第4話 キャンディとママ
次の日の接客時、クロエはキャンディを舐めていた。
「らっしゃーせー」
くちゃくちゃと音を立てながら、棒のキャンディの棒きれ部分を唇から露出しての挨拶など、むしろ飴よりも客を舐めている。
しかし、良くも悪しくも柄が悪いせいなのか。
「よお、いい性格のねーちゃんじゃねーか」
入店してきた荒くれ者は、そんなことには頓着しなかった。
もちろん、態度が悪いと難癖をつけ、謝罪など求めてくる手合いもありえるのだが、今のところそれは起こっていない。
(しょーもな)
クロエは何も、バイトや仕事を舐めているわけではない。
少なくとも、他の仕事先ならやらないことだ。
正直なところ、こんな職場は好きで働いているわけでも何でもない。できればもっとまともなところで稼ぎたい。クビにでもしてもらえるなら、よろこんで切られたいくらいであるが、そういう理由一つで態度を悪くしているわけでもない。
そういう理由もあるにはあるが、キャンディそのものは店長に渡されて、元気の出る効果があるからと、仕事中でも舐めて良いと言われたのだ。それどころか、今日も体を張るだろうから、さっさと口に入れろとまで言ってくるので、それに押されて本当に舐めながらの接客である。
初日から騎乗位をやらされたので、二日目もどんな注文が来るかわからない。
残念ながら、体力をつけるにこしたことはないわけだった。
(他ならありえんって)
これ一発でやめさせられる職場が一体世の中にはいくつあるやら。
治安の悪い店というだけのことはある。
クロエがキャンディを咥えていることなど、ほとんどの客が気にも留めない。
しかし、やがてはクロエの接客態度を見咎めて、ケチを付けてくる客が現れる。
「らっしゃーせー」
と、次に入って来た客を迎えた時、その荒くれのモヒカンは、一目見た瞬間からクロエに対して声を荒げたのだ。
「オイオイオイオイオイ! すっげー態度だなオイ!」
「オイが多いですねー」
「舐めてんのか?」
「ま、キャンディなんで」
「そうじゃねーだろ? ボケと漫才か? あん?」
「はいはい。サーセン」
「謝って済ませるなよなぁ? おい、店長! 来いよ店長!」
モヒカンがあまり騒ぐので、たちまち現れた店長は、事情を知るなり驚くほど素早く頭を下げて、早速のように機嫌を取り始める。
あまつさえ、こんなことを言い出すのだ。
「どうもうちのメイドは教育がなっておらず――」
(おい)
「――こんな接客態度を」
(誰がこれ渡したと思ってんの)
「つきましては、このメイドには罰として、今からこの飴をパンツの中に入れさせますので」
(どゆこと?)
理解できなかった。
その何が反省であり、店員への教育なのか、まるでちっともわからないが、店長が真顔で説明を始めた時、しかし合点がいってしまった。振動魔法という言葉が出て、それをキャンディにかけると聞いたところで、色々と想像がついてしまった。
所詮、ここはそういう店だ。
性的なサービスの存在する店だ。
アソコで物が振動している状態で接客をする。
そして、そんなメイドの姿を見て楽しむ。
そんな催しを行って、臨時のイベントとしようというわけだ。
クロエは深々とため息をつきながら、お望み通りに下着の内側にキャンディを入れ、それは魔法によって振動する。店長のかけた呪文で小刻みに、アソコの皮膚を振るわそうとブルブルと揺れ動き、それが刺激となってクロエを襲う。
しかも、コップ一杯の媚薬も飲まされた。
たちまち体が火照るので、クロエは内股気味になりながら、感じながら店内を歩き回る羽目になり、その様子を誰も彼もが楽しんでくる。
「気持ちいいのか? 感じてんのか?」
といった野次は、いくらでも飛んできていた。
(んっ、やば……なんこれ、刺激強すぎ………!)
振動に翻弄されながら、スカート越しにたまにアソコを押さえながらの接客は、感じるせいで集中力を持っていかれる。
「んっ、くふっ、んぅぅ…………」
声も出そうだった。
気をつけなければ喘いでしまう状態で、クロエはテーブル席へ向かっていき、そこに集まる冒険者のパーティから注文を聞き取っていく。
「ご注文は以上で?」
どうにか声を抑え、平静を装うが、キャンディの効果で体力をつけるどころか、むしろ精神を削られている。内股気味に力を入れ、下腹部を引き締めることで快感を堪えるため、そちらに意識が持っていかれている。
注文を聞き間違えてはいないか不安になりながら、そのテーブル席に背を向ける。
その瞬間、さっと手を伸ばし、スカートを捲ってきた手の動きには気づかずに、クロエは知らず知らずのうちにショーツを見られた。白いショーツのお尻を見たことで、喜ぶパーティを背に進み、カウンターへと向かっていく。
注文を伝えるため、カウンターに進んで行く途中であった。
さわっ、
と、またしても手が伸びて、クロエは尻を触られていた。
「へへっ、いいケツじゃねーか」
「うっざ」
クロエはさっと払い退ける。
昨日の接客では、こんな手はすぐにかわしていたのだが、今のクロエは反応ができなかった。次のテーブル席を横切る際も、そのまた次のテーブルでも、もしや反応できないのかもしれない。
幸い、今日はその手の客が少なく、もっぱら言葉のセクハラが中心で、触られるのはその一度きりで済みはしたが、勝手に触られた気分の悪さといったらない。胸にムカつきを抱えたままに注文を伝え、やがて受け取る料理を運んでいった。
「んんぅっ」
運ぶ途中、声を出しかけ、立ち止まることが何度もあった。
ブィィィィィ…………!
と、そんな振動を感じながらの接客は、立派な見世物として喜ばれていた。
「へー? アソコで振動がねー?」
「今にも濡らしてるってわけだ」
「誰か『注文』して確認してみろよ」
「あん? テメーが金出すのか?」
クロエのことを見る客見る客、誰もがクロエの様子を面白がる。クロエ自身はスカート越しにアソコを押さえたり、唇を懸命に引き締めたりと、どうにか我慢しているのに、それを面白がる周囲の声には、もう本当に腹が立ってたまらなかった。
「香りがしてきたぜ?」
媚薬のせいで濡れやすく、それでなくとも湿っているクロエのアソコは、確認さえすればはっきりと染みが出来上がっていることだろう。いずれは内股にも湿り気が広がりかねない勢いを、しかしこんな酒臭い店で嗅ぎ取った嗅覚の持ち主に、感心するよりむしろ呆れた。
やがて、クロエへの『注文』がやってくる。
大金を出す客が現れ、思いつきの楽しいプレイを始めるのだ。
*
今日初めての注文は、先のモヒカンだった。
クロエの接客態度に腹を立て、騒ぎ立てたモヒカンは、しかしクロエが見世物となった状況を面白がり、すっかり機嫌を良くして金まで出し、クロエのことを自分の隣に座らせたのだ。
「よお、クロエっていうらしいな」
「んぅ……そ、そう……だけど…………」
声を我慢しながらの喋り声は、ただ聞かれたことに答えるだけでどこかつたない。太ももを引き締めて、モゾモゾとしながら座った様子は、てっきりトイレを我慢しているように見えてもおかしくなかった。
「アメちゃんが好きなのか?」
「好きって、ほどじゃ……んぅぅ…………」
クロエは声を熱っぽくして、たまに堪えきれないようにして、強めの喘ぎを漏らしている。
しかも、今はモヒカンに肩を抱かれていた。
自分の隣に座らせながら、さも自分の女として扱うように、肩に腕を回して抱き寄せている。支払い無しのセクハラには抵抗しても良いことになっているが、金を出した客には逆らってはいけないのが、店長から課せられているルールである。
その手が乳房に伸びたとしても、今は払い退けてはいけない。
メイド服の上から絡む五指をぐっと堪え、密かに歯を食い縛ることで、クロエはこの時間を耐え抜こうとしているのだった。
「ところでよ。ま、あんだけ美味そうに舐めてたんだ。今度は俺のアメちゃんを舐めさせてやるよ」
あまり舐める舐めると言ってくるので、その注文内容はフェラチオだと思ったが、しかしクロエの眼前に突きつけられたのは、何やら粘っこい白濁をまぶした棒のキャンディだった。
一体、この表面に絡みついているものは何なのか。
「くれんの? んっ、んぅ……」
訝しげな目で尋ね、そして振動の刺激の唇を引き締める。
「おう。舐めろよ」
「いや、なんかヘンな匂いすんだけど」
「いいからいいから、きっと美味いぜ?」
そう言って唇に近づけてくるのだが、そこから漂う臭気の青臭さといったらなく、もしや精液でもまぶしてあるのではと思い至って、それを口に迎えることに拒否感を抱き始めた。何の確証もないのだが、それを連想する見た目の上で、匂いもそれっぽいとあっては、口に含めたくなどないのであった。
「あんま美味しくなさそうだけど」
「しょうがねーな。なら、とびっきりの魔法をかけてやるよ」
「どんな」
「なんだって美味しく感じる魔法だぜ? 洗脳の一種だが、一時的なもんだし、味を美味しく感じるってだけの効果だ。ま、味覚用の魔法ってことになるな。どうだ?」
「いや、あやしー……んぅ…………」
クロエは平然と喋っているわけではない。
普通を装っている最中にも、懸命に表情を取り繕い、アソコに与えられ続ける振動を堪えている。火照った頬で、呼吸は常に熱っぽく、こうしている今にも手でアソコを気にしながら、振動を少しでも和らげようと、太ももを引き締めているのであった。
「いいからいいから、騙されたと思ってかかってみろよ」
「いや、洗脳? みたいな、そういう系はうち、トラウマがあって――」
「いいからいいから」
「っつわれても」
「なあ、これも客の注文だぜ? こっちは金払ってるんだぜ?」
このままでは埒が明かない。
あくまで魔法をかけてみたいモヒカンと、それを拒みたいクロエの押し問答は、一体いつまで続くことになるのか予想がつかない。
普段なら、もっと逆らっていられたのかもしれない。
だが、さすがの刺激にそれどころでなく、もはや聞き入れてしまった方が楽ではないかという考えに心は傾く。いつまでも嫌がっているための、精神的な気力が足りないせいで、クロエはつい頷いてしまっていた。
「んじゃあ、そんな言うなら?」
「決まりだな」
モヒカンは嬉々として魔法をかけてくる。
その上で改めて近づけてくるキャンディへと、クロエもまた唇を近づけて、白濁のまぶされたそれを咥える。
「どーよ。俺の精液の味は」
「えっ、美味し……いや、精液って……!」
クロエは動揺した。
それっぽいとは思っていたが、まさかこれが本当に精液なのか。だとしたら、それを美味しいと思っている自分は何なのか。モヒカンがかけたという魔法の効果だとはわかっているが、美味しく味わってしまう自分自身に対しての感情は複雑だった。
舌に広がるのは青臭い味ではなく、もっと美味なものなのだった。
いや、それどころではない。
舌がそれを美味しいと認識した時、快楽によって溶かされていくような、熱っぽい感覚がみるみるうちに全身に広がった。舌の根から伝い広がり、瞬く間に全身に行き渡る熱に浮かされ、そのままビクっと体が震えた。
「――――っ!」
全身がひどく弾んで、クロエは自分が絶頂したことに気づいていた。
アソコは先ほどから濡れていた。
振動に刺激を受けて、愛液はそもそも出ていたが、それがより一層の量となり、ショーツの湿り具合は増すのであった。
「んじゃあ、次は俺が舐める番だぜ?」
しかも、モヒカンの要求はまだこれでは止まらない。
「追加で払っても構わねぇ、おめーが通ってるっつー制服に着替えてくれ。制服の姿を見せてくれよな。ああ、そういえばメニューにあるんだったな。『クロエの制服』ってのが」
まさか、こんなところで女学院の制服を着るとも思わなかった。
注文である以上、メイドとしてはそれを聞き入れ、クロエは一旦更衣室へと向かっていく。素早く制服に着替えて席に戻ると、待っていましたとばかりのモヒカンは、次に対面座位のような形での密着を求めてきた。
椅子に座ったモヒカンの、その脚へと股を置き、向かい合わせとなった時、モヒカンはその手でボタンを外し、クロエの前をはだけさせてくる。
「ママぁ……!」
荒くれた表情で、しかし聞きとしながら、モヒカンは急にそんなことを言って来た。
「え?」
クロエは引き攣っていた。
「なあ、ママぁ! ボクちゃん甘えにきたんだぜ? ママのオッパイ吸わせてくれよぉ! ベロベロと舐め回していいよなぁ? ママぁ!」
(えっ、そーゆー趣味? キモすぎない?)
「しゃぶっちゃうぜ? ママの乳首をよぉ!」
「んぅぅぅ……!」
クロエとしては、人をママと呼んでくるその趣味に、正直なところ戦慄していた。背中に寒気が走って身震いしたほどだったのだが、その顔が胸へと埋まり、乳首に吸いついてきた瞬間、クロエが感じるものといったら、やはり快楽なのだった。
「あっ、こら!」
「ママぁ……ママぁ……!」
「んっ、んぁ……くっ、あんたいくつなの……恥ずかしくないの……?」
下着の内側にある振動も、取り除いたわけではない。
加えて乳首に感じる快感で、クロエは二重に感じる形となった。上でも下でも感じさせられ、頬を熱っぽく火照らせながらも、それでいてモヒカンの趣味には引いていた。
「ママのオッパイ、美味いぜぇ?」
モヒカンはもう片方の乳房にも吸いついて、ちゅぱちゅぱと音を立ててくる。
「だから、いくつなん? 甘えん坊とか、卒業したらどうなん?」
「そんなこと言うなよなぁ? いくつだって甘えたいんだぜぇ?」
「いや、歳考えて――きもっ、んぅぅ……あっ、ちょっと……」
「ちゅぶぅぅ……ちゅぱっ、ちゅぱぁ……!」
乳首へ吸いつく勢いは活発に、唇から放つ音はより大きく、そしてクロエの胸は快感に満たされる。もっと大きな刺激の波が溢れていき、乳房という名の器では足りないように、肋骨や胴体にかけでまで漏れ出ていった。
「ママぁ? 気持ちいいのぉ?」
「だ、だから――キモ…………」
「ちゅぶぅぅ…………」
「んっ、んぅぅ……! つ、強く吸い過ぎ……!」
「へへっ、怒られちゃったぁ」
「あっ、んぅ……あんた、もちっと軽く……今うち、けっこー敏感だから……」
「はーい」
何が悲しくてこんなプレイに付き合っているのかがわからない。
しかも、途中からは頭を撫でて欲しいとまで言って来て、似合いもしない荒くれ顔の、甘えん坊を演じてくるモヒカンを、始終可愛がってやっていた。あまりの引き攣りように、もはや半笑いになりながら、クロエは甘やかしプレイをこなすのだった。