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 マリーサは始終興奮していた。
 できることなら今すぐに自分の性器をかき回し、快感を貪りたいくらいであったが、いくらなんでも人前でオナニーを始めることはできない。検査後は鉱山内の探索があり、それにどれほど時間を費やすかもわからないのに、一人になれる機会がまだまだ先であることがもどかしい。
 しかし、自分自身も裸に剥かれたとはいえ、アリッサの痴態をここまで間近で拝むことができたのは収穫だ。
 マリーサは人知れず、アリッサにも気づかれないように、経営者の男に目配せする。こういう展開を見るために、彼とは既に交渉済みだ。マリーサ自身も全裸検査を公開することを条件に、事務的で真面目な取り組みを排除して、なるべく恥辱を煽ってもらった。
 交渉内容にはまだ続きがある。

 ビキニアーマーの装着だ。

 魔石の持ち出しを防ぐ観点から、鉱山側が用意した防具を身につける契約を既に交わしている。文面上は自前の防具着用を禁止しつつ、相応の効果を保証した装備を鉱山側が用意するとの契約になっている。単なる布切れが出てきたら、契約違反を指摘できるというわけだ。
 もちろん、あちらにそんな目論見はなく、ビキニアーマーもまたマリーサの仕込みである。マリーサが指定して、サイズも一致したものを、昨日のうちに準備していた。
「……なによこれ」
 現れた装備を前に、アリッサは何かを言いたげだった。
「こちらで用意した装備という契約でしょう?」
 経営者は得意げに言う。
「それは確認したけど、私達が魔物にやられでもしたら意味がないでしょう!? それとも、死体を転がすことがお望み?」
「とんでもない! 死者なんて出したくありませんよ!」
 打って変わって、経営者は慌てていた。
 仮にも魔物に頭を悩ませている中、そんな言われようは心外なのだろう。
「大丈夫よ? アリッサ。どうやら大気中の魔素を力に変えて、パワーもスピードも上がる魔法製の仕掛けがあるわ。これなら全身の皮膚も強化されるから、転んでも怪我はしないし、微妙な攻撃なら無傷でいられるわ」
「そうなの?」
 アリッサは疑わしそうな目で見てくる。
「そうよ? 私が保証するから、これでいきましょう?」
「えぇ……」
 露骨に嫌そうにしているが、こちらが強く出れば出るほど、アリッサが押しに弱くなることは知っている。他の人間のとは傲慢に見下しても、マリーサに対しては我が儘なお嬢様が鳴りを潜める。
 有無を言わさず装備を受け取り、早々に着替え始めてしまえばこちらのものだ。
「マリーサったら! ああもう、わかったわよ!」
 アリッサは観念した。
 いつまでも裸でいるよりはマシとばかりに、仕方なくビキニアーマーを受け取り、装着を開始する。
 見た目には防具としての用途を成すようには見えない。
 青いマイクロビキニの面積は、乳首を隠す程度までしかない。アソコの部分も際どいもので、Tバックの紐が割れ目に入れば尻は丸出しと同じである。同様のものをマリーサも身につけが、乳首は完全に隠れてくれた。
 もっとも、アソコに手を伸ばしてみるに、毛がいくらかはみ出ている。そこまで伸び放題ではないが、ここ数日は処理をしていないマリーサの陰毛とて長い。近くで見れば、いかにはみ出ているかは一目瞭然だろう。
 アリッサはそれ以上だ。
 まず、一辺の長さが五センチもないような三角形の面積から、焦げ茶色の大きな乳輪がはみ出ている。陰毛がマリーサより伸び放題で、遠目に見ても青いクロッチから金色の毛先が出て、さながらムカデの足のようにびっしりとなっている。
「まったく、とんだ格好をさせてくれるわね」
 文句たらたらのアリッサが経営者に非難がましい視線を送る。
 その後ろ姿を見てみれば、大きく膨らんだ肉厚の尻から、尻毛の金色が出ているのだった。
「申し訳ありません。これしかないもので」
「それがおかしいと思うんだけど?」
「ああ、その。とにかく、よろしくお願いします」
 困った様子の経営者と、喰ってかかっているアリッサで、放っておけばいつまで続くかもわからない。
「行くわよ? アリッサ」
 早々のうちに声をかけ、出発を促すことにした。
「ああもう! ああもう! そうね! 行きましょう!」
 まだまだ、いくらでも言いたいことのありそうなアリッサだが、マリーサの言葉に従い出発の姿勢を見せる。武器だけは持参のものを持ち歩く許可があるので、あとは腰にベルトを巻き、鞘に収めた剣を二人はそれぞれ吊り下げた。

     *

「ではこちらになります」
「お願いしますよ?」
「期待していますからね」

 三人の重役が案内役となるらしい。
 よほど魔石の持ち出しに警戒をしているのか、おそらく監視役も兼ねている。
(まったく、気分の悪い)
 ビキニアーマーなどという、見た目には身体を守る気のなさそうな、露出度に満ちた装備を用意しておきながら、この上に監視である。物を隠せる場所がほとんどなく、それでなくとも物品の持ち出しは困難なのに、ここまで痛くもない腹を探られるのは不愉快だ。
 それに、労働者の視線もそうである。
「おいおい! なんだァ? あの女は!」
「へへっ、誘ってやがんのか?」
「おい! 俺と遊ばねーか!」
 坑内を歩いていると、不快な声が四方八方から飛んで来る。
 元は盗賊か何かで、奴隷の身分に堕ちた身の彼らは、作業の手を止めると直ちに鞭打ちを浴びせられ、痛みに悲鳴を上げている。およそ人間扱いされない罪人達は、生涯こうした扱いを受けるのだろう。
 いたるところでツルハシが振り上げられ、その先端が岩盤を削っている。
 しかし、女を見ることすらない環境にいる彼らは、例え鞭打ちを受けるとしても、よほど二人のことを見ておきたいのだろう。
「お? いいケツ!」
「いってえ! 頼む! もうちょっと見せてくれよ!」
 馬鹿なのか、何なのか、身体にミミズ腫れができたとしても、アリッサやマリーサのことを視姦してくる。いやらしい言葉をかけてくる。ツルハシを投げ捨てて、愚かにも手を伸ばそうと駆けよって来る者までいて、案の定、そんな輩はより激しい鞭打ちを受けていた。
 ……恥ずかしかった。
 変態のような格好である。痴女呼ばわりされたとしても、何も言い返せない装備である。こんな自分を視姦され、アリッサは惨めでならない。隣を見れば、マリーサからも似たような思うをひしひし感じる。
 特にアリッサは気づいていた。

 ぷるっ、ぷるっ、

 と、歩行によって脚を動かすたび、ブーツから伝わるちょっとした衝撃で、大きなヒップが小刻みに揺れている。柔らかい肉が振動を帯び、ぷるっ、ぷるっ、と、それを視姦されているなど言うまでもなかった。
 そして、そんな時である。
「おい、お前達!」
 鞭の男が怒りの形相を浮かべて迫って来る。
「何よ」
 アリッサはさも挑発的に、何の用事か言ってみろと言わんばかりにそれを迎えた。
「依頼や魔物退治の話は聞いている。お前達がそうなんだろうが、そこの重役どもが許しても、この俺が許さん――ロクな検査も受けずにこの先へ進むことはな」
「なにそれ。アンタ達? 何とかしなさいよ」
 アリッサは即座に三人の重役に視線をやる。
 権力上は彼ら三人が上であり、重役が強く言えば、こんな無駄な時間は取らずに済む。何より、先ほど受けたはずの、もう必要ないはずの検査も受けずに済む。
 しかし、三人揃って目を逸らすのだ。
「アンタ達!?」
 アリッサは引き攣っていた。
 これでは回避できない。
 いや、そもそも、回避させてくれる気もなかったのでは……。

「おうおうおうおう!」
「こんなイベントをくれるたぁ優しいなぁ?」
「さっきまで俺をその鞭でボコボコにしていたクセによォ!」
「ひゅー!」
「今回ばかりは感謝するぜぇ!」

 アリッサとマリーサは奴隷達に取り囲まれていた。
「なんでこんな元気なのよ……」
 サボっていると見做されれば、その場で鞭打ちが行われる。人権や尊厳など保障されない、まさに奴隷としての扱いを受けている分際で、こんなにも活発なのはどういうことか。
「一応体が資本。聞いた話では、食事の『量』はまともに用意されているから……」
「ああ、そう。はしゃぐ元気はあるってわけね」
 だからといって、呆れたらいいのか、どう思ったらいいのか、わからない。
 検査は簡易的なものだった。
 ビキニアーマーをその場で脱ぎ、単に装備の内側に魔石を隠していないか、アイテムを持ち歩くための小袋に入れていないか、簡単に検めるだけのものだった。穴の中まで調べられないだけ、まだマシな検査だとは思ったが……。
「でけぇぇぇ!」
「ありゃあ何カップだ?」
「黒髪の子もすっげーいい体してるじゃないか!」
「俺もう我慢できねぇ!」
「お前! 何出してんだよ!」
 人の裸に興奮して、それぞれ奇声を上げるどころか、履き物を脱いで逸物をしごき始める男までいて、二人そろって引いていた。
「なによ! 気持ち悪い!」
「まったく最低ね……」
 さしものマリーサも苦言を呈する。
 そもそも、ビキニアーマーには内側に物を隠すだけの隙間はない。乳首を隠す部分といい、アソコを覆う面積といい、身体を隠す用途でさえも満たしていないのに、熱心に調べたところで何があるはずもない。
 しかし、鞭の男はビキニアーマーを丁寧に改めて、納得がいくまで観察したり、指で撫でることを繰り返す。
 その間、二人は頭の後ろで両手を組まされていた。
「なんだか知らねーが、俺ら奴隷と変わらない扱いじゃねーか?」
「哀れなもんだなー」
「いっそ俺達と一緒に働けよ!」
 最悪な言葉が四方八方から投げかけられる。
 早く、この地獄から抜け出して、さっさと次の階層に進みたい。早く検査を終わってはくれないかと思っていると、鞭の男は唐突にアリッサに目をつけた。
「おい! お前!」
「何よ!」
「その濡れたアソコは何だ!」
 鞭の男が指摘するや否やである。
「おお? 濡れてるってか?」
「確かにメスの匂いがここまで届くぜ!」
「懐かしいなぁ?」
「村の娘を犯した時以来だぜ!」
 どうやら、少なくとも今この場にいる連中は、揃いも揃って元盗賊らしい。野蛮な人間性の眼差しで、奴隷の立場でさえなければ、アリッサとマリーサを襲うため、今にも群がってきたことだろう。
 そんな中で視姦されていたせいなのか。
「濡れてるって何よ」
「濡れているだろうが!」
 鞭の男はおもむろにアリッサに近づいて、急にアソコを触ってきたかと思いきや、太い指の荒々しいタッチが刺激となって、足腰に快楽の刺激が走る。
「っ!」
 思わず喘ぎそうになったのを、どうにか歯を食い縛って堪えた直後だ。
「これは何だ!」
 目の前で、指のあいだに愛液の糸を引かせてきた。
「何って……」
「何だと聞いている! 濡れたのか! どうなんだ!」
「し、知らないわよ……」
「人に見られて、ビキニアーマーを調べられ、汚い言葉を浴びて興奮したのかと聞いている!」
「ありえないわよ! 馬鹿にしないで!」
「なら、これは何だ!」
「それは……知らないってば……」
 押し問答だった。
 この粘液は何かと問い詰めてくる相手に対し、アリッサは知らない知らないと繰り返す。繰り返せば繰り返すだけ、鞭の男は同じ質問を放って来る。
 そのうちにアリッサは折れ、観念したように答えていた。
「……濡れたんじゃないかしら?」
「ほう? 何故だ?」
「知らないわよ」
「興奮したんじゃないのか! この状況で!」
「そんなわけ……」
「でなければ、アソコに何か物を入れているせいで、それが刺激となって濡れている可能性がある! 正直に言わなければ、アソコに指を入れて調べるしかない!」
 アリッサにとって、究極の選択だった。
 こんな衆目の前で、名前すら知らない男にアソコへ指を入れさせるなど、たまったものではない。それは避けたい事態であったが、この鞭の男はきっと白状させなければ気が済まないことだろう。
 大勢の前で裸になり、罵声を浴びせられ、興奮しました。
 そんな白状をするのはプライドが許さない。
(だいたい、私がそんなわけ……そんなわけ……ない、はず…………)
 否定しようとする自分自身の心の声に、どこか自信が消えている。
 もう、自覚しつつあるからだ。
 自分は変態かもしれないと、具体的に可能性を感じ始めているのだ。
 そして、ならば変態である自分は、こんな状況で穴に指まで入れられれば、どこまで感じてしまうかもわからない。
「認めなさい?」
「ま、マリーサ!?」
「あなた変態よ? 認めなさい?」
 いつになく攻撃的というべきか、サディスティックというべきか。情け容赦のないマリーサの眼差しが突き刺さる。
「な、何、どうしたのよ……」
「なら、私が変わりに認めるわ! このアリッサはね? アナルパールを所持して日夜アナルオナニーを行い、そして今は大衆の前で裸になって、様々な言葉を浴びて興奮している変態なのよ!?」
 マリーサが代わりとなって宣言してしまい、奴隷達が盛り上がる。
「何言ってるのよ! そんな!」
「そうか! ならばいいだろう! 通してやる!」
 しかし、アリッサが文句を言おうにも、マリーサの計らいによって検査が終了することになり、先にも進めることになったのだ。
「さっさと着ろ! 特にアリッサ! お前はこんなところで変態性を発揮している場合ではないはずだ! きちんと依頼をこなしてみせろ!」
 渇を入れんばかりに、

 ――ぺちん!

 尻を叩かれ、泣きたくなった。
「何よ……何なのよ……」
 泣きたい思いでビキニアーマーを身につける。せっかく裸から解放され、仮にも装備を身につけたところで、こうも裸と変わらない露出度であることが、より一層のこと悲しく惨めなのだった。

 隣のマリーサの興奮に、アリッサは気づいていない。

 もちろん、マリーサにも同じ気持ちがある。痴女と言われて仕方のない格好で、歩けば尻もプルプル揺れる。アリッサほどのヒップではないおかげで、あるいは隣のアリッサがより目立つ巨尻だから、視線を奪ってくれているために、まだしも注目は少なく済んでいる気はするが、それにしたって視姦される感触はある。
 変態じみた装備を身につけることへの屈辱感は、決して皆無ではなかったが、だからこその興奮があった。
 アリッサが自分と同じ屈辱を覚えている。
 愛しのアリッサが感じている羞恥は、自分が感じているものと同じものだ。
 自分自身で体験していればこそ、アリッサの気持ちがよりよくわかり、それが興奮度合いを大きくしていた。
 惨めで恥ずかしいからこそ興奮する。
 それがマリーサの状況だった。



 
 
 

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