第一奏 慟哭と葛藤

 舞台の役者が入れ変わる。
 第一のシーンを演じ終われば、出番を済ませた役者は舞台袖へ去っていき、次のシーンの登場人物が現れる。
 一人の赤いドレスの女性が中心へと踊り出て、いかにも嘆いてみせていた。その演技を彩るため、指揮者が音を操るような演奏で、幾つもの弦と打楽器のリズムが絡み合う。
 時には暗く、時には明るく、人物の感情を表す音色の中で、今は悲劇の場面であった。

      †

 ああ、私はリンダ!
 魔女と呼ばれる歌姫を師に、いつまでもその背中を追いかけてきた!
 師の名はフィオナ!
我が師は憂う。
 今は美しいその顔も、その指も、いつかは皺にまみれていき、やがて舞台に立つことも無くなるだろうと。
 魔女無き舞台には誰が残るの?
 もちろん、私が残っているわ?
 あの高名な歌姫、マヌエラ=カザグランダだって!
 だけど、私もいつか老いるのよ?
 マヌエラだって、いつまで舞台に立つかしら?
 我が師は憂う!
 歌劇団の未来について!
 必要なのは自分よりも若い花。
 そう、この私――リンダよりも!
 わかるわ?
 わかっているのよ!
 歌劇団の未来を思うなら、私達が去った後には、新たな世代の歌姫がいなくてはならない!
 その歌姫達がいつか老いれば、そのまた次の世代がいなくてはならないの!
 だけど、だけど!
 私は叫ぶ!
 ああ、フィオナ! フィオナ!
 どうして私を見てくれないの!?
 わかるのよ!
 未来を憂い、帝都に眠るひっそりとした花を集めて、この舞台で華々しく咲かせなかったら、歌劇団はいつの日か廃れていき、歌劇そのものが萎れた花になってしまうわ?
 それでも私はフィオナの弟子!
 私はフィオナが大好きなの!
 だから、どうか私を見て?
 どんなに新しい花が大切でも、私が傍に生えているのを忘れないで?
 物乞いだった少女を見ないで?
 もっともっと私を見て?
 そうよ、これは醜い嫉妬よね?
 そうとわかっていても私は、フィオナがあの物乞いを見ている限り、心をドロドロとさせてしまうのよ!

      †

 演奏に合わせ、歌うように台詞を口ずさむ演者は、その演技に踊るような身振り手振りを交えている。そんな彼女が舞台の中心で注目を集めていると、舞台袖から一人の美青年が姿を現した。
 このシーンにおける二人目の登場人物だ。

      †

 リンダ、リンダよ。
 麗しのリンダ!

 あら、あなたはスティーブン、私に何の用?

 用など、君の顔を一目拝みに来ただけさ。

 だったら、帰って頂戴?
 私はあなたに興味がない。
 私は、私は……。

 気づいているとも、フィオナだろう?
 道理で僕に見蕩れない!
 道端の少女に微笑みかけたら、その一瞬で無垢な乙女を恋の沼へと落としてしまう。
 そんな罪深き僕の笑顔に、君に限って惹かれてはくれないんだ!

 フィオナ……ああ、フィオナ……。
 今頃、どうしているのかしら?

 決まっているさ。
 あの新参者の歌姫を『指導』している。
 あの人にも、僕の微笑みは通じない。
 あの人が見ているものは、いつだって女の子さ。
 しかもフィオナには僕の微笑み以上の魔力がある!
 今頃はあの子を手籠めにしているさ。
 そう、ドロテア=アールノルトをね!

      †

 美貌の魔女が施す口付けは、特別な魔法のように心を熱く解かしていく。砂糖水のように甘いものが魂に染み込む事で、ドロテアは彼女の魅了の力に戦慄した。
(わ、私……惹かれているの……?)
 背の高いフィオナから唇を受け止めて、ドロテアはその勢いに押されて首を倒しているばかりか、天井を仰がんばかりに背中まで反らしている。熱く求めんばかりに体重をかけられて、もしも腰に回った両手が急に離されてしまったら、間抜けにも床に尻餅を突くだろう。
 だがフィオナの魔力を感じれば、重心の危うさなどよりも、むしろ離してなどもらえない、いつまでも人を捕らえておきたがる腕力こそを強く意識させられる。
 心が溶ける。
 願いを叶えて欲しくば体を寄越せ、このキスはそういう理由に過ぎないのに、そのはずが心に熱を注ぎ込まれて、ドロテア自身の中にも火が灯り兼ねない事が恐ろしかった。
 こんな理不尽な魅力の持ち主を、魔女の魔力と称せずして何としようか。
 腰に回った両手のうち、右手が背中へ這う。
 着せたドレスを脱がせるため、後ろの紐を引っ張るのだと感じた時、ドロテアは少しだけ強張るが、やはりそれ以上に甘美なものを感じていた。
(こんな風に抱かれることを喜ぶなんて……)
 あなたをミッテルフランク歌劇団に推選する。
 ただし、その代わり――。
 それは汚い欲望のやり口だろうに、どうして体と魂はそれで悦んでしまうのか。背中で紐がほどかれて、ドレスを脱がされ始めた時、羞恥心がドロテアの頬を染め上げていた。
 王子様に抱かれるお姫様に、心がなりきってしまっている。
 相手は女性、それもお伽噺の魔女だというのに、脱がされたドレスが床へと落ちて、肌着がたくし上げられた時、心臓はますます高鳴っていた。
 一枚、また一枚、鏡を背にしたドロテアの肌が曝け出されて、やがては尻が映し出される。
 ベッドへと手を引かれた。
 これから起こる絡みに緊張して、全身を硬く強張らせるドロテアを、フィオナは優しく寝かせていく。柔らかいシーツに背中を沈め、天蓋に囲われたベッドで仰向けになった時、顔の両側にしなやかな腕は突き刺さり、フィオナは不敵な笑みで真っ直ぐに見つめてきた。
「本当に綺麗になったわ? ドロテア」
「私は少し幻滅しています。こういう事に、とても慣れていらっしゃるんだな、と」
「何の見返りもなく、ただ手だけを差し伸べる人がどれほどいるかしら? あなたの前にいるのは、始めからそのような聖人ではなくってよ?」
「そして、どれだけ色んな女の子を味わってきたんでしょう」
「ご想像にお任せするわ」
 細く白い指先が乳房に絡む。
 ドロテアは目を瞑り、黙って静かに受け入れた。じっと大人しく堪えていれば、歌劇団への推薦状を書いてもらえる。かの高名なマヌエラに引き合わされ、フィオナの言う通り見出してもらえるのなら、確かにドロテアの生活は一変する。もう裏通りで唾を吐きかけられる事も、カビの生えたパンを食べる事もない。
 彼女はそうやって、多くの少女を『手助け』している。
 なんて醜い欲望だろう。
 だが醜かろうと、フィオナの差し伸べた手がなければ、チャンスが巡って来る事はなかった。
「うふっ」
 目論見通りに事が進んで嬉しそうな、悪い笑顔がそこにあり、そんな魔女の指先で乳房を揉みしだかれているのでは、素直に感謝の念だけを抱く事は出来ない。
 人生の転機と、このような状況、綺麗なものと醜いものを同時に与えてくれた存在への――そう、ドロテアの抱く感情はコインである。
 どちらが表で、どちらが裏か。
 一方の面には感謝の思いが、もう一方には憎しみが、そして今は体を好きにされている真っ最中だ。
 乳房が手の平に包み込まれて、指の蠢きによって揉みしだかれる。幾人もの少女を知り、今度はドロテアを絡め取ろうとする指遣いに、しかし今はまだ何も感じない。
 あるのはただ、自分という存在を切り売りする感覚だけ。
 体の一部を切り取って、相手に差し出してしまうような苦痛があった。
「ねえ、ドロテア?」
 指先が乳首に絡む。
 走る感覚は甘美なもので、まるで痛みでも走ったように、瞼をぴくりと反応させる。
「あなたにいっぱい、感じるところを教えてあげるわ? どこが弱くて、どれくらい感じるのか。あなたの弱点を発掘して、知り尽くしちゃうわ」
 一気に緊張が増す。
 何もかも暴こうと目論む目で、フィオナは人の体を見てきている。左手に乳房を掴まれ、右手の指がさーっと、表皮を撫でてくびれを伝い、アソコへと向かって行く。性器に触れられる直前となり、より硬い表情となったドロテアへと、フィオナは可愛くてたまらないものを見るような眼差しで、愛撫を始めてくるのであった。
「んっ…………」
 縦筋に指が置かれた。
 少しばかりの指圧によって、肉貝の膨らみがささやかに潰される。そんな指先が上下に動き、ドロテアは切ない感覚を堪え始めた。
 ムズムズする。
 性器への愛撫が始まるや否や、急に足腰が落ち着きを失い、モゾモゾとした挙動が増えていく。膣壁が疼き、やがて愛液の分泌が始まると、それがフィオナの指へと絡み、敏感となっていく体をドロテアはより活発に反応させる。
「んっふぅ……んっ、やっ、あぁ…………」
 悩ましげな顔でシーツを掴み、呼吸を熱っぽくしていった。
 確かにドロテアは感じていた。
「あら? おかしいわね」
 しかしフィオナは何かを疑い、そして口角を薄らと釣り上げていた。
「おかしいって、何の話かしら」
「私の指はね、特別なのよ。どんな女の子だって、今のあなたよりも、もう少しだけ気持ちよさそうにするはずなのに、なんだか一定の線を越えない気がするわ? 気のせいかしら? 個人差かしら? それとも第三の答えがあるのかしら?」
「個人差じゃないかしら、だってフィオナさんの指で、私はもう……濡れて……」
 頬を赤く染めていき、だんだんと声を小さくしながらドロテアは言う。
「そうかしら? 果たして、本当にそうなのかしら」
 フィオナはくすくすと笑っていた。
 もしや、気づいているのだろうか。
 あまり不感症に見えてはまずいと思い、加減を少々遠慮がちにしたのだが、それでも察知するほどフィオナは鋭い人間だったのか。
 その時である。
 ドアをノックする音が聞こえた。

「いらっしゃるのでしょう? フィオナ様」

 それはフィオナを慕う者の声だった。
「抜け駆けだなんてずるいじゃない。私も混ぜては頂けませんか?」
 その言葉でドロテアの心は冷え込んだ。
 この声の主は知っている。
 フィオナの屋敷を訪れた時、何度か顔を合わせるたび、フンと鼻を鳴らしたり、素っ気なくしてくる女性がいた。フィオナが言うにはその理由は、フィオナの事を慕っているのに、そのフィオナが他の子を気にするのが面白くないからだそうだ。
 フィオナをか特別に意識する女性はリンダという。
 ドロテアに対して線を引き、目も合わせないようにしてきた彼女が、今度は混ざりたいと言ってくる。
 一体、リンダは何を考えているのだろう。

      †

 こうしてはいられないわ!

 待ってくれ!
 リンダ、どこへ行く?
 どこへ行こうと言うんだ!

 決まってるじゃない!
 いい? スティーブン?
 私はね、フィオナが好き、大好きなの。
 そのフィオナが私を見てくれないなら……。

 せめて、フィオナと同じものを見ようというのか?
 君は、そこまで……。

 ごめんなさいね?
 だからあなたには構っていられないの。

 ああ、行ってしまった。
 そそくさと駆ける背中が、僕にはすぐさま小さく見えた。
 素早く手を伸ばせば、まだ後ろ髪を無理矢理掴んで引っ張ってやれる瞬間から、既に手が届かないように見えたんだ。
 天は残酷だ。
 僕は多くの女性に言い寄られてきているが、僕自身が本当に興味を持った女性はただ一人。
 だけど、そのリンダが男に興味を示さない!
 そればかりか、ドロテアの体を見に行ったんだ!

      †

 リンダの声を聞き、まさかの思いで驚くドロテアに、その胸中を想像しきる事は出来ない。ただ、フィオナを思う彼女の行動だ。ドロテアを抱いている真っ最中なのが面白くないから、現場に踏み込もうとしている事だけは理解していた。
「いいわよ? リンダ」
 なんとフィオナは、鍵を開けるためにドアへ向かい、そしてリンダを部屋に招き入れていた。
 妖艶な笑みを浮かべる事の多いフィオナに比べて、人を冷ややかに見る目つきの多いリンダが隣に立つと、やはりドロテアに対する侮蔑とも苛立ちともつかないものを、ひしひしと感じさせてくる。
「ありがとうございます。フィオナ様」
 フィオナには丁寧な言葉遣いで、目上に対する態度で礼儀正しく接しているが、ドロテアへの瞳には熱っぽさが宿らない。
 フィオナへの視線がドロテアへ移った瞬間、まるで人格が切り替わった。明るい女性から感情を持たない冷たい女性に変化していた。
「まさかとは思うけど、あなたもいい思いをしに来たの?」
「まさかね。あなたの辱めを受ける姿を見に来ただけよ」
 リンダはフンと鼻を鳴らした。
 フィオナがドロテアに構うのが面白くないから、せめて辱めを受ける姿を見る事で溜飲でも下げようというわけか。そのためだけに情事を覗き見に現れる人間がいる事に、もちろん思う所はあるが、フィオナが良いと言ってしまった。
「二人きりじゃないと嫌だったかしら?」
 フィオナは楽しげに問いかけてくる。
「いいわよ。一対一の覚悟しかしていなかったから、少し驚いてはいるけど」
「生意気ね」
 そこでリンダが視線を鋭く細めていた。
「そうかしら」
「言いなさいよ。あなた本当はフィオナ様をどう思っているの?」
「屋敷を追われる前、歌劇での有名人を何人か知る機会があったわ。フィオナさんの事も、少しだけ知っていた。大勢が憧れる有名人が、実は裏でこういう事をしていたら、ちっとも失望せずにいられるかしら」
「やっぱり、手を差し伸べてもらった立場で生意気を……!」
 正体を現したか、とでも言わんばかりにいきり立ち、今にも詰め寄ってきそうな一歩を踏み出すリンダだが、それをフィオナはくすくすと笑いながら手で制した。
「リンダ? そう焦らなくても、私はただ見返りを得ているだけよ? ドロテアとは体で払ってもらう関係に過ぎない。深く愛しているのは、あなただけよ?」
「フィオナ様……」
 リンダは顔を赤らめていた。
「だけど、今はドロテアの相手をしたいの。わかってもらえないかしら?」
 要するに、この人は単なる浮気相手で、一番ではないから許してくれと言っている。
 普通、まかり通るだろうか。
「…………………………わかりました」
 答えるまでに随分と間があったが、リンダはこの状況について飲み込んだらしい。
 魅力とは罪なものだ。
 あまりにも深く惚れ込まされれば、そのおかげで無理が通ってしまうのだ。
 渋々そうに沈黙したリンダを背に、フィオナは意気揚々とベッドへ戻り、改めてドロテアに覆い被さる。
「私は何も感謝していないわけじゃないのよ」
 目を背けつつ、ドロテアは言った。
「知ってるわ?」
「ただ、こういう見返りを求められるとは思っていなかったから……」
「ええ、わかるわ? 失望してもらって結構よ? だけど、あなたの事はしっかりと、可愛がらせてもらうわよ?」
 再びアソコへ指が絡んで、縦筋をなぞる愛撫が始まる。
「んっ……」
 やはり気持ちいい。
 リンダが現れてのやり取りで、少しばかり時間が空いても、すぐには乾かずにいた愛液が、待っていたように塗り伸ばされる。そして分泌がより進み、甘い感覚が広がる事で、足腰が落ち着きを失って、胴や足首がそわそわしてきた。何を急ぐでもないのに奇妙な焦燥感が湧いて来て、手足がじっとしていられなかった。
「やっぱり、少しおかしいわね」
「それは……どういう……」
「ドロテア? あなたの感度は、本当はもうちょっと高いんじゃないかしら? 感じやすさは人それぞれ、何も反応しない感じの子もいるけど、あなたはそうじゃない。高いはずの感度を誤魔化している気がするわ」
「誤魔化すって……」
 既にバレているのでは、表情を取り繕う意味がなく、ドロテアはただ視線を泳がせる。
「ほら、目を背けた」
 フィオナはくすくす笑った。
「私は別に、何も……」
「あなた、少し魔法が出来るわね? 理学を囓った事があるのかしら? あなたは感度を鈍らせている。だけど完璧な不感症になりきっちゃうと怪しいから、少し調整したのでしょうね」
「もしそうだとして、咎められるような事だというの?」
「それは私の欲望を邪魔している。だから、あなたにはちょっとしたお仕置きをするわ? 立ちなさい?」
 ベッドから起き上がり、ドロテアは床に降り立つ事となる。すると背中を軽く押されて、リンダの前へと導かれた。
「ドロテア……」
 人の事が気に食わない顔と目が合った。
「さあリンダ? あなたの魔法で、ドロテアが自分にかけた魔法を解いて頂戴? 信仰を学ぶあなたになら、あっという間の話でしょう?」
 フィオナが笑いかける。
「もちろんです」
 途端に愛想が良かった。ドロテアに対する時と比べて、随分と違った表情で返事をしてから、また冷たい眼差しに立ち戻り、そしてぶつぶつと呪文を唱える。
 解除の魔法がかかった時、体内を巡る効力が薄れていくのをドロテアは感じていた。
「これであなたは本来の感覚で私の愛撫を受ける事になる。だけど、まだただ魔法を解いただけ。お仕置きにはなっていないわね」
「あの、お仕置きって一体……」
「そんなに不安にならなくても大丈夫よ? 痛いことは何もしないから。むしろ、気持ちいいくらいよ?」
 フィオナは背後に忍び寄り、後ろから肩に手をかけて来ながら、耳の裏側へ囁くように呪文を唱える。
「……っ!」
 その瞬間、ドロテアは唇を引き締めた。
「あなたにかけた魔法はさっきの逆、快感を増幅してしまうものなのよ」
 背中へと抱きつかれ、背後から回る右手に乳房を揉まれ、もう一方の腕は下へと伸びて性器の愛撫だ。
「くっ……! あっ、くはぁ……!」
 ドロテアは喘いだ。
 胸とアソコの刺激によって、今まで以上のものを感じて身悶えしていた。
「あらあら、ちょっと効き過ぎちゃった?」
「んっひっくっ、あぁ……! あっ、あぁ……!」
「手加減したつもりだったけど、あなたの本来の感度は私の予想以上だったかしらね? 感じやすい体だろうとは思っていたけど、それにしたって随分と喘ぐじゃない?」
 愛液を掻き取る指先の刺激によって、ドロテアの腰はビクンと強く後ろへ引っ込み、フィオナもろともくの字となる。そんな姿勢の変化で背中に体重がかかった時、耳元でくすくすと笑い声が聞こえて来た。
「うっふふ、いい反応だわぁ?」
 恍惚とした表情が目に浮かぶ。
 この女は本当に、同性を嬲る事を楽しんでいる。
 魔法をかけてでも反応を良くされて、今のドロテアはフィオナにとって、どれほど楽しい玩具だろうか。
「さあ、向こうへ立ちなさい?」
 ドロテアはリンダを背にした位置に立たされる。
 背後から視線が突き刺さってくるのだろうから、リンダを後ろに立たれた状態は落ち着かない。だがそれ以上に、フィオナはその場にしゃがみ込み、性器にぐっと顔を迫らせるので、おかげでもっと落ち着かない気持ちになった。
 至近距離からまじまじ見られる恥ずかしさに、ドロテアは顔を赤らめていた。
「あっ…………」
 指が挿入された。
 天に向かって突き立てた指先が潜り込み、その挿入によってピストンが始まると、ドロテアの足腰をより大きな刺激が襲ってきた。
「あぅ! あっ、くぅ……!」
 膝がビクビクと震える刺激に目を見開き、大きく喘いだドロテアは、あまりの感覚にきつく歯を食い縛る。
 その時だった。

「あっ――――――!」

 頭が真っ白に弾け飛び、フラっと力が抜けて後ろへよろめく。後ろのリンダに抱き止められるが、そうでなければ今ので転倒していたかもしれない。
「あらあら、イっちゃったわね? よっぽど気持ち良かったみたい。いい反応を見せてくれて――ありがとう?」
 わざとらしい、嫌味なお礼と共に、リンダは右手の指を突き出してくる。
 その指先からは、雫がぶら下がっていた。
 愛液の雫が糸を引き、静かにぷらぷらと揺れるのだった。