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 午前9時00分。
 国際特別警察機構・日本支部に送られた映像は、タクティカルユニット・オペレーションルームの面々を釘付けにして、仲間が受ける辱めにそれぞれの憤りを抱えていた。
「つかさ先輩……!」
 陽川咲也の表情が一変する。
「おのれ犯罪者ども! よくも舐めた真似を! 許さァァァァん!」
 ツバを飛ばして映像に喰らいつき、より怒りをあらわとしている朝加圭一郎は、画面の中の犯人達に殴りかからんばかりの勢いだ。
 このような映像を送り付け、仲間に辱めを与えていることを教えてくる組織の連中は、明らかに警察を――ひいてはパトレンジャーを挑発している。当然の怒気に顔を赤くし、何の手がかりもないのに今すぐにでも出動しそうな圭一郎を、ヒルトップ管理官やジム・カーターが諫めることで、ひとまずこの場は落ち着いた。
 状況を整理しなくてはならない。
 まず、この場に揃う全員が目を向けるのは、明神つかさ――パトレン3号が囚われている映像であり、ピンクと白のカラーリングタイツを纏った姿で、屈強な男の胡坐の上に座らされているものだ。
 近日の情報により、ギャングラーとの関与が疑われる犯罪組織が明らかとなり、ルパンコレクション所有の可能性もありと見て調査に出た。組織がアジトとしていた現場に踏み込み、調の通りギャングラーの出迎えを受けた彼らは、VSチェンジャーによる変身で警察戦隊パトレンジャーへと姿を変え、彼らの殲滅に当たっていた。
 しかし、ここで不測の事態が起きる。
 パトレン3号が連れ去られ、1号及び2号は大軍による足止めでこれを阻止できず、また怪盗戦隊ルパンレンジャーは情報を掴んでいなかったためか、姿を見せることなく、彼らの介入で救出の隙が生まれることも期待できなかった。
 無念にも仲間を奪われ、悔しさに打ちのめされる男二人に、まるで追い打ちのように送られてきたのが犯人達からの映像だ。
 画面に映る屈強な男は、果たして身長が二メートルを超えているのか。タンクトップから剥き出しの二の腕には、丸太のごとき太さにまで筋肉が盛り上がり、ガタイの良い肩幅と、筋骨たくましい長い足でかいた胡坐の中に、パトレン3号をがっしりと抱えている。
『どうだ? 気持ちがいいんじゃないのか?』
 パトレン3号は胸を揉まれていた。
『ふざけるな! 誰がお前の手で!』
『粋のいい獲物は嫌いじゃないが、あまり暴れると人質が死ぬからな? 無茶はほどほどにしておくことだ』
『ゲス野郎……!』
 いかに気丈な振る舞いで、許せない男を睨まんとしているのか。レンジャーマスクに顔が隠れていようとも、仲間である圭一郎と咲也には、パトレン3号――否、明神つかさの表情が伺えた。
『映像をご覧の諸君! ま、そういうわけで、こいつは人質で抵抗できない。場所を教えるわけにはいかないが、何人か子供を拉致しているんだ。暴れたら子供を殺すと言ってあるんで、このようにオッパイを揉み放題さ』
 自慢の玩具を見せびらかしたいようにして、屈強漢は存分の揉みしだき、いたるところに手の平を這わせている。
『俺達は本物のAVを作っている。エロ動画には麻薬捜査官を捕まえてレイプとか、そういうのがあるだろ? パトレンジャーを捕らえることで、その本物映像を作るのが目的だ。早い話が、一刻も早く俺達の居場所を突き止め、逮捕しないと、こいつは俺とセックスをするハメになる』
 完全にふざけている。
 ならばこの映像もAVの序章なのだろうが、少しでも手がかりになる情報は紛れていないか。警察としては映り込んでいるものの隅々にまで目を光らせ、じっくりと鑑賞せざるを得ない。
『どうだ? こうしてAVデビューを果たす気分は』
『最悪なものだな』
『ご感想ありがとう。ではでは、このAVを撮影するにあたって、ちょっとした面白アイテムを紹介したい。言っておくがルパンコレクションじゃあないんだぜ? 我らが組織が開発した嘘発見システムだ』
 画面にもう一人の男が現れ、まるでインタビューでもしたいがごとく、ボイスレコーダーに酷似した機械をパトレン3号に近づける。
『イエスかノーで答える質問をするとだな。正直に答えれば、青く光ってピンポーン。嘘をついたら赤く光ってブッブーって鳴るもんだ。試しに質問してみるが、パトレン3号の本名は明神つかさでよろしいですかぁ?』
『それがどうした』
 嘘発見システムが青色に輝いて、質問の正解を告げる効果音を派手に鳴らした。
『すごいですねぇ? 質問に対する「それがどうした」は、字面的に考えてみると、なんだかイエスともノーとも取れない、微妙な答えの気がするね。なのに嘘か本当かを判定した。こういう融通が利くところが凄いんだ』
 アイテム自慢の屈強漢は、見た目に似合わず繊細なタッチで胸を揉み、触れるか触れないかのような具合で撫で回す。パトレン3号の肩が見るからに力み上がり、縮まって、感じているのが明らかとなっていく。
『ここでもう一つ。気持ちいいですか?』
『誰がお前ごときで気持ちいいなど!』
 ブッブー――と、クイズの不正解を告げる際にありそうな、ハズレを示す効果音が慣らされて、赤色のランプがパトレン3号の嘘を証明する。
『感じちゃってるようだなぁ?』
『だ、黙れ!』
『お? ちょっと焦ってる?』
『あっ、あぁ……!』
『可愛い声が出始めましたァ! ちなみに乳首も立ってるぜ? 摘まんでると、固くなった感触がスーツの上からでもなんとかわかる』
 屈強漢は両手の指で乳首を摘まみ、指圧の強弱で刺激を与える。
『くっ、や、やめろォ……!』
 パトレン3号の腕が持ち上がり、その拳には爪が食い込むほどの力が入っていた。筋肉が極限まで強張って、痙攣じみて見える拳の震えが、いかに屈辱的な感情を抱いているかを如実に浮かべ、屈強漢を本当は殴りたがっていることがひしひしと伝わった。
『随分と肉体が温まり、感じやすくなってきたところで、果たしてアソコに触れればどうなるのか。当然、気になるよなァ?』
 屈強漢が脚を持ち上げ、パトレン3号の股はM字開脚となって晒される。反射的に手を動かし、スカートの中身を隠す彼女は、スーツに覆われたピンク色の局部だろうと、カメラに見せまいとしてガードを固めた。
『あら可愛い』
『黙れ! よくもカメラの前でこんなポーズを……!』
 きつく指に力が入り、手をどければ性器が映るも同然のように守りを固める。たとえ本当の露出はなくとも、アソコを見せびらかすためにあるようなポーズなど、乙女には辱めでしかないのだった。
『お恥ずかしいですか?』
『…………』
『おやおや黙りますか。そうだようなァ? 答えれば嘘か本当か判別されちゃうもんなァ? だんまりを決め込みたくもなるよなァ?』
『……』
『ところで人質がいるのはお忘れでないよなぁ? つーわけでもう一度聞くが、お恥ずかしいですかァ?』
『……こ、こんな格好。当然だろう』
 嘘発見システムが正解を告げた。
『アソコを触って欲しいですか?』
『そんなわけがないだろう!』
 これも青色のランプを灯す。
『触られたら感じちゃう予感がしますか?』
『するわけがない!』
『ブッブー! 不正解! あなたはアソコを触られたら感じちゃう予感がします! だから触られたくないんだねぇ? あーら、可愛い可愛い!』
『お前……! どこまでも……!』
『さーて、そろそろ手をどけろ。でないと、子供を一人連れてきて、頭ぶち抜くぜ?』
『卑怯者が……』
 パトレン3号が手をどけて、そこに見えるのは言うまでもない。アソコではあるのだが、変身スーツの色に覆われ、何らの露出があるでもない。まして食い込みでワレメが見えるでもない局部は、それ自体に欲情を煽るものはない。
 しかし、屈強漢がアソコに触れ、手慣れた指使いによってパトレン3号の翻弄を始めると、マスクの顔が左右によがる。喘ぎ声が小さく聞こえ、しだいにはっきり、大きく鳴くようになる彼女は、思い通りに遊ばれていた。
『気持ちいいですか?』
『誰が……!』
『ブッブー! 不正解! もう一度同じ質問をするが気持ちいいか?』
『どうせインチキアイテムだろう!』
『ブッブー! 不正解! なかなか正直になれないようだが、パトレン3号はスーツの上からアソコを弄られ感じています。おや? クリトリスが突起していますか?』
『してない!』
『不正解! この辺りを爪で引っかくようにすると――ほら!』
『ぐっ、ぐあっ、あぁぁ……!』
 全身で強張るパトレン3号は、手足の筋肉をフルに固めて耐え忍ぶ。まるでアソコを愛撫すればするだけ筋肉に力が入る仕組みのように、足首や指の先まで固くなり、ピクッピクッと、ともすれば挙動を見逃しかねない微かさで、クリトリスを引っかく行為に反応している。
『ここで一つゲームをしよう。このパトレンジャーってのは、どうやら強いダメージを与えたり、体力を使い果たすと変身が解けるらしい。ってことは、イキまくってヘバっても、同じことになるとは思わないか?』
 屈強漢はM字開脚の股を持ち上げ、パトレン3号をどこかへと運んでいく。その移動している背中をカメラが追うと、すぐさまマットの敷かれた床に下され、パトレン3号はそこに寝かしつけられる。
 何人も、何人もの男が現れた。
 屈強漢も画面の外へと、男の誰の顔も映ることなく、腕という腕の数々がパトレン3号に群がる光景だけがカメラに収まる。全身が愛撫の中に飲み込まれ、せっかく閉じた脚は再びM字に開かされ、隅々までをまさぐられた。
 そんな場所に触って意味があるのかわからない、マスクに覆われた頭の耳や、性感帯とはいえない肘や膝から、手足をほとんどまんべんなく、そして胸に尻に胴体に、当然ながらアソコにも指が殺到している映像は、もはや集団の痴漢というより、イソギンチャクの触手に飲み込まれたら人はこうなるお手本のようにさえ見えてしまう。
『あっ、ああ……! あっ、やめ……ろ……!』
 手足が細かくよがる様子を見れば、手の平や足の平までくすぐられている。まんぐり返しの形に腰を持ち上げ、浮き上がった背中や肩甲骨にも手は群がり、尻を撫で回していた腕のうちの一本は、急に肛門を探してグリグリを割れ目を虐める。
『――あっ、うん! うんん!』
 全身がビクビクと痙攣した。
『イキましたか?』
『――ふん!』
 思いっきり、顔を背けて否定する。
 そうした反応にさえ、否定意思を呼んだ機械は、ブッブーと効果音を鳴らしていた。
『一回イクごとに罰ゲーム! 精液を浴びてもらいます!』
『な、何ッ!?』
 画面にペニスが飛び込むと、それに合わせてパトレン3号の顔が拡大される。画面を占める光景は、人様の顔に亀頭を擦り付けたものとなり、自らの手で肉棒をこする男は、やがての射精でマスクの黒いバイザー部分を穢していた。
「なんてけしからん真似を! 今すぐしょっぴいてやる!」
 もはや我慢ならず、圭一郎は勢いよく席を立つ。
「待って下さい! まだ何も手がかりがないんですよ!」
「うるさーい! うるさいうるさい! 陽川咲也! こんなものをいつまでも放っておけるか!」
「それはそうですけど――」
 二人が言い合う間にも、パトレン3号は再びイク。
 絶頂の罰と称した精液が、さらにマスクを白く汚した。
 AVとしては良くも悪しくも、イカせるたびに罰ゲームで精液をかけ、少しずつ汚していくことに30分以上もの時間が費やされた。
『はぁ……はぁ……はぁ……』
 明らかに疲弊し、立つこともままらなない様子のパトレン3号は、精液のせいで前が見えないほどにマスクを染められ、首から足の先にかけても白濁が付着している。ネクタイをモチーフにしたような胸元の模様や、左胸にある警察のシンボルに、ベルトの部分も、どこもかしこも白い粘液のコーティングを帯びていた。
『くっせー! 触りたくねー!』
 一人のチャラついた声がパトレン3号を茶化していた。
『お前達でこんなことをしておいて!』
『まあまあ、だから電気マッサージ器を用意したんだ。これで直には触らなくて済むだろう?』
 それは屈強漢の声だった。
 自分達で汚しておいて、まるで汚物に触れれば菌が移るかのような慎重な手つきで、電気マッサージ器を握る腕が群がる。画面には腕しか映らないのに、男の腰が引け気味な様子が伺えて、そんな刺激であってもパトレン3号は全身をくねらせる。
 とうとう変身が解けていた。
 イクことによって体力を削っていき、ついにパトレンジャーの姿を維持できず、そこには明神つかさが横たわった。
 警察からの支給で着用しているピンクカラーのジャケットは、背中に「GSPO」の文字を刻んでいる。それと柄を揃えたショートパンツから、黒タイツに覆われた太ももを伸ばし、濃しにはVSチェンジャーを吊るすべきホルスターが取り付けてある。
 変身スーツの四散と共に、付着物まで消えたのか、元の姿に精液は着いていない。
『おら、立て』
 屈強漢が実に何十分かぶりに画面にはっきり姿を現し、つかさの腕を掴んでは、力ずくで強引に立ち上がらせ、そのまま背中に抱き着いては、背後からの乳揉みを行った。
『さあカメラカメラ』
 服の上から揉まれている胸の部分と、散々な目に遭わされ続けた怒りの表情を映すため、アングルと画面の拡大具合が調整される。屈辱に満ちた目つきがカメラを射抜き、そんなつかさの顔の隣には、満面の笑みを浮かべた屈強漢が、馴れ馴れしく頬を擦りつける。
『お前は絶頂で変身を解かされた。その敗北について宣言しろ』
『……なんだと?』
『代わりに人質を一人犠牲にしても構わないぜ?』
 その一言が、つかさの全抵抗を封印した。
 そして――。

『わ、私は……何度もイカされ、そして変身も解けてしまった。絶頂に敗北した……』

 つかさの肩が震えていた。
 画面の外にはみ出た拳が、いかに激しく震えているか。悔やむ表情と肩の強張る様子さえ見ていれば、誰しもが容易に想像できるところだ。
『セックスがしたいですか? おチンチン欲しいですか?』
『ふざけるな! 私はそんなことは望んでいない!』
 ピンポーン!
 と、正解の効果音が鳴っていた。
『これがね。ブッブーに変わる瞬間をお楽しみに!』
 こうしてAVの第一章は締め括られる。
 情報を精査するため、画面に映り込んだ壁や床の材質から、施設の種類を特定しようと励んでみたり、はっきりと素顔の映った屈強漢から何か糸口は掴めないかと検討するも、この映像から得られたものは――仲間が辱めを受けたというのに、それに興奮してしまった罪悪感だけであった。

     ***

 その朝、監禁された明神つかさは、カメラの前での放尿を余儀なくされた。
 ベッドと冷蔵庫があるだけの、鉄の扉に閉ざされた小さな部屋に閉じ込められ、当然のように武器を奪われているつかさには、鍵のかかった扉を開ける手段はない。よしんば開けたとしても、外には常に見張りが立っており、脱出は不可能と思われた。
 ただ一つ、一時的にも部屋から出る方法。
 それは部屋の中に取り付けられたチャイムを押し、オシッコがしたいと告げること。部屋にはトイレが用意されていないため、排泄を行うためには男に手錠をかけてもらい、銃を持った見張りの監視を受けながら、男の見ている前でショートパンツと下着を脱ぐことになる。
 男が目の前にしゃがみ込み、ベルトの金具を外してくる。
 ショートパンツをずるりと下げ、黒いタイツと下着も膝まで、生の性器を晒すことになるつかさは、大いに表情を歪めていた。
(……変態すぎる)
 つかさの真正面にカメラがある。
 昨日の屈強漢が背後の回り、つかさの身体を持ち上げると、M字開脚の形で宙に浮かされ、アソコに尿瓶が当てられる。つまりAVの一環として、放尿シーンの撮影をやり、つかさのそんな場面が収録されてしまうという。
「こんな形で撮影したアダルトビデオがまともに販売できるわけがないだろう」
「裏の世界の人間が買ってくれるさ」
「裏の世界?」
「おおっと、早くオシッコを済ませましょうねぇ? 一人じゃおトイレにも行けないんだから」
「く……!」
 まるで子供だから一人でトイレに行けないような、そんなわざとらしさでつかさを煽り、猫なで声で楽しむ屈強漢に煮えくり返る。
(なんて奴らなんだ)
 丸晒しのアソコを覆う尿瓶の口が、もう少しだけ強く当てられ、丸い圧迫感がつかさの尿意を刺激した。

 ――ちょっ、ちょろろろろろろろろろろ……。

 弱々しい水鉄砲のようにして、黄色い水がワレメの狭間から解き放たれ、尿瓶をだんだんと満たしていく。
 つかさは涙目だった。
 トイレにも自由に行けず、こんな形で管理され、人のオシッコする姿を眺めてカメラマンはニヤニヤしている。尿瓶を持っている男も、見学とばかりに集まるギャラリーまでもが、尿瓶に尿が溜まる有様を見ているのだ。
(女の排泄で喜ぶなんて、ここにいるのは全員変態か!)
 食い縛る歯に力が入り、自分自身の顎の力で歯茎がどうにかなりそうな予感がしても、なおも緩めることが出来ずにいた。放尿の水音が静かに響き、誰が何を喋るでもなく、実に静かに鑑賞する。視姦に満ちた空気が耳を染め上げ、まぶたにも力の入ったつかさの顔は、どこまでも形を歪めていた。

     ***

 当然、脱糞についても話は同じだ。
「よかったなァ? スカトロシーンは入れないから、肛門からウンコが出る場面は映さないそうだぜ?」
 しかし、明神つかさが取るポーズは、タイツも下着も膝まで下げている状態で、便座に両手をついて尻を突き出すものだった。
「まるでこれからバック挿入するみてーなポーズだよなぁ?」
 などと喜ぶ屈強漢。
 どの道人質がいるというのに、それでも抵抗防止のため、トイレに行き来するたび必ず手錠が掛けられる。すると自分で自分の尻を拭けない。ならばどうやって排泄後の肛門を綺麗にするかと言えば答えは一つ。
「お尻を拭き拭きしましょうか」
 カメラマンの映す映像に残るのは、つかさがこんなポーズになったことで見える背中の、ジャケットにある「GSPO」の文字に加え、皺の窄まりまで丸見えの尻である。屈強漢の手が肛門に触れ、トイレットペーパーを介した男の指に苛むつかさは、握り締めた拳を延々と震わせる。
「で、どんな気分よ。おトイレの世話をしてもらうのは」
「最悪に決まっている」
 紙の感触に皺をなぞられ、綺麗になったお尻の穴が映される。
 拭き終われば撫で回し、揉みしだいてくる手の平の触感に耐え忍び、延々と尻で遊ばれ続けたつかさは、それでも必要とあればトイレに行かなくてはいけなかった。便器の存在しない部屋で、永久に我慢することは不可能で、あとは敵地の床に垂れ流すくらいしか選択肢はなかったが、さすがに品の無い行動は取れなかった。

     ***

 さて、午前9時00分になりました。
 監禁中の明神つかさは、自分が盗撮されているとも知らず、ただただベッドに仰向けで、何をするでもない時間を過ごしています。当然ですね。雑誌の一つも置いていない、脱出の手段のない密室では、寝ているくらいしかやることもないでしょう。
 ところが、この部屋。
 実は媚薬ガスを注入しているんです。
 無色、無臭のガスにつかささんは気づいていません。先程から注入を開始し、十分ほどが経過していますが、今のところはまだ様子の変化はないようです。
 時間をおいて、もう一度見てみましょう。
 9時30分。
 おや? どうやら、しきりに太ももを引き締めたり、擦り合わせたり、お腹の近くに手を運ぶなど、アソコを気にした様子が見受けられます。
「くそっ、何を考えているんだ! 私は!」
 自分を戒めました。
 一体、ナニを考えたのでしょうねぇ?
 10時00分を過ぎても、先程までのアソコを気にかけている仕草や挙動から進歩はありませんでしたが、しばらくすると、だんだんベルトにまで触り始めます。
 もう少しですかねぇ?
 10時20分。
 お! 脱いだ! 明神つかさ! ついにベルトを外し、そのショートパンツを下ろしていきます! 黒タイツが太ももの半ばに絡み、白いショーツも同じ位置まで下げられて、つかさはとうとうオナニーを開始!
「本当に……こんな……敵地で……うぅ……」
 恥ずかしいことをしている自覚が大有りのようですねぇ?
 この部屋には複数のカメラが仕掛けてあるので、試しに顔をアップするように切り替えましょう。お、どこか悔し気と例えるのはおかしいでしょうか。みっともないことをしているのはわかっているのに、どうしてもやめられない。
 何故? どうして?
 くっ、しかし、我慢できない……!
 そんな感情がありありと見て取れます。
 瞳の部分を見てみますと、扉の向こう側をチラチラと伺っていますね。扉には中を覗ける穴があるので、もし見張りに覗かれたら、オナニーしていることがバレます。ならば布団にかくれてする手もありますが、その布団が初めから部屋にないのです。
 アソコの部分はどうでしょう。
 おおっ、これはだいぶヌリヌリと、溢れ出る蜜をまんべんなく塗りたくる指の動きがたまりませんね。右手だけでしていたところへ左手も参加。指でクリトリスを弄り抜き、膣に指まで入れ始めるとは、もう随分とオナニーに夢中……。
 いえ、ちょっと待って下さい?
「だ、駄目だ!」
 今頃になって自制しました! 腕を両側に投げ出すようにやめました!
 し、しかし……。
 11時10分。
 やっぱり我慢できません! 時間が経てばオナニーは再開しており、指が活発に穴の中に出入りしています! クチュクチュと音が聞こえます! 喘ぎ声が外にバレないように、左手で口を塞いでいます!
 ビクビクと腰が跳ね上がりました! 絶頂したのでしょうか!
 お、体位を変えます! バック! 四つん這い!
 バック挿入で突かれまくる妄想をしているのでしょうか。明神つかさ、その方向にも隠しカメラがあるとは知らず、大胆にお尻を向け、ベッドシーツを噛むことで声を抑えながら、両手ともアソコへ伸ばしています!
 お尻が高らかになっていることで、肛門も丸見えですが、ヒクっ、ヒクっ、と、たまに蠢いていますねぇ? 
 さて、急にノックしたらどんな反応をするでしょう。
 今から見張りに無線で指示をして、ノックして鍵を開け、踏み込むように指示しますが――。

 ドンドン。

 ノックの音が響きます!
「いっ!? な、なんだ!」
 ものすごーくビクっとしましたねぇ? 穴に指がずっぽりと埋まった状態でピストン運動が停止します。ビックリしたまま硬直の様子。若干パニックのようですが、すぐさま四つん這いから飛び起きて、面白いほどの大慌てで下着とタイツを履き直します。
 見張りの男にはわざとらしく鍵の音を立てるように伝えていますが、それでも間に合わないかもしれないほど、ショートパンツのベルトに苦戦しています。
 が、間に合った!
 よかったですねぇ?
 しかしまあ、この見張りの男は二名いるのですが、片方が嘘発見システムのやつを持っているんですよ。
「何をしていた?」
 さて、尋ねます。
「別に何も」
「オナニーしていたか?」
「誰がそんなこと!」
 ブッブー!
 赤いランプが点滅です!
 あらあら、可哀そうに。オナニーを暴かれた明神つかさ。本当に本当に焦った表情を浮かべて違う違うと、そんなものはインチキアイテムだろうと、必死になって否定しますが、これでは自ら図星を証明しているようなものですね。仮にアイテムがインチキで、ただのハッタリだとしても、完全にオナニーバレバレ!
 この盗撮映像を見せつけて、つかさちゃんをもっともっと虐めちゃうぞ?

     ***

 媚薬ガスが充満していたことを知らないつかさは、自分に肉体が何故火照り、どうしてムラムラしているのかが理解できない。とにかく我慢できなくなり、オナニーをしてしまい、その途中で部屋をノックされて大いに慌てた。
 その後、つかさは屈強漢に呼び出され、再び胡坐の上に座らされた。
 身長の高い男の長い足に、つかさの尻は綺麗に収まる。筋肉によって分厚い胸板が背中に触れ、逞しい腕に抱き着かれると、その手はすぐに胸を揉む。
 テーブルで、パソコンの前だった。
「一緒に動画を見ようじゃないか」
 屈強漢がマウスを操作し、フォルダをクリックして動画ファイルを開き始める。
「お前と見て楽しいものがあるとでも?」
「ああ、オナニー動画だ」
「なッ……!?」
 それはつかさが自らの肉体を貪る映像だった。
 盗撮されていた衝撃と、それを見せつけられるショックに、つかさが浮かべる反応はひたすらに動揺ばかりで「な、な……!」と、震えた声を吐き出すのみ。
 思い出したようにマウスを掴み、再生ウィンドウを消しかけたつかさは、ただの一言で凍り付き、マウスを手放さざるを得なかった。
「それは抵抗か?」
 拉致した子供の存在を言われては、動画を消すこともできはしない。
 胸を丹念に揉まれつつ、動画から目を背けることも許されないつかさは、自分自身のオナニーしていた姿を涙目で鑑賞する。
 これもAV撮影の一環らしい。
 つかさの反応を撮るために、表情を映そうとしてくるカメラを必死に睨み、負けじと顎に力を加えて懸命なまでに歯を食い縛る。
「オナニーは気持ち良かったか?」
 屈強漢の質問に合わせ、横から別の男の腕が、つかさに嘘発見システムを突き付ける。
「……やめろ」
「言え。オナニーは気持ち良かったか?」
 人質の存在。突きつけられた映像。
 これらが意地を張ることを諦めさせ、とうとうつかさは答えるしかなくなった。
「……ああ、よかった」
「今もムラムラするか?」
「で、できるか!」
 ブッブー!
 赤いランプが点滅した。
「今もムラムラしてるんだなぁ? 可哀そうに。俺がアソコを弄ってやるよ」
 屈強漢の手が下へと、ベルトの金具に絡みつき、ガチャガチャと外し始める。チャックが下がることで緩んだショートパンツの、さらにタイツも下げた下着の中へ、男の手の平が潜り込み、技巧を持って穴を貪る。
 アソコに潜り込んだ太い指が、細やかに出入りして、つかさに快楽を与え始めた。
「今もムラムラしてるか?」
「……してる。とでも言えばいいんだろう」
 くちゅり、くちゅりと音がなる。
 そこにはつかさ自身がオナニーで漏らした蜜が、ふんだんに蓄えられており、ショーツが初めから濡れていた有様だ。
「俺の指は気持ちいいか?」
「ふ、ふん。悪くはない」
「おチンチンが欲しいか?」
「ふざけるな!」
 ブッブー!
 赤いランプが点滅につかさは引き攣る。
「ほーう?」
「ち、違う! 欲しいわけがないだろう!」
 ブッブー。
 ハズレを告げる効果音が繰り返される。
「セックスしたいか?」
「したくない!」
 ブッブー。
「正常位とバックの妄想をしたんだろ?」
「そういうわけじゃない」
 ブッブー。
「正常位とバックがいいらしいなぁ?」
「…………」
 もう何も答えられない。
 高まる性欲を隠すことは許されず、そうやって暴かれ尽くしたつかさは――。
「あ! ぐぅぅぅ……!」
 トドメのように指でイカされ、もう感じていることを否定しても意味はない。ビクついた姿も撮られ、快楽にヨガった証拠がここまで残されてしまっているのだ。嘘を暴かれると知っていながら、感じていないと言い張る気にはもうなれない。
「では次のゲームといこう。パトレン3号になって俺と戦え」
「なに?」
「お前が勝ったら人質を解放し、俺が勝ったらセックスをしてもらう」
「いくら何でも、ギャングラーでもないお前が……」
「犯罪者の心配か? お優しいことだなぁ?」
「何の冗談だ。私にチャンスを与えたこと、後悔させてやる!」
「そうかいそうかい」
 指のピストンが再開される。
「んっ、あぁ……!」
 つかさはそのまま、屈強漢の胡坐の上で何度もイカされ、何時間も遊ばれて、やっとのことでこの日の凌辱から解放される。
 心のどこかでわかっていた。
 彼らが約束を守り、つかさが勝てば本当に人質を解放するとしても、この敵地ではパトレン3号が不利になる仕掛けをいくらでも用意可能だ。
 無謀なのだろう。
 それでも、つかさに選択肢はなかった。


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