媚薬を飲まされてから、フィアメッタは全身を愛でられていた。
楽しげに体中を撫で回し、飽きもせず愛撫してくるヴィーヴル女の手つきに対して、フィアメッタは延々と我慢を続けている。今のところは肩を撫でたり、頬に触れたり、へその周りを触ったり、まだまだ肝心な部分は避けている様子だ。
しかし、胸に触れたり、アソコに手を出してくるのは時間の問題だろう。
フィアメッタは目を瞑り、悪い夢を見ていると思いながら辛抱強く堪えていた。
何分も何分も、一体いつまでこの時間は続くのかと思いながらの、終わりの見えない我慢の中で、体内には媚薬成分が駆け巡る。即効性ではなかったものの、時間の経過に合わせて徐々に効果は現れていた。
時間が経てば経つほど、表皮を掠めていく指先が心地良く感じられるのだ。
(なんで……)
触られている最中に、ヴィーヴル女の乳房がフィアメッタの乳房に何度もぶつかり、ブラジャー同士が擦れ合う。お互いに色は白だったが、その白と白の繊維が擦り合うたび、内側にある乳首にも刺激は伝わり、かすかな気持ち良さが感じられてしまっていた。
最初は何でもなかったのだ。
産毛だけを撫でようとする繊細なタッチだろうと、摩擦の刺激が乳首にまで届いてこようと、そのどれもが何でもなかった。無理矢理触られているのが最悪で、悔しさや恥辱感が湧いてならない、その感覚さえ除けば肉体的には何もなかった。
快楽など、間違っても感じていない時間は確かにあった。
指が触れれば触れるだけ、鳥肌が広がる一方なのが、先ほどまでのフィアメッタの感じ方であるはずだった。
だが、だんだんと変わってきている。
指先が肩へ置かれて、二の腕へとスライドしていく。その擦れる刺激一つで、何か甘い痺れが皮膚細胞の発せられたような気がしていた。
(なんで……気持ち良くなんて……)
冗談じゃない、感じたくなどない。
媚薬などというふざけたものが、本当に効果を現しているとでもいうのだろうか。
(ふざけないで……誰がこんな奴になんか……!)
そんな憤りを胸にしていると、今度は鎖骨を集中的に擦られた。指先だけを駆使した繊細なタッチによって、皮膚を刺激し続けてくるヴィーヴル女の愛撫から、やはり甘い痺れが発せられ、快楽の気配は広がる一方だった。
上から触られている際の、足腰の挙動によって、膝や太ももが擦れてくる。種族の持つ尻尾が当たり、その摩擦で脛や足がやられてしまう。そんな刺激によっても甘い痺れは発生して、表皮に蓄積していくのだ。
かすかな痺れだ。
静電気よりもさらに弱い、あまりにも微妙な気配なのだが、それは蓄積する一方なのだ。
「ねえ、感じてきた?」
嬉しそうに、楽しそうに、ヴィーヴル女は尋ねてくる。
「ごめんなさい? それほどでもないわ?」
「あら、いい返事ね?」
人の強気な態度を見て、それはそれで嬉しいかのように微笑んでいた。
そして、そのまま愛撫は続き、痺れの蓄積も続いていく。一体、いつまでそうしているつもりか。本当に飽きないのか。本気でそう気になってくるほどに、あまりにも長々と、じっくりと撫で尽くしてくる中で、乳房やアソコにはまだ一度も触られていなかった。
(その方がいいけど、焦らしているつもり?)
フィアメッタは思う。
人の体を目当てにして、リスクを背負ってまで攫ってきたのだ。そこまでしておきながら、乳房やアソコに一度も触れずして終わるとは思えずに、ヴィーヴル女の長時間にわたる愛撫には疑問さえも蓄積する。
せめて恥部だけでも触られずに済むというなら、まさにその方が良い。
その方がマシなのだから、わざわざ言わずにいるものの、人を拉致してまで触るにしては、メインディッシュを一体いつまで後回しにするのだろうと本当に疑問になる。
(あれ……)
そのうち、フィアメッタは太ももを引き締め始めた。
まだ触られもしていないアソコに、それほどの快感は発していない。指が来れば気持ちいいかもしれないような、予感こそ出ているものの、決定的な快楽には至っていない。性感を煽られての感覚とは、また少し違った何かがあった。
時間が経ってくるにつれ、フィアメッタはそれが何であるかを理解した。
(ああ、トイレね……)
これは尿意だ。
思えば、朝起きたらトイレに行くのは普通のことだ。
太陽の光も差してこない、どこか地下かもしれないこの場所で、時計もないのに時間などわかりはしないが、起きたばかりといえばそうである。おまけに液薬も飲んでいるので、トイレに行きたくなるのも無理はない。
その時である。
「ねえ、トイレ行きたい?」
急に尋ねてきた。
「いきなり、何?」
「ちょっとモジモジしてるわよ? トイレ、行かせてあげようかしら?」
わざとらしい言葉と顔に、きっと恥辱を煽るためだとフィアメッタは感じていた。
「別に? 今はいいわ」
わざわざ乗ってやりたいはずもなく、フィアメッタはそっけない返事をする。
「じゃあ、触っていい? ア、ソ、コ」
「じゃあって、どういうことよ。どうせ抵抗できないんだから、触りたいなら勝手に触ればいいじゃない」
「あなたの同意を得てみたくて」
「そんなもの、するわけないでしょう?」
連れ去られ、閉じ込められて、薬で抵抗力も奪われている。
抵抗したくてもできないから、仕方なく触られ続けているにすぎないのに、わざわざ同意の言葉を発して、心で同意するはずがない。
「いいわ。今はその返事で」
「何が、今はよ」
今後どれだけ時間が経っても、心からの同意をする瞬間など決して来ない。アソコや乳房に触るというなら、フィアメッタの許可など気にせず、せいぜい勝手に触ればいい。
ヴィーヴル女の取る行為は、あくまで無理矢理触ってのものにしかなりはしない。本人の合意を得ての、正式に体を許してもらっての接触など、この状況でさせるはずがない。だというのに、意味ありげな笑みを浮かべて『今は』とは、何か企んでいることでもあるのだろうか。
フィアメッタは薄らと不安を抱く。
不安の中で延々と、やはり肩や腰への愛撫ばかりが続いていく。肋骨や太ももなど、様々な箇所を撫で回されはするものの、下着で隠す領域には、どうも決して踏み込んで来ないのだ。
そのうち、ますます尿意は強まる。
まだ我慢の範囲内だが、放出したい欲が強まれば強まるほど、フィアメッタは股に意識をやってしまう。太ももをモゾモゾと動かして、引き締めるかのようにしてしまう。
その瞬間だった。
「っ!」
フィアメッタは驚いたように目を丸めていた。
今の今まで、決して一度も触られることがなく、ブラジャーが擦れ合うのがせいぜいだった乳房へと、突如として手がやって来たのだ。優しげに包み込み、ふんわりとした手つきで揉みしだく。その軽やかなタッチを浴びた途端、乳房の中にはムズムズと、何か細胞をくすぐるような感覚が満ち溢れていた。
「気持ちよさそうな顔」
そして、ヴィーヴル女は言ってくる。
「だ、誰が……!」
「あら、焦った?」
「くぅ……!」
フィアメッタは悔しげに、怒りの眼差しを向けながら、ぐっと歯を食い縛る。誰がお前なんかの手で感じるものかと、強く訴えんばかりの表情に対して、ヴィーヴル女が浮かべるものは、楽しそうな嘲笑うような表情だった。
*
媚薬の効果が現れていた。
乳房を揉んでくる手の平から、今までとは比べものにならないほどの、快楽の電流が発生している。ピリピリと、神経が内側から痺れる感覚に乳房は満たされ、フィアメッタの胸は甘ったるい感覚に犯されていく。
「んぅ……」
声すら出そうだった。
胸の細胞がどうにかなって、乳房が弾けるかと思うほどの、強い快感にフィアメッタは驚きすらしていた。
(本当に……媚薬の効果が出ているなんて……)
「いい声が聞こえてきそうね」
「う、うるさい……!」
「無理しないで? 声、出してもいいのよ?」
「誰が……」
「ああ、そうそう。トイレ、行きたい?」
「だから……うるさい……!」
ブラジャーを包み込む手の平一つで、翻弄されそうにすらなってきている。
冗談じゃない。
誰がこんな奴の思い通りに、このヴィーヴル女が喜ぶような顔や声を晒すものかと、ぐっと堪えんばかりの表情で、フィアメッタは唇をしっかりと引き締める。
だが、ただ胸が気持ちいいだけではない。
(トイレ…………)
尿意も急速に強まっている。
(利尿剤も混ぜてあるのよね)
と、そんな事実をフィアメッタは知りもしない。
本人としては、ただ純粋に水分を摂ったから、こうして尿意が湧いているものと思っている。こんなことまで目の前のヴィーヴル女のせいであるとは知ることなく、決壊の迫る切ない感覚に危うさを感じ始めていた。
さすがにずっと我慢などしていられない。
「ねえ、どうしたい? トイレ、行かせてあげようか?」
「…………お願い」
無念であった。
この煽らんばかりの顔に対して折れてやるなど、いかにも屈辱的な話であったが、だからといってお漏らしをするものどうなのか。その方がよほど情けなくて恥ずかしいことを考えれば、背に腹は変えられなかった。
しかし、とはいえ後悔の念を抱かずにもいられない。
ニタァァァァ…………。
と、唇の形がU字にならんばかりに変形しての、恐ろしく歪んだ笑顔がそこにはあった。そんなものを見てしまっては、やはり意地を張っていたかったような気にもなってくるのだ。
「何がそんなに面白いのか、理解できないわ」
「ま、そうね。あなたはそうかもしれないけど、とにかく行かせてあげるわ?」
ヴィーヴル女は一度ベッドから離れると、アイマスクを持って来て、それを着けるように命じてきた。
なるほど、屋内の構造を把握させるつもりはないらしい。
「随分慎重なことね」
「用心はするにこしたことがないもの」
「まあいいわ。これくらい」
今までのプレイに比べれば、アイマスクなど対したことはない。
特に疑いなく自らの視界を塞ぐと、ヴィーヴル女に手を引かれていく形で、前も見えないままに歩かされた。アイマスクの厚みに遮断され、視界に光が入ることのないままに進むのは、いかにも不安で足元もおぼつかず、足取りはぎこちないものとなってしまった。
(十、十一)
役に立つかはわからなくとも、トイレまで何歩かかるか数えている。
たとえ目が見えずとも、少しくらいは把握度を上げておこうとしているうちに、やがてトイレの中に到着する。個室の中に入れてもらい、そこで始めてアイマスクを外す許可が出るのだが、一つ素朴な疑問があった。
「どうして一緒に入って来るの?」
ヴィーヴル女も一緒に個室に入った上で、便座に座るフィアメッタの前で、後ろ手に鍵をかけていた。
「何故って、見張りよ?」
「いい趣味ね。それも性癖の一つ?」
「さあ、どう思う?」
「どっちにしろ気持ち悪いし、気分も最悪ね」
「せっかくだから、性癖ってことにしようかしら? する時は少しだけ足を開いて、股が見えるようにして頂戴ね」
「本当に、とんだ変態ね」
フィアメッタは露骨に引きつつ、かといって今にも尿意は強まり続けている。便座に腰を下ろしていることで、体の方がもう我慢の必要無しと認識してか、ここまで抑えていたものが急速に崩れようとしていた。
急いで下着を下ろさなければ、穿いたままでもお構いなしに、すぐにでも尿が出て来そうな勢いだった。
(……するしか、ないわね)
人に見られながらの放尿など、生まれて初めてのことだった。
ショーツを膝の向こうまでずらしていき、お望み通りに股を少しだけ、本当に少しだけ開いた瞬間、すぐさま黄色い水は飛び出した。
ジョォォォォォォォォ――――。
勢いのついた水鉄砲が便器の素材を打ち鳴らし、そしてアソコにはヴィーヴル女の視線が遠慮無く注がれる。人の放尿など眺めて、一体何が面白いのか。本気で理解できずに顔を赤らめ、羞恥心に苛まれての放尿を行っていた。
ジョォォォォォォォォ――――。
フィアメッタ自身が思っていたより、ずっと量が溜まっていたらしい。
せめて、すぐさま途切れてくれればよかったが、なかなか止まる気配もなく、勢いを維持したまま放出は続いている。
ヴィーヴル女はしゃがみ込んでまで股のあいだを覗き込み、ニヤニヤと嬉しそうに視姦してくる。
ジョォォォォォォォ………………。
やっと、勢いが弱まり始めた。
着弾地点から響く水音は、徐々に小さくなり始めていた。
チョロ……チョロ…………。
やがて、途切れる。
普段のトイレに比べて、長らくかかってしまった放尿に、最後の最後までヴィーヴル女の視線は注がれ続けていた。一体、こんなものを見ることの、何が楽しいのかは理解できずに、しかし性器を見られた上、尿の出ている場面さえも目に焼き付けられるのは、本当にたまったものではなかった。
尿を出し切ったフィアメッタは、真っ赤に染まった羞恥の顔で、顔中を硬く強張らせ、唇の形をぐにゃりと歪めているのだった。
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