次の話




  ペニシア神は人間界とは異なる階層の住人だ。
 人はそこを神界と呼び、教会という特別な施設の中から祈ることで、それぞれの抱く想いや願いを神界に届けて来る。実に様々なものが日々神界に流れているが、ペニシア神はその特に信心深いものに良き力や運勢を与えていた。
 人の信心深さは心地よい。
 だから、ペニシア神はそれに応える。
 特に祈りによって得た魔力を人々のためにこそ使い、あなたのおかげで大勢の人々を救うことが出来ましたと、お礼の祈りも捧げてくれる神父や神官といった種類の人間は、とても気に入っているのだった。
 神とは概念。
 神界とは概念によって形成される非物質の階層だ。
 なればこそペニシアは、より多くの人々の信仰心を得ることで、概念体として生き永らえている。誰しもが神を信じず、その存在が人類の記憶から風化していく時こそが、神の死ということになる。
 信仰心を捧げて貰えることが、そのまま生きる栄養を与えてもらうも同然である。
 より良い信仰を味わいたい。
 祈りの強さは形によって、それぞれ味わいが異なるために、ペニシアはより自分好みの祈りを見つけ、己の意思を神父に伝えた。

「なんと! そのようにして祈る心を示させよというのですか!」

 神父は驚き、しかし従う。
 そして、上質な信仰をより多く得るためにも、己の意思に従うものにはより大きな力を与えた。

「で、君のような、聖職者を志すわけではない少女が、あえてペニシア様への祈りを体験してみたいというわけだ」
「はい。各地域の文化、宗教、民俗や風習について調査を行い、学術的な論文を書いたり、書物を書いて出版することが私の仕事ですから、是非とも取材の意味合いも兼ね、許可を頂けましたらと」

 教会に勤める中年神父の前にいるのは、ローブを纏う金髪の眼鏡少女なのだった。
 魔術や宗教活動は、信仰や文化と密接に絡み合う。それらの調査を行うなら、自らも魔術の修行を行い、魔力の扱いを心得るのが、きっと職業柄重要なことなのだろう。
 名前はフローラ。
 17歳で各地を周り、時にはギルドで冒険者のパーティに加わりつつ、時には傭兵を雇いつつ、はたまた公認の学者団に加われば、国軍の護衛付きで学術調査に出ていける。
 そうして転々としてきたフローラは、この国が信仰しているペニシア神に興味を抱き、教会の扉を叩いて取材を申し込んで来るに至った。
「許可を出すことは、もちろん可能なのですが。ペニシア様は特別なお祈りを求める男神でして……」
 困り果てた表情を隠しも出来ず、中年神父は言葉にも迷って口をつぐんでしまっていた。
「大丈夫です。恥ずかしながら、ペニシア神にまつわる神話、信者達によって紡がれた歴史の数々は、少しばかり勉強させて頂いています。何をすることになるのか、承知の上です」
「それが本当ならいいのだがね。本当に承知かね」
「はい。二言はありません」
 フローラはきっぱりとしていた。
 一時の恥より、学問での成果の方が大切なのか。眼鏡をかけた淡々とした面持ちは、むしろ知識欲旺盛で活発な若者のものと見えてきた。
「いいでしょう。祈りの間へ案内します」
「ありがとうございます。神父様」
 しかし、いいのだろうか。
 いや、相応の知識の上で、承知の上で来ているからには、多少のことは覚悟しているはず。何より中年神父としても、ペニシア神についての理解を広めるちょっとした機会である。
 かくして、中年神父はフローラを祈りの間へと連れていく。
 そこで行われる神への祈りが、性的な奉仕や性交であることをわかっていながら……。


 そもそも、世界は物質界と概念界の二階層に分かれており、物質で構成される世界を人間界とも呼んでいる。人間達の持つ邪念、正義感、疑惑、信愛といった清くも汚くもある心の数々が、物質界から発散されて概念界へと届いていき、神々の存在を構成していく。
 全ての神にとって、人間とは自分達を生み出した源である。
 だから神々の多くは人間に興味を持ち、自分に祈りを捧げる者とあったなら、信心深さによっては何かの力を与えたり、その者の運勢を良くすることもしばしばだ。
 祈りの間には、ペニシア神に信仰心を届けるため、概念界への繋がりを発生させる魔術上の装置を仕込んでいる。もちろんお互いの世界を行き来は出来ないが、二つの世界を繋ぐゲートがあれば、より直接的にペニシア神への祈りを捧げることが可能となる。
 ペニシアを象った石像を飾り立て、床と壁には無数の象形文字が刻まれている。
「祈りの儀式において、一種の見立てを行います。あちらをご覧ください」
 中年神父が指した先には王座があった。
「あの場に座る者をペニシア神であると見立て、仮想の神に対して奉仕を行う。それは魔術的なプロセスを経て、実際のペニシア神にまで伝わっていく」
「そうです。王座の後ろ側にはベッドがありますが、あちらも同様。ペニシア様と交わり、快楽を捧げるためのもの」
「神の代役を務めるのは」
「及ばずながら私です。つまり、実体験を兼ねての調査となると、私がフローラさんの相手ということになるのです」
「承知しました。実際に祈りを捧げさせて頂けますか」
「ええ、あなたがご承知であれば」
「ありがとうございます。神父様」


 祈る際には衣類の着用は許されない。
 一糸まとわぬ姿となったフローラは、全裸で男の前に赴く恥じらいに頬を染め、王座への階段を一つずつ上がっていく。
 神の代役を務める中年神父も、衣類は身に付けていなかった。
(立派ですね……)
 天に向かってそそり立つ肉棒に目を奪われ、黄金の輝きを放って見える神々しさに固唾を飲む。神聖なるものが神父の肉体に降り立って、性器をここまで雄々しく立たせているのがフローラには伝わっていた。
 まるで部屋全体に黄金の色合いを広めていき、大気全体をかすかに鳴動させているような、圧倒的な存在感に、自分はこの肉棒よりも格下なのだと、見ただけで痛感させられる。
 肉棒の皮膚に接した空気が、異なる世界のものへと変質を遂げ、それが徐々に侵食のように広がって、この祈りの間全体を人間界とは切り離した異空間へと変えている。
 単に儀礼上の作法のはずが、フローラは心の底から跪いてしまっていた。
(お、男のものを、こうも輝かしいものに感じる日が来ますとは、こうして調査に訪れた意味はあったようですね)
 冗談でなく、今この一物を振り回せば、魔族がひしめく闇を光で切り裂くことが可能だろう。聖剣が魔王を破った史実でも、別の神様が同質の魔力を剣に宿したとされている。
 神は己の意識を切り取って、神父の中に植え付けることができる。神の心の破片を宿した神父への奉仕は、神そのものへの奉仕と同義となり、そうして信仰心を示した女性には見返りが与えられる。
 神界(概念界)の魔力によって勃起している肉棒は、深い敬意を持って接するべき神秘的な神器も同然だ。
(本当にこれほどまでとは……来て良かったです……)
 歴史や文化にまつわる調査を生き甲斐として、論文の発表や書物の出版を収入源としているフローラは、歴史的・宗教的・魔術的価値の高い品物には目がなかった。
 冒険者なら誰もが聖剣に触れてみたい、魔王を討って大物になってやりたい願望を抱くのと同様に、ならば学者は価値ある碑文に触れたい。素晴らしき発掘品の数々、尊敬する学者の著書、文化や風俗に密接な関わりを持つ品物を調べてみたい。
 その道の人間なら、誰しもが抱く欲求が大きく膨らみ、フローラは肉棒に手を伸ばす。
(硬く、熱い。触れるのは初めてですが、誰の男性器も似たような感触がするのでしょうね。問題は流れている魔力。人間のものではない、神界から流れ込んだものが直接性器を勃起させ、このように立派に見せているというわけですか)
 両手で包み込むように握り締め、実にたどたどしい奉仕を始める。
 手の平に神秘の魔力が染みわたり、自分がいかに高位なものに触れているかを実感した。
(ペニシア神の意識の一部が、彼の魂には宿されている。私は今、神の身体の一部に触れているものと心得なくてはならないわけですね)
 自分は神に従属する身であるという気持ちが、否応なしに胸の内側に湧いて膨らむ。
 王座に座る者の前で膝をつき、性的に尽くしているのだ。
 単純に神という存在は大きすぎるのも一つだが、王者と召使いの構図を打ち立てる舞台装置も、フローラの中に従属感情を育てている。
(かなりの神威ですね)
 指圧のように揉みながら、軽くしごいて玉にも触れる。
(こうした神々しさで人をかしずかせ、権力を手にしてきた王の歴史は数多いですが、ここまで立派ですと……確かに……)
 少しばかり目上なだけでは済まされない、遥かに次元の異なる存在感に満ち溢れる。ペニシア教においての価値の高さは確かであり、いかに学問的に有意義な体験であるかも明らかだ。
「ちゅっ」
 思わず唇を重ねてしまっていた。
(ど、どうしましょうっ。レポートの文面には、こうしてキスをしてしまったことも、まあ少し官能的な表現にはなってしまいますが……)
 亀頭に唇を当てては離し、当てては離しの、キスの応酬が唾液を付着させていく。
(こういうことは初めてですが、神性が高いおかげでしょうか。思ったよりも抵抗は少なく、何とか続けていられそう)
 不潔なものに触れる不快感など、まずもってあろうはずもなく、むしろ神聖なものに触れる有難みさえ感じるのだ。
 フローラは手を活発に動かした。
「ちゅっ、ちゅむ……チュ、チュッ、ちゅ、ちゅ……ちゅ……りゅちゅ、れちゅぅ……ちゅっ、ちゅぷ、はぷっ……」
 キスと手コキの奉仕によって、唾液の糸が引いては千切れ、その唇にはカウパーも付着していく。
 高位のものを前にして、励まずにはいられない。
「ちゅ――ちゅぅ――」
 唇を押しつける長さもまちまちに、手の平にはピクピクとした脈打ちを感じ取る。
「ちゅっ、ちゅむっ、はむっ、あむぅ――りゅちゅ――ちゅ――チュッ、チュチュ――」
 いつしかフローラが行うキスには、先っぽを軽く啄むような動きも加わって、つたなかった手コキもしだいに慣れの気配を見せる。
「ちゅっ、あむっ、むじゅぅ……」
 こうしているあいだにも、この体験を文面にまとめ、書物や論文として書き記すための文章が頭の中に沸き溢れ、神性たっぷりの肉棒とはどんなものかを表現するための言葉を組み立てている。
「はむぅぅ……」
 顔を前に押し進め、亀頭を口内に閉じ込める。リング状に丸まる唇がカリ首の段差にかかり、フローラはそのまま舌で亀頭を攻め立てる。
「ずりゅぅぅぅぅぅ……ずぅぅぅ――じゅむっ、んぅ――」
 さらに奥まで咥えていった。
 亀頭で喉が塞がりそうな気配に止まり、頭を後退させていく。唇がカリ首に引っかかるところで、再び前に進んでいき、じっくりと前後運動を繰り返した。
「じゅちゅっ、じゅぅ……ずぅ……ちゅっ、ちゅるぅ……じゅじゅっ、にゅじゅぅぅ……ちゅぅ……」
 肉棒の内側にある神聖な魔力の流れが、フローラの奉仕によって徐々に活性化していた。すればするほど輝きが増すようで、それがやりがいを煽ってくる。
(もっともっと、いっぱいシて差し上げないと。という、高みの存在に対する奉仕意欲を刺激されてしまうようですね)
 フローラは眼鏡のレンズを介した上目遣いで、中年神父の表情を見上げてみる。神の意思の欠片を宿す器に過ぎない中年神父は、ただ静かに佇むだけの表情で、フローラの咥え込んでいる表情を眺めていた。

 ――何を願う?

 誰かが問いかけて来たわけではない。中年神父もそんな言葉を発していない。
 しかし、フローラには伝わった。
 この奉仕と引き換えに、お前は私に何を望んでいるのかと、ペニシア神はフローラに尋ねている。何の言葉や動作も介さずして、フローラの頭に直接念じたとでもいうべきだろうか。

(知的好奇心を満たすこと。学術的に価値ある体験を手にすること。私と同じ、文化や宗教の研究を志す仲間のため、知りえたことを書物で広めていきたいこと。それが私の望みです)

 ――よかろう。
 ――さすれば、その胸も奉仕のために駆使するのだ。

 フローラの知識にはパイズリという言葉もある。
 胸を腹部に押し当てるようにして、フローラは自分の豊満な膨らみの中に肉棒を閉じ込める。
(ペニシア神がお喜びになっている)
 まるで新しい知識が勝手に書き込まれて来るように、神はお喜びだという真実が、どういうわけだか把握ができる。
(神のご意思を受け取るというのは、多くがこういう感覚なのでしょうか。パイズリの経験もありませんが、やってみるしかありません)
 自分で自分の胸を揉みしだき、柔肉の変形に肉棒を巻き込んでいく。
(楽しまれておいでなのですね。私のこの、初めてこういうことをしている感じ。コツもわからず、こうすれば気持ちいいだろうかと試している私の姿が、ペニシア神にとっては面白いもののようですね)
 挟みつける力を強め、上下のしごきを行った。
 乳肌が寄り合わさっての、密閉された谷間の中から、存在感に溢れた亀頭が見え隠れを繰り返す。散々に染み込ませてきた唾液が乳房に移り、ヌルヌルと滑りを良くしていた。
 きっとカウパーも乳肌に付着している。
 見え隠れを眺めるうち、おもむろにペロリと舐め、青っぽい味を舌先で救ってしごきを続けた。
「んっ、んぅ……」
 中年神父の腹に乳首を擦りつけてもいるせいか、しごいているうちに刺激を感じ、甘やかな快感を覚えて突起する。
「れちゅっ、んちゅ」
 またしても亀頭に吸い付き、フローラはパイフェラをしてしまっていた。慣れない奉仕に、いいところで口を引き下げ、ただのパイズリに戻っていくも、そのうちにまた舐めたくなって、ペロペロとカウパーの味を確かめる。
「れるっ、ちゅっ、ちゅむぅ……ちゅるっ、れろっ、れろぉ……」
 舐めながらも乳圧の強弱をかけ、肉棒をしごいている。どうしてなのかヨダレが溢れ、唇を被せた亀頭と口の隙間から、谷間にかけてゆっくり流れ落ちていく。
 下腹部がヒクついていた。
(とても男性的な神であり、色欲に溢れているけれど、女性信者が行う奉仕に対しては誠実に対応しているのでしょうね。それにこの感じ、アソコが熱くなってくるのは、私がいやらしいんでしょうか。それとも、ペニシア神の覇気があまりにも偉大だから……)
 かつてここまで性器の挿入を想像して、アソコが疼いたことはない。肉棒の現物に触れているせいかとも思ったが、ペニシア神の偉大さ故に湧き上がる感情ではないかとも考えていた。
 自分が淫らなだけか、否かによって、書物への書き方も変わっていくことになるが。

 ――射精。

 これから精液を飲まなくてはならない使命が脳裏に溢れ、ペニシア神がそういうご意思を送ってきたのだと理解するフローラは、再びフェラチオに集中していた。
「ずっ、ずぅ……じゅぅっ、じゅっ、つっ、ちゅぅ――じゅじゅっ、りゅむぅぅ――じゅっ、にゅむぅ――」
 肉棒の熱かった余韻を乳房の肌に残しつつ、フローラは顔を前後に振り動かす。
「ずむっ、じゅむっ、じゅぅ――ずぅ――ずりゅぅ――」
 来る。もうすぐだ。
 フローラはさらに舌を震わせて、懸命なまでに竿を磨く。
(神の一部を取り込むことには、宗教的に大きな意味を持っています。その神秘を実際に体験するほど貴重なことはありません。ここは一滴も残すことなく……)
 気を引き締めると、自然と唇にも力が入る。太い血管の脈打ちが舌に伝わり、込み上げている射精感が気配でわかる。
「ずっ、ずずぅ――じゅるっ、ちゅむっ、ちゅるるぅ……じゅっ、はぷっ、っぷ、にゅぷぅ――ちゅぅぅぅ……」
 すぐそこだ。もう来る。
 あと数秒。
 来た!

 ――ドクゥゥ! ドクッ、ドクン! ドクドク! ビュク! ビュルルル! ビュックン!

 漲る精力の爆発が口内に四散して、いたるところに青っぽい味の香りが付着する。
 フローラはそれをこぼさず飲み干した。
 何度も喉を鳴らして腹に収め、それでも舌や歯にはヌルヌルとした感触が残っている。
 顎を後退させていき、肉棒が口の外へと出ていくにつれ、やがては切っ先にキスをしている形となる。
「ちゅむぅぅぅぅぅぅぅぅ――――」
 気がつけば、フローラは強く唇を押し当てていた。
 まるで吐き出すことが名残惜しいかのように、ゆっくりと唇を遠ざければ、白濁が伸びた銀糸が引く。
「ぴちゅっ、くちゅぅ……」
 精液汚れの残った亀頭をペロペロ舐め、静かに掃除していると、中年神父がおもむろに立ち上がった。
 セックスだ。
 ペニシア神は本番まで望んでいる。
(貴重な……体験……)
 もはや中年神父自身の意思は見受けられない。神の降りた肉体は、欠片でしかないペニシア神の意識が動かしている。フローラを抱こうとしているのは、まぎれもなく神なのだ。
 フローラは処女だった。
 乙女として、ここで初めてを捧げていいのか迷いはある。
 しかし、学術的には極めて貴重な体験であり、人間の身分で神のご意思には逆らえないことも重なり、セックスを拒むことなどできようはずもない。
 中年神父――否、ペニシア神に導かれるまま、フローラはベッドの上に沈んでいった。




 
 
 

コメント一覧

    コメント投稿

    CAPTCHA