第1話 下着盗撮
部屋に座布団を並べ、タナカとヤマダの二人でエロビデオの視聴を開始する。
映像の中、ホシノ・ルリは本当に映っていた。
服装はいつもの制服である。
だがスカートの丈が妙に短く、少しでもずれれば下着が見えそうな際どさだ。そんなスカートを後ろ手で気にかけて、指で下へと引っ張ろうとしながら廊下を歩く姿は、それだけでそそられる。
そんな後ろ姿を、主にお尻を、カメラが追跡していた。
ルリが入って行くのは資料室だ。
背表紙に一つ一つ指を置き、目当ての資料を見つけようと、棚と向かい合う姿を横から映す映像となり、その途中で一人の男が現れた。
カメラとは向かい側から、ルリの姿を見つけるなり近づく中年は、狙い済ました眼差しで真後ろに立っていた。しゃがみ込み、カメラまで取り出していた。
(盗撮……する気だ……)
タナカは心を騒がせた。
いつもアイドル視していたルリが、後ろから下着を撮られようとしている。そのピンチが本物のピンチなら、すぐにでも突っ込み阻止したい。
しかし、これはエロビデオだ。
既に起こった後の出来事なのだ。
決して阻止することの出来ない痴漢を前に、見てはいけないものを見ている罪悪感が湧いてくる。この映像を楽しむべきではない。出演の事実を知ってしまったことはどうにもならないが、せめて中身は見ないのが善良な人間の在り方ではないかと頭の中では思っている。
だが、視線を剥がせない。
目を逸らすどころか、むしろ体はどんどん前のめりに、タナカは股間を膨らませていた。いけない、良くないとは思っていても、映像の中にいる痴漢が、次にどんな行動を取るかを楽しみにしてしまっていた。
資料を探し続けているルリの背後で、中年はカメラをスカートに近づけている。
シャッターを押していた。
フラッシュが焚かれているので、手元は見えずとも繰り返し撮影していることは視聴者にもよく伝わる。音は出ないのか、無音だとしても光でバレないのか、それとも出演上の役なので、気づいていても気づかない風を演じているのか。
中年の行為は撮影だけに留まらない。
ただでさえ短いスカートに手を伸ばし、まさかと思ったその瞬間、タナカの見ているその前で、中年は丈を一気にたくし上げていた。
「あっ……」
思わず声が出てしまった。
(あぁ……ルリちゃんが……あぁ…………)
天使だアイドルだと思っていたルリのパンツが丸出しに、白い布が包んだお尻に中年は顔をぐっと近づけている。ニヤニヤと嬉しそうに視姦して、ではルリはというと、ぎょっとした顔で後ろを気にしていた。
焦りと恐怖を帯びたような、落ち着きなく後ろを気にして、しかし声も出せずに唇を結んだ様子がよく現れている。もしも本物の痴漢現場を目撃する機会があったら、被害者は実際にこういう反応をしているに違いないリアリティに溢れていた。
はっきりと声に出して拒んだり、手で払い退ける行動に移せずに、ただ気にすることしかできずにいた。
そこに素人がやる演技のようなぎこちなさはなく、本当に痴漢に対して焦って見える。やがて抵抗を諦めて、あとは嵐が過ぎ去ることを辛抱強く待ち侘びている横顔にひどく惹かれた。
あれが演技なら本当によく出来ている。
中年は見るばかりか触り始めた。尻の膨らみに指を置き、下着の感触を味わうようにすりすりと、ルリはより一層のこと頬を硬くして堪えている。
見てはいけない映像を見てしまっている。
その背徳感にくすぐられ、タナカはまばたきすら忘れつつあるのだった。
*
場面が移る。
一度は朝陽を映して道端を歩くシーンへと切り替わり、作中で一日が経過したことが伝わる。
カメラがお尻を追っていた。
最初はごく普通のアングルで遠巻きに、出かける姿を撮っているだけだったが、すぐに後ろ姿を映す画面となり、お尻のズームは行われた。
短いタイトスカートの尻である。
脚とお尻目の境目のラインに合わさる長さで、歩いているだけでもチラチラと、ショーツの色がミリ単位で覗け続けている気がする。
あの丈で前屈でもしようものなら、簡単に丸見えになることだろう。
そんな丈の心許なさで、ルリは階段を上り始める。
当然、カメラは下から覗き込もうとする角度となって、おかげで中身のピンク色がチラチラと見え隠れを繰り返した。
それから、会社に着いた後、食堂の席に着く描写となる。
料理に手をつける場面をまず遠巻きに、そして手元の料理を何秒か映していく。そこまではカメラマンの移動やズームのみによって映像は動いていたが、次でカメラに切り替わった。
テーブルの下に潜っての、スカートの中身が流れ始める。無防備に脚が開いてのピンク色が見えている。
膝が閉じては開く仕草によって、見え隠れを繰り返すクロッチにタナカは惹かれた。
資料室では白、食堂ではピンク。
ホシノ・ルリの下着を二つも知って、得をしたような気持ちになった。
その時である。
『おはよう。ルリちゃん』
食事中の背後に一人の男が現れた。肩越しに腕を伸ばして、テーブルに一枚の写真を置き、その途端にルリは赤らみ、恥ずかしそうに目を背けていた。
資料室の時の中年だ。
あの場面では何度も執拗にパシャパシャとやっていたが、テーブルに置かれたのは、その一枚ということだろう。
食器の隣をカメラは映す。
そこに置かれる写真は、カメラを股の隙間に差し込んだものだった。フラッシュに照らし出された白い楕円は、布と布を繋ぎ合わせる構造上の継ぎ目までくっきりと明るく写していた。
なるほど、この中年は一貫して、ルリに辱めを与えたり、セクハラを行う役なのだ。