後編 ルアン・メェイの拘束陵辱

【後編】

 女がルアンにキスをする。
 胴体の横に立ち、そこから顔を被せて行う口付けは、単に触れ合わせるだけのものではない。薬液を含んで口移しにするために、彼女はキスの直後に舌をねじ込み、頬張るように貪り流し込んだ。
 こじ開けた唇の隙間に注ぎ込み、そして重ねた顔をどかさない。塞いでおく事で吐き出させないようにして、女はしばしのあいだルアンの唇を味わっていた。
 その薬液もまた媚薬である。
 オイルによって、それでなくとも全身に成分の浸透しているルアンへと、体内にまで媚薬を流し込むのが彼女の狙いだ。
 唇を離す時、ルアンの体はより一層のこと敏感に、もはや風に吹かれても困るような状態に至っていた。それほどに仕上がったルアンの顔は、手を触れるまでもなく、ただ放置しているだけでさえ、いかにも快楽を我慢して顔を硬くしている。
 そんなルアンへ試しのように手を触れて、女は面白おかしく乳首を弄った。
「ひあっああああ!」
 これまでにない声だった。
「あっ! あっぐぅ! んっあっあああ!」
 指先を上下に動かしているだけで、本当なら激しくのたうち回っているであろうほど、ルアンは激しく喘いで身悶えする。台をガタガタと揺らすほどの感じようにカメラが向き、ルアンを囲む何台もの機材に動画が収まり続けていた。
「いい具合になったわねぇ?」
 楽しげに彼女は離れ、次に行うのは器具の装着だった。
 女が用意するのは胸に装着する吸盤だ。出っ張りの部分がちょうど乳首に被さるような少し縦長の吸盤は、コードが繋がれ電流が流れるようになっている。それにより吸盤が収縮して、マッサージを行う作りであった。
 それをどちらの乳首にも装着して、女は機材のスイッチを入れる。コードを伝う電気が吸盤を蠢かせ、たちまちルアンは喘ぎ散らした。
「あっがぁ! あぐぁっ、あぁぁ……!」
 首が大きく反り返り、後頭部で胴を押し上げたように背中が浮く。
「んがっあっ! あっ、あん! あん! あぁん!」
 ルアンの乳首にはU字のような縦長がぴったり被さり、そして収縮によるマッサージが施されている。穴の幅がぎゅっと縮んで揉み潰す動作が小刻みに行われ、その刺激がルアンを瞬く間に追い詰めていた。
「おーおー」
「アソコがダラダラじゃねーか」
 M字となった股に面々の注目が集まる時、縦筋からは多量の愛液が噴き出ていた。とうにオイルで輝いていた肉貝だが、膣口から生まれる新鮮な汁気が表皮を伝い、牝の香りがたちまち立ちこめているおかげで、オイルが愛液によって洗い流されかねなかった。
 装着する器具は乳首への自動マッサージ器に留まらない。
 ローターが貼りつけられた。
 クリトリスの位置にぴったり合わせて、リモコン式がテープで固定されている。オイルに濡れた肌にもかかわらず、平然と粘着力を発揮するテープによって、ローターはぴったりと固定された上に振動を開始する。
「んぐぁ! あああっ、あぁあ!」
 ルアンの喘ぎようはさらに激しくなっていた。
「あっくぁああ! あっあああ!」
 一心不乱に髪を振り乱す彼女へと、さらに電動ディルドの挿入が行われる。男性器に酷似したそれが押し込まれ、膣口がその太さに合わせて広がると、やはりスイッチによって振動を開始した。
「んぐぁあああ! あっ、あぁああああ!」
 もう既に、喉を壊さんばかりの喘ぎ声が上がっている。
 そこへさらに、肛門にアナルパールが挿入された。しかもグリップ部分にはバッテリーが搭載されており、例に漏れずスイッチを入れれば振動を開始する。
「ひぐぁあ! あっ、ぐあっあ! あああああ!」
 ルアンの喘ぎはより激しく活発に、胴体の浮き沈みも執拗なものになっていた。
 ドン、ドン、ドン、と。
 まるで音を立てて暴れるためであるように、持ち上がった背中でシートを叩き付け、背もたれに衝撃を与えて揺らしている。そんな振動のおかげで台全体もガタガタと揺らされていた。
「あぐぁ! あっ、あぁぁ!」
 条件反射なのだ。
 好きで暴れているわけではなく、勝手に体が反応してしまっている。ビクっと高く背中が持ち上がると、そのアーチの状態に対してまた、ビクっとなるような反応が現れて、結果打ちつけてしまっている。
 そうやって、ルアンは背中で叩いているのだ。
 ドン、ドン、ドン、と。
「ああぁ! あっ、ああああああ! あぁん! あっ、あん!」
 それを掻き消して余りある大声で、ルアンは喉が痛むほどに喘いでいた。
 そして――。

「くぁああああああああ――――――――――!」

 潮が噴き上がった。
 盛大に撒き散らされた滴が雨となり、ルアン自身の体と床を汚していた。
 その絶頂を見て誰しもがほくそ笑む。
 周りにある何台ものカメラそれぞれも、ルアンの撒いた滴を捉えていた。
 それから彼らはスイッチへと手を伸ばし、リモコン式のローターも振動を停止して、皆でルアンに休息を与え始める。それは優しさなどでなく、ただ撮った映像を本人に見せつけようと思っているだけの話だ。
「はぁ……! ふはぁっ、はぁ……! はぁ……!」
 時間をかけて息の落ち着いていく様子を見て、周囲の彼らはそれぞれの映像を再生しようとモニターに準備する。ルアンが気を取り戻すタイミングを見計らい、まず一人目が映像を突きつけるのだった。
「またそのような…………」
 最初にルアンが見せられたのは、胴体が執拗に跳ね上がり、台を背中で叩いている様子であった。動画の中から聞こえる自分自身の絶叫と、それに体を激しく反応させる有様から、ルアンは顔を背けていた。
 そこへ先回りするように、また別の男が写真を突きつける。
 性器の写真であった。
 指で広げた肉ヒダを何十枚も撮影した際の、鮮やかなサーモンピンクの写真がルアンを待ち構えていた。目を逸らすつもりが逸らした先にそれがあり、ルアンは耳まで熱く染めた表情で逆方向へと逸らし直した。
 だがそこにも、カメラは待機していた。
『くぁああああああああ――――――――――!』
 ルアンがつい先ほど、自分で上げた絶叫を今度は動画によって聞かされる。その映像は体を真正面から映したもので、胴がビクビクと跳ねるようにして、ディルドの入ったアソコからは滴が舞い上がっていた。小さな小さな噴水の場面が人からはどう見えていたのか、それをルアンは確かめてしまっていた。
「随分……私を、貶めて頂いたようですが、それで皆様はご満足されたのでしょうか?」
 ルアンは問う。
 空気にさえ触れたくないほど敏感になってしまった体で、実際にルアンは甘い痺れを所々に感じていた。今は停止している乳首のマッサージ器も、ディルドにアナルパールも、ただ接触しているというだけで薄らとした快楽を生み出して、皮下には快楽を走らせている。
 スイッチが入っていなくても、肌に触れている事自体が刺激になってしまっていた。
 おかげで愛液の分泌が止まっていない。
 ディルドが収まっている事で太さの分だけ穴の広がる内側で、膣壁に触れてさえいれば分泌のための反応が起こり、細胞を甘く溶かすような感覚が漂うと共に愛液は生み出され、その汁気がしだいしだいに外へ染み出して来ているのだ。
 まるで汗が噴き出た玉が表皮を流れ落ちるようにして、ディルドと膣壁の隙間から出て来たものが下へと向かう。だがすぐそこにアナルパールが刺さっているので、垂れたものは肛門の皺に囚われる。
 そんな風に肛門が愛液によって濡れる有様に、周囲のうちの一人がカメラを向けて、殊更に拡大して撮影していた。
 誰もが思い思いのものを撮っている。
 胸ばかり撮っていた者、顔ばかり撮っていた者、胴体の動きを追った者、異なる注目ポイントに沿った角度やアングルのものが何台ものカメラそれぞれに収まっている。
 そしてルアンは撮られる事の恥ずかしさで赤面して、頭の中さえ熱っぽくしているのだ。
「わかったかな? ここにこうしている時点で、あなたには十分に協力をしてもらっているんだよ」
「…………そのようですね」
 ひどく気に食わない顔でルアンは答える。
「では休憩は終わりにして、そろそろ再開しようではないか」
 男の言葉にルアンは身構えた。
 気がおかしくなるほどの快感は、今なお全身に余韻を漂わせている。簡単に絶頂させられるような強烈さをこう何度も味わっては身が持たない。
 だが、スイッチは入った。
「んっぐぁああ! あっ、あぁぁああ!」
 乳首のマッサージが再開された途端、ルアンは直ちに勢いよく下を向く。髪を振り回す勢いでビクっと跳ねて、今度は逆に後頭部を後ろへ叩き付け、首の力で肩を持ち上げてしまっていた。
 ローターのスイッチが入る。
「んんんんん!」
 ディルドのスイッチが、アナルパールのスイッチがそれぞれ入れられ、ルアンは身悶えを激しくした。
「あっがぁ! あっ、んぁあ! あっ、あぁあ!」
 ほとんど絶叫と言ってもいい。
 喉が痛むほどの喘ぎ声を上げながら、ルアンは狂ったように身を捩り、台を執拗に揺らしている。手首足首を固定して、拘束しておくためのリングに抗い、それでも手足を持ち上げようとしてしまうのも、全ては激しい快楽のせいだった。
「あぁああ! あっ、あぁ! あぁん! あっ、あん!」
 これだけ大きな快感に飲み込まれれば、やはり絶頂など時間の問題に過ぎなかった。

「んぅぅぅぅぅぅぅぅ…………!」

 またしても潮が舞い上がり、そんなルアンの絶頂を何台ものカメラが捉えていた。真正面から映したアングルでは小さな噴水の上がる瞬間がくっきりと、横から撮ったものにも滴は映り、果ては台の真後ろからでさえ何滴かが確認できる。
 そして、今度は休憩が挟まれない。
 絶頂しようと関係無しにスイッチは入っているままに、ルアンはビクビクと四肢をくねらせ喘いでいる。
「あん! んぁん! あっあん! あぁん! あん! あん!」
 もはや気持ち良すぎて苦しいまでに追い詰められ、腹の底では許しを乞う思いすら湧き始める。
「あぁ! あん! あぁん!」
 だが、快楽は止まらない。
 涙が出るほど追い込まれ、いっそ辛そうに喘ぐ姿を眺める事で、この場の全員が楽しんでいた。
「いい光景だ……」
 誰しもがほくそ笑み、その芸術的な場面を目に焼き付けている。記録の中に収めている。声一つ出さずに鑑賞に徹する者もいる。
「んっ! ああっあん! あぁん! あっ、あ! あ!」
 ルアンは激しく首を振り、髪を随分と乱していた。汗ばんだ肌に何本でも張り付けながら、振りたくると共に胴体もまた激しく上下させている。背中が台を連打して、脚も必要以上にくねくねと蠢いていた。
「んぐあぁああ――――――――!」
 また、イった。
 三度目の潮吹きを皆が拝んで、周囲には嬉しそうな表情が並んでいく。
 今なお、誰もスイッチを切らない。
 快感のあまり逆に苦しみ、のたうち回る姿を鑑賞して、やがて四回目の瞬間が訪れる。
「んぐぁああああああ――――――――!」
 まだ、誰もスイッチを切らない。
 それからまた、少しの時間を挟み――。

「あっ、あぁああああ――――――!」

 この絶頂を契機にして、やっとの事でスイッチが切られ、ルアンには休憩が与えられる事となる。
「…………ご満足でしょうか」
 その言葉に、もう許して欲しい思いが存分に込められているのは言うまでもなく。

「まだまだ」

 ルアンは絶望した。
 この快楽地獄は一体、あといつまで続くのかと、気の遠くなる思いであった。