士堂瑠璃はある覚悟をしていた。
こうして囮を演じるからには、医師にとって少しでも価値のある動画を撮らせ、アップロードに仕向ける覚悟だ。乳房だけでことは済まさず、アソコや肛門まで診てもらう覚悟をして、瑠璃はここにやって来ている。
「じゃあ、あとは下半身だったね」
乳首から手が離れ、医師はショーツに視線を移す。
(来た――)
それは瑠璃にとって、チャンスであった。
悪徳医師が本当に悪徳である確信を掴み、殺す理由を得るチャンスだ。下半身まで出してしまえば、この男はきっと動画をアップするはずだと、だから瑠璃は一切の抵抗を捨てていた。
「性器ウイルスや肛門ウイルスも知っているよね?」
医師はそう言いながら、腰の両側に触れてくる。
ショーツのゴムに指が埋まって、脱がされる直前となっての瑠璃は、さすがの緊張で体中を強張らせる。顔すら硬くして、頬の赤らみも広がっていた。生まれて初めて異性に性器を見せるのが、こうした形であることにも、複雑な思いを抱いていた。
「知ってます。有名ですし、悪化したらどうなるかって、ネットで怖い画像も見たことがあって……」
「ああ、グロいよね。そんなの見ちゃうと、不安になっちゃうよね」
ショーツが下ろされ始めた。
瑠璃は素直にそれを受け入れ、尻を少しだけ浮かせることで、脱がしやすいようにすらしているが、本当の意味で受け入れているわけではない。意中の男性と仲を深めて、相手を一人の人間とした認めた上での露出ではなく、ただただ医師の悪行を、池山信夫という男の所業を知るために過ぎないのだ。
見せたくて見せるのではない。
本当は見せたくないが、これが一番の方法だと割り切って、人としての尊厳を切り売りするつもりで見せているのだ。
ショーツが太ももを通過して、膝すらあっさり通り過ぎ、足首の向こうにまで遠のいていく。
全裸になってしまった恥ずかしさで、いよいよ頬は燃えるように熱く、瑠璃はより明確に赤面していた。
「さあ、恥ずかしいけど我慢しようね」
医師はショーツをつまみ上げていた。
瑠璃に見えるような位置と高さで、右手につまんでぶら下げて、ひらひらと左右に振りたくる。お前の大事なものを取ってやったぞ、と誇らんばかりにして見えて、瑠璃の胸中には屈辱感が広がった。
(最低……)
この男はそういう人間だと、瑠璃の中で確信は強まっている。
下腹部の視触診が必要な場合でも、まともな気遣いのある人間なら、そんな行動は取らないはずだ。
医師の手にショーツが渡っている。
実際に大事なものを取られた感覚がしてならず、今すぐに返して欲しい、一秒とてこんな男に持たせていたくはない気持ちでいっぱいだ。もしも衝動に任せるままに、後先考えることなく動くとしたら、瑠璃は素早く起き上がり、引ったくるように取り返しているはずだった。
だが、そんな軽率な真似はせず、瑠璃はじっと堪えている。
人のショーツをどうする気かと、目で医師の動きを追っていると、脱衣カゴの中に置かれたことがわかって、ほんの少しだけ安心するが、恥辱感は余韻として残っている。
「アソコとね。お尻の穴を診ていくから、足を思い切って広げてごらん?」
そんなことを言いながら、医師は足の向こうで待ち構える。
開きにくかった。
ショーツがなくなっている時点で、アソコ自体はもうとっくに見られているが、開脚によってよりあけっぴろげに、よく見えやすくしてしまっては、今以上に恥ずかしいのがわかりきっている。
さすがに辛い。
覚悟はしてきたと思ったのに、それだけは勘弁して欲しくなり、今になって命乞いでもしたくなるような気持ちすら湧いてきている。
「わ、わかりました……どうぞ……ご覧下さい…………」
瑠璃は気持ちを堪え、恥を忍んで開脚した。
わざわざ待ち構えている目の前で、脚を左右に開いていき、M字となって剥き出しの性器を見せびらかすと、すぐさま視線を感じた。
じぃぃぃ……
と、注がれる視線が痛い。
こんなポーズを取るからには、来るべきところに視線は注がれ、目から熱でも放たれているように、じりじりと焼かれる感覚すらあった。
「へえ? 剃ってるんだねぇ?」
しかも、医師はまず、毛のことに言及してくる。
「生えてたら、お見苦しいかと思って……」
「ま、そうだね。おかげで皮膚の状態は見やすいかなぁ?」
ぐっと顔が迫ることで、瑠璃はますます表情を燃え上がらせ、熱に浮かされる苦悶で目尻に皺を作り出す。
「あの、でも、早めに終わってもらえると……さすがに……!」
瑠璃はたまらず訴えた。
「そうだね? 恥ずかしいね?」
「急かすようですみません。でも、本当に……!」
性器を凝視されるのは、未だかつて味わったことのない恥ずかしさだ。
クラスの男子にスカートの中身を覗き見られて、やたらに興奮されてしまうのが、もはや蚊に刺されるよりも軽い出来事に思えてくる。
「士堂さん。それじゃあ、なるべく早めに終わるためにも、アソコを指で開いてもらってもよろしいかな?」
とんでもないことを言う。
閉じ合わさった肉貝だけでも恥ずかしいのに、自ら中身を見せるなど、自分は一体どうなってしまうのか。
「で、では……」
瑠璃はとっくに赤面しきっていた。
耳すら赤くなりそうな状況で、これ以上の羞恥心を感じたら、自分は一体どうなってしまうのか。恐る恐ると手を動かし、両手の指先をワレメに合わせ、左右に開いて中身を晒す。桃色の肉ヒダを公開したとき、もうたまらずに瑠璃は目を瞑っていた。
「綺麗だねぇ?」
「……っ!」
「桃色で、血色がとてもいい。ちょっと湿り気が強いかな? 濡れっぽい感じで、光が反射してキラキラしてるよ」
「や、やめて……許して下さい……!」
見た目を実況までしてくるので、瑠璃は思わず懇願していた。
不意に薄目を開けてしまい、股に迫った医師の顔を目にした時、その頭がいかに近づいてきているかを目の当たりにもしてしまった。数センチの距離にまで目は迫り、よく観察しようと中身を覗き込んでくる姿に、頭の中さえ燃え上がり、瑠璃はますます苦悶していた。
(こんなに恥ずかしいなんて!)
きつく歯を食い縛り、顎まで硬化させていく。
こうも顔が近ければ、血色も何もかも、細やかに観察できるに違いない。性器ウイルスだけでなく、婦人科検診の存在も知っているので、仕方がない時は仕方がないと、頭ではわかっているが、今の瑠璃は本当は健康そのものなのだ。
「じゃあ、そうだね。君のためにも、早いところ指を入れてしまおう」
そう聞こえた次の瞬間、ビニールの擦れる物音と、何かの蓋をパカっと開く音により、触診の準備をしていることがわかった。医療用のビニール手袋を手に嵌めて、ジェルで滑りを良くした指で、膣内を触診するつもりだ。
(来る……ゆ、指が来る――)
瑠璃はますます硬く身構える。
入口に先っぽが触れた時、瑠璃はビクっと身を弾ませ、同時に強張った筋肉の硬度をより高める。石にでもなろうとする勢いで、肩や背中も硬化させ、瑠璃は極限まで身構えた状態となっていた。
指が入り込んで来る。
膣内に侵入され、根元まで埋まってくることで、下腹部に拳が当たって来る。アソコに収まる異物感で、瑠璃は一層の苦悶を表情に滲ませていた。
「ところで――」
そして、触診が始まった時だった。
「一つ聞いておきたいんだけどね」
指が膣内で回転して、膣壁を擦り始める。
内部を調査されている感覚に、不安なような心許ないような、弱点に触れられていることが落ち着かない思いでいっぱいに、瑠璃は全身をそわそわさせていた。
「オナニー経験はあるかな?」
一瞬、固まった。
言葉ははっきり聞こえたのに、理解できない言語でも聞かされたような、かえってきょとんとした顔となっていた。
「いま、なんと仰いましたでしょうか……」
「オナニーだよ。ああ、これを聞くのはホルモンバランスとか色々と理由があるんだけど、とにかく正直に答えてもらえると助かるよ」
「あります……けど…………」
「一番最近したのはいつかな?」
「み、三日前……」
「へえ? 意外と最近だ。指の挿入はしているかな?」
「してます……けど……」
「ほうほう。ここに君自身の指が入っていたと。三日前にねぇ?」
(やだ……!)
瑠璃の顔は燃え上がった。
首から上が焼き尽くされるかと思うほどの、激しい羞恥に見舞われて、瑠璃は極限までの力を込めてまぶたを閉ざす。もうどんな景色すら見ていられないようにして、眼輪筋を固くするどころか、唇さえきつく閉ざして、苦悶に満ちた表情を浮かべていた。
自分の置かれた状況がわからなくなりそうだった。
自らの手でアソコを開き、中身を見せている状態で、膣内に指が入って、その上でオナニーについて言わされている。頭の中では出来事を羅列できるが、それに対する感情の全てが「わけがわからない」と化していた。
「頻繁にする方かな?」
「た、たまにです! たまにですよ!?」
慌てて答えてしまった。
弁解でもしたいように、大慌てで答えた瑠璃の言葉は真実だが、まるで必死に何かを誤魔化して見えるだろうと、言った直後になって気づいていた。
「悪いけど頻繁だと解釈させてもらうよ」
「そ、そんな……違いますってば……!」
「いいよいいよ? 隠さなくて。じゃあ、しばらく触診を続けるから、終わるまできちんと我慢するようにね」
(違う、違うのに……!)
心が悲鳴を上げていた。
頻繁にオナニーをするいやらしい少女だと思われるのは、たまらなく恥ずかしかった。
*
池山信夫はすっかり興奮していた。
ズボンの内側が硬化して、目の前にあるこの穴に入りたいと、根元から訴えかけてくる。
(しかし、診察をしないとな? 診察を)
信夫は邪悪な笑みで指を動かし、膣内の調査を行う。
内部の炎症、出来物の気配などは、もちろん一応のところ探しているが、瑠璃の性器はどうやら健康そのものらしい。何一つ問題はなく、瑠璃が病院にやって来たのは、昨日までたまたま不調だったのを、危険なウイルスと勘違いして、不安なあまりの来院に間違いない。
だが、特に何も無しでは楽しめない。
(ま、症状は適当にでっち上げるか)
信夫は指を抜き差しして、触診からただの愛撫へと動きを切り替え始めていた。
(オナニー経験豊富なアソコなんだろう?)
ビニール手袋を嵌めてはいるが、素手も同然に感触が読み取れる。表面に粘膜を帯びた生温かい肉ヒダには、少量のジェルも浸透している。滑りを良くする目的で、少しばかり指先にまぶしたものが、出入りをスムーズにしているのだ。
ぬちゃ、ぬちゃっ、と、粘液の水音が聞こえるのは、最初はもっぱらジェルのせいだった。
しかし、続けるうちにジェルは内部へ塗り広がり、もう水音が鳴らなくなったと思ったところで、しばらくすると別の水音が聞こえ始める。
くちゅり、くちゅりと、愛液の音が聞こえたのだ。
(へえ?)
信夫はほくそ笑む。
女を感じさせてやる瞬間は、いつだって優越感に満たされる。オナニーの秘密を喋らせて、いやらしい子であるとわかった上で、その証拠のように快楽の蜜が出て来るなど、これが面白い展開でなければ何であろうか。
「んっ、んぅ…………」
見れば瑠璃の表情も、だいぶ苦悶に満ちてきている。
「痛いかな?」
わかっていながら、わざと尋ねた。
「いえ、そんなことは……」
「痛みがありそうなら、きちんと言ってくれないと、正確な診察にならないからね」
「もちろん、わかってます。痛みはないです」
「そう? なら、さっきの声は?」
と、指摘する。
その瞬間、苦悶の度合いが見るからに増していき、瑠璃の表情は歪み尽くした。眼鏡の向こうにある瞳から、今にも涙が溢れてきそうに見えた。赤らむあまりの顔から熱さえ感じて、部屋が暖まっている気さえしてきた。
「ご、ごめんなさい! お騒がせを! あの、とにかく痛くはないです!」
目が何かを訴えかけている。
快楽について白状するのは恥ずかしいから、この答え方で許して欲しい。そんな思いが存分にこもっていた。
だが、本当に勘弁してしまっては、面白みがなくなるのだ。
「正直な答えがないと、誤診しちゃいけないからね」
だから信夫は容赦しない。
あくまで言わせる姿勢を取ると、瑠璃はもう本当に泣き出しそうな、悲しみと恥じらいに満ちた面持ちで、震えた声で言うのであった。
「き、きもち……よくて……すみません……感じてしまって…………」
情けないことを懺悔するように、恥じ入りながらの答えであった。
「いいんだよ? 気持ちいいのは普通のことだ。ごくごく、自然な反応だよ。オナニーだってする女の子なら、尚更ね」
快楽に言及する語彙を、信夫は意図的に、なるべく多めに含ませる。
「うぅ……」
言葉自体が、瑠璃への辱めとなっていた。
「さて、じゃあ膣口はそろそろいいかな? でも次は、クリトリスの方を触診するからね」
先ほどから気になっていた。
左右にくっぱりと開かれた肉ヒダの、膣口よりもさらに上、上端部分にある芽のような突起物は、皮の内側から芽吹かんばかりに突起している。先ほどまでは、まだそんな様子はなかったのに、愛液が出て来たあたりから、敏感そうに見えてきたのだ。
(せっかくだし、触ってみたいよねぇ?)
信夫は膣口から指を抜く。
挿入前はまぶしたジェルで濡れていたのに、今は愛液の方で濡れており、こちらで塗ったジェルの痕跡が残っていない。感じた女の香りが漂い、見れば肛門に向かって滴が垂れ、表皮に筋を伸ばしていた。
滴は肛門の皺に飲み込まれて消失するが、アソコの端から肛門にかけての、たった数センチの短い筋は、光を反射してぬらぬらと輝いていた。
「それじゃあ、触るからね」
信夫は肉芽に指を置く。
ピクッ、と、接触と同時に太ももが反応していた。電気でも流して弾けたように、僅かな開閉を一瞬していた。
(敏感なものだねぇ?)
信夫はクリトリスをくすぐり始める。
すると、瑠璃の両脚はモゾモゾと、小刻みな開閉を繰り返した。ほんの数センチもない、本当に僅かな動きであるが、M字の脚を閉じようとするような、逆により広げようとするような、開閉じみた気配を醸し出す。
(イっちゃったりしてね)
その気配が見て取れた。
クリトリスをくすぐればくすぐるほど、膣口からは愛液が滴り溢れる。涙や汗が生まれる瞬間であるように、そこから一滴の玉が育って、膨らむだけ膨らんだ愛液の滴は、自重に引かれて下へと動く。
表皮を流れ落ちる滴は、すぐに肛門の皺に捕まり、溝の中へと飲み込まれるが、続けて次の滴が垂れてくる。また次の、そのまた次の、滴が繰り返し溝にハマって、皺の隙間を満たしていくと、いよいよ肛門を通過して、さらにその下にまで伝っていくようになる。
やがては診察台が汚れるようになり、その頃には息遣いも激しく鳴っていた。
「はぁ……はっ、はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……はっはぁ……あっはぁ…………」
苦しんで聞こえないこともない、しかし気持ちいいせいで熱っぽくなった呼吸から、瑠璃が一体どれほど興奮しているかを想像する。
「あっ、あぁぁ――――」
声が高くなっていた。
何かの兆候を感じた信夫は、面白がってわざとらしく、逆にあえて指を離した。
「え……」
すると、そこにあるのは一瞬の困惑だった。
もう少しで何かがあったのに、その直前で切り上げられてしまったことへの、困惑めいた表情が窺えたが、瑠璃はすぐに恥じ入っていた。一体自分は何を考えているのだろうと、自戒の念が滲み出ていた。
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