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 今日、プロデューサーが迎えに来る。
 彼に心配はかけたくない。
 二人はどうにか立ち直ったフリをして、一生懸命の笑顔で出迎える。プロデューサーはそこに違和感を覚え、何かあるなら相談でもしてもらおうと、踏み込むきっかけを探っていたが、二人はそれをかわし続けた。
 あんな出来事を言えるはずがなかった。
 二人一緒に、あの過去は記憶の奥底に封印しようと約束して……。

 それから、数日後。

 二人のスマートフォンにとある動画のリンクが届く。
 それを見た透は、円香は、あの日の恥辱を思い出し、顔面蒼白になっていた。

「透と円香のイタズラ観光ガイド!?」

 URLの真上には、そんな題名のようなテキストが添えられている。
 リンクの末尾がmp4であることから、きっと動画が流れるのだと予感しながら、二人は恐る恐るそれを見た。
 スパッツの逆さ撮りが映っていた。卓球をしていた際のブラジャーがばっちりと映っていた。天守閣でショーツがもろに見える瞬間が映っていた。
 いや、それどころではない。
 URLは複数あるのだ。
 もう一つの動画を開いた時、そこに映っていたのは自然公園のアスレチックでジャングルジムに登っていた際のスカートだ。
 あの時、周りには誰もいないと思っていた。
 それが知らないうちに盗撮され、無防備な尻がチラチラと見えている。望遠カメラでもあったのか、よじ登っている最中のスカートが風に揺れ、尻の端っこが見え隠れするシーンが延々と流されていた。
 二つ目の動画は主に公園内での出来事が中心で、坂道を上がっていき、山頂に辿り着いた瞬間の強風時、スカートが派手に捲れた瞬間も押さえられている。
 そして、最後のリンクを開いてみれば、電車内での出来事が流れて来る。透けブラ、逆さ撮り、痴漢行為の数々に加え、ペニスを両側から頬に押しつけ、記念撮影を行った際の自分自身の顔さえ拝む羽目になる。

 ――誰かに言ったら、分かってるよね?

 最後の一文が恐怖を煽る。
 脅迫めいた言葉の上に、添付画像まで付いていたのだ。

 それは更衣室で着替えている際の盗撮写真だった。

 もうとっくに旅館を後にして、別の現場で着替えた際の写真である。
 彼ら四人は直接姿を見せることなく、影から付け狙った上で、密かに新しい写真を撮っていたのだ。
 ならば、今もどこかであの四人は円香と透の二人を探り、ストーキングを行っているのかもしれない。
 背筋が凍りついていた。

 あんな人達に、ずっと付け回されていなくてはならないのだろうか?

 そんな絶望感に包み込まれて、頬には一筋の涙が流れる。
 透は、円香は、このことを誰に打ち明けることも出来ず、ただただ必死になって意識の外に追い出して、気にせず普段通りに振る舞うことに命を賭けていた。
 あるいはその方がいいのだろう。
 人間の犯人なら、警察に行けばそれでも捕まるかもしれない。
 だが、二人は想定すらしていない。
 彼ら四人の正体も、決して捕まりようのない存在であるという事実も……。



 
 
 

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