第5話 屈辱の鑑賞会
そして、次の日である。
またしても、ケンの父親が現れた。
「らっしゃーせー」
決して歓迎などしていない顔で迎え入れ、空いているテーブルまで案内すると、まず真っ先に注文をしてくるのはクロエであった。クロエのことを注文して、父親はクロエのことを自分の隣に座らせたのだ。
嫌々ながらに、クロエは隣へ腰を下ろす。
肩に腕が回って来て、抱き寄せられるのは案の定、胸にまで指先が及んで来るのも、やはり案の定のことだった。
「こういう店で働いて、正解だったんじゃないか? クロエ」
「んなことないから」
「いやぁ、メイド服が似合う似合う。とてもエッチじゃないか」
品定めのような視線で、露骨に胸へ視線を注いでくるので、クロエは少しばかり身震いする。
「で、他にご注文は?」
険のある顔でそう尋ねた。
せめて客と店員の関係に過ぎないという一線だけでも引くことで、心の距離だけでも離そうとしているのだった。
「『クロエの記録』だ」
「なんそれ」
「店長には渡してある。すぐにわかる」
「いや、うちがわからないんで。なんの記録なん」
「だから、それはその時にわかる。とりあえず、他の注文も聞け」
「へいへい」
「他には『クロエの手コキ』と、『クロエのオナニー』にしよう。そういえば、勤務中にアメを舐めていたそうだな? オナニー道具はキャンディでどうだ?」
などと、次々と注文をしてくる父親のため、また一旦は席を離れて伝えにいく。
カウンター越しの店長に、『クロエの記録』という注文があった旨を伝えると、すぐに用意するから席に戻って構わないと返された。それが一体、何を意味しているものなのか。何の記録だというのか。その説明を店長の口からも聞くことはできなかった。
(ま、なんでもええけど)
どうせ、ロクなものではなさそうだ。
ともかく、キャンディを片手に席へ戻ると、あとは手コキやオナニーの注文に従うため、右手では父親の逸物を握る、もう一方の手ではスカートの内側に手を入れて、キャンディの丸みを押しつけてのオナニーを開始した。
「うーん。いい気分だ」
「そ、すか」
クロエは恥辱混じりの嫌々な表情で、握りたくもないものに指を絡め、上下にしこしことしごいている。手の平に伝わる熱気と、血管の浮き出た部分の感触は、自分を脅した男のものである分だけ、おぞましいものとして感じられた。
(はー。だるっ)
肩に回してくるその腕では、やはりメイド服の上から胸を揉み、指をまんべんなく使って揉み心地を味わっている。
やがて、店長が現れた。
店内中心、そのテーブルの置かれていない空間へ足を運んで、すーっと息を吸い込むなり、次の瞬間には声を大きく張り上げるのだ。
「皆さん! 今日はちょっとした催しを用意しています!」
集まる客全てに向けて、大仰に両手を広げて宣言する。
その内容は、クロエが大きく引き攣るものだった。
「映像記録魔法を駆使することで、今日は皆さんにクロエの素晴らしい記録をお送りしたいと思います!」
まずは思った。
「やっぱり、そういう……」
さしずめ、その手の魔法だろうとは思ったのだ。
そのくらいしか、記録という言葉の意味するところを思いつかなかった。
もっとも、クロエが真っ先に想像したのは、この店で働き始めてから、様々な『サービス』を提供してきた屈辱の記録の公開である。こんな形で働くのも嫌なのに、あまつさえそれを映像として見せびらかし、この場に集まる客達全員の前で見世物にしようとしていると思ったのだ。
それは大きくは外れていなかった。
というより、ほとんど当たっていた。
しかし、実際に流れて来た映像は予想と異なり、魔法によって現れたスクリーンの中に流れるものを見て、クロエは半ば驚愕していた。
ケンとクロエが映っていた。
店内に浮かび上がる大きな画面サイズの映像魔法に、テーブルで隣同士となって教科書を捲るクロエとケンの、それぞれの姿がある。
「あれって……!」
そう、あれはあの瞬間だ。
がくっ、
と、何かに打たれ、仰け反ろうとしたように、映像の中のクロエはとある瞬間に首を逸らした。その場面で一体何があったのか、クロエ自身の映像である以上、クロエは嫌というほど知っている。
その瞬間があったからこそ、クロエは最悪の運命を迎えたのだ。
*
「姉ちゃん。膣分泌液について教えてくれる?」
「あー。あれね? うん、いいけど」
と、それは映像の中で交わされるケンとクロエの会話であった。
あの時、ケンの罠にかかったことで、クロエは完全な思い込みに囚われていた。
自分はケンに脅されて、泣く泣く従うことになった『はず』である。バイト禁止の校則のため、このことを学校に報告されるのは『死んでも』阻止しなくてはならず、そのためにはケンの『言うことを聞くしかない』と。
自分の身に起こったことを映像として見ることで、その時の記憶は鮮明に蘇った。
「つまり何か?」
「あーんなガキにまんまと罠に嵌められたって?」
「そんで穴にもハメられちゃった?」
「はっはっはっは! そいつはウケるぜ!」
「なあ、だったら俺の考えた策略にもハマってくれよ」
「そいつはいいなぁ!」
口々に感想を言ったり、ケンに嵌められたことを馬鹿にして、その一人一人の声がクロエの屈辱を大きく煽る。
「ほら、手が止まってるぞ?」
その上、クロエは手コキをやらされている。
この店で働くことになった元凶である人物の、握りたくもないものを握って右手を上下に動かしながら、左手ではオナニーを行っている。棒キャンディの丸い部分を押し当てて、ワレメを上下に擦っているのであった。
そして、映像魔法が作り出すスクリーンでは、クロエのストリップが始まっていた。羽織っていたブレザーのボタンを外し、グリーンのネクタイをほどいた上で、その下にあるワイシャツのボタンも外していく。
ワイシャツのボタンを一つずつ外していくことで、だんだんと肌が見えていく映像は、今ここにいるクロエの羞恥も煽ってならない。乳房を出したり、アソコを人に見せた経験まで、とっくしているはずなのに、映像に群がる視線のせいか、改めて顔が赤らんでいるのであった。
「何を恥ずかしそうにしてるんだ?」
楽しげな、どこか上擦った声で父親は尋ねてくる。
「別に」
「あれがそんなに恥ずかしいか?」
「だから、別に」
ぶっきらぼうに答えるが、顔が染まっていくのを自分自身では止められない。頬に宿った熱が広がり、耳すら赤くなろうとしているのを、恥じらいなど感じるものかと念じてみても、コントロールできないのだ。
やがて画面上では白いブラジャーが現れる。
『いいじゃんいいじゃん。わっ、ブラは白か! 見かけによらず清純だね?』
ケンの元気に調子に乗った声を聞き、クロエの記憶は刺激を受ける。映像を介して過去をそのまま見ることで、記憶の底に眠った映像が脳裏にもまた蘇り、その時の自分自身の感情や、ケンの浮かべていた表情に至るまで、嫌というほど鮮明に蘇った。
脳から掘り起こされた記憶によって、まるで無意識のうちに答え合わせをするように、映像魔法の内容が確かに正しいことを実感する。撮影した映像に嘘も何もないだろうが、心理的な実感としてそういうものが湧くのであった。
こんな記録がある以上、その時から盗撮魔法が仕掛けられていたのだろう。
そして、思い返せばケンは落ち着いていた。
自分の悪事が親にバラされようとしているのに、そのことに関する焦りを微塵も見せないケンの様子を不気味にすら感じたが、自分の父親がクロエを陥れようとすることは、もう始めからわかっていたのだろう。
「息子さんとは、グルだったの?」
「ん? そうだな。色々と記録があるから、大人の私から脅してくれと頼んで来たぞ」
「あー。そゆ感じ。親子でそゆ感じか」
どうしようもないものに対して、かえって諦めの念すら湧いてくる。
ケンという少年は、つまりそうすれば父親が味方になることをわかっていた。父親がそういった手合いの人物だと、そもそも理解していたのだ。だから自分も同じく悪いことをやり始め、悪事がバレそうになって困った時、脅し返されて困った時、そんな時はどうすればいいか、親に相談したり、助けてもらったりしているのだろう。
不良であると、誤解されているに過ぎないクロエなど、それに比べていかに可愛いことか。
「オナニーの調子はどうだ?」
父親はニヤニヤと尋ねてくる。
「……うっさい」
クロエがそう返す頃には、もうとっくの昔のように濡れていた。
ワレメから染み出た愛液で、ショーツの表面がぬかるんでいる。そのヌルっとした汁がキャンディに移っていき、スカートの中から出して確認さえしてみれば、表面に水気を纏った光沢がありありと窺えるはずだった。
「ひゅー!」
「可愛いおっぱいだなぁ!」
「よっ、反応が初々しいぞ!」
見れば映像でのクロエは、ケンに対して乳房を露出して赤らんでいる。こうして自分自身の表情を見てみると、あの時の自分はあんな顔をしていたのかと、事実として突きつけられる感覚が恥辱となる。
常に鏡を確認しながら生きているはずもなく、この時の自分の顔はこうだったのかと、映像目線で知ることは、悪い意味で新鮮だった。
ほーら、お前はこんな顔をしてたんだぞ。
と、誰に言われているでなかったとしても、そう煽られている気分になりかねない。
「乳首が反応してやがるぜ?」
「ガキのクセして揉みやがってよぉ」
「で、どうだったんだ?」
「年下の指が気持ち良かったか?」
「そりゃあ、良かったに決まってんだろ」
「あー! そうだったそうだった!」
「なんてったって、ショタコンだもんなぁ!」
「はっはっはっはっは!」
その嬉々とした表情の数々と、うるさい大笑いが胃をちくりと刺激する。
「さて、そろそろ出るぞ」
父親が不意に言い出す。
その時、噴水のように巻き上がった白濁は、頬にまで届いて付着した上、胸や肩など衣服にも染み付いていた。拳は当然のように汁を浴び、こんな男に汚されてしまった不快感で肌が泡立つ。
「また赤ちゃんの素がかかっちゃったなぁ?」
その言動に身震いした。
(ほんっと、キモすぎる……)
上擦った猫なで声に、体中さえ引き攣っていた。
*
映像は移り変わって、比較的最新のものが流れ始める。
スパンキングの映像だった。
ぺちん! ぺちん! ぺちん! ぺちん!
平手打ちを受けていた際の光景を、カメラ視点で拝まされる。
その時のクロエはケンの膝に腹を乗せ、四つん這いに近い姿勢で尻を突き上げていたのだが、だからクロエ自身の視覚的には、床だの壁だのを見つめるばかりであった。尻という、自分では見えにくい場所など、観察しようとすら思っていなかった。
ぺちん! ぺちん! ぺちん! ぺちん!
それが今、ばっちりと映っている。
四つん這いの真後ろからのアングルで、お尻だけをでかでかと目立たせた映像に、平手打ちのたびに現れる幼い手が、ペチッ、ペチッ、といった打音と共に見え隠れを繰り返す。叩く時にだけ画面に現れ、音を鳴らしたその瞬間、画面の外へと消えていくのだ。
「お尻ペンペンとは、一体いくつだ?」
「叩いてる方がお子様のはずなんだよなぁ?」
「年齢が逆転してんじゃねーか! 年齢がよぉ!」
屈辱だった。
お仕置きなど受ける謂われはないのに、それでも受けるお仕置きの屈辱感も相当なものだったが、それを映像として公開され、こうも大勢に見られている。ただでさえ屈辱だった出来事を見世物として扱われての、屈辱の上塗りとでもいうべき体験に、クロエの心は憤りでくつくつと煮え立っていた。
「可愛いお尻ちゃんだ」
しかも、映像の中だけでなく、たった今も父親に尻を見られている。
手コキで射精させてからというもの、直ちに次の注文を入れられて、クロエはテーブルの上に上半身を投げ出していた。足を肩幅ほどに開きつつ、尻を後ろに突き出すポーズで、すぐ真後ろに座る父親から、ショーツの尻をじっくりと視姦されている。
(キモい……キモい……)
尻が撫で回されている。
じっくりと味わうような手つきにより、どちらの尻たぶも時間をかけて、丹念に撫で回される。そのすりすりとした摩擦を通じて、父親の手汗が皮膚に移ってくる不快感で、肌が拒否反応を示していた。
ぺちん!
物は試しのようにして、父親の手によっても、クロエの尻は叩かれていた。
「気分はどうだ? ええ? クロエちゃーん」
「サイアク」
「なんだって? 聞こえんなぁ?」
いかに楽しげな顔をしているか、調子に乗って上擦る声で目に浮かぶ。
ぺちん! ぺちん!
その打音は映像からも、クロエ自身の尻からも、どちらからも聞こえていた。ケンに叩かれた際の痺れや音が脳裏に蘇る一方で、今この瞬間にも新しいスパンキングの記憶が刻み込まれて、クロエは硬く拳を振るわせていた。
「ま、仮病はいけねーよなぁ?」
「家庭教師がサボりはよくねーな? サボりはよぉ」
「んで、普段はなーにを教えてるんだ?」
「もちろんエロいことさ」
「はは、セックスも仕込んでやったんだろうな?」
客達から繰り出される侮辱の声は、もっぱら映像に向けられたものだったが、その映像の中にクロエはいる。映像に対する言葉は全てそのまま、今ここにいるクロエの胸に響き渡って、顔を苦悶に染め変えていた。
ぺちん! ぺちん!
平手打ちが心を抉る。
「いつまでやってんの」
クロエはいつしか、肩越しに父親を睨んでいた。
「なんだ? その目は」
「別に、初犯じゃないんだろなって。今までにも被害者とかいんだろなって」
「被害者? 何の話かな。私の目の前には、イケナイことをしてお仕置きを受けている哀れな女の子がいるだけだが」
(こいつは……!)
憤りが膨らんで、その瞬間にまた平手打ちは繰り返される。
ぺちん! ぺちん!
叩かれる痛みより、屈辱的な扱いの方が心に来る。
クロエはきつく歯を噛み締めながら、なおも父親を睨み返していた。
「で、結局自分の子のやったことは許してンの?」
映像を意識してクロエは言う。
いつから記録魔法が働いて、盗撮をされていたのかはわからないが、それをわざわざ店に持ち込み、催しとして公開する父親である。ケンのしてきたことを少しでも咎めている可能性など、とても期待できたものではない。
「なんだ? 人の教育方針に口でも出すのか? ガキのくせに」
大して怒ってなどいない、何かを面白がった楽しげな口調で、急にスパンキングの手が止まったかと思いきや、クロエは次の瞬間に身震いした。
ぺろっ、
と、ショーツのゴムからはみ出た尻の端が、舌によって舐め上げられた。
皮膚に唾液の染みついてくるおぞましさに、尾てい骨からうなじにかけて、背骨を伝う激しい怖気がせり上がった。
さらにその次の瞬間には、ベルトを外す音が聞こえてくる。
「店長! 『クロエのマンコ』を注文するからな!」
高らかな宣言と共に、ズボンを脱ぎ捨てる衣擦れの音がして、逸物が尻に向けられていることをクロエは悟る。ショーツが下ろされ、剥き出しとなった下腹部に切っ先は押し当てられ、その進行によってワレメがあっさりと亀頭を飲み込む。
「んぅ……!」
自分でしていたオナニーのせいで、ワレメは初めから濡れている。
今更準備を気にする必要もなく、父親の肉棒はみるみるうちに埋まっていき、尻にはその腰がぶつかっていた。
「あーあー。また、私と繋がってしまったようだ」
「……キモ」
「赤ちゃんの素をあげるからね?」
そう口にする瞬間の声は、妙にねっとりとして上擦って、耳に見えない粘液でも塗りつけられたような気持ちになる。
「キモッ、マジでキモいんで、赤ちゃんとかいう言動慎んでくんない?」
クロエは本気で引いていた。
こんな男の肉棒が入っていることにも、ひどく引き攣っていた。
「慎むのはクロエの方では?」
父親がピストンを開始する。
「あっ、んぅぅ……マジ、終わってンだけど……んっ、親のくせして、うちみたいな子とヤりだすとか…………」
気分は最悪に他ならない。
自分を陥れたこともそうだが、ケンという息子がいながら、クロエという子供を犯しているのだ。クロエとケンの世代は異なるが、彼の見た目を考えれば、子供の年齢がクロエほどだったとしてもおかしくない。
「んぅ……ふっ、くぅ……こんなん、あんた息子の手本になる気とか、絶対ないよね」
子持ちならば妻の存在だってあるだろうに、それも気にしていないのか。
「手本にならなると思うぞ」
「あぁっ、んぅ……こういうことの手本とか、終わってる……んくっ、自分の子……親のあんたがワルにして、あっ、んぅぅ……っと、どうすんの…………」
「立派な第二の私になるんじゃないか? いいことじゃないか」
「くぁ……くっ、ちっとも……よくっ、んぅ……ない……んぅぅ……!」
「ん? 何が良くないって? 聞こえないな? ああ、もしかして、この程度の勢いでは気持ち良くないという意味かな?」
「ちがっ、あぁ――!」
咄嗟に否定しかけるが、その時にはもうピストンのペースが挙がっていた。
「お? 声が変わったじゃないか」
「ああぁぁ……! あっ、あぁぁ……あぁっ、あん! あぁん!」
先ほどまでは、まだ声を抑えていられた。
乱れきった声から、快感こそ隠しきれていなかったが、こうもはっきりとは喘いでいなかった。
「あっ! あん! あぁん! あぁん!」
それがもう、より完璧に喘いでいる。
こんな男の肉棒なのに、挿入した人物の人柄など関係無く、クロエの肉体は反応を示している。ピストンの生み出す粘膜の摩擦から、激しい快楽電流が生まれたかと思いきや、それが全身に行き渡るのだ。
「はぁあっ、あっ、あぁぁ!」
拳が硬く握り締められ、テーブルの上で震えている。
それはついさっきまでなら、怒りや屈辱によるものだった。煮えくりかえる感情のあまりに力が籠もっていたはずが、すっかり快楽に対する反応と化していた。
それだけ声が大きくなれば、店内の注目はクロエに集まる。
父親からバック挿入をされる姿を見て、荒くれ者がニヤニヤしならセクハラの言葉を投げかけて、クロエに屈辱を与えてくるなど言うまでもない話であった。