今日も俺達は体育倉庫で時間を過ごす。出席日数やテストでの赤点回避のこともあるので、別に毎日サボっているわけではない。元から計算は行っていて、週に何回、月に何回までと、日数を決めて計画的に授業を抜け出していた。俺と優奈が付き合い始めてからは、その計画をお互いに示し合わせて、体育倉庫は一種のデート場所になっていた。家デートというものがあるように、俺達は密室デートをしているわけだ。
なので、全ての授業を真面目に受けたその日でも、放課後になれば俺達は体育倉庫へ向かって二人の時間を満喫する。どうせ人など来ない場所だ。何も授業をサボった時にしか利用できないわけではない。
だが、体育倉庫デートはした事あっても、通常のデートはまだしていない。
というのも、彼女や俺の問題だ。
『なあ、優奈のこと誘った方がいいよな』
『誘うって』
『デートとか』
以前そう切り出した時、優奈は赤らみ、照れた表情を隠すために咄嗟に顔を背けていたのを覚えている。しかし、ではどこへ行こうかという話になると、ことごとく候補が潰れていく事となったのだ。
『観たい映画はあるか?』
『ないね』
『遊園地へ行ってみる?』
『いや、煩そうだし……』
『博物館、美術館、植物園、動物園、水族館』
『どれも興味ないね』
『……じゃあ、行くとこないな』
デートといえば真っ先に想定される候補が次々と潰されて、これ以上は案が出せない。というより、俺自身そういう場所に興味がない。付き合っているならデートぐらいするべきだろうと思い至り、なので簡単に思いつく候補をとりあえず口にしてみただけである。俺が興味ある映画さえやっていれば別だったが、今やっているラインナップにはそそられず、最終的にどこに誘う場所も思いつかない。
なんたって、静かで落ち着く場所が好きなのだ。遊園地のように賑やかで人の多そうな場所へわざわざ行って息苦しい思いをするより、もっと落ち着きがいのある場所がいい。まあ、それを言ったら植物園なら煩くなさそうだが。
『別に遠出する必要はないよ』
優奈自身がそう言うので、ならばと俺はようやく案を浮かべる。
『だったら、この場所はどうだ?』
『体育倉庫?』
『どうせ誰も来ないだろ? デート代わりにここで一緒に過ごさないか?』
と、俺は誘ったのだ。
『……賛成』
優奈はごくごく小さな声で、俺から顔を逸らしたまま、そっと俺に肩を近づけ手を握りながら言う。嬉しかったり、喜んだりするとき、そんな表情を見せるのが照れくさくて、優奈には俺に顔を見せまいとするクセがあるようだった。
といったわけで、俺達は基本的に体育倉庫で過ごしている。示し合わせてサボった時と、放課後の大半を二人きりの時間に使い、何をするでもなく一緒にマットでダラけている。寄り添い合い、抱き合いながら寝転がったり、膝に据わらせて抱えたり、主に身体を密着させながらぼんやり過ごすことが多かった。
「……」
「………」
今も、俺達は言葉を交わしていない。
マットで仰向けになった俺へしがみつくように、優奈は上から覆いかぶさり、胸板を枕にして静かに瞳を閉じている。楽しい会話をするわけでも、ゲームをして過ごすわけでもなく、とにかく一緒にぐーたらするためだけにここにいた。
こうして密着し合うのは心地がいい。胸に圧し掛かってくる柔らかな身体を抱き返し、強く締め付け離すまいとする。人肌の温度が全身に感じ取れて、ずっとこのままでいたいぐらいの温かさに浸っていた。
「んにぃ……キス……」
目を瞑っていた優奈は、寝起きでぼけっとした顔で、俺の唇を求めてくる。啄ばむように上下の唇を舐め、俺に舌を押し込んでくる。舌先を押し付け、閉じている俺の唇を強引にでも開かんばかりに、優奈は舌に力を込めていた。
少し開いて受け入れると、優奈は俺の口内を思う存分に蹂躙する。
「んっ、んちゅぅ……くちゅ……」
それは唾液の絡む音だ。
息継ぎを交えて何度も執拗に唾液を送りつけ、俺の舌にその味が広がっていく。舐めるように絡め取られ、されるがままに受け入れていた俺の口は、完全に優奈の自由に扱われていた。
「……ぷはぁっ」
ようやく満足して、優奈は唾液の糸を引かせて口を離す。
「情熱的だな」
俺も、今のに興奮していた。
「そろそろさ、こうしてるだけじゃ退屈じゃない?」
「あぁ……。そういう気がしなくもないけど、俺には観たい映画がないからな。どこへ誘うべきかが思いつかない」
「別にいいよ。っていうか、デートの話じゃないよ。外へ出るより、ここで出来ることをしてみない?」
「ここで出来ること?」
聞き返すと、優奈はみるみるうちに顔を赤くし、恥じらいがちにこう言った。
「つまり、ね。その……刺激的なこと……」
なるほど、優奈は色々と興味があるらしい。
だとしたら、俺もいい加減に勃起しているところなので、何か抜けるようなことができると助かるわけだが。
「なら優奈、ジャンケンしないか? 勝った方が相手に何でも命令できるって事で」
「いいね。私が勝ったら、連太郎には足でも舐めさせてあげよっかなー」
おそらく、本当に舐めさせられることになるだろう。半ば俺を自分のものと思っている優奈は、自分の好きな時にキスをしてくるのだ。特に断りもいれずに、女の方からしているのだから受け入れて当然でしょ、と言わんばかりに。
「勝った方が王様だ。じゃあ、いくぞ」
「ジャンケン」
「ポン」
同時に出す。
俺はパー、優奈はグー。
俺の勝ちだった。
「ねえ、三回勝負にしない?」
自分がどんな命令を受けるのか。少なくとも卑猥なことをさせられるのは間違いないと想像してだろう。優奈は薄っすらと青ざめた苦笑いで、負けた途端にそんな事を言い出した。
「ま、いいけど。これで俺の一勝だからな? 次はそういうの聞かないから」
「おし、次は私が勝つ」
ジャンケンポン。
俺はチョキ、優奈はグー。
これで一勝一敗だ。
「次が勝負だな」
「いくよ」
ジャンケンポン。
俺はグー、優奈はチョキ。
敗北が確定し、優奈は苦笑いしたまま固まっていた。
「俺の勝ちだな」
「嘘……。なにさせられんの? 私」
「触ってもらおうかな」
「どこを……?」
優奈は少し悔しそうで、不安そうな面持ちだ。
俺としては欲求が色々あるが、いきなり無茶をしてはまずいだろう。こんな場所で二人きりでいるくらいだ。本当ならとっくにマットの上に押し倒して、初めてを済ませたいぐらいの本音はあるが、あまりに欲望をぶつけすぎれば優奈との中が壊れかねない。というより、嫌われやしないか気にている俺がいた。
「約束だし、できることはするけど……」
優奈も微妙に声が小さい。興味はあっても、何をやらされるかわからない。おまけに経験がないとあっては、そう積極的にはなれないのも当然か。
とはいえ、胸を揉むまではいっているわけで。
ボディに触れるだけなら問題ない。が、それだけに胸を揉ませろでは、既に体験済みのパラダイスと重複する。そういえば尻には触ったことがないのを思い出したが、果たしてお尻でいいのだろうか。
もっと別のことを試せはしないか。
では、どうしたものか。
「優奈」
俺は答えを決める。
「う、うん」
優奈も息を呑みながら、腹をくくった顔で俺を見つめ返した。
「手で、俺のを触って欲しい」
「連太郎のって、もしかして……」
「そう。アレ」
「アレ、ね。わかった」
優奈は俺の体から起き上がり、俺も体を起こしてあぐらをかいた姿勢になる。優奈の手首を掴んで、その綺麗な手を己の股間へ導く。ズボン越し、テント状に膨れ上がった俺の一物を優奈の細い指が包み込んだ。
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