第3話 メイドとなって
メイド喫茶であった。
衣装はいくつかサイズがあり、ぴったりと合うものを選んだクロエは、あまり身内には見られたくない格好で店内を歩き回り、客の注文を聞くこととなっていた。
しかもスカートが短い。
気をつけていれば見えないだろうが、階段を歩いたり、台に乗るような真似をするといかにも危うい。
心許ないスカートを穿きながら、客の注文を聞き、飲み物や食事を運んで行く。
(こんだけなら、しょーじき別にいんだけど)
この手のバイト経験は既にある。
お世辞にも治安の良い店とは言えなかったが、飲食店で働いた経験は、今回のバイトでも生きてくることだろう。メイド服で給仕を行うだけなのなら、むしろ有り難い転職先ですらあった。
だけ、では済まない。
済まない店なのだ、ここは。
(んでも、まさかアレな店で働くことになるとはねぇ)
こうなってくると、もはや自分の運命に呆れてくる。
ケンから辱めを受けていたので、その状況から脱出しようと思っていたのに、それがまた別の目に遭おうとしている。どう転んでも、自分はこの手の仕打ちに遭うと決まっているのかと、運命が嫌になってくる。
(えーっと、次々。ま、ともかく今は注文運ばんと)
盆を手に、カウンター裏へと料理を取りに行こうとした時だった。
「よお、姉ちゃん。新入りかい?」
柄の悪い一人のチンピラが手を伸ばし、クロエのスカートを捲ろうとしてきたのだ。テーブルの近くを通ったその瞬間の、待ち構えていたような右手に気づき、クロエは咄嗟に反応していた。
「あー……。やめてもらっていいっすか」
クロエはさっと身体を交代させて、かわしてみせる。
「あんだぁ? その態度は。ここはその手の店だろうが」
「タダで触っていい店じゃないんで、そーゆーのお求めの方は支払いよろ」
「チッ、しけてやがるぜ」
(金ねーんなら手ぇ出すなよ。いや、あっても嫌だけどな)
クロエはそんな風に毒づくも、腹の底では気が気でない。
慣れているのは、あくまでも店の手伝いだけである。体を売って稼いだ経験があるかといえば、ちっともない。そんな親の悲しむことをしようと思ったことすらなく、だからケンとの状況も、いつまでも続けるわけにはいかないと思っていた。
しかし、ここは風俗店でもある。
あの父親はクロエのことをここに連れてきて、新入りとして店長に引き渡すなり、何やら金銭を受け取っていた。なるほど、売られたのだとわかってからの、そのままの流れでクロエは勤務初日を迎えているが、店長から受けた説明には心底ぞっとしたものである。
ウェイトレスとして働くメイドもまた、店の商品の一部となる。
メイドを指名し、サービスを注文することで、その手の奉仕を受けることが可能という店なのである。性サービスの料金を払っていない、ただ飲み食いするだけの客のセクハラなら、度が過ぎない限りどう対応してもいいそうだが、所定の料金が払われてしまうと話は別だ。
(違法じゃね? 摘発されたら、うちまで捕まるだろ)
などと思うが、もちろん問題はそこではない。
こんなところで働く羽目になることの方が、ずっとずっと大きな問題だ。
(マジでありえねっつの。あの父親も父親ってか、あーいう大人が親とかやっていいのかって)
クロエは心の中でそんなことばかりを繰り返す。
(あー……。うちもそのうち、誰かに指名なんてされちゃうのかね)
カウンターで料理を受け取り、それを注文のあったテーブルへ運んで行く。そしてまた別のテーブルへ行き、酒の注文を聞き取ると、カウンターへ受け取りに行く。注文を聞き、テーブルに運んでいくことの繰り返しで、たまに尻を触ろうとする手が伸びる。
クロエはそのたびに身を引っ込め、かわし続けているのだが、さすがの頻度に辟易してくる。これ以上多ければ、いっそ尻くらい触らせた方がマシではないかと、そんな考えが少しでもよぎってくるほどだった。
そして、そんな店の中へとまた一人の客が現れる。
「らっしゃーせー」
気怠い声で迎えてみれば、ドアを開いて入店してきたのはケンの父親であった。
ケンの父親が、クロエをこの店に売り飛ばしたその日のうちに、客としてやって来ていた。
「また会ったな? クロエちゃん。とても似合っている」
そして、あからさまな目でメイド服のクロエを視姦していた。
「は、キモ」
「ふん。スケベエルフめ、注文するから早くテーブルに案内しろ」
「とりま、向こうが空いてるんで」
嫌々ながらに、クロエは父親を案内する。
そして、父親を席に着かせた瞬間から、すぐにでも注文は飛んで来た。
「さて、注文は『クロエの騎乗位』だ」
ニヤニヤしながら、彼は言った。
「はい? なんて?」
「あるだろう? この店には騎乗位というメニューが」
ひどく鼻の下を伸ばした表情で、父親はクロエの脚を視姦していた。短いスカートでは隠しきれない、丈の先にちらつく太ももへと、好奇心に満ちた視線を惜しみなく送ってくるのだ。
(マジでキモっ)
「ああそれとも、君の学校に報告するべきかな? 色々と」
それは困る。
もう例の禁呪の効果は受けていないが、ケンのような子供と違い、大人に弱みを握られている。クロエこそがケンをたぶらかし、性的な悪戯を繰り返した悪者であるように言われては、なまじケンの年齢が幼いだけ、そちらの方が説得力を持ちかねない。
そして、あまつさえクロエの方からケンの悪事を告発し、ケンを悪人として仕立て上げようとした――という筋書きで、クロエを貶めるわけである。
それをやりかねない大人を前に、クロエはただ反抗心だけを胸に抱えた。
「注文は以上で?」
「せっかくだ。マイクを使おう」
「マイク付き騎乗位。以上で?」
「ああ、以上だ」
満足そうに頷く父親を前にして、いよいよクロエは腹を括った。
(ってーか、なんでうちがこんな形で腹括ってんだか。どっちかっつーと、マジにこいつに首括ってほしーわ)
そんな内心を胸に秘め、クロエは屈辱ながらにカウンターへ足を運んで、まずは必要なマイクを受け取る。父親のテーブルに戻ってくると、それからスカートの内側に手を入れた。
その瞬間だった。
「おお! とうとう注文が入ったか?」
「へえ? 新入りのサービスが始まるってよ」
「いいなぁ、俺も金さえあれば注文すんのによー」
随分と大盛り上がりだ。
メイドがサービスの注文を受け、そのテーブルの男に奉仕するのが、馬鹿騒ぎしている連中にとっては面白いことらしい。
(はあ、しょーもな)
クロエはショーツを脱いだ上、父親の上に跨がる。
ズボンの中身を解き放ち、逸物をそそり立てた上にアソコを被せ、クロエはこんな形で散らすことになるわけだった。
「いやぁ、いい気分だよ」
父親は手を伸ばし、腰のくびれを撫で回す。
そのねっとりとした手つきに、クロエはぶるっと身震いしていた。
「そっすか。うちは良くないんで」
冷ややかな顔を装う。
しかし、クロエの心境は、屈辱ばかりか悲しみにも満ち溢れ、やりきれない思いでいっぱいに腰を沈めていくこととなる。
ぷにっと、まずは兜に肉貝を乗せ、その膨らみが切っ先の固さに押し潰される。
クロエのアソコは初めから濡れていた。
メイドには専用の媚薬が支給され、注文があった際には直ちに気持ち良くなれるようにと飲まされる。父親の注文に合わせてコップ一杯、液薬を飲み干すことで、クロエのアソコには愛液が滴っていた。
滴るあまり、先端と密着しているクロエのワレメは、肉棒をみるみるうちに濡らしていき、収める前から竿に光沢を広げていた。滴が流れ落ちていくことで、何本も何本もの、光の反射で輝く筋が、竿の表面には伸びているのだった。
ずにゅぅぅ……。
いざ腰を沈めた瞬間の、アソコの穴がこんな男などの逸物によって広がる感覚といったらなく、体中に広がるものは恥辱感だった。
(マジ、サイッテー)
気分が良いはずはない。
体中が汚染され、何かに染まり変わっていくような怖気に震え、嫌々な気持ちが表情に滲み出る。みるみるうちに歪む顔付きを、クロエ自身でもコントロールなどできず、その表情には嫌悪が満ち溢れているのであった。
ベンチ型の椅子に寝そべり、仰向けとなった父親の股ぐらで結合して、クロエは上下運動を開始していた。
それも、マイクを近くに置いている状態である。
グチュッ! ピチュ! チュグ! チュグゥ!
音響が店内に響き渡る。
「おうおう、エロい音が聞こえてくるなぁ!」
「俺も注文といこうか!」
「おいそこのメイドぉ! あれと同じのを頼むぜ!」
「こっちもだこっちも!」
「なんだ? 他にメイドはいねーのか?」
「ったく、人員不足かオイ!」
ただでさえ、荒くれ者が飲み食いで盛り上がり、喧噪に満ち溢れていた店内は、より一層の加熱でますますうるさい。
(うっざ、しょーもな)
クロエは露骨に顔を歪めた。
こんな下らない店に集まるのは、下らない客ばかりに決まっていた。
「ははっ、気持ちいい気持ちいい」
「そーですか。んま、さぞかし気持ちいんだろね」
歪んだ表情から嫌々な感情を隠せないまま、声は冷ややかにしているクロエの、欠片も楽しんでいない上下運動に、しかし父親は確かな快楽を感じているらしい。確かに粘膜が接していれば、クロエがどんな気分でいようと、肉体に与える反応は変わらないわけだろう。
チュプ!
持ち上げた腰を落とすと、水音がマイクで響く。
その音色を耳で楽しみ、優雅な音楽でもあるまいのに、上品にカップに口を付けているキザな男が、クロエの視界の隅に入っていた。もっとわかりやすく下品に盛り上がり、こちらのテーブルを見ながらオナニーを始めている客がいた。
同じ馬鹿でも、色んな馬鹿が店内には溢れていた。
「ところで、どんな風に気持ちいいんだ?」
「はい?」
「メイドは客の注文を聞くものだ。一回のピストンごとに、何かコメントをしろ」
意のままに扱うことで、優越感でも感じようとしているのか。
クロエが次に腰を持ち上げて、そして落とす瞬間に、望み通りに言葉を放つ。
「意味がわかんないです」
率直なことを言った瞬間、
グチュ!
「はいはい、感じます」
チュグ!
「感じますけど?」
チュグリュ!
クロエはそんな上下運動を繰り返す。
毎回のピストンにコメントを添え、その上で腰を落とすので、上下運動のペースはみるからに落ちていた。
「うちは年下の子供に手を出しました」
そのうち、父親の考えた台詞を言わされていた。
「家庭教師に入って」
ぐちゅ!
「で、男の子が可愛くて」
ちゅぐ!
「手ぇ出して」
じゅぷっ!
「んで、こんなとこに」
じゅぐっ!
クロエにとって、それら台詞を言わされるのは、これ以上ない屈辱だった。
「おい聞いたか?」
「ショタコン女ってことかよ!」
「親にバレて、制裁を下されてここにいるってよ!」
「自業自得ってやつじゃねーのか?」
違う、そうではない。
クロエはただ、正しいことをしようとしただけだ。あんなもの、ケンの教育に良いはずがないと思ったのだ。
「とんだ父親ですね」
じゅぐっ!
「あんなこと、言わせるなんて」
ちゅぐ!
「さっさと出して下さい。仕事つっかえてるんで」
ちゅぐりゅ!
言わされる台詞を除いたら、あとは適当に反抗的なことを並べながらのピストンで、その一回ごとに水音は響き渡る。
ペースの緩い運動なので、時間はかかった。
かかったが、やがては射精に至った父親は、クロエの膣内に解き放ってくるのであった。
「あー……。出ちゃったな、赤ちゃんの素が」
その言葉を聞いた瞬間の薄ら寒さといったらない。
本気で背中が凍るかと思った。
初対面の、最初に顔を見た印象ではわからなかったが、この男はここまで気持ち悪い人間だったのだ。