前の話 目次




 収まった肉棒が出入りしている。
「へへっ」
 そして、実に嬉しそうに腰を振り、唯華の尻を打ち鳴らしてくる健太の顔は、振り向くまでもなく表情がよくわかる。あまりにもニヤニヤしてしまい、表情の変化を自分ではどうにもできないほどに、本当に大喜びしているのだ。
「んぅ……んっ、んぅぅ…………」
 意外にも痛くない。
 スポーツをしていれば、激しい運動の際に膜が裂けることがあるとは聞くが、そのおかげか健太の太さに辛すぎるほどの負荷は感じない。唯華自身のオナニーと、玩具として遊ばれてきた経験もあってのことか、数分もすれば馴染んでしまいそうである。
 太すぎず、だから内側から裂ける心配がないところも、痛みのない理由なのだろう。
「んぁ……あっ、あぁ…………」
 だんだんと声が出る。
「んぅぅ…………」
 だから唯華は唇をぎゅっと結んで、片方の手では口を塞ぎ、声を出さないように気をつけ始める。入る際、周囲に人はいなかったが、後から誰が来てもおかしくない。人に喘ぎ声を聞かれれば、覗かれる恐れがあると思っての我慢であった。
「んっ、んぅぅ……んふぅぅ…………」
 尻が打ちつけられている。
 健太は嬉々としながら腰を振り、激しく尻を鳴らしてくるので、唯華が気にする周囲の気配をいつ引き寄せるかもわからない。

 パン! パン! パン! パン!

 音の反響で、しっかりと聞こえる音が鼓膜を貫く。
「んっ、んぅぅ……んぅぅ…………」
 戸板にあてた片方の手の平は、いつしか拳へと形を変え、ぎゅっと握力を込めていた。快楽によがらんばかりに手首の方が反り返り、呼吸も激しく乱れていった。
「んっ、んぅぅ……んふぁ……んぅぅ…………」
 もう、いつイクかはわからない。
 全身に走る甘い痺れは、神経を内側から焼き切るような激しさを伴って、脳天にまで走ってくる。快楽電流の通過した後に残されるピリピリとした感覚も、細胞を一つ一つ溶かさんばかりの快楽となって血肉を蝕み、もう何分も立っていられない予感があった。
 足がガクガクと震えている。
 くちゅり、くちゅりと、粘液をかき混ぜる水音も聞こえている。
 もう駄目だ。
 もう……もう…………。

 いや、やっと――――。

 その瞬間、ビクっと激しく震えた唯華の肉体は、痙攣を帯びて愛液を滴らせていた。

 頭が真っ白となり、何一つ、ものも考えられない。
 ただ、はぁはぁと息を整え、無心になって呼吸を荒くしながらぐったりと、ポーズはそのままに首だけをだらけさせ、床のタイルに視線を突き刺していた。真っ白な頭に思考が戻れば戻るほど、その思考は絶頂の余韻に浸っていた。
 アソコに何か熱いものが触れている。
 生まれて初めての感覚なので、すぐにはその正体に気づけなかったが、もしやコンドーム越しの精液ではないかと思った時、健太の肉棒は遠ざかる。
 アソコから、肉棒が抜け去った。
 この数分間、今まで穴を塞ぎ続けたものが消え、アソコが一抹の寂しさを感じたところに、再びの挿入が行われる。少しでも寂しいと思ったところへの、二度目の挿入の機会に対して、嬉しい再会のような気持ちが湧く。

「あぁぁ――――!」

 唯華は驚いていた。
 驚愕に目を見開き、慌てて口を手で塞ぎ、大きく出てしまった声を塞いでいた。近くに人がいたならば、絶対に聞こえてしまった声量だが、せめてこれ以上は出さないために、必死になって声を抑えた。
(なに……これ……!)
 何か、おかしい。
 一度目の挿入とは段違いの快楽に、唯華は最初のうちだけは疑問を抱く。何がそんなに違うのかと気にした時、一つの予感が浮かび上がるも、それは完全には浮上しなかった。
(んっ! 駄目っ、良すぎる!)
 ものを考える余裕など、そもそも与えられもしない。
 頭脳に浮かび上がるよりもまず先に、脳内には甘い痺れがまたたくまに広がって、神経という神経の数々を満たすのは、強烈な電流の走ったピリピリとした感覚だった。浮かぶことなく沈んだまま、そして快楽だけが唯華の脳を染め上げていた。
「んっ! んっ! んっ! んっ! んっ! んっ!」
 声は抑えていた。
 歯を食い縛り、右手で口もしっかり塞ぎ、可能な限り抑えていて、それでも出ている声がこれだった。
「んっ! んっ! んっ! んっ! んっ! んっ! んっ!」
 十分な声量が出てしまっているが、抑えもせずに喘いでいれば、より大きく響き渡らせているはずだ。
「んっ! んっ! んっ! んっ! んっ! んっ! んっ!」
 ほとんど無意識である。
 快楽の嵐に晒されて、もはや何の余裕もなく、唯華はただただ、その直前までしていたことを無意識に続けている。自分が声を我慢している意識などありもせず、思考が快楽に掻き消される直前に、どうにか焼き付いた動作をそのまま維持しているにすぎないのだ。
「んっ! んっ! んっ! んっ! んっ! んっ! んっ!」
 翻弄されるがままとなり、唯華はもはや自分が二度目の絶頂をしている自覚すらなく、やはり無意識のうちに胴体がくねり動いた。内股の筋肉が痙攣して、肛門もまたヒクヒクと反応を示した挙げ句、滴り落ちる愛液が明らかに量を増す。
 糸がぷらぷらと揺れていた。
「んっ! んっ! んっ! んっ! んっ! んっ! んっ!」
 大きな滴が生まれた結果、それが重力に従い下降していくことにより、長い長い糸が形成されていた。ピストンが続いていることで、その糸は衝撃を帯びて前後に動き、振り子のように揺れ動いているうちに、やがてぷちりと千切れて消失していた。
 その消失にタイミングを合わせたように、健太は実に満足そうな顔で肉棒を引き抜いた。
「はぁ、よかったよかった」
 そして、ワレメの奥から流れ出て来る体液は、白く濁ったものなのだった。
 もちろん、愛液はピストンにかき混ぜられ、白い泡立ちが固まりに変わったものがいくらかは付着している。そんな白さもありはするが、しかし膣奥から流れ出てきているものはそれではない。

 精液であった。

 健太は二度目の挿入でゴムを使わず、生挿入を行ったのだ。
 その精液が零れ出て、愛液と混ざり合いながら糸を引く。股のあいだでぷらぷらと揺れる二度目の糸は、今度は床のタイルに到達して、そこで初めて千切れて消失するのであった。

     *

 中出しされた。
 そのショックを受けたのは、絶頂の余韻から立ち戻って、実に数分後のことで、かなりの後出しで生挿入に気づいていた。もう射精が済んでしまっている状態で、今更になって快楽の度合いが異なっていた理由に気づき、一体どの時点で注意したり、抵抗すべきだったのかについて思い知っていた。
 もう、遅い。
 出された後になってしまっては、今日が安全日であることを祈るしかなかった。
 しかも、その後もデートは続いた。

「へえ、似合うじゃん」

 水着コーナーでの試着であった。
 あれから、アソコにローターで蓋をして、膣内に精液を収めたまま歩かされ、その上で辿り着いた水着ショップでの試着である。
 試着室のカーテンの内側で、唯華は気もそぞろに着替えていた。
 店員に声をかけられ、オススメの水着を渡された上での試着で、やはり姉弟だと思われているわけだが、水着ショーツを穿くにあたって、唯華のアソコはあまりにも汁気が多い。まだ買っていない商品を汚すことは確実で――もちろん、後で金は払うが、これから非常識なことをしてしまうことになる。
 健太に強要されてのことではあるが、店員にそんなことはわからないだろう。
 それでなくとも、女には生理といった事情がある。
 こうしたものを試着するなら、インナーショーツがあった方がいいのだが、そんな用意はしていない。健太の命令により、素肌に直接穿くことになっている。汚すとわかっていながら、白い水着を――。
 着替えを済ませ、カーテンを開けた瞬間の、店員のぎょっとした顔といったらなかった。
「あの、これはどういう……」
 店員は引き攣っていた。
 すぐさま怒鳴ったり、声を荒げたりしないよう、極力理性を保とうとはしていたものの、明らかに怒りが滲み出ていた。非常識に対する信じられない気持ちがいくらでも溢れた顔で、今にも怒りに震えそうな声を抑え、無理にでも営業スマイルを保っていた。
「お客様。試着の際は内側に何かお穿きになって頂かないと――」
「す、すみません……」
 下を向き、店員の顔をまともに見ることもできない唯華に対して、健太はそれをニヤニヤと嬉しそうに見守っている。
「全て汚されたのですか?」
 冷たい声だった。
 唯華が試着したのは一着だけでなく、あと二着ほど、黒と水色を試している。どのどちらも素肌に直接穿いており、体液を染みつかせてしまっているのは言うまでもない。
「…………すみません」
 情けなくて、情けなくて、本当にたまらない。
 一体、何歳なのかと、何を恥ずかしいことをしているのかと、本当に自分でも思っている。それもいい歳をしてマナーを守れない、大人にもなって箸をきちんと使えない、そういった種類の恥ずかしさだ。
 この程度の常識など、本来なら当然のように持っているのに、店員には唯華の事情などわからない。わからないから、この年齢にもなって非常識なことをしたと思い込み、その前提で苛立ちを見え隠れさせている。
「すみません! 全て買い取りますので!」
 しかも、健太が頭を下げた。
「な……!」
 その深々と下げた頭を見て、むしろ唯華の方がぎょっとするのだが、ただ庇うためだけの謝罪ではないことはすぐにわかった。
 姉と弟を見比べていた。
 いい歳をして、バイトも経験しているはずの唯華と、まだ顔があどけなく、小学生に間違われてもおかしくない健太を見比べているのだ。明らかに視線を往復させ、店員の浮かべる信じられないものに対する眼差しは、ますますのものとなっていた。

     *

 そして、その帰り道。
 唯華は職務質問をされていた。
「その格好。あなた非常識よ?」
 婦警に説教までされていた。
 水着ショップで恥辱の時間を過ごした後、自分自身で汚した水着を買い取って、その帰り道で健太にこう命じられたのだ。シャツを脱いだ状態で上着を着て、ボタンをギリギリまで外した露出狂じみた格好で歩けと強要された。
 その結果として、唯華は谷間を見せびらかして歩いていた。
 コートの内側に裸を隠し、人に全裸を見せつける変態が世の中には存在すると聞いたことがあり、ジャケットに乳房を隠した今の自分は、その変形だと思っていた。
 谷間の出し方は、セクシーなファッションという領域には収まらず、少しでも布がずれたら乳首が見えかねないほどにまで、中身を出し切ってしまっている。谷間のかなり内側までを露出して、際どい位置まで左右に開いて歩く姿に、たまたま通りかかった婦警のぎょっとした顔といったらなかった。

「あ、あなたねぇ!」

 と、声を荒げて迫ってきて、職務質問をされることになり、服装の非常識について散々に説教をされていた。
 だいたい、下着はどうしたのか。
 あなたは本当に人に見られて喜ぶ露出狂で、だからこういう露出度で歩いていたのか。セックスアピールにも限度や節度があるはずだ。そういったことをくどくど言われ、唯華は始終頭を下げたまま、すみません、すみませんと繰り返すばかりであった。
「だいたい、乳首まで見えて……!」
 さらに情けないことに、健太の対応が介入したのだ。
「ごめんなさい! 僕が変なことを言ったからなんです!」
 必死になって庇い始めた。
「セクシーなお姉さんが好き、エッチっぽいお姉さんが好きって言ったから、僕のためにこんなことをしたんです! 僕のせいなんです!」
 庇っているようでいて、絶妙に庇っていない。
 婦警の唯華に対する視線は、ますます訝しげなものとなり、このまま手錠を出してくるのではないかと、本気で心が冷え込むくらいであった。

     *

 翌日になって、唯華は一つの動画を見ていた。
 健太の家に呼ばれた上で、ノートパソコンで再生するものを視聴するため、椅子に座らされている形であった。

『私は……志波姫唯華は、永遠に……健太さまの奴隷です…………』

 みっともないといったらなかった。
 動画の中にいる唯華は、今にも泣きそうな顔で無理にでも笑顔を作って、引き攣った笑いでがに股のポーズを取っていた。ちょうどよく腰を落として、がに股の上でのダブルピースは、まさしくカニさんごっこと言えるだろう。
 その上で、放尿までしているのだ。
 下に洗面器を置いているとはいえ、真下に向けての放尿がびちゃびちゃと滴の音を立てている。それが動画の音として、今はノートパソコンの中から唯華の耳を打ちのめすが、これをやっていた最中は、カメラを持った健太が心の底から満足そうな顔をしていた。

 もう、奴隷なのだ。
 後戻りなど、もうできないのだ。
 きっと、これからもずっとずっと……。



 
 
 

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