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 数日後。
 悪夢のような思い出を抱えた堀は、あるおり例の教師と廊下ですれ違おうとしていた。
 たまたま、隣には友達も誰もいない。他の生徒もいない中、廊下で教師と二人きりの、お互いにお互いを通り過ぎようとしていく場面が生まれ、堀は思わず右腕で胸を守り、左手をアソコの近くへ置いていた。
 条件反射のようにして、手で大切な部分を守ろうとしていた。
 堀の脳裏には、ありとあらゆる羞恥の記憶が眠っている。ショーツ一枚にされたこと、それで身体測定を行ったこと、アソコや肛門を観察され、最後には絶頂をねだる羽目にまでなったこと。
 それらの記憶が色濃いせいで、教師の顔を見ただけで、堀のまぶたにはあらゆる映像が延命に浮かび上がる。
(やだ。目も遭わせたくない)
 瞳を逸らし、顔は真っ直ぐ。
 さも自然を装って、あまり露骨には避けていない風に見せかけながら、会釈混じりにすれ違おうとした。
 その時だ。

「堀さん」

 すれ違って数歩ほど先まで進んだ時、背中にかかった声に氷付き、堀は恐る恐る振り返る。
「!?」
 スマートフォンを突きつけられた。
 しかも、そこに出ている画像は肛門だ――ネットの海で手に入るアダルト画像だとは思えない。きっと、それはそんなものではなく、堀の身体を撮影した肛門なのだ。
(私の!? 私のお尻の穴……それじゃあ、もしかして他にも……色々…………)
 顔面蒼白となりたい心境だったが、羞恥心のせいで青くはならず、色合いだけはみるみるうちに赤へと変わる。
「帰り、お気を付けて」
 教師はただそれだけを言い、スマートフォンもポケットに戻して去って行く。
 堀の胸には、羞恥や屈辱に無念といったあらゆる感情が残された。自分の身体の一部が記録され、あの中に眠っているという、耐えがたい事実に衝撃を受け、恥じらいに溢れた顔を、誰が見ているでもないのに両手で覆う。
 意味もなく走り出していた。
 恥ずかしさから一歩でも遠ざかりたい気持ちに駆られ、自分自身の両手で前も見えないままに衝動的に、しかしどんなに走ったところで、脳に直接こびりついた羞恥は剥がれない。時間によって自然と薄れ、消え去っていくのを待つ以外、どうにもならないものなのだ。
 さしもの堀も、頬に涙の筋を流していた。
 あまりにも悔しく、恥ずかしく、そして辛いものだった。



 
 
 

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