう。
 ――いや、それはちょっと。
 などと、勇気を出したはいいものの、遠慮されてしまったら、気まずさと恥ずかしさの入り交じるショックを受けて、しばらく一人の時間が必要になるかもしれない。
「アーミヤ。もしかして、僕のこと……」
 ドクターは狼狽えていた。
「……はい。誘っています」
 アーミヤは照明を落としに行き、スイッチを切るなり、暗くなった部屋の中を突き進む。ベッド脇にある台の、アロマランプを点けることにより、雰囲気を演出するための水色の照明が、純白だったシーツを染め変えていた。
 明るすぎない、淡い光。
 しかし、お互いの表情は見えてしまう――もちろん、脱げば裸も。
 闇の中の一部分だけを照らし出し、光の届かない奥は見えない。
 二人きりの世界であった。
 外界を遮断して、自分とドクターだけの空間を、ここにアーミヤは作り出したのだ。
「アーミヤ」
 動揺気味だったドクターは、やがて意を決したように、バイザーの内側にある目を真剣なものに染め変えて、力強い足取りで一気にアーミヤの前へと迫る。
 手が伸びてきた。
 グローブを外した素手の指先が迫っても、アーミヤはそれを嫌とは感じず、むしろ接触が待ち遠しいように自分からも前へ出る。
 肩にドクターの手は置かれた。
 その手はそっと、探り探りのようにして、かすかに肩だけを撫でた後、慎重に頬へと移る。温かな手の平を皮膚に受け止め、アーミヤの中で心臓がドキリと弾んだ。
(ど、ドクター……)
 鼓動が激しくなっている。
 これから、するのだ。
 その眼差しさえ見れば、ドクターが誘いに乗ったことは明らかだった。
「遠慮はしないよ。僕も、君が欲しいと思っている」
「ドクター……!」
「……アーミヤ」
 お互いを呼び合って、見つめ合う。
 視線を重ねること自体に快楽があるように、目と目を付き合わせることで、アーミヤは二人きりの世界にどっぷり浸る。心地良い何かに全身を包み込まれているように、うっとりと目を細めていると、指先が唇を撫でていく。
 そして、ドクターの手は次の瞬間、パジャマ越しの胸を掴んでいるのであった。
 すぐにもう一方の手も絡みつく。
 両胸とも、指の蠢きに揉み込まれ、ささやかな指の強弱によって変形を繰り返す。内側のブラジャー共々、指の沈み具合に応じて凹み、その指が脱力すれば、弾力によって押し返す。
「ドクター……」
 アーミヤはそれを受け入れていた。
 両手を持ち上げ、おもむろにドクターの袖を掴むのも、自分の乳房に食いついてきたものを離さずに、もっとしっかりと捕らえておくためだった。
「見せてもらうよ」
 ドクターの手は離れ、代わりにボタンへと指は絡んだ。
「……はい。でも、あんまりジロジロ見ないで下さいね」
「約束はできない。今のアーミヤは凄く色っぽいから」
「そんな……恥ずかしいですよ……」
「それでも、見せてもらう」
 ボタンが上から下へと一つずつ外されていき、まずは鎖骨の中心から露出する。普段なら恥ずかしくも何ともない部分も、このまま裸になることを思ったら、頬に熱が溜まって朱色に染まり上がってしまう。
 ボタンが最後まで外されると、パジャマの上は脱がされた。
「アーミヤ、こっちへ」
 二の腕を掴まれて、ベッドの上に導かれる。
 ベッドシーツの柔らかく清潔な感触に身を沈めると、水色のアロマランプに染まり変わった天井や、ドクターのフード付きの顔が視界に広がる。
 ドクターの両手は次にズボンへかかっていた。
 それがずるずると下ろされると、下着姿になってしまったアーミヤは、さらに恥ずかしそうに染まりつつ、肩を小さく縮めていた。
 覚悟はあり、恐怖はない。
 しかし、怯えて見えるかもしれない震えがあるのは、やはり恥じらいのせいだった。
「オシャレ、してきたんだね」
 下着への指摘である。
 それもまた、やはり羞恥心を煽ってきた。
「一応、そのつもりで……」
「よく似合っている。とても綺麗だよ」
「ど、ドクター……」
「だから、触りたくなる」
 ドクターの指は下着越しのアソコに置かれた。
 指先がワレメを上下になぞり、最初のうちにあるものは、単に皮膚に対して指が擦れる純粋な摩擦である。だが、それが数秒、十数秒と続くうち、早くも甘い痺れが走り始めて、アーミヤはほどなくして感じ始めた。
「ドクター……私……」
「感じているんだね?」
 そうはっきりと言われることで、アーミヤはぎょっとする。
「す、少しですよ? 少し」
 心臓が飛び出そうだった。
 感じている様子など、わかりやすく顔に出ていたかもしれないが、やはり言葉にされると必要以上に羞恥心を煽られる。太ももを引き締めるようにしての、もぞもぞとした挙動も止まらずに、恥ずかしい上に快感も増してきている。
 下着が内側から濡れ始めるのは、もう時間の問題だった。
「胸が見たい」
 ドクターはまた、はっきりと口にしてくる。
「わかり……ました……。ですが……」
 先ほどの言葉を改めて言おうとして、その瞬間だった。
「いいや、見ると思う。ジロジロと」
「もう……脱ぎにくいじゃないですか……」
 恥じ入る顔で、アーミヤは背中を浮かせ、その下に両手を潜り込ませる。ホックを両手で外した途端、今度はドクターの指が肩紐を一本ずつ下ろしていく。
 ブラジャーのカップは胸から遠のき、アーミヤの乳房はあらわとなった。
「可愛い胸だね。アーミヤ」
「やぁ……!」
 アーミヤは恥ずかしさで顔を両手に覆い隠す。
「触らせてもらうよ」
 そんなアーミヤの胸を味わおうと、ドクターは生の乳房へと両手をやり、優しげに揉み始めた。
 柔らかな手つきである。
 いたわりながら、じっくりと愛してくる手つきに溶かされて、乳房の中にも快楽が広がり始める。乳首に血流が集まると、今度は硬い突起も刺激を受け、アーミヤは時間が経つにつれて息を乱していくのであった。
 感じれば感じるほど、息遣いは荒っぽく、瞳も熱っぽいものへと染まり変わっていた。
 ドクターの右手がおもむろに下へと移り、ショーツ越しのワレメが再びなぞられる。
「ひゃ……あぁ………………」
 胸とアソコの両方に、同時に刺激が来ることで、アーミヤは甘く小さな声を吐き出していた。
「あ……あぁ……」
 右手の指に擦られて、先ほどから気配のあった愛液は、じわじわと量を増やして、下着を湿らせ始めている。
「んっ、はぁ……あぁっ、ドクター……」
 アーミヤは快楽に目を細め、すっかりそれを受け入れていた。
 下着や裸を見せるのが恥ずかしい。感じている様子を見られるのも恥ずかしい。
 だが、嫌ではない。
 いくらドクターが相手でも、少しは抵抗が湧くものだと思ってみれば、驚くほどに何もない。羞恥心が湧くだけで、嫌悪のようなものは微塵もなく、ドクター相手に恥ずかしい思いをするのなら、それも悪くはないような気さえしている。
「んっ! んぅ……!」
 その時、アーミヤは急に反応を強めていた。
「痛かった?」
「いいえ、痛くは――」
「なら、刺激が強かったのかな?」
「はい、たぶん……んっ、あぁ……! そ、そこは本当に弱いです! あっあぁ……! 弱いですからぁ……!」
 アーミヤが刺激を受けているその場所は、ショーツ越しではあってもクリトリスのあるべきポイントだった。下着の厚みを介していても、ドクターは突起したものの感触を指で見つけて、集中的な刺激を始めたのだ。
 腕ごと手首を振動させ、震わせてやるかのような、指を振動器具に見立てた刺激が上手い。
「あっ、あぁ……ど、ドクタぁ……!」
 アーミヤはシーツを掴み、額に汗を滲ませながら、淫らな息遣いで髪を激しく振り乱す。
「気持ちよさそうだね」
 ドクターの指は止まらない。
 クリトリスをやられているせいか、体はますます敏感になり、左手で揉まれる乳房でも、走る刺激は増している。特に乳首をつままれるたび、ビリっと弾けんばかりのものが駆け巡り、身体がピクピクと反応をしてしまう。
「全部、見せてもらうよ」
 ドクターの両手がショーツにかかる。
「は、はい……!」
 アーミヤは一気に緊張した。
 今までも十分な緊張状態にいたものの、今度は最後の一枚が脱がされて、大事な秘所を見られる直前になった上での、さらなる緊張にアーミヤは見舞われている。
 もっと、もっと、恥ずかしい状況が、ものの数秒後に待っている。
 ドクターの手が動き、ショーツは下へとずらされ始める。
「あ、あぁ……」
 アーミヤは恥ずかしさから顔を覆い、視界を両手の内側に隠してしまう。
 毛の生えた部分が、その下にあるワレメが、ドクターにまじまじと見られてしまう。ショーツを脱がすため、体勢を変えているドクターは、ちょうど性器の真上に顔をやっており、脱げた先から至近距離での凝視をされるのだ。
 しかも、ただ性器を見られる恥ずかしさだけではない。
 今のアーミヤは濡れている。
 愛液という、感じた証拠も含めて、今まさに見られようとしているのだ。
「やぁ……!」
 羞恥心が吹き荒れる。
 性器とクロッチが張りついていた。
 ドクターに下ろされていく下着の、ワレメと触れ合った部分が愛液でくっついている。粘っこい水気は接着剤のような働きをして、ショーツが下がっても下がっても、太ももに差し掛かる段階に至ってなお、その接着部分が離れずに、ショーツは裏返しになりかけていた。
 ショーツの一部分だけをつまんで持ち上げた場合のように、三角形が裏返り、そのまま裏返しになろうとするのが、今のショーツの状態だった。
 そして、なおも下がり続けるショーツは、やっとのことで、ワレメから離れていくが、粘っこい接着剤が糸を引くようにして、透明なものが何センチも、長く長く伸び始める。
「糸が出たね」
「やっ、やめてくださいよドクター! 恥ずかしいことを言わないで下さい!」
「大丈夫、すぐに消えたから」
 ドクターの言葉通り、それは伸びた分だけ自重によって垂れ下がり、そのアーチ状の下垂はすぐにシーツと触れ合い消失している。
 しかし、そういう問題ではなく、糸の存在を指摘されたこと自体がアーミヤには恥ずかしかった。
 ショーツが最後まで脱がされる。
 今まで肌と触れ合い続けた布の感触は、足首の向こうへと消えていき、ショーツはドクターの手に渡った。布一枚が恋しくてたまらないような思いに駆られ、アーミヤは恥辱感から顔を歪めつつあった。
「アーミヤ。ほら」
 ドクターが顔にショーツを近づけてくる。
「やっ! も、もう! 恥ずかしいことばかり!」
 肝心な部分を裏返し、よく濡れた様子をアーミヤ自身にも見せつけてくる行為に、アーミヤは恥ずかしさから声を荒げる。
「もっと恥ずかしいことをするけどね」
「ひゃっ、あぁん!」
 アソコに指が置かれた。
 表面に愛液をまとったワレメに、ぬかるみを塗り広げようとするような、指の腹による揉みほぐしと、撫で回しの複合した愛撫が施される。
「あっ、あぁ……あっ、あぁ……あぁ……!」
 アーミヤはすぐに声を荒っぽく、息遣いも淫らにして、喘ぎ声を上げていた。
 足腰が気持ち良くてたまらない。
 指から何かを注入され続けているように、どこかピクピクとしているような、モゾモゾと脚の動いてしまう反応が止まらない。
 気づけば指が挿入されていた。
「あっ、あぁ……! あっ、んぅ……!」
 一本の指が潜り込み、慎重に出入りしているが、その微妙に拙いピストンだけで、アーミヤは十分に感じていた。ドクターの指が膣内にあり、感じた様子を見られている事実で、体中が余計に興奮してくるのだ。
「アーミヤ、いい反応だよ」
 見られている。
「あっ、ふっんぅ……あぁ……!」
 こうやって声を荒っぽくして、よがっている様子は、目で味わうようにして見られている。自分の反応がドクターを満足させているのかと思ったら、恥辱に顔が歪むようでいて、マゾっ気も煽られてか興奮して、全身がますます敏感になっていく。
 感度上昇の見えないスイッチが存在して、それが押されてしまっているように、アーミヤはすっかり敏感な反応を披露していた。
「あっふっ、んぅ――んぅぅ……」
 いつしかアーミヤも、その状況に浸っていった。
 景色の素敵なこの部屋で、愛しい人の指にやられている。こうなることを望んで誘い、実際に望み通りのことになり、アーミヤは快楽を味わい始めていた。
 ドクターの指は引き抜かれる。
「アーミヤ」
 急に愛撫が止まったことを、「あれ?」などとは思わなかった。ただの指を引き抜く動作から、アーミヤだからこそ細かな機微を感じ取り、そして悟ったのだ。
 次の段階へ進むのだと、抜かれただけでわかったことが、名前を呼ばれてより一層の確信に変わっていた。

「……するんですね?」

 アーミヤは不安と期待を同時に抱え、恐る恐るという具合の、しかし待ち望んでいた夢が叶う直前の、胸が高鳴ってならないようでもある感覚を胸にしていた。
 不思議な感覚だ。
 少し怖いのに嬉しい、など。

「するよ。最後まで」

 その時、ドクターが見せた気配は、何かを用意しようとするものだった。この流れなら、それは避妊具に決まっていたが、アーミヤは咄嗟にドクターの腕を掴んで食い止めていた。
「ま、待って……ください……」
「アーミヤ?」
「最初は、その……。きちんと、感じたい……です…………」
 恥ずかしさで消えたくなるような、だんだんと小さくなっていく声で、アーミヤはそっと言う。
 すると、ドクターはすぐさま逸物を解き放ち、挿入のための動きを取り始めた。切っ先をワレメに宛がい、押し込むための、正常位の体位に移ろうとする気配を出した。
 それに合わせて、アーミヤも脚をM字に開いていく。

 かぁぁぁ……!

 頬に見えない何かが燃え広がり、もう十分に恥じらい尽くしたと思った自分の中に、まだ羞恥心の弾が残っていたことを思い知る。
 形が出来上がった。
 アーミヤは脚を開ききり、ドクターも亀頭をワレメにぴたりと当てており、あとは結合さえ果たせば、するべき行為の開始である。
「……いくよ」
 ドクターの声にも、緊張気味の震えが宿っていた。
「は、はい……」
 それ以上の硬さを帯びて、アーミヤは小さく答える。
 一体、どれくらい痛いのか。
 もしもトラウマになるような、恐るべき激痛だったらどうしようかと、アーミヤは恐怖を胸に抱えている。何より、セックスというものは、知識こそあっても未経験の、頭の中ではわかっていながら、どこか未知の世界の出来事であるような感覚が今日まであった。
 現実には誰もが当たり前にすることと、もちろん理解はしていながら、自分には経験のないことを、本の中の出来事のように捉え、それがこの身に起ころうとする状況への、言ってみるなら大事件の直前のような恐怖があった。
「んぅ……!」
 痛い。
 切っ先が沈み始めて、それが膣口に入れば入るほど、幅の足りない穴が無理にでも拡張され、肉の引き延ばされる負荷がかかってくる。
「んっ、んぅ…………!」
 愛液がなければ、もっと痛かっただろう。
 幸い、十分に濡れているので、愛液は活性油としての働きを問題なく果たしている。ぬかるみをまとった亀頭は、ぬるっと滑り込もうとしてくるようで、アーミヤの穴さえ広ければ、本当はもっと一瞬にして収まっていたかもしれない。
 だが、ドクターはアーミヤの様子を見守りながら、とても慎重に腰を動かす。
「んっ、はあ……はぁ…………」
 痛みに脂汗が噴き出てきた。
 ここまでの痛みは、まだトラウマには程遠いが、肉棒の全てが収まったわけではない。最後まで入った時、痛みが増えていないとは限らない。
 体が震えていた。
 やはり、初めては怖い。
「大丈夫?」
「はい。私は大丈夫です。どうか、最後までお願いします」
 アーミヤが答えた時、肉棒はさらに深くへ押し込まれる。
 本来、穴のサイズに合わないものが、無理にでも押し入ってくるために、強引に拡張されて引き裂ける。本当に裂けてはいないと思いたいが、アーミヤが感じる痛みの種類は、間違いなくそういうものだ。
「んっ、あぁ……」
 先ほどまで、色っぽくそう喘いだのが、今は痛みによる喘ぎに変わってしまった。
 亀頭はなかなか入って来ない。
 アーミヤの狭い膣は、愛液による滑りこそ帯びてはいるが、肉棒を押し返してしまっている。小さな穴が窄まれば、つるっと外へ押し出され、ドクターの腰はそんな具合に押し退けられていた。
 だが、その繰り返しによって、徐々に揉みほぐされた入口は、やがて亀頭を咥え込む。そこまで入れば、竿の部分まで収めきるのに、もう時間はかからない。
 しかし、ゆっくりと、少しでも負荷を軽減させようとしてくるドクターの、丁寧な動きによって、挿入はなおも時間をかけた。
 ゆっくり、ゆっくり、何度もしきりに立ち止まっての挿入で、やっとのことまで根元までの結合を果たしていた。
「んっぐぅ――!」
 脂汗が噴き出ていた。
 やはり、痛い。
 無理にでも膣壁を拡張され、今にもみしみしと音を立てて裂けそうな感覚で、膣内が丸ごと焼き付くようだ。
 血も流れている。
 白かったシーツには、結合の隙間を辿って流れ着いた赤色が染みつつあった。
「んっ、んぅ…………」
 痛みのあまり、目尻には涙が溜まる。
「アーミヤ」
 そこに降り注いでくるものは、ドクターの熱っぽい眼差しだった。何かを真剣に見つめてやまない、全てを真っ直ぐに受け止めようとするものが、その瞳の色には宿っていた。
 指先が涙を拭う。
 痛みが消え去るわけではないが、不思議な魔法にかかったように、何故だか少し楽になる。
「ドクター……」
 二人は見つめ合った。
 ただ二人きりの世界に没入して、結合部は一向にピストンを始めない。繋がりを果たしたという、その余韻に浸るだけでも、二人きりの世界観は深く構築されていた。
 もっとも、いつかは動き始める。
 ドクターのゆったりとした慎重なピストンが始まると、シーツをぎゅっと掴んだアーミヤの両手には、より強い力が宿る。然るべき握力さえあれば、引き千切ってもおかしくはない勢いで、力強く掴むあまりに、手首はそのまま反り立っている。
「あっぐぅ……んぅ…………」
 痛みに喘ぎ、脂汗で前髪が額に付着している。
「アーミヤ……!」
 ドクターが熱っぽい興奮で、衝動に突き動かされたようにして、少しだけピストンのペースを速める。それでもゆっくり、スローモーションを守った抜き差しは、しかしアーミヤの膣には負荷となり、ズキズキとした痛みを走らせ続ける。
「ん――ぐっ、ぐぅ……」
 アーミヤはそれを健気に堪えていた。
 そうすることが使命であり、責任であるかのように、歯を食い縛って堪え抜く。
 そして、それも終わりを迎えた。
「ひゃっ、あぁ……!」
 一分を一時間にも感じる長い長い時の中、ついに果てるドクターから、アーミヤの中へと熱に溢れたものが解き放たれ、アーミヤは子宮でそれを感じていた。
 その瞬間、アーミヤにあったものは、全ての細胞が震えるような歓喜であった。
 腹の内側が熱い。
 精液に温められた細胞は、次々と熱を伝え、奥へ奥へと染み渡らせる。膣内で何度か脈打ち、弾け出て来た白濁は、きっと子宮に届いている。
 この熱こそが、全身の細胞を震わせたのだろうか。
 肉棒が抜き取られる。
 今の今まで痛かったはずなのに、長い時間のあいだ収まり続けていたものが、急に抜け出ていくことで、今度はアソコが寂しくなった。
 栓が抜けたことにより、破瓜の血と精液の混じったものが、膣口から流れ出る。
 表皮を伝い流れたものは、既に血を吸っていたシーツの上に広がって、その真紅の色を薄めていた。
「しちゃいましたね。ドクター……」
 気恥ずかしくてたまらない、とても照れ臭いような声で言い、アーミヤはその身を起こす。
 シーツに広がるものと、自分自身のアソコにあるものを見ることで、たった今までの時間をより濃密に実感していた。
「アーミヤ。とても、気持ち良かった」
 頭に手が置かれ、ドクターはアーミヤを撫でてくる。
「感じてくれて嬉しいです。ドクター、大好きですよ」
 その時だった。
「アーミヤ……!」
 衝動的な両手が伸びて、ドクターの腕の中へとアーミヤは抱き締められる。
 苦しいほどの腕力の中へ体が収まり、しかしその苦しさは、アーミヤにとってかえって心地良いものだった。
 子供が出来ていたらいいな、などと少しだけ思ってしまう。
「これからもよろしくお願いしますね。ドクター」
 甘えるように縋り付き、ドクターの胸へと顔を埋めた。
 このまま、眠ってしまいた。
 子供のようにあやされながら、ドクターの腕の中で……。


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