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 セールドという男は、彼女を初めて見た瞬間から、どうしようもない衝動に駆られていた。密かに計画を立て、その実行を画策していた。
 三十代半ばの中年であるセールドは、小太りの独身で顔立ちが悪い。そばかすとニキビに溢れた頬が膨らみ、鼻も団子のように大きい上、眼鏡がより印象を悪化させている。似合っていれば知的な雰囲気を醸し出すのが眼鏡だが、セールドがかけているのはフレームの分厚い黒縁眼鏡で、いかにも地味な印象を強めやすい。
 結果、冴えない太った独身として、誰からも一歩距離を置かれていた。
 外面は良く、仕事はきちんとしているので、決定的に嫌われているわけでも、付き合いにくい人物として疎まれるわけでもないが、女性からは結婚や恋愛の対象として見做されない。
 悪い人ではないけど、付き合いたくはない。
 そんな彼に対する評価のために、だから仲良くなりすぎず、下手に好意を持たれずに済むように、微妙な線を引くのがセールドの周囲にいる女性であった。
 だから、元より鬱憤は溜まっていた。
(チッ、どいつもこいつも……)
 持ち前の外面で、歪んだ一面を表に出すことはなかったが、腹の底では女性に対する罵詈雑言に事欠かない。

 どうせ、駄目な男とでも思ってるんだろう?
 まだ結婚してないなんて、実はヤバイ奴みたく思ってるんだろう?

 ただ内側に閉じ込めているだけで、仕事や手続き、店での買い物や親戚など、女性と顔を合わせたり、少しでも口を利く場面があるたびに、歪みきった言葉を心の中では呟いている。
 被害妄想というべきか、セールドの感情は実態に比べて盛られている。
 外面のおかげで、少なくとも悪い人とは思われていない。ただ恋愛対象にしてもらえず、つまりモテないという一点に尽きるのだが、そのモテない現実こそが鬱憤として蓄積され、周囲の女性に対する気持ちを盛ってしまっている。
 どうせ見下しているに違いない。どうせ蔑んでいるに違いない。
 そういった被害妄想まで引き起こし、とはいえ今の今まで、それを決して表に出したことはない。満面の笑みを作り上げ、男女を問うことなく全ての人間に丁寧に接していき、教師としては信頼を勝ち取っていた。

「付き合いたくはないけど、子供が出来たらあの先生のところに行かせたいものね」

 と、そんな評価がありもする。

 ――ふざけるな、見下しているくせに。

「教え方も上手だし、まあ仕事熱心なのは認めないとね」

 ――なら男としても認めろよ! このクソアマが!

 モテない現実は、彼の内面を歪めていた。
 いくら表に出すことがないとはいえ、被害妄想のあまりに、評価の声さえ素直に受け止めることができない。それが同性の言葉ならいざ知らず、女性となるや不信感が先に立ち、どうせ褒めているのは口先だけで、本当は悪く思っているに違いないような考えが膨らんでしまう。

 そこへ現れたのが彼女であった。

 この島に来たばかりの、島の人々についてまだ何も知らない彼女なら、セールドについて真っ当な評価をするかもしれない。他の女どもと違い、太った独身に対する偏見もなく、きちんと男として認めてくれるはず。
 そういった願望もさることながら、彼女は美しかった。
 まず、瞳が綺麗だった。
 その青い瞳は単なる青ではなく、エメラルドの輝きを織り交ぜたかのような、緑がかった色合いが宝石に見えてくる。
 それに金髪も美しい。
 腰まで伸ばした長い髪は、太陽の光を反射する時、黄金の輝きを放っている。ただの髪ではなく、実は金塊を魔法で加工して、髪に見せかけたようにさえ見えてくる。
 加えてスタイルも素晴らしい。
 細身のくびれた腰つきに、対して胸はとても大きく、尻も存分に膨らんでいる。服の上からも感じられるボリューム感は、上下どちらを見ていても、いつ勃起してしまうかもわからない。

 彼女の名はグレイス・トリビュレート。

 本島から派遣され、この小島にやって来た新しい教師である。

     *

 セールドの暮らす小島は、本島の周囲に小さく散らばるうちの一つに過ぎない。地図で見るなら大きな島を中心に、その四分の一にすら満たない面積の小島を四方八方に抱え、島々の集合体が一つの国として成り立っている。
 本島を首都として、小島で作られる特産品も経済を支える主力として重視され、数々の小島が経済圏で結ばれている。船の行き来で旅行者や旅人の出入りも多く、活発なのが多くの小島だが、セールドの小島は未だその仲間入りを果たしていない。
 誰からも見向きされず、ぽつんと取り残されているのがセールドの暮らす島だ。
 とはいえ、この島にも発展してもらおうというのが本島の方針で、近年になって様々な人材が派遣されてくるようになっている。その一環として現れたのが、今年から新しい教師として学校に配属されるグレイス・トリビュレートなのだった。

「グレイス・トリビュレートと申します。この度、この島の教員として配属されることとなりました。軍事教育を受けたことのある身ですので、読み書きの基礎以外にも、魔物や野党に対する自衛術、ひととおりの魔法の知識も揃えています」

 セールドは迎えの役を任されて、船を降りるグレイスを早速出迎えたわけなのだが、軍事教育を受けたと語るだけあり、敬礼がしっかりしている。
 彼女が目の前にいるだけで、思わず自分も軍属のような気になって、敬礼には敬礼で返しかけていた。
「はじめまして、セールドと申します。この島の案内や学校の説明に関しては、基本的には僕に任されていますので、これから何でも尋ねてください」
 もちろん、外面の良さを買われてのことなのだが、内面の歪んだセールドは、内心では思っている。
 どうせ、女に手を出す度胸なんてないから、任せても問題ないって腹だろ?
 そんなねじ曲がった解釈を腹の底には抱えていた。
「感謝します。セールドさん」
 グレイスは握手を求め、右手を差しだして来る。
 それにはセールドも感嘆した。
(そうだよな……)
 彼女はこの島に来たばかりで、島民やセールドについて何も知らない。まだ偏見を抱くこともなく、相手がセールドだろうと誠実に接してくる。
(これはいい。いい気分だ!)
 セールドは満面の笑みで握手に応じて、早速案内を開始した。
 といっても、船旅で疲れたであろうグレイスには、まず手配済みの住居を案内した。休憩時間を与えた後に島内を共に歩いて、露店通りや畑など、主立った箇所を案内する。狭い島なので畑の面積も露店通りの面積も限られており、人口も数百人がいいところだ。
 そんな小さな島なので、教員は常に数人しかおらず、今年に至っては三人だった。
 グレイスで四人になるが、逆に言うならそれで事足りてしまうほど、人口の少なさと共に子供も少ない。
 初日は案内のみで一日を終え、夕方には切り上げ休んでもらう。
 翌日からは木造建築の小さな学校に来てもらい、どんな仕事を任せ、子供達には何を教えて欲しいかの、基本的な事柄について教えていく。
 彼女は働き者だった。
 仕事の要領をすぐさま掴み、教え方も上手かった。初めて教師をやるとは思えないほど、極めてわかりやすく数学の解説を行う上、魔法や剣術の実技でも、多くの子供達を「あっ」と言わせて信頼を勝ち取っていた。
 これほどの人材がいてくれれば大いに助かる。
 首都の政治が目論む通り、この島でも将来優れた子供が活躍して、国はより発展していくことになるのだろう。
 もっとも、彼女は徹夜が多かった。
 どうも真面目に入れ込む気質で、完璧主義というべきか、それとも丁寧すぎると評するべきか。投げやりになりきれず、根を詰めすぎてしまっている。適度に手を抜く方が、かえって能率は維持できるものだとセールドは思うが、グレイスはそういった多少のいい加減さにも目を瞑れないらしい。
 もっと良い授業ができたのではないか、もっとわかりやすい教え方はなかったか。
 授業のやり方について日常的に頭を悩ませ、首都に提出すべき書類にも熱を入れている。彼女の使命はこの小島の発展であり、それを教育の観点から行っているわけなのだが、何をどう良くしていけるのか、未来にかけてまで考え込んでいる。
(本当に真面目なこった)
 真面目なのはいいことだ。
 だが、それが必ずしも良い結果を生むとは限らない。
 日常的に徹夜して、夜中まで書類と向き合っている彼女には、付け入る隙などいくらでもあった。

     *

 グレイスは机に突っ伏したまま、頬をべったり押しつけ眠っていた。
 その姿を確認するなり、すぐに声をかけてみたり、肩を揺すって確認するが、どうやら起きる気配はない。
「成功だね」
 セールドは彼女に睡眠薬を飲ませたのだ。
 日々の徹夜を労うフリをして、コーヒーを煎れて差し入れにしたところ、そこに怪しい薬が入っているなどとは、グレイスは疑いもしていなかった。彼女が確かにコーヒーを飲み、薬を体内に取り込んだところを見届けると、セールドはしばしの時間を空けてから、頃合いを見計らい、職員室に戻ってきた。
 薬が効き、確かに眠った様子を見て、セールドはほくそ笑むわけだった。
「では頂くとしようか。ね? グレイスちゃん」
 彼女は自分などより遥かに優秀で、セールドの持つ実績さえも、今に塗り替えられるだろう。
 グレイスのことは好ましく思っていた。
 だが、モテない彼にはスタイル抜群の若い娘は刺激が強く、その優秀さで劣等感まで煽ってくる。今までの人生で蓄積され、いつか晴らしてやりたくてたまらなくなっていた鬱憤のこともあり、セールドはとうとう弾けてしまったのだ。
 良心という名の蓋に閉じ込めきれず、悪い心が外へと漏れた。
 その結果として犠牲になるのは、何も悪くないグレイスである。
「どんな味がするのかな? グレイスちゃんは」
 天井の照明に指を向け、パチリと鳴らす。
 魔法式の明かりを消すことで、建物の外へと漏れる光をなくし、その変わりに蝋燭の小さな明かりを灯した。もちろんカーテンやドアの全てを閉めた上、誰かに偶然気づかれる可能性を少しでも減らして取りかかった。
 腕を肩に担いでどうにか運び、ソファの方へ座らせると、まずは美しい顔立ちをじっくりと眺めてやる。
「綺麗なもんだ」
 人形のように整った顔立ちは、日頃は鋭いツリ目で何かを見据え、強固な意志を宿して見えるが、眠ったところはそこらの娘と変わらない。安らかな寝顔で寝息を立て、呼吸と共に乳房を上下させていた。
 今日のグレイスの衣服は上下一体のワンピースだ。
 その胸が大きく膨らんで、内側の谷間の線が少しだけ見えている。本人は多少セクシーなファッションにしてみた程度のつもりだろうが、こんな一センチ程度の谷間のラインも、セールドにとっては刺激が強く、たまらないものだった。
「ああ、いいなぁ……ずっとこうしてみたかったよぉ……」
 セールドは全身をまさぐった。
 おそるおそるの手つきで頬に触れ、ふんわりとした柔らかさを堪能すると、うなじや二の腕にも手を滑らせ、腰のくびれに太ももと、至る所にかけて撫で回す。手の平で全身を味わい尽くし、当然のように胸も揉む。
 とても柔らかかった。
 ワンピースの生地の下には、ブラジャーのカップの感触も挟まって、二重の布を介して感じる柔らかさであったが、実にまろやかな触り心地だ。揉んでいるうちに病みつきに、みるみるうちに目が血走り、より一層のこと抑えきれなくなっていく。
 次の瞬間、セールドは抱きついた。
 つい先ほどまでは、まだしも理性が残っていた。
 もちろん、この手の犯行に及ぶ時点で理性的とは言い難いが、睡眠薬を使っているとはいえ、急に起きたらどうしようと思う慎重さが残っていた。起こさないように気をつけて、焦りすぎずに楽しもう。といった形での理性はあったが、それさえ弾けて消えてしまった。
「あぁ……! グレイスちゅわーん!」
 夢中になって両腕に力を込め、抱き締めながら匂いを嗅ぐ。
 耳に鼻を近づけて、髪から漂う香りを必死になって吸い上げながら、頬や首筋をベロベロと舐め回す。皮膚に吸いつき、唇も奪って貪り尽くす。
 そして、いよいよ服を脱がせにかかった。
 まずは床に膝をつき、グレイスのロングブーツを脱がせ始める。
 ソファから降りた両足に向き合って、床に膝を突きながらの、こんな状況でなければ召使いが女王に従って見える形で、セールドはブーツの金具を外す。ベルトパーツによる締め付けを取り除き、片足ずつ脱がした次には、すぐに靴下も奪い取る。
 生足が出て来た瞬間、セールドはすぐに両手で舐め回した。
 かかとを手に乗せ、持ち上げて、小指から親指にかけて順々に、一本ずつしゃぶって舐め回す。
 もしも彼女に意識があったら、一体どれほど怖気が立っていたことか。
 しかし、目覚めることのないグレースは、されるがままとなり続ける。もう片方の足が持ち上がり、同じように指を一本ずつしゃぶられても、起きる気配など見せもしない。両足共々、指の一つ一つに唾液をまぶされ、それが皮膚に浸透していた。
 股間に衝動が溜まっていく。
 最後まですることなど、初めから目論んでいたことだ。
 だが、獣になり果てたセールドは、計画通りの手順を踏むというより、衝動を抑えきれないかのようにワンピースを脱がせにかかる。腰に巻かれたベルトを外し、下に引っ張る形で脱がせていく。
 上から順に剥けていく形となって、徐々に肌をあらわにして、グレイスは下着姿となっていた。
 綺麗な下着であった。
 その清楚な白色は、雪景色のような純白をベースにして、銀色の糸で刺繍模様を刻んでいる。花柄が光を反射してキラキラと輝きながら、ブラジャーからは乳房の上端を覗かせる。
 セールドは生唾を飲んでいた。
 ますます血走った目で、次は下着の中身を見ようとブラジャーから外しにかかる。背中の後ろへ両手を回し、抱き締めるようにしながらホックを指で探り当て、それをパチリと外した瞬間、すぐさまブラジャーを取り上げる。
 ぷるんと大きく瑞々しい、実に綺麗な果実が現れた。
 すべすべとした肌つやが丸みを帯びて、ほどよい球体となったそれは、ピンク色の綺麗な乳首を輝かせる。
 セールドはそれを揉む。
 魅了され、何かに憑かれたように必死になって揉みしだき、乳首に吸いつく真似まで始めていた。乳房の先端を口に咥え、口内で踊らせる舌により、執拗なまでに乳首を弾く。激しいまでに乳輪をなぞりつける。
 文字通りに乳を味わいながら、今度はショーツに指を入れていた。
 それをひと思いに一気に脱がせ、両肩で足を担ぐようにして股を開かせ、綺麗に閉じ合わさったワレメをじっくりと観察する。
「綺麗だぁ……はぁっ、あぁ……!」
 陰毛も丁寧に短く切り揃え、見栄えのよい三角形に整えてあるところ、見えない部分にかけても気を遣う性格なのか。指でワレメを開き、赤い肉ヒダを覗き見ると、なんと彼女は処女だった。
 毛に手入れをしてあるなら、相手がいるのではという可能性が頭を掠めたわけだったが、その膣口には白い膜のような、ヒダ状のものが張っている。男を一度も受け入れたことがない、逸物による拡張をされたことのない穴に、セールドはますます酔い痴れた。
「そっかぁ……君はまだぁ……」
 ということは、自分が彼女の初めての相手だ。
 そう思えば余計に興奮が高まって、鼻息も荒くなっていく。
  セールド自身も服を脱ぎ、裸となって挿入を試みた。ソファの肘掛けに乗せる形で開脚させ、M字となった股の中心目掛けて亀頭を押しつけ、少しばかりきつい穴へと差し込んでいく。
 まずは切っ先が穴の入り口に引っかかる。
 それだけで一気に快楽がせり上がり、精神的にも高揚していた。
「よし……このまま……!」
 さらに腰を押し込んでいく。
 先端をミリ単位で埋め込んでいた肉棒は、その亀頭をさらに奥へと埋めていく。結合部を見下ろすと、自分自身の棒が徐々に収まり、グレイスの処女を奪っている様子が目に留まる。亀頭を全て埋めきって、さらに竿の部分にかけてまで沈めていくが、最後の最後になってなお、彼女に起きる気配はない。
 あとはもう楽しむだけ楽しむのみだ。
 根元まで収めた高揚感に囚われながら、セールドは一心不乱に腰を振り、激しい快感を凶器の眼差しで味わい始めた。
「おおおおおっ、いいっ、いいよぉ!? グレイスちゅわーん!」
 激しい腰振りだった。
 快楽に病みつきに、夢中でピストンしているセールドは、自分自身の竿に付着する破瓜の血に気づかない。いや、気づいたとしても、今の彼はそれさえ興奮の一部にしてしまう。出血を見ることで、処女を奪ってやった実感を強めるのだ。
 破瓜の血は少量だった。
 それはすぐにでも愛液で色が薄まり、さらには肉棒の皮膚に擦り込まれ、赤みを薄めて消えていく。
 その頃にはすっかり滑りが良くなって、肉棒の出入りはスムーズだった。
「あっ、あぁ……あぁぁ………………」
 グレイスも喘いでいた。
 自分が強姦されているとは夢にも思わず、何も知らない安らかな眠り顔のまま、呼吸だけを色っぽく乱している。
「セックスの夢でも見てるのかなぁ?」
「んっ、んぅ…………」
 苦悶が浮かぶ。
「それじゃあ一緒に気持ち良くなろうねぇ?」
 その苦悶も、セールドにとっては興奮のスパイスだ。
 痛みで顔が歪んだ可能性など、彼は微塵も考えていなかった。

 腰振りが激しくなる。

 セールドは全力で肉体を酷使して、グレイスの処女を懸命に味わっていた。
「へへっ、初めてなんて……! 一回きりだからねぇ……!」
 興奮のままに膣を貫き、その時だった。
「おっと」
 セールドは急に腰を引く。
 肉棒が抜けたと同時に精は弾け、グレイスの全身に白濁は振りまかれる。乳房のあいだにべったりと、多量に付着したものが皮膚を伝って流れ落ち、ヘソに向かっての筋を伸ばしていた。
 よく見れば、胸だけではない。
 気づけば顎や頬にも届いており、とろりとした粘液の固まりがいくつも細かく付着していた。
 体中、今の一瞬で精液まみれだ。
「は……はは……これは……」
 セールドは震えていた。
 それは決して、危うく膣内に出しかけたことに対してではない――それに気づく前までなら、さすがにドキリとした感覚が胸に残っていたかもしれないが、精液濡れのグレイスを見た時から、僅かにあった良識や罪悪感は消え去っていた。
 こんな形で無理にでも性交しているセールドにも、妊娠のリスクだけは背負わせまいとする気持ちだけは残っていたが、もはやそれさえ立ち消えだ。
 セールドは魅了されていた。
 もっと、もっと、全身を余すことなく精液まみれにしたい衝動に駆られ、そのために再び肉棒を差し込んでいた。
「へっ、へへ! 汚してあげるね! グレイスちゅわーん!」
 激しく腰を振りたくり、膣を貫く快感に酔いしれる。
 やがて射精感が高まって、達する直前に引き抜くのは、あくまでも欲望のためだった。中出しを避けるというより、美しい体を精液で汚してやりたくて、セールドは亀頭の噴火を撒き散らす。
 鼻のてっぺんに付着した。前髪に染み込んだ。唇にかかったものは、そのまま隙間に流れ込み、首や鎖骨にも降りかかる。肩に、二の腕に、手首に付着する。膝に、太ももに、ヘソ周りに付着する。
 ありとあらゆる箇所が汚れていき、それをさらにもう一段階穢そうと、セールドは無我夢中で挿入した。
 そして、激しく打ちつける。
 鋭い腰のスイングでグレイスに自身の身体をぶつけると、その勢いでごく僅かに、ほんの一センチかその程度、グレイスの身体は弾み上がった。それに伴い乳房が上下に揺れる有様に、セールドは血走った目で肉杭を打ち込んでいく。
 せっせと行うピストンで乳揺れを目に焼き付け、数分の末にまた射精感が高まって、白濁を撒き散らす。
 既に十分に精液まみれの有様だったが、まだ汚れていなかった箇所にも降りかかる。もはや白いペンキをバケツに溜めて、それをかけてしまったかのように、より一層の精液にまみれたグレイスからは、青臭い香りが漂っていた。
 さらに、セールドはソファの上に立ち上がる。
 既にグレイスが腰を下ろして、スペースの限られたところに足を置き、どうにかして立ったところで、さながら咥えさせようとでもするように肉棒を突き出していた。
 もちろん、フェラはさせられない。
 眠っている以上、顎の開閉にも限度はあるが、しかしセールドは唇に亀頭を押しつける。口紅を塗ってやるように肉棒を動かしながら、今度は自慰行為によって精液を解き放つと、僅かに開いた唇の隙間へと流し込む。
 飲ませることが目的だった。
 体の表面だけではなく、体内まで汚してやりたかった。
 その目的を果たした高揚感を忘れぬまま、セールドはカメラを手に取って、ありとあらゆる角度から彼女を写す。全身は言うまでもなく、乳房や股間、顔や脇、細かな部位のアップに加え、性器を指で開いた中身を撮る。肛門にまでシャッターを押した上、頬に亀頭を押しつけた状態の写真を撮る。挿入した結合状態の写真を撮る。
 思いつく限り、様々な写真を撮った。

 …………
 ……

 そして、翌日。
 何事もなかったように、グレイスはいつも通りに職員室で仕事をこなしている。
 あれから、精液はきちんと拭き取り、服を着せ直しておいたのだから、まさか自分が知らないうちに犯されているとは、夢にも思っていないだろう。
 だが、セールドの手元には写真がある。
 あの数々の写真を見れば、いつでも思い出が蘇るのだ。

 それだけに留まらない。
 一度成功体験を得て、味を占めた人間は……。

 …………
 ……

 グレイスは戦慄した。
 ある日、急にセールドが捕まったのだ。
 物腰丁寧に町の案内を行って、仕事についても教えてくれたあのセールドがだ。確かにあまりモテないらしく、女性との深い縁はなかったのかもしれないが、信頼できる人物と見ていたグレイスにはセールドの逮捕は衝撃だった。
 どうやら、女性に睡眠薬を飲ませ、途中で目を覚ましたらしい。
 薬の量が足りなくてか、薬効耐性があってのことか。魔法による加護という可能性もあるが、とにかく女性は目覚め、大慌てで抵抗を試みたという。
 その結果、魔法力で劣ったセールドは争いに敗れ、そのまま身柄を警察に引き渡されることになる。
 それを知ったのは、ある朝になって校長が血相を変え、震えた声で報告してきてのことだった。
 その日のうちに島の新聞を読んでみれば、警察は余罪を追及しており、他にも強姦した女性はいないか調べを続けているという。もっとも、被害者の尊厳を守るため、犯された女性の名前や種族、髪や瞳の色さえ公開しない方針らしい。
 ということは……。
 もしもグレイスが犯されていて、知らぬ間に処女を失っていたとしても、それはグレイス自身にはわからない。
 思い出すと身震いする。
 考えてもみれば、あの貰ったコーヒーを飲んだ後に眠くなり、気づけばソファで目を覚ましていた。眠気覚ましのはずのコーヒーで、どうして眠気に耐えるどころか、逆に眠ってしまったのか。
「まさか……」
 いや、きっと違う。
 そんなこと、あって欲しくはない。
 だが、その可能性は確かにありえるものであり、否定するための材料は何もない。
 何も……。
「……いいえ、忘れましょう」
 それしかなかった。
 自分が被害に遭ったか否かの判断がつかないのなら、きっと何もなかったことを信じて、これからも前向きにやっていくしかない。
 切り替えていこう。
 暗い気持ちは切り捨てて、やるべきことをやっていこう。
「そうね。彼が抜けた穴はだいぶ大きいわ。どうあれ働き者には違いなかったのだから、代わりはそう簡単には見つからないでしょうね」
 しかし、新たに代わりの教師を見つけ、今度はグレイスが新人を教育しなくてはなるまい。
 やるべきことを考えれば、落ち込んでいる暇などないのだ。
 前向きに、やっていこう。



 
 
 

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