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 今日はデートの予定がない。
 電話で声を聞き、メッセージアプリでのやり取りで気持ちを紛らわせ、会いたい気持ちを堪えて学校へ向かう。
(嫌だなぁ……)
 こうして学校へ向かう途中や、抱かれる直前までのあいだは、憂鬱な気持ちが溢れてくる。
 しかし、いざその時間が始まれば、この肉体を知り尽くす先生の、巧みな手練手管によってたちまち溶かされ、体中がセックスで悦び始める。
(嫌だ……)
 校舎に入り、時間通りに先生の元へ訪れた瞬間から、自分のよがり狂う未来が決定されたかのような気になって身が竦む。
 処置室へ向かい、お互いに服を脱いで準備に入る。
 裸になることに抵抗はなかった。
(もう慣れちゃったんだ……)
 最初は恥ずかしかった脱衣も、繰り返し抱かれるうちに平気になり、自分の一部が削り取られたような気がしていた。
「いくぞ」
 シャワーは普段から一緒に浴びる。
 そして、シャワーを済ませた後の先生は、ソファにどっしりと腰を下ろした。
 フェラチオの合図だ。
 もはや言葉がなくとも、目や表情による合図だけで、して欲しいことはわかってしまう。夢音はソファの前に膝を下ろし、床に正座しながら逸物に指を絡める。手で軽くしごいてペロペロと、まずは先端から舐め始めた。
 初めて奉仕を命じられた時は、排泄器官を口に入れるのは抵抗があった。
 その抵抗感もとっくに消えている。
 玉袋と竿の境目の、太い神経の浮き出た部分に舌先をぴたりと当て、レロォォォォォ――と、ゆっくりと舐め上げる。

 レロォォォ……レロォォォ……レロォォォ……レロォォォ…………。

 これをしきりに繰り返し、裏面にひとしきり唾液を塗りつけると、今度は側面を舐め上げる。右側からやっていくため、手で角度を変えて唇を押しつけると、こちらも同じように舐め上げていく。

 レロォォォ……レロォォォ……レロォォォ……レロォォォ…………。

 根元から這い上がり、亀頭の先端に到達するたび、また根元に戻って頂上を目指す。
 これを左側にもやってやり、肉棒のほとんどを唾液で濡らして輝かせると、次に行うのは玉袋への奉仕である。

 ちゅぱっ、ちゅぱっ、レロレロ……ちゅぱっ、ぺろっ、ぺろぉ………。

 吸っては吐き、吸っては吐き、舌を伸ばして玉をくすぐる。時には口内に含んだ上で転がして、手で優しく揉むような刺激も交えて睾丸を愛してやる。
 この処置室で起きることは、全て悪夢だ。ここでのことを現実から切り離すと、先生との関係も少しは楽になってくる。
 悪夢の中では、なるべく彼のことは考えない。
(俊樹……)
 しかし、ふとした拍子に発作的に顔が浮かんで、たまらなく申し訳ない気持ちになるのだ。

 ちゅぶぅ……ちゅぱっ、れろれろっ、れろぉぉ…………。

 玉袋にキスをして、丹念に愛するやり方は、全て先生に教わったものである。
 自分が先生の好みにカスタマイズされ、先生が楽しむために調整されているようで、とてもとても悲しくなる。
「はむぅぅ……ずっ、じゅりゅぅ…………ちゅっ、ちゅむぅぅ…………」
 心の中に涙を流し、先生の立派な肉棒を頬張り始める。
「ずぅ……ずぅぅ……ずじゅぅぅ……ずっ、はじゅぅぅぅ…………」
 右手で根元を握り支え、左手では玉袋をいたわってやりながら、頭を前後に動かして舌を懸命に蠢かせる。最初はゆっくり、しだいに活発に、夢音は肉棒への奉仕に努め、先生の満足そうな視線を浴びるのだ。
 背もたれに大胆に背中を預け、大きくふんぞり返った王様気分の先生は、生徒という名の召使いが行う奉仕を存分に味わっている。
 そのうちに目を瞑り、夢音は一心不乱に激しく首を振りたくった。

 ――じゅぽっ、ずぽっ、じゅずっ! じゅず! ずずぅぅ! じゅずぅ!

 首が疲れかねないほどにペースを上げ、口内に素早く出入りさせている。舌の上に乗った肉棒は、激しい前後摩擦を繰り返し、そこには傍目にはわからない口技まで駆使している。唇をほどよく窄め、リングがカリ首に引っかかるようにしているのだ。

 ――じゅずっ! ずずっ、じゅずる! じゅりゅぅ! じゅりゅぅ!

 唇のリングがカリ首に引っかかり、段差につまずくような刺激を与えつつ、勢いで誤って離さないように上手く亀頭を吸引する。接触を維持しながら、すぐさま奥まで頬張り直すのだ。
 技術まで身について、自分はどこまでカスタマイズされていくのだろう。
「そろそろベッドだ」
 だが、頭に乗った先生の手には軽い握力がかかってくる。
 射精というわけでもないのに、顔を逃がさないようにする時は、カウパーを吸い上げて欲しい時である。
「ちゅぅぅぅぅぅぅ………………」
 夢音はストローから吸い上げるかのようにして、鈴口から出たカウパーを口内に取り込み、舌でかき混ぜ唾液と合わせ、こくりと喉を鳴らして飲み干した。
 そして、夢音はベッドに移る。
 寝そべるなり、すぐさま先生による愛撫は始まり、手始めのように胸が揉まれる。夢音の反応を知り尽くしたタッチにより、乳首が立つまで一分とかからない。さらにアソコが熱くヒクヒクと疼きだし、触って欲しくてたまらなくなってくる。
(なんで……こんなにいいの…………)
 先生に対する愛情は欠片もない。
 だが、生理的な快感は望む望まざるに関係無く湧いてきて、ワレメへの愛撫が始まる頃には、性器の表面はすっかり愛液をまとっていた。指のあいだに糸が引き、クリトリスをタッチされればビクっと激しく腰は弾む。
 いつものように、ひとしきり気持ち良くさせられた上、きっとペニスに翻弄される時間を過ごすのだろう。
 何十分も、あるいは何時間も、先生は満足いくまで何回でも射精するのだ。
「んっ、んぅ! んっ、んんぅぅぅ…………!」
 指のピストンに喘がされ、絶頂の予感が迫り、イカされる瞬間に備えて身構えると、先生の指は不意に膣から抜かれていた。
「え………………」
 寸止めされた。
 こんなことは初めてだった。
「どうした? イカせて欲しかったのか?」
(好きでイキたいわけ……)
 心の中では否定するが、それを言葉や態度には出せなかった。
 それは目上に刃向かったり、強く意見を言える性格ではない点もあるのだが、それ以上に体が悦んでしまっている。イクと思ったら寸止めされ、焦らされるプレイに肉体が興奮している。
 先生の指愛撫が再開され、夢音は瞬く間にイキそうになっていく。
 そして、絶頂直前だ。

(ま、また……!)

 イカせてもらえなかった。
 どうして途中でやめてしまうのかと、夢音は反射的な視線を送っていた。お願いだからやめないでと、懇願の眼差しを向けた自分に気づき、夢音は慌てて目を背ける。
(駄目……そろそろ、堕ちちゃう…………)
 夢音は自分の運命を悟っていた。
 肉体が興奮して、とある一定のラインまで連れていかれると、全てを忘れてセックスを楽しむ自分が出て来てしまう。普段は深層意識に眠ったものが、先生の手練手管で表層意識に引きずり出されるかのように、夢音には快楽に堕ちる瞬間というものがある。
 逃げられないセックスに対して、逆にそれを楽しみ快感に乱れ狂う。
 そんな一面がいつの間にか形成され、スイッチが入れば現れるようになったのだ。
「イキたかったら、イキたいって言ってみろ」
 そして、そんな先生の言葉で夢音は理解した。
 先生は今、どういうことをしたいのか。
 焦らすだけ焦らして夢音を観念させ、夢音の口から懇願の言葉を引き出すプレイなのだ。
(……言わされる。何か、いやらしいこと)
 運命が既に確定しているように、夢音は全身を固くした。
 セックスを楽しむ自分は、先生の愛撫によって必ず引きずり出されている。ここ最近のセックスは全てそうだった。そんな先生を相手に耐えきれるはずがない。自分は必ずや先生の望み通りの台詞を言わされ――。

 ――性的に制圧される。

「夢音、これはまだまだお預けだ。もっと体を温めないとなぁ?」
 ワレメの上にペニスが置かれ、竿の熱気にアソコがヒクヒクと反応する。まるでご馳走を前にヨダレを垂らすかのように、じわっと愛液が滲みでて、シーツに染みを広げ出す。
 この数分後には、夢音は夢音でなくなった。
 もうセックスが気持ちいいことしか頭になく、いくらでも乱れ狂い、その上で寸止めされるたび、口を突いて出るのはお願いの言葉である。
「やめないで! 続けて下さい! 私……イキたいです……!」
 スイッチが入っていなければ、平時ではとても言えない淫らな台詞が平然と言えてしまう。
「駄目だ。もっとエロくて下品な言葉でおねだりしろ」
「や……恥ずかしい…………」
 それでも、僅かに残った羞恥心でそれを拒否する。
「なら、イカせてはやれないな」
「そんな…………」
 夢音の目には絶望が浮かんでいた。
 このままでは、一体いつになったら絶頂できるのか。もしかしたら、一度も挿入すらせずに切り上げられ、帰らされるのではと恐怖すら抱く。
(駄目っ、もう私おかしい!)
 妊娠するか否かが命に関わる以上、挿入してもらえない恐怖というのはおかしくない。
 だが、今の夢音が抱くのは、快楽をもらえずに終わる恐怖の方だ。それを自覚していることで、自分のおかしさに頭でも打ちつけたくなってくる。
 寸止めは続いた。
 夢音が観念するまで延々と、何回でもお預けは繰り替えされ、夢音はとうとう下品なおねだりの台詞を言わされる。
「い、言います……だから、イキたいです…………」
「オマンコにオチンポが欲しいと、そしてイカせて欲しいと言うんだ。いやらしく、下品な言い回しほどいい」
 夢音は自分が制圧されたと感じていた。
 性による屈服で、抗う気持ちを削り切られて、快楽に対する敗北をひしひしと感じていた。

「わ、私の……オマンコに、先生のオチンポを……下さい……。お願いします……私の中に、いっぱい射精して、私をイカせて下さい……お願いします……」

 辛うじて残っている羞恥心とプライドで声が震える。
 この直後の挿入で、天井を破らんばかりの激しい喘ぎ声を出したのは言うまでもない。
 しまいにはお礼の台詞まで言わされたのだ。

「私にたくさんの精液を下さり、イカせて頂き、本当にありがとうございます」

 言わされた上、お掃除フェラを求められた。
 屈辱に苛まれるようでいて、淫乱のように夢中でしゃぶり回した自分がいた。淫らではしたない、性に汚い自分が確かにいた。
 その帰りだった。
 数回の膣内射精が済み、制服に着替えた夢音は、処置室を出る直前にこう言われた。

「それにしても、最近はマンネリ気味だな」

 ふざけるな、と。
 言えはしないが、心の中ではそう思った。
 先生とは制度上の処置でセックスをしているだけで、好き合っているわけでも何でもない。マンネリだから新しいことを試すなど、そんな関係ではないはずだ。
「ここまでやって妊娠しない理由は、案外心因性の何かかもしれないだろう?」
「心の原因ってことですか?」
 不妊症ではないか。
 その悩みは、当の処置相手である先生にも、伝えるだけは伝えてある。検査を受け、特に問題はないと言われたことも伝えてある。
 そのせいか、先生は新しい何かを思いついたらしい。
「新鮮な刺激があれば、心因性の原因が取り除かれ、妊娠できるかもしれない。試してみる価値があるとは思わないか?」
「それは…………」
 命に関わる問題だ。
 大切なことである以上、決して無視できない提案であると同時に、一体どんなプレイを思いつく気であるのか不安になる。



 
 
 

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