座敷童の宇継さちは痴漢幽霊の事件を追い、とある列車に乗り込んだ。そこに待ち受けていたのは予想以上の群れ――さちはたちまち敗北して――
第1話 痴漢列車に乗ってしまって第2話 中年限定キャンペーン第3話 映像見せつけ辱め第4話 中年霊がベロベロと第5話 そしてブタ男と交わって
真夜中の暗闇は濃密だった。
街からも、住宅からも、そこは遠く離れているのだ。
明かりに満ちた都会や外灯のある住宅街は、深夜であってもある程度の光があり、一寸先も見えないような闇にはならない。二四時間営業のコンビニに信号機、夜中でも走る車のライトなど、それなりの光源に満ちている。
だが、その場所にあるのはまさに闇、現代にはあるまじき漆黒だ。
廃墟の寺である。
都会から数キロ離れ、住宅地からも切り離された山の上、地上を照らすものが本当に星しかないような廃墟の寺は、長い長い石畳の階段を上っていき、塗装の剥げた鳥居をくぐり、ようやく辿り着く場所にある。
そして寺に視線をやれば、木材のところどころ腐り落ち、素材の黒ずんだ賽銭箱が置かれている。投げ込む部分の板が折れ、お参りの際に鳴らすべき鐘は隣に転がり落ちている。戸も劣化しきった果てに穴が空き、屋根に至っては台風の風速に運ばれてきた飛来物が、ひしゃげた小さな看板が突き刺さっていた。
もう誰も手入れをしない、取り壊しにすらならない廃墟の寺は、昭和の頃から何十年ものあいだ劣化の一途を辿り続けて、周囲には不法投棄の家電が散乱している。ドアが半開きになったボロボロの冷蔵庫に、砂埃の付着でプロペラの変色しきった扇風機、画面の割れたテレビモニターまで投棄され、しかも年代の幅が広かった。
幸い、山として積み上がることはなく、数年に一つや二つといったペースでしか投棄物は増えていないが、年号が変わる前から放置されている土地の家電は、年代の幅が実に広く、転がっているテレビの中にはブラウン管時代のものすら混ざっている。
そんな不法投棄を周囲に散乱させ、雑草も生え放題にしている寺の裏側では、墓地すら放置されている。苔生した墓石がひび割れて、長い年月で台風も地震も経験しているせいか、いくつもいくつも傾いたり、いっそ倒れてしまっている。
折れた卒塔婆が散乱して、それを拾ってみたところで、腐敗のせいでもうとっくに文字は読めない。
ここは心霊スポットだった。
廃墟となっている場所は、ホームレスが住み着いたり、不良が寄りつくなどして、治安の悪いケースもあるが、この寺に関して言うなら、問題のある人間すら近づかない。
かつては不良がたむろしていた時期もあったが、ある日を境に急に近づくことがなくなっている。小学生の遊び場になっていたこともあるが、その小学生もまた、今まで通い続けたこの寺に、急にぱったりと近づくことを辞めている。ホームレスが住み着いても、いつしか必ず姿を消す。
皆、体験しているのだ。
ここが本物の心霊スポットであり、出るべきものが本当に出て来るのだと、その恐怖を問答無用で味わって、恐怖のあまり二度と近づかなくなった話は複数にわたって伝わっている。
そうやって噂になれば、また新たに面白がって近づく人間が現れるが、その人間がまた二度と立ち入らない。
見てしまえば、二度と寄りつこうとは考えない。
聞こえてしまえば、たちまち背筋が凍りつく。
そこには問答無用に人を恐怖させる何かがある。廃墟、寺、墓地、心霊的な何かを連想するに十分な記号はあれど、ここに漂うものは決して、そんなことだけで作られた雰囲気のせいだけではない。
空気の質感が違う。
大気組成が普通とは異なっているかのような、そこに立つだけで感じる奇妙な肌触りに、何かがいるような予感を煽られる。
もしも霊感という言葉を信じるなら、漂っているのはその手のものだ。
感じてはならない、見えてはならないものの気配が、空気の質感にそれだけの影響を及ぼしている。
そんな本物の気配漂うその場所に、一人のあどけない顔をした少女がしかし、微塵も怯える様子もなく、涼しい顔をして鳥居や建物を見上げていた。
「あー。ここ、かなり瘴気が濃い。確かに聞いていた通り『本物』の場所だぁ」
歳は高校生ほどであろうか。
いや、もっと子供だろうか。
女の子が出歩くには危うい真夜中、なのに怖がる様子もなく、その子はたった一人で危険な心霊スポットを訪れている。
その名は宇継さち。
パーカーの内側には、和服をモチーフにした上下一体型のワンピースを着込んだ小柄な少女は、顔立ちのおかげで辛うじて十代半ばに見えるのだが、体格としては小学生に見えないこともない。
どことなく幼さの滲み出た少女は、しかし心霊スポットの不気味さに怯えもしない。
「間違い無さそうだ。依頼のあった怨霊は、ここが大元になっているね」
などと、一人口にしている少女――さちは、肩に吊したポーチを開き、その中身を漁り始めている。月や星しか地上を照らしてくれていない、一寸先も見えない闇で、さちは夜目を利かせて、薄暗い部屋の中程度には、周囲のものを見渡している。
手を突っ込んでいるそのポーチは、サンドバッグの形に若干似た円柱状の、何やら『大人』などと白い文字をプリントしている。
「よし、これこれ」
その中から、さちは札を取り出していた。
神道、呪術、オカルトや神秘に詳しい者でなければ、決して意味を理解できない文字が、その札には墨で綴られていた。
あぁ……ぁぁ…………ぁぁぁぁ……………………。
ちょうど、その時になって声が聞こえた。
呻き声である。
ぁぁぁ……あっ、ぁぁ…………。
あぁぁ…………ぁぁぁ……………………。
……ぁぁぁぁ。
病人が苦しみ抜いて、まともに喋れもしない容態の人間が、辛うじて搾り出しているような低い低い呻き声は、数人分にわたって聞こえて来る。前から、後ろから、右から、左から、さちの四方八方を囲む形で、声はさらに数を増す。
あぁぁぁ……。
おぉ……ぉぉぉ…………。
ぁぁ……ぅぅ……ぅぅぅぅ…………。
ぁぁぁ……。
一人また一人、声の数は徐々に増え、さちは何かに囲まれていた。誰もいないはずの、野良猫の気配すらない、生きた気配の何もないはずの空間で、この不気味極まりない声は響いているのだ。
人影が浮かび上がっていた。
闇夜に目が慣れ、暗くとも先を見通すさちの視界に、その部分だけの闇の濃度を上げているような、ぼんやりとしたシルエットがぬぅっと、滲み出てきたように現れ、それが人型をしているのだ。
明るい場所で見る場合の、通常の人影を想像して欲しい。
影の元となるような人間がここにはおらず、まして影を作るための光もないのに、それでも壁や地面に見える場合のような、実体のないそれは見えている。物体に張りついて見えるのが普通の影であるのに対し、それは立って動いて一歩ずつ、さちに近づこうとしてきている。
それがいくつもいくつも、本当にいくつも、数を並べてさちを囲んで、徐々に迫らんとしているのだ。
それはあるいは、黒い霧の固まりにも見えるだろう。霧という、普通は決まった形状を持つことのない気体が、どうにか人型を作り出し、生物として振る舞おうとしているような、そんな存在がさちを包囲している。
幽霊、怨霊、悪霊。
これら全て、そうした種類の存在である。
「ではでは」
霊感を持つさちは、それらの存在をしっかりと、明確に認識しながら恐怖しない。霊体に包囲されていることをわかっていて、その上で冷静沈着、かつ勝ち気な表情すら浮かべている理由は簡単だ。
この子にとって、自分を包囲している霊体は、どれも脅威にならないのだ。
「悪霊退散!」
その瞬間、さちは札を地面に叩きつけていた。
床に物を叩きつけ、破壊でもしたいかのように、あるいはメンコでもやるように、札が地面に張りついたその瞬間、全ての霊体が吹き飛んでいた。
文字通り、煙のように消えていた。
風が吹いたわけではない。
しかし、煙に息を吹きかけたかのように、周囲ぐるりと囲んでいた人影は消滅した。さながら放射状の風がさちを中心に吹き荒れて、身の周りのものを吹き飛ばす形となって、ものの一瞬にして消し去ってしまったのだ。
「依頼完了」
そういう力を、さちは持っていた。
困っている人間の話を聞き、相談に乗っているうちに、その原因を突き止めて、さちはここまでやって来た。たまたま肝試しに入った女子中学生が帰宅後も奇妙な気配に悩まされ、怖がっていたのを解決するため、その子についてまわったものの大元を断ったのだ。
人間のあいだでは、霊能者として通っている。
幽霊の存在を信じる人間から、たびたび悩みを聞いてまわっているさちは、しかし彼女自身も本当は人間というわけではない。
座敷童なのだ。
住み着いた家に幸福をもたらし、けれど出て行けば富は消え去る。そんな言い伝えに聞く本物の妖怪にして、不幸と幸福の力を応用し、コントロールする能力を持つ宇継さちは、人間の役に立ちつつ、人間社会に紛れて生活をしているのだ。
*
誰かの相談を聞く場合、幸福をもたらす力を応用して、問題解決の確率を底上げしつつ、不幸の要素は退治するべき悪霊へ向くように操作している。
そんな宇継さちは、今日も新たに問題解決のために奔走し、とある電車に足を踏み入れていた。
霊感のある中高生から、痴漢の幽霊という相談を受けたのだ。
普通の人間には姿が見えず、声も感触もわからない。けれど霊感ある女子にはわかってしまう。実に厄介な痴漢がたびたび出没しているので、さちはその相談に乗ったのだ。幽霊の痴漢が相手では、勇気を出して手首を掴み、駅員に突き出そうと考えても実現できない。お守りやお札を試しても効果が出ずに悩んでいる話を聞き、問題の駅を調査して、痴漢霊の出所を突き止めた。
どこかに大元がないかと思って探した結果、それが当たりであった。
とある路線の、夕方から夜にかけてのみ出没する色情霊が存在する。
地縛霊――その地に縛られ、場を離れることの出来ないタイプの幽霊のようにして、行動範囲が限られている幽霊は、必ず決まった時間の回送列車に乗ってやって来る。まるで電車の利用客のようにして、回送列車から駅へと降りると、痴漢の対象を探して同じ電車に乗っ込んで、幽霊という特性をいいことに撫で回す。
そして、時間になると帰りの電車を求めて彷徨い、必ず決まった時間の回送列車で、元の場所へと戻っていく。行動可能な範囲の他にも、活動時間すら限られているタイプの幽霊で、数は複数。
巣から出て来て、巣へと帰っていく特性というわけだ。
ならば巣を突き止めて破壊すれば、まとめて消し飛ばせる。
(ってわけで、いっちゃうよー)
幽霊の存在は、ほとんどの人間には見えないしわからない。
犯罪者と同じことをやっているのに、もう人間ではない存在だから、駅員でも警察でも対応できず、そもそも話を信じてすらもらえないのが普通である。だったら、座敷童であり除霊師でもあるさちが、警備や警察に代わって成敗するしかない。
「よーし」
と、いうわけで。
さちは張り切って、真夜中の回送列車に乗り込んだ。
「JKスタイルで!」
格好は制服だった。
痴漢の調査をするのに、痴漢の対象になりそうな服装なのだが、高い霊力を持つさちには痴漢霊の脅威など関係無い。もしも触られようものなら、その瞬間に攻撃的な霊力を流してやり、消滅させることができるので、その手の頓着は特になかった。
可愛らしいスカートで、丈の長さは太ももの中心より少し上、ロングソックスを膝より高く伸ばすことで、ソックスとスカートのあいだに肌を覗かせる領域を形成する。ワイシャツの上にはボタン全開のカーディガンを羽織り、そしてそのワイシャツもがっつりシャツだし、校則が厳しいところでは注意されるが、調査中のさちに校則など関係無いのだ。
そして、さて。
さちは列車に乗り込んでいる。
どこの駅にも停まらない、乗客を乗せるためではない回送列車を、しかし幽霊は利用している。駅を徘徊していた痴漢霊の様子を観察し、尾行して一緒に乗り込む形で、さちも同じ電車に入り込んだわけである。
元々、妖怪なのだ。
霊力が強いから、実体化して人間の前に姿を現し、霊感のない相手であっても話したり触れ合ったり出来るのだが、霊体化して透明人間のような状態になることも簡単だ。回送列車に乗るさちを見て、止めに来る駅員も現れずに住むわけだった。
無人の列車が動き出す。
ひとまず窓際に立っているさちは、座席に腰掛け、ぼんやりと佇む一人の中年の姿を遠巻きに観察していた。姿が透けて、胴の向こうの景色が見える。半透明の霊体は、気配を消したさちの存在には気づかないまま、ぼんやりと虚空を見つめていた。
(うーん。一人だけ?)
顎に指を当て、さちは考え込む。
痴漢霊質の活動中、駅や電車で見かけた幽霊達は、もう少し数が多かった。たった一人ということはないはずだが、たまたま目を付けた一人を尾行して、同じ車両に入り込んだ結果として、さちの視線の先には一人しか座っていない。
行動パターンは調査済み、巣の存在もわかっている。
見かけた霊は、必ず同じ時間、同じ巣に帰ろうと動いている。この回送列車にも、他の車両に乗り込む幽霊は見かけている。
なのに、一人。
この車両には一人しかいない。
(うーん。別の車両?)
どちらにせよ、この回送列車が辿り着く先、あの中年の幽霊が降りていくのを尾行して、そのまま巣へ辿り着いてしまえば、あとはまとめて消し飛ばすだけである。この車両に一人しかいないからといって、それが大きな問題というわけではない。
調べはきちんとついている。
あとは計画通りに実行して、完遂すればそれで終わりだ。
(いやぁ、それにしても、ちょっとなー……)
さちの視線の先に座る中年霊は、どうも清潔感に欠けている。白いシャツが肥満体格によって内側から大きく膨らみ、下の方からは腹もはみ出てしまっている。全体的に丸っこい、脂肪のあまり、胸も下垂しきった乳房のようになった中年霊は、しかも下半身はトランクスだ。
シャツと下着の姿。
家の中ならいいのだが、いくら幽霊だからといって、格好くらいはきちんとして欲しいものである。
装いがだらしないのもそうだが、脂肪が滲みでているのか、シャツは油でも吸ったように微妙な変色を帯びていて、内側の肌が透けて見えやすくなっている。その透け具合に気づいてしまうと、濃い胸毛や腹毛の存在まで目について、あまりの汚い印象にさちは引き攣る。
(うっへー)
幽霊に脂肪というのもおかしいが、生きていた頃はよほど不摂生だったのだろう。
何やら、スマートフォンを弄っている。
人が幽霊として現世に留まる場合、物や衣服のイメージも霊体の一部になるので、物質ならぬ霊質のスマートフォンもあるにはある。だが、現実の電波を介することができない、電話やインターネットが繋がるとは思えないスマートフォンで、一体何を見ているのか。
それもおそらく、生きていた頃に見ていたコンテンツが、霊化する際にイメージとして定着しているだけだ。本人には思い出せずとも、脳の奥には残った情報が、SNSや動画サイトの形となって、霊質スマートフォンを通して再生されている。
より短い言葉にまとめれば、夢や幻が画面に投影されている。
(ま、とにかく退治あるのみ)
向こうはこちらを気にしていない。
一応、息を潜めて距離も取り、妖術で気配も殺しているので、よほどの霊力がなければ中年霊はさちの存在を認識できない。気にせず近づいてしまっても、バレないといえばバレないが、静かに大人しくしている方がより確実なので、とりあえず座席を見る。
幽霊しか乗っていない、生きた人間は運転士だけであろう無人列車は、席などいくらでも空いている。
まあ座ろうと、さちは席に体を向けた。
窓に寄りかかることをやめ、他に誰もいないので思い切り、堂々と真ん中に座ってみた瞬間、急に車両のドアが開き、数人の幽霊がふらふらした足取りで入り込む。
(うーん。今更登場しますとは)
形すらぼんやりした幽霊は、五人……いや、六人か。
力の弱いタイプは像すら朧気で、霧や煙をどうにか一箇所に固めながら漂わせ、気体に着色したかのような、風が吹けば消えそうな見た目になる。それどころか、肌や髪の色すら現れず、単なる白い固まりが人型だけは保ったようなタイプもいる。
いずれも弱小、妖術を使えば本当に風を吹かせて消してしまえる程度の相手だ。
ロクに脅威にならない幽霊は、気配隠蔽の術を使って、絶賛透明人間中であるさちのことには気づかない。六人はいる下級の群れは、さちの存在に気づきすらせず、だから目もくれずに通り過ぎようとしているが――。
「あれ?」
約二名だけ、色付きの下級がさちの両隣に座っていた。
「えーっと、どういうことかなー。なんて」
世の中には、他にいくらでも席が空いている状態で、わざわざ女の子の隣に座る気持ち悪い人間がいるのは知っている。今まで見たことはなかったが、まさか自分の隣にそれが来るとは思わなかった。
というより、今のさちは妖術で気配を殺している最中で、下級ごときにはさちの存在を認識できないはずである。
それが、両隣に座ってきた。
「おかしいなー。なんでだろうなぁ……」
さちは微妙に焦っていた。
存在に気づかずに座るのなら、むしろさちの膝に尻を置き、上に乗ってきてしまう方がまだありえる。綺麗にしっかり、さちのことをあいだに挟んで両隣に来るというのは、何か意図的なものを感じるわけだ。
「気づいてる? 私のこと、見えちゃってます?」
「…………」
「…………」
試しに声をかけてみるものの、どちらからも返事はなく、視線すらやって来ない。まるっきり、さちの存在に気づいていなさそうな様子だが、それにしてはますますおかしい。
さわっ、
と、さちの太ももに手が置かれた。
「え? は? え? は?」
痴漢に対する不快感より、まず先に困惑の方が浮かんできた。
(私、透明だよね? 見えないよね? 気配消してるよね?)
透明人間のはずの自分に、普通の人間が触ってくる。どうして見えないはずの場所に手を置いて、触るなどしてくるのかの、まず混乱の方が湧いてしまい、スカート越しに太ももを撫でられることの不快感は、何秒も何秒も遅れてやってくる。
そして、次にさちが不思議に思うのは、どうして下級が自分の太ももに触ることができるのかという根本的な疑問であった。
「あの? ちょっと?」
「……」
「……」
無反応、やはり視線すら向けてこない。
だが、さちにはだんだんと、それがわざとらしいものに見えてきた。気づいていないフリに思えてきた。透明人間なんて見えはしない、まず存在自体に気づかない。気づいていないのだから、その空間に手を置いているのは、あくまでたまた、何気なくやっている仕草に過ぎず、痴漢の意図なんてありはしない。
という、言い訳を心の中に用意して、本当はわざと触っているのではないかと、だんだん思えてくるのである。
(なんで触られてるのかはわかんないけど……)
とりあえず、気持ち悪い。
二人分の手が太ももを這い回り、ぐるぐると撫で回してくる手の平に応じて、スカートの生地は脚の上に蠢いている。
「退散!」
その瞬間、二人の痴漢霊は消滅した。
攻撃的な霊力を流してやったのだ。高圧電流の流れるものに接触して、感電でもするかのように、二人の痴漢霊には霊力が流れ込み、霊体が内側からずたずたに引き裂かれ、霧散して消滅した。
「ま、いいのいいの。二人くらい」
巣を突き止めるのに、尾行相手を消すのはよくないが、追跡してきたのは元々あちらの、別の座席でスマートフォンに夢中な中年霊の方である。だいたい、他にも痴漢霊はいくらでもいるわけなので、多少は消したところで尾行相手は失わない。
というわけで遠慮なく消したのだが、下級がさちの存在を認識できたのは、きっと上級が乗り合わせているからだ。上級の力を授からなければ、下級ではさちに触ることなどできないはずだ。
問題はそれが意図的なことかどうかだ。
さちの存在に上級が気づいていて、だから下級でもさちを認識可能なようにしていたのか。それとも、繋がりの強い仲間には、無条件に力を垂れ流しているだけの話か。細かいところは気にかかるが、巣を暴けばわかることだろう。
「……へ?」
などと思っていたその時、今度は乳房を揉まれていた。
もみ、もみ。
などと、軽いタッチで指を押し込み、膨らみ具合を味わってくる手があった。座席に座るさちに対して、壁から手が生えるような形となって、さちの乳房は背後から鷲掴みにされていた。
「いや! 退散!」
またすぐに霊力を流し、乳揉みの手を霧散させるが、その瞬間にまた両隣には、新たな下級が座り込み、先ほどのように太ももに手を置いてくる。さらに背後から手が生えて、第二の乳揉みまで現れていた。
「さっきからぁ! 退散退散!」
やはりまた霧散させるが、その次の瞬間である。
車両のドアが再び開き、その向こうから何人も何人も、ゆうに数十人はいる多数の群れが雪崩れ込んできた。まるで隣の車両は満員で、ぎゅうぎゅう詰めのあまりに溢れ出て来ているように、群れの固まりは雪崩れ込み、下級がまた両隣に座ってくる。背後からの乳揉みも現れながら、真正面が群れの壁に遮られ、向こう側にある窓など見えなくなり、さしものさちも狼狽しつつあるのだった。
「なになになに!? え、どうしよう――――」
計画が崩れていく。
もうこうなったら、一度この場で全ての痴漢霊を消滅させ、後で生き残りをゆっくり調べた方が良いだろうか。
「退散!」
ともかく、接触してくる痴漢霊は退散させ、そして今度は目の前の群れもまとめて消し去ろうと、より強力な妖術を行使しようと試みる。
だが、その瞬間だ。
「うひっ! ああもう!」
座席から手が生えて、お尻にまで触られた。人の手の平に座ってしまったような感触を急に感じて、それを避けんばかりに慌てて立ち上がったさちへと、下級の群れは一斉に手を伸ばしてきた。
席を立ってしまったことで、痴漢で構成された集団に身を投じる形となっていた。
「ひゃっ!」
手という手の数々に、手足や胴の、体中いたるところを掴まれて、さちはたちまち群れの海へと飲み込まれた。
「や! ちょっとちょっと!」
慌てて霊力を解き放ち、接触してくる痴漢霊へと、今までのように流し込んでやろうとするが、それを試みたと同時にさちは驚愕に目を見開く。
「あ、あれ? あれ?」
霊力が働かない。
次の瞬間に気づくのは、なんと霊力を吸われている状況だった。さちを囲む下級の群れは、今までそんな様子はなかったのに、他者の霊力を吸収し、取り込む能力を持っていたのだ。
尻に、胸に、腰に、手が当たっている場所から、接触自体がストローで吸い上げる行為のように、さちの体内から下級へと、エネルギーは流れ移っている。その吸収のせいで体内の流れが狂い、霊力のコントロールに支障が出たのもそうなのだが、十人以上の群れがこぞって手を伸ばし、どこでもいいから触ろうと、無我夢中になって接触を求めてきて、遠く手が届かない下級からすら、せめて指先だけでもと伸びて来ている。
下級の霊体では、さちの霊力量には耐えきれない。何より攻撃系の性質に変化したものを流されれば、吸収して取り込むよりも先に、構成が破壊され霧散する。
だが、一人一人は一気に吸い過ぎることがなく、自分の霊体が耐えられるペースでの吸収を行っている。それを十人以上の群れで同時に行い、おかげでさちの霊力量でありながら、みるみるうちに目減りしている。
気配を消すための妖術、先ほどから何度も下級を消したこと、それらの消費も合わせることで、さちの霊力は随分と減衰して、もはや気配殺しも維持できない。透明人間のような状態は解除され、なおもまだ霊力を吸われ続けて、たちまち無力化されつつあった。
「そ、そんな……!」
さちは慌てふためいていた。
ついに霊力が底を突き、いとも簡単に戦えない状態になってしまった。これでは下級の一匹すら消せないのに、向こうはいくらでも数がいるのだ。
「やっ、やだ……!」
群がる集団が四方八方から手を伸ばし、体のどこかが絶えず触られ続けている。
もはや、手に飲まれたようなものである。誰もが伸ばし、触ろうとしてくる手という手の、その海にこそさちは溺れて、スカートの内側に指を感じる。どちらの尻たぶにも指は食い込み、太ももにも手の平は這い回り、しゃがんだり這いつくばりすらする下級の手は、ふくらはぎや足首にすら伸びてくる。
手首などまず囚われ、抵抗を封じるようにしてきながら、無防備になった胸にも指は埋まって、頬にも首にも、腰にも腹にも背中にも、どこからか伸びた手は触れてきている。
しかも、スマートフォンまで現れていた。
「え……!」
スマートフォン自体が幽霊となり、ポルターガイストとして浮遊していた。
持ち主など存在せず、物体自身が意思を宿して行動を始めたように、浮かび上がったスマートフォンはさちの周囲を飛び交っている。それがいくつも、いくつもいくつも、視界の内や外を漂っている。
それを見てさちは悟った。
「これ……このままじゃ、私…………!」
あれはただのスマートフォンではない。
物が妖怪化した存在で、霊体でありながら公共の電波にアクセスできる。SNSにアカウントまで作り上げ、正真正銘の幽霊アカウントによって投稿を行う恐るべき存在だ。
そんな妖怪スマートフォンに囲まれている状況は、単に集団痴漢に遭うよりなお悪い。
より最悪な状況へと、さちの運命は転がっていた。
とある会社員がスマートフォンでSNSを閲覧していた。
他にも夜遅くまで出歩いていた中高生が、深夜までバイトしていた若者が、幽霊の存在など知りもせず、何気ない気持ちで投稿写真に目をやっている。
たまたま駅を利用して、それぞれの行き先、帰り道のために電車に乗ろうとしている面々には、何らの共通点もありはしない。ただ同じ駅構内に居合わせつつ、赤の他人同士として、お互いの存在を意識すらしないまま、電車待ちの彼らはスマートフォンを触っている。
学校も、会社も、住んでいる地域もそれぞれ違う。
しかし、画面に開くSNSアプリだけは、偶然にも共通していた。
大半が同一のSNSを利用して、最新の投稿を目にした時、思わずそれを見てしまった。公共の場には相応しくない、もしも他人に画面を見られれば気まずいものが、電車待ちの男達の握るスマートフォンには映っていた。
一人の女子高生が集団痴漢に遭っている。
周りを囲む男達は、ところが誰もが半透明で、今にも向こう側の景色が見えそうだ。だが肉体が透けるといっても、有色透明がいくつも重なり合う結果として、窓の向こうにある景色や、遠い背景などは映り込まない。
動画であった。
それぞれ音声はオフにしているか、無線式のイヤホンを使うかで、人様にその喘ぎ声は漏れていないが、体中を触られる女子高生の、慌てふためく様子が誰しもの目を引いて、視線を画面に釘付けにしている。
『やっ、やめて! ああどうしよう! 霊力が……霊力さえあれば……!』
よく出来た映像である。
集団痴漢の群れは幽霊で、生きた人間は一人もいない。女子高生を除いて全員を幽霊で構成した映像のクオリティに、見ている誰もが感心している。アダルト動画にここまで出来の良いものがよくぞあったと、感動すらしているのだ。
乗り込もうとしている車両も違う、お互いの存在を視界にすら入れていない男達が、けれど共通の感想を胸に秘め、動画に釘付けとなっている。
『あっ、やだ! あぁっ、胸が!』
羽織っているカーディガンは、元よりボタンを締めていないが、手という手の数々に揉まれるうちに引っ張られ、肩が出るまではだけている。ワイシャツのボタンを取ろうと試みる手によって、再生時間が進めば進むに連れて外れていき、いつしかブラジャーが丸出しに、大きな胸がこぼれ出そうになっていた。
『やぁぁ! 見ないで見ないで!』
激しく赤らんでいた。
ブラジャーが出ているだけで、茹で蛸のようにわかりやすく染まり変わって、羞恥心をあらわにしている。
胸が大きい。
ワイシャツが引っ張られ、ボタンも外れ、そうして出て来た胸はピンクのブラジャーに閉じ込められ、その締め付けによって中央へ寄せ上げられている。谷間のラインが形成され、そこに動画視聴者の誰もが注目を寄せていた。
『胸がっ、あ……やだっ、どうしよう……!』
ズームによって、胸が大きく映される。
繊維が細やかに映る画質によって、十字型のストライプがばっちりと、カップの生地に重ね合わせたレースのパッチワークに至るまでが観察できる。もっとも、痴漢に抗いくねくねと、絶えず身体を動かしている女子高生は、胴体もろとも胸を動かし揺らしているので、静止している時間が限られ、そうゆっくりと鑑賞できるわけではない。
だが、下着はしばし画面に大きく映っていた。
センターリボンが一瞬、画面中央を占めたかと思いきや、胴体の動きで乳房は左右に暴れている。もがいている女子高生と、それでも触る痴漢の群れで、いつしかブラジャーの肩紐に指が引っかかり、片方がずれ始めていた。
そして、今までズームされていた乳房からカメラは遠のき、また改めて全身を映し始める。カメラ手前をいくらでも幽霊が横切ったり、胴が重なりすらしているが、半透明の身体なので鑑賞を邪魔することにはならず、視聴者は気にせず女子高生の様子を眺め尽くした。
スカートが持ち上がる。
『ひゃん! 駄目だってば!』
丈に隠れたピンク色が暴かれると、今度はそちらがズームされ、同じくフロントリボンを着けて、十字型のストライプ柄を通したショーツが注目の的となる。抗うために腰を振り、胴も捻って、くねくねと暴れるショーツを観察していると、皺の動きがやがてワレメのラインを形成して、性器の形を浮かせる瞬間が何度もあり、多くの男は鼻の下を伸ばしていた。
『や! や! やめて! 撮らないでってば!』
恥じらいの様子が激しい。
目をぎゅっと瞑ったり、見るからに表情を強張らせて、羞恥心をいくらでもあらわにしている。見れば耳まで染まり変わって、下着だけですら恥ずかしさで死にそうな勢いに見えるくらいだ。
女子高生が暴れるうちに、掴まれていたスカート丈は、その拳のあいだから引っ張られる。一時的には元に戻るが、すぐに捲り直されるスカートから、改めてショーツは暴かれ、舐め回すようなアングルでカメラは迫った。
『撮らないで撮らないで!』
画面をショーツが大きく占めつつ、悲鳴にも似た声は相変わらず、イヤホンの内側には響いている。イヤホン持ちの人物しか音声は流していないが、音まで聞いている男には、女子高生の慌てふためく声すら楽しむことができていた。
アングルが切り替わる。
今度は後ろ側が捲れ上がって、豊満な尻が向き出しに、ゴムの食い込みからはみ出る柔らかな肉が注目を集め始める。
『あっ! う、後ろ! もうやめてってば!』
暴れる女子高生の腰使いは、本人は嫌がってのつもりだろうが、結果としてフリフリと、視聴者に対してお尻を振りたくり、魅惑のフェロモンを振りまいてしまっている。自分がいかにメスとして振る舞いながら、オスの本能を刺激しているかなど気づいていない。
尻に指が食い込んだ。
半透明の手の平で揉まれる尻は、だから手の甲を透かした内側の、尻の変形すら映している。本来なら見えない変形に至るまで、細かく作り込まれている。いっそ本物の幽霊を起用して、本物の心霊現象を撮影していそうに見えるるほど、アダルト動画のクオリティは高かった。
誰しも、本当は少し疑問を抱いている。
出演女優の名前は知らないが、明らかにあどけなく、最初は小学生と見間違えそうだったほどの童顔は、どうしても未成年に見えるのだ。この手のものに未成年が出演できるはずはなく、なのに中学生に見える少女が出ているのは、どこか危うい予感を煽っている。
しかし、不思議と疑念を頭から振り払い、見ている全員が意識しないようにしているのだ。
全員が、である。
ネット上の、それなりに再生数の伸びる動画は、数百人、数千人が必ず見ている。この駅構内で電車待ちをする中の、たまたまスマートフォンに夢中なうちの、あくまでその中の大半だけが視聴者のはずはない。
実際にはもっと色んな場所からのアクセスがあり、その上で全員が全員とも、意識から逸らしている。
動画自体が不思議と魔力を持っているのだ。
見ている人間は必ず意識を吸い込まれ、過剰な集中状態に陥ろうとしているのだ。時間の経過も忘れてひたすらに、何かに憑かれたように凝視して、まばたきすらせずにいるのだが、世界の誰もそんな異常には気づかない。
同一の動画を見る視聴者の、全員に共通して表れる兆候など、一体どうして早々のうちに発覚するか。
再生数が伸びている。
最初は一〇もいかなかったアクセス数は、SNSの拡散性によって伸び始め、瞬く間に一〇〇――五〇〇――一〇〇〇――さらにそれ以上まで、果ては一万に達する勢いである。
その上で、視聴者全員に共通の兆候が現れている。
個人差はある中で、普通よりも高い集中力が発揮され、周りの音も声も忘れそうになっているのだ。
しかし、日本中の視聴者の中でただ一人、異質な反応をしている男がいた。
その人物だけ明らかに、アダルトへの興奮とは違う、もっと別のものを浮かべている。
「……さちちゃん?」
彼は駅構内の中年だった。
唇が異常に分厚く、タラコのように太い彼は、その表面に何やらべったりと、油じみた粘液を付着させている。鼻は豚のように反り返り、肥満なので頬は随分ふっくらと、その上で毛穴が大きく開いたり、ニキビが多くてぶつぶつと見栄えが悪い。
力士かと思うほどの、なかなかの横幅をしているから、着ているシャツもピチピチで、どうしても腹がはみ出るせいか、脂肪によって出来た浮き輪が綺麗に飛び出ている。顔立ちや体格も悪ければ、表情に至るまでが醜悪なこの中年は、ブタ男とあだ名され、小学時代にはイジメを受けていた人物だ。
「さちちゃんだ……間違いない…………」
そのブタ男が異常に大きく目を見開いている。
目玉を露出させようとする勢いで、ひどく剥き出した眼差しを血走らせ、どこか狂気的な瞳で画面を凝視している。
「どうして?」
一人、疑問を口にしていた。
このブタ男という人物は、宇継さちという少女を知っていた。霊感を持っているが故、かつて心霊相談のできる相手を探し求めて、悪霊から救ってもらった恩のある相手が、半透明の集団痴漢に遭っている上、それを動画に公開されている。
かつて自分を救った恩人の痴態である。
だとしたら、彼に正義感さえあれば、義憤に燃えるところだろう。何とかさちのことを救い、恩を返せないものかと思うところが、しかし彼の思考はそれと異なる。ブタ男が持つのは正義感でもなければ、胸を痛めるものでもない。
「ぼ、ぼ、ぼ、ぼ……ぼぼ……ぼ……………………」
もっと別の角度から、ブタ男はショックを受けていた。
「僕の……ものなのに…………!」
一体、どうしてこんな奴らがさちちゃんに触っている。
僕のさちちゃんなのに、お前達なんかが触っていい子じゃないのに――ブタ男が抱く感情は、およそ歪んだ独占欲だ。
彼とさちとの関係は、そう深いものではない。
依頼人と、それを引き受け除霊をこなしたさちの間柄は、そのままサービス業者と利用客のものに近い。仕事さえ終われば関係解消、似たような案件が再びあるのでもない限り、もう二度と関わることがない方が普通である。
だというのに、たった一度救われただけのブタ男は、異常な執着心をあらわにして、画面内の状況に息を荒げる。
彼はいわゆるストーカーだ。
身元を突き止め、身辺の徘徊まで行う人物にとって、意中の相手が自分以外の手に触れられている状況は耐えられない。
「許さない……許さない…………」
その独り言で、たまたま周囲にいた面々が恐怖して、さっと離れていっていることに、ブタ男は気づいていない。
「ぼ、僕だって――先に僕が――――」
最初にさちに惚れたのは自分だ。
それを後から――自分のもののはずなのに、横取りされたような気になって、怒りを胸にしつつある彼の画面に、不意に文字が流れ始める。
だが、それはおかしい。
動画内にコメントが流れるシステムなど、彼が開いているSNSアプリには搭載されていないのだ。コメントもろとも動画化して、動画自体に文字が流れるのならまだしも、入力欄に打ち込んだ文字が入る仕組みなどここにはない。
だというのに、コメントは流れている。
しかも、彼の動画だけだった。
他人のスマートフォンなど、わざわざ覗くことはないので、彼はその事実に気づいていない。それが自分のスマートフォンだけに流れるもので、他の動画視聴者の前には流れていない事実を知らないし、気づく機会すら存在しない。
【参加者募集中!】
それが流れたコメントの、まず一つ目だ。
そして、さらに続いて流れた内容はこうだった。
【四〇歳以上独身、キモデブ限定!
さっちゃんを孕ませお嫁さんにしましょうキャンペーン!】
これは一部の資格者にのみ流れるコメントだった。
霊的な力で投稿され、霊力の宿った動画には、選ばれた者にだけより深い影響を与え、設定したコメントを見せる機能が付与されている。さらに流れるコメントを読むことで、キャンペーンの詳細が明らかになった時、ブタ男は怒りから一変して、急に朗らかな表情を浮かべていた。
「なんだぁ。そういうことなら、特別に許して上げるよぉ」
独り言を声に出し、そしてブタ男は電車待ちの列を離れて、駅構内にあるトイレを目指し始める。
そこに行く必要があった。
キャンペーンに参加して、参加者限定の景品を手に入れるには、トイレという安全な空間でなくてはならないのだ。
ブラジャーがずらされていた。
まだ辛うじて脱がされていない、しかし捲らんばかりにずらされて、乳首の露出してしまった乳房には、当然のように視線が突き刺さる。
たくし上げられたスカートの、ショーツへの視姦も含めて、さちは顔中を真っ赤に燃やして恥じらっていた。
「見ないで見ないで! 本当に見ないでってば!」
さちの叫びを聞きなどせず、痴漢霊の群れはさちの周囲にしゃがみ込み、前のめりになって下着や乳房を視姦する。大きく目を見開いての視線がいくつもいくつも、そのどれもが胸やショーツを集中的に見ているのだ。
「恥ずかしいよぉ……死んじゃうよぉ……」
羞恥心に飲み込まれ、悶え苦しむさちに対して、集団痴漢は容赦がない。
おもむろに二人分の顔がたちまち迫り、唇によって吸いつかれた。舐めしゃぶる二人の口でちゅぱちゅぱと、どちらの乳首も唾液に穢され、その悪寒でさちは戦慄しきっていた。
「いやぁぁ! いやいや! サイテー!」
髪を激しく振り乱し、全身で身悶えするが、やはりロクな抵抗もできていない。
さちは今、大の字のように手足を固定されていた。集団痴漢の手首足首をそれぞれ掴まれ、ついでのように肘や膝にも握力が食い込んで、四肢をそれぞれの方向に固定され、大の字のポーズに立たされている。
そして、下級の群れは一旦距離を置いていた。
四肢を押さえる役と、味わう役だけを残して離れていた。
群がることで獲物を取り合い、お互いのスペースを邪魔し合う状況から一変して、さちを中心に輪を広げ、下級の群れはスマートフォンを向け始める。ポルターガイストのように浮遊している、物が妖怪化したスマートフォンに加え、人が幽霊化する際の、私物も一緒に霊体化しての霊質スマートフォンまで向けられている。
一体、いくつのカメラを向けられて、どれだけの動画や写真を撮られているかなど、怖くて怖くて想像すらしたくはない。
そんなさちだが、身体は窓を向かされている。
ガラスの向こう側が黒い場合、内側が反射しやすいおかげで、黒鏡となってさち自身の痴態が映る。二人の頭が乳房へとしゃぶりつき、今にも唾液の音を鳴らし続ける下級達の、後頭部がそこには映っていた。
「ああっ、見たくない見たくない!」
さちはすぐさま顔を背けようとするのだが、その瞬間に後ろから両手が伸びて、背後から頬を掴まれる。力ずくでも前を向かせて、背けさせないようにしてくるせいで、さちは嫌でも自分自身の痴態を見てしまう。
最初は鏡のような反射を見せつけて、より深い恥辱を与えようとしているのだと思った。
だが、それどころの話ではない。
「え……!」
次の瞬間、そこには動画が再生されていた。
まるで窓ガラスの正体が電子機器の液晶画面で、PC上のウィンドウでも表示されているように、突如として動画が流れ始める。その内容は他ならぬさち自身の、つい先ほどまでに時間を戻した痴態であった。
最初に下級に座られて、両隣から太ももを触られた時の映像が流れている。それを消滅させた後、次は背後から手が生えて、乳房を鷲掴みにされてから、また霊力を使って消滅させる。それから別車両から群れが雪崩れ込んできて、今のように集団痴漢を受けるまでの、一連の流れが再生された。
しかも、ただ動画を見せているだけではない。
映像が動く隣には、アクセス数や現在の視聴者人数の表示があり、ここで撮られているもの全てが、そのままインターネットに流出していることを物語る。
「う、うそうそ! これって何人が見てるの!? 何百人!?」
あまりにも恥ずかしすぎる。
今すぐに配信を食い止めて、この世の全ての視聴者を消したい衝動に駆られるが、霊力が万全だったとしても、さちにそんな力はない。インターネットの向こう側、顔の見えない相手を特定する能力は持っていないのだ。
どうにもならない事実を前に、絶望感が芽生えるはずが、さちにあるのはそれだけではなかった。
きゅん、と。
何故だか下腹部が引き締まり、興奮を催している自分がいた。
(な、なんで……反応してる場合なんかじゃ…………)
マゾっ気を刺激されている自覚などさちにはなかった。
さらにその時、画面が切り替わる。
「こ、これって……!」
まず最初に流れたのは、どこかの駅構内の様子であった。
まるでハンドカメラを片手にした誰かがいて、風景を撮りながら徘徊しているような、歩みと共に動くカメラが電車待ちの列に近づいて、若者やサラリーマンの、スマートフォンを覗き込む。
そんなにカメラが近づいたら、普通は覗かれていることに気づくだろう。
しかし、カメラマンが透明人間であるように、誰一人としてカメラの存在を意識することはなく、ただただスマートフォンを弄りつつ、電車の到着を待っている。その画面に映っていることごとくが、さちの動画視聴者だった。
「や……」
スマートフォンの中にさちの映像が流れている。
その様子こそをさちに見せつけ、辱めてきているのだ。
「や、やだってば……見せないでってばぁ……!」
恥辱を煽られれば煽られるほど、下腹部の疼きはますます大きくなっていき、膣壁の狭間がじわっと熱くなってくる。
さらに映像が切り替わる。
今度は部屋で過ごしている学生の、PCモニターを食い入るように見つめる姿が映り、その画面の中にさちの姿は流れていた。また別の家、別の部屋で過ごす中学生の画面にも、やはりさちの姿は流れていた。
二十代、三十代、四十代、年代も様々に、次から次へと映る映像の、誰もがパソコンかスマートフォンの画面を見つめ、さちの動画を視聴している。
一体、どれほど多くの人間に見られているか。
それを教えるための投影術なのだ。
【宇継さちちゃん! 孕ませ企画!】
しかも、今度は文字が表示されていた。
映像はさちの動画を単体で流したものに戻ってから、その映像内にテロップが大きく出ているのだ。
*
【キャンペーン詳細】
このテロップは応募資格をお持ちの方にのみ表示され、所定の手続きを頂いた方限定で、さっちゃん孕ませキャンペーンへの参加が可能となります。このキャンペーンを利用して、さっちゃんを見事孕ませた方には、さっちゃんをお嫁さんにできる権利をプレゼント!
法的にも夫婦となり、さらに生涯逆らえない呪いをかけることで、さっちゃんを立派な性奴隷にして差し上げます。
あなたの精液をたっぷりと注ぎ込み、可愛い幼妻を手に入れましょう!
応募方法は次のURLをタップしてご確認下さい。
*
その文字を目の当たりにした瞬間、さちが抱いた激しい戦慄は言うまでもない。
孕ませキャンペーン?
もしかしたら、ネット回線を通じて対象と繋がりを作る術があり、精液を転送できるのかもしれない。不特定多数の、参加者である男の精液が、これからさちの膣内には次から次へと転送されてくるわけだ。
そうとわかった瞬間に、ぶるっと肌寒いように肌を震わせ、引き攣った顔でさちは喘ぎ声を漏らした。
「あっ、んぅ――」
しばらく画面――もとい、窓ガラスに夢中だったが、ずっと乳房をしゃぶられ続けているままなのを思い出していた。
【参加者紹介】
さらに出て来るテロップで、先ほどまでの人物達は、参加者ではなかったことがさちにはわかった。
あくまで、先ほどまでは単なる視聴者。
その上で、参加者はこれから紹介される。
再生数や視聴人数のカウントを見れば、一体どれだけの人に見られているかは言うまでもない状況だが、それをより具体的に、より多くの視聴者の顔をさちに見せつけ、辱めようとしてきている。
「ひえっ! この人……!」
そして、まず最初に映った男を見た瞬間、さちは驚きに目を見開いていた。
ブタ男であった。
正確には、そういうあだ名でイジメを受けた経験があるらしい男で本名は別なのだが、そのブタ男がどこかの公衆トイレの個室にこもって、熱い眼差しで画面を視姦しながら逸物を握っている。
まるでカメラマンが真後ろに立っていて、肩越しに覗き込むようなアングルで、スマートフォンの画面と逸物が同時に映るが、ブタ男はその存在に気づいていない。彼も霊感の持ち主なのだが、感度の問題で術を察知できないのだろう。
ネット回線を通した術で、ネットの向こう側に使い魔のような何かを送り、それによって撮影を行う妖術なのだろう。
さちにとって、しかし問題は術の原理などではない。
もちろん自分の動画が拡散されている状況で、それは大問題なのだが、さちの今の意識はブタ男の方に囚われていた。
「ストーカーさん!?」
面識のある人物なのだ。
この男はかつて除霊の依頼をしてきた人物で、悪霊から救った際に気に入られ、不器用極まりない告白をしてきたが、さちはそれを断っている。しかし、その数日後には自宅付近を徘徊する姿が見え隠れするようになり、偶然を装って挨拶をしてきたり、果ては玄関をノックしてきたりと、だんだんと迫り来るストーカーの恐怖にさちは悩まされていた。
妖術を使えるさちにとって、ただ霊感があるだけの人間など、脅威にならないといえばならないが、とはいっても知らないうちに住所を調べられていたり、外出などの行動パターンも探られたり、果ては下着が一つ消えていたりするのには、さしものさちも恐怖を感じずにはいられない。
怖くて怖くて、気持ち悪い。
さちにとって、そういう認識でしかない、しかも顔立ちの醜い中年が、自分を孕ませようとする企画の参加者として紹介される。これほどおぞましいものはなく、ゴキブリの巣でも見てしまったような、気持ち悪いものに対する感情から、さちはぶるっと震え上がっていた。
さらに二人目、三人目の映像が流れてくるが、いずれも自宅の部屋かどこかで、必ずといっていいほど逸物を握った状態で、画面の中のさちを見ている。ニヤっとした気色悪い表情で、醜悪な中年ばかりが紹介される。
骨張った顔で薄気味悪い笑みを浮かべた男。まだ禿げる歳でもないのに、頭がカッパのようになった男。太った男も何人か。いずれも醜悪な顔立ちをしているか、不潔感があって生理敵に受けつけない。
見ただけで「無理!」と拒否反応を起こさざるを得ない、最悪の種類の男ばかりが紹介され、さちは引き攣る一方だった。
(い、いやぁ……! 嫌すぎる!)
こんな人達なんかに、ましてストーカーなんかに孕まされたくはない。
自分の動画を見られるだけでも薄ら寒くて仕方ないのに、孕ませ企画などと言い、手の込んだ術まで使って、参加者の精液をさちに転送してくる催しなのだ。
「いやいやいやいや! ムリムリムリムリ! 無理すぎて無理ぃ!」
今日ほど切実な悲鳴を上げたことはない。
体中から拒否反応が放たれて、しかしさちにはあくまで抵抗の力はなく、集団痴漢に手足を囚われたままだった。
手足が動かず、大の字のポーズのままに、胸や尻を嬲られ続ける。
散々にしゃぶり尽くされた乳房から、やっと二人の顔が離れていくと、さちの乳首は唾液をまとった光沢を帯びていた。後ろ側からスカートを捲られて、ショーツに手を入れてまで、背後の痴漢霊が尻を揉みしだいている。
「いつになったら終わるのぉ……!」
この地獄に一刻も早く終わって欲しい。
せめて電車が止まってくれれば、区切りの一つもつくのではと、かなりの願望に近い期待感を抱いているが、先ほどから止まる気配がない。元から行き先が遠いのか、まだ思ったほどの時間が経っていないのか、あるいは――。
運転手にまで術がかかるか、電車自体が妖術に飲まれているか。
電車自体がまずいのかもと、そんな不安に駆られていると、さちの前にはやがて一人の肥満が歩んで来た。肩をゆさゆさと揺らしての、ゆったりとした足取りで、さちの目の前までやって来るのは、この車両で最初に見かけた――いや、元々尾行していた中年霊だった。
適当に当たりを付け、この人でいいかと思って尾行した対象が、今になって座席から腰を上げ、さちの真正面に立ち塞がったのだ。
顔立ちは醜悪、白いシャツが肥満体格に。内側から大きく膨らみ、下の方からは腹もはみ出てしまっている。全体的に丸っこい、脂肪のあまり、胸も下垂しきった乳房のようになった中年霊は、垂れ具合がだらしなく見えることに加え、服装すらだらしない部類である。
シャツとトランクスなのだ。
脂肪が滲みでているのか、シャツは油を吸ったような微妙な変色を帯びていて、内側の肌が透けて見えやすくなっている。その透け具合に気づいてしまうと、濃い胸毛や腹毛の存在まで目について、あまりの汚い印象にさちは引き攣る。
「やあ、宇継さちちゃん。君のために、面白い企画を立ててみたんだ」
にっこり、笑っていた。
唇がU字にならんばかりの勢いで、おぞましく口角を釣り上げていた。
「ひっ! き、キモ!」
さちは思わず悲鳴を上げていた。
喋られただけで、ゴキブリかナメクジでも押しつけられたような反応で、身が引っ込みそうになっていた。手足を掴まれていなければ、大きく後ずさっているはずだった。
「君は有名人だよぉぉ? いろーんな悪霊を退散させてて、幽霊界隈ではよく名の知られた存在なんだ。しかも、とーっても可愛くて、おっぱいが大きくてエッチだから、みんなでイタズラしてみたかったんだよねぇ?」
「イタズラ!? イタズラなんかじゃ済まないってば!」
「そうだねぇ? オジサンとチューしようかぁ」
「なんで!? やだやだやだやだ!」
何の繋がりもないことを言われて、その不潔感に満ちた肉体が迫って来た時、体中が危険を訴えるシグナルを発信していた。一歩でも近づかれること自体が、さちにとっては危機のようなものだった。
しかし、大の字のポーズのまま、手足はその方向へと引っ張られ、やはり少しの身動きも取れず、さちはその接近を待つしかない。
丸っこく、大きく膨らんでいる腹は、だからさちの身体に触れてきていた。本当はまだ密着直前の距離感にあるだけで、実際には触れ合うことのない位置でありながら、飛び出ているから接触してくる。
「じゃあ、チューしようね? チュー?」
「いやああ! やだってばぁああ!」
頬を掴まれた瞬間、さちは激しく絶叫する。
無理、無理、無理――拒否反応のあまり、同じ単語が脳内を反芻して周り、けれど抵抗を封じられ、逃げも隠れもできない以上、どんなに嫌でも唇の接近を待つしかない。拒む手段がないままに、徐々に迫って来る中年霊の顔を見ないようにと、さちはぎゅっと目を瞑った。
まぶたの筋力が許す限り全力で、その力で眼球を潰さんばかりの激しさでもって視界を閉ざし、唇を内側に丸め込む。手足が使えずともキスを拒むため、一生懸命になって拒否の姿勢を示しているが、中年霊の口はお構い無しに到達してきた。
「はむぅぅ――じゅずぅぅ――――!」
激しく舐めしゃぶってきた。
(いやぁぁぁぁぁ!)
全身に鳥肌が広がった。
さちの口を頬張りながら、激しく舌を振りたくり、口周りを舐め回す。鼻のすぐ下や口角に顎の上、唇周辺の全てに浸透していく勢いで、唾液はたちまち塗り尽くされ、執拗に頬張ろうとしてくる唇の感触も止まらない。
唇が接触するだけの距離感だから、脂肪のたるみもより密着度合いを増してきて、さちの身体に対して潰れてくる。ワイシャツをはだけただけの、ブラジャーを丸出しにした胸には、中年霊のシャツを膨らませている同じく胸が、キスの挙動に応じてくっついては離れを繰り返していた。
「じゅぶぶぅ! じゅぅっ、じゅるぅ!」
唾液の汚い音が鳴っている。
中年霊はただ舐めたり頬張ったりするだけでなく、口内に分泌されるものを半ば吐き出すようにしているのだ。ぺっ、ぺっ、と、唾を吐こうとする動きを微妙に含ませ、さちの皮膚へと浸透させる唾液の量を少し男でも増やそうとしているのだ。
そればかりではない。
一度はその唇が離れ、濃密な糸がアーチとなって垂れ下がった時、今度は耳を舐めしゃぶろうと食らいつき、舌を活発に震わせていた。
「いぃぃぃぃ! いやっ、無理ぃぃぃ!」
激しい拒否反応にさちは悶える。
なんと、舌が異常に長かった。
てっきり普通の長さかと思っていれば、伸縮自在の能力があってのことか、舌というより触手でも宿したように、にょきりと伸びてサチの耳を舐めてくる。
「さちちゃんの耳は美味しいなぁ?」
中年霊は両腕を背中へ回し、抱きつきながら耳穴の周りを舐め、舌先でくすぐり抜く。頬張りをするために顔が迫ると、長い長い舌はマフラーのように首に巻きつき、にゅるりと粘液の感触に這われることで、さちは全身をぶるっとさせた。
頬ずりが行われ、その反対側にある耳には、また同じく穴をくすぐるする刺激が始まり、徐々に耳を唾液まみれになっていく。
「ねぇ、さっちゃん? 孕ませ企画はね? 参加者の精液を転送して、さっちゃんのアソコの中に送り込むものなんだよ?」
予想通りの内容が語られる。
「みんながさっちゃんを妊娠させようと、赤ちゃんの種をシコシコと搾り出して、受精レースに勝とうとしているんだ。自分のオタマジャクシをさっちゃんの卵子まで届けようと、いっぱいいっぱいオナニーしてるんだよ?」
そう囁かれた瞬間に、さちの脳裏には【参加者紹介】の際に見た顔の数々が駆け巡る。
「や、やだぁ! なんでそんなことするのぉ!?」
「さっちゃんが可愛いんだもの。誰かの赤ちゃんを生まないとね?」
「意味わかんない意味わかんない!」
「ほら、オジサンともっとチューしようね? 今度はきちんと口を開いて」
舌が縮んで、正常な長さに戻ったことで、首に巻きついたマフラーは消えていく。
「やっ! やだ! 口が――勝手に――――」
再び唇を重ねようとしてくる中年霊に、さちもまた再び唇を丸め込み、必死になって拒否しようと試みるが、今度は身体を思い通りに可動できなくなっていた。中年霊に術をかけられ、唇の可動を操られたのだ。
閉ざすことを封じられ、嫌でも唇を半開きに、舌すら差し出さんばかりにさせられて、今度こそ正しくキスの形に重なり合わさる。
「んぅぅぅぅぅ!」
目だけはぎゅっと、力強く閉ざされて、唇だけが恋人同士のように触れ合う。最初はそっと重なり合い、軽いキスから始まって、直後には激しく頬張るものへと変わり、さちの唇は飢えた野獣に差し出されたエサのように食い尽くされる。
ただでさえ、べったりと唾液まみれであった口周りへと、まだまだ付着は繰り返される。吸水の限界を迎えた表皮で、濡れた範囲は徐々に広がり、しだいに顎を伝って首へと広がり始めている。
「んんんんんんん!」
舌がねじ込まれた時には、それでも出しうるだけの悲鳴をさちは上げ、逆に中年霊はうっとりと、心地良いものに浸る表情で目を細め、さちの口内をじっくり味わう。歯をなぞり、唇の内側を舐め回し、舌と舌とも絡め合う。
また伸びてくるのだ。
口内を探検して、味わい尽くさんばかりにするために、普通の長さのままでは届かないところにまで、舌先は及んでくる。上顎や下顎の器を存分に舐め回され、さちは激しく口内を蹂躙されていた。
それどころか、唾液まで送り込まれた。
「ん! ん! ん!」
拒否反応を繰り返すが、お構い無しに流し込まれる唾液がさちの舌には広がっている。吐き出そうと試みるが、唇は塞がっているままに、どう吐き出そうとしても新しく流し込まれてどうにもならない。
やがて、ついには飲んでしまい、肉体が汚染されたような気持ちになって、さちはその気持ち悪さにぶるっと震え上がっていた。
(あああ! 唾液! キモイ! キモすぎるぅ!)
触るだけでも無理なナメクジが、口内に侵入してきた上、食道を這っていったらどれほど戦慄することか。さちが味わっている拒否感は、それほどのものなのだ。
その唇がまた離れる。
長々と引いたアーチが垂れ下がると、それはさち自身の谷間へと、ブラジャーから覗けて見える溝の中へと落ちていく。
「ほら、今度はさっちゃんの方からオジサンにキスしよっか」
「む、無理! するわけない!」
顔が自由になった途端、さちは激しく首を振るのだが、その直後になってすぐに気づいた。
拘束が解かれている。
手首足首を掴んでいた痴漢霊達の握力から解放され、大の字のポーズから、さちは急に自由になっていた。
だが、それは別の方法による拘束に変わっただけの話であった。
「さっちゃんは本当にオジサンとのキスを嫌がっているのかな?」
「嫌に決まってるよ! 無理! 絶っっっ対無理!」
そう叫ぶさちなのだが、次の瞬間にはしがみついていた。
「あれぇ?」
中年霊は深い優越感に浸って、口角をおぞましく釣り上げる。
「え、あれ…………」
さちは凍りついていた。
先ほどは唇や舌を操られ、ディープキスを拒否不能にさせられていたが、今度は手足の可動すら操られていた。まるで恋人にしがみつき、甘えたくてたまらないかのようにして、さちは中年霊のシャツを掴んで、小柄な背丈で双眸を見上げていた。
自分から背伸びして、中年霊の唇に飛びつく真似までしてしまっていた。
(いぃぃぃぃ! なにこれ! また操られて!)
唇が触れ合っていた。
それどころか、さちの方から舌を出したり、しゃぶりついたりするように、激しくキスをしてしまっていた。
あまりにも最悪すぎて泣きたくなる。
唇の外へと伸びた舌同士が、お互いに先端をつつき合い、絡め合ってしまっている。キスをしているうちに背中へ両腕が回されて、恋人同士のように抱き締められる。ぎゅっと密着度合いを強められ、戦慄に身震いしていると、そのまま今度は下へ下へと、スカートの丈をずらし上げ、下着越しの尻を揉みしだかれた。
(無理ィィ! 無理だよぉぉ!)
さちの心はひたすら悲鳴を上げているが、自分で自分の行動をキャンセルできない。肉体がさちの意識を離れてしまい、他人の脳信号で操られているように、自分から中年霊へと飛びつく姿勢が解除されない。
さちの方から汚い唇を頬張って舐めしゃぶり、舌をねじ込んでしまっている。
そして、体格差のためにさちは見上げて、中年霊は見下ろす形となっているのをいいことに、中年霊は唾液を流し込んでくる。その唾液が舌へと当たり、そのまま喉に向かって迫ってくると、嚥下する動作までさせられて、さちは中年霊の唾液をまた飲んでしまうのだった。
(いやァァァ! もう無理ィィィィ!)
さらにその時だった。
ドピュゥ!
と、スカートの内側でショーツが濡れる。
まるで膣口から何かが噴き出し、そのせいで汁が染みついたようにして、しかしさち自身はどんな体液も出していない。無意識のうちにマゾっ気を刺激され、実のところ本人も気づかないうちに濡れてはいたが、それは愛液ではなかった。
膣内にスポイトを仕込んでおき、そこから何かが飛び出たように、ショーツは内側から濡れていた。
「来たねぇ? みんなの子種が」
さちはかつてないほど激しく戦慄し、激しく掻き毟ってでも、アソコの中身を必死になって掻き出したい衝動に駆られていた。
とうとう、精液の転送は始まったのだ。
さーっと、血の気が引いていく。
さちの目の前で、暗い窓ガラスの中には、大きなモニターに複数のPCウィンドウを開いているようにして、キャンペーンの参加者達がオナニーを行う映像が流れてくる。汚らしい中年の、何人も何人ものオナニー動画が複数にわたって同時に流れている状況は、光景として見るに堪えないものがある。
それだけでも、目を覆いたくなるほどだ。
だが、さちが青ざめているもっと大きな理由は、妖術によって参加者の性器と動画がリンクして、射精時の精液がさちの膣内に転送されてくる状況だった。しかも映像を見た限り、一番に射精に至っていたのは例のストーカーで、あんな男の精液が今、自分の体内にあるのかと思ったら、全身を搔きむしるようにして、必死になって掻き出したい衝動に駆られるのだ。
「シャワー浴びたいぃ……洗い流したいぃ…………」
さちのあまりにも切実な思いがそれだった。
「オジサンとの熱烈なチューを見て、興奮してくれたみたいだね?」
「うひぃ……! お願い見ないで!」
さちは動画配信の向こうへと、自分を見ている全ての人物へと訴えかけるが、窓ガラスに映る映像の中、中年達の視線は決して画面から離れない。むしろ、サチの様子を見ることで、悦んだ顔すらしていた。
「可愛いねぇ? さっちゃんは」
中年霊は背後へと回り込み、背中に抱きつき密着しながら、尻には股間を押しつけてくる。下半身はトランクス一丁の、それを内側からテント張りに膨らませたものの中身がぐいぐいと押し当てられ、さちはその感触にまた引き攣っていた。
「いやぁぁ……!」
抵抗したいが、体がほとんど動かない。
肉体操作の術をかけられ、ポーズを固定されているせいで、現在のさちは直立不動のまま立たされており、身じろぎ程度にしか身動きが取れないのだ。
耳の裏側をペロペロと舐めてくる。
「うっ、駄目! やめてっ、そこは……!」
腹に腕が巻きつけられ、さらにスカートが捲られると、表示ウィンドウが一つ増え、さちは自分自身の下着を目の当たりにする。丈のたくし上げられて、中身が丸見えとなった中継映像では、拡大されたアソコの部分に、内側から噴き出た精液の染みが浮かんでいる。
ワレメに沿って出来た濡れ染みの、ピンクをくすませた楕円形は、白濁を吸水しての染みである分だけ、見た目がどこかねっとりとしているのだ。
膣壁にある感触もさることながら、内股を伝って流れ落ちるトロっとした生温かさにも引き攣って、さちは激しく身震いする。
ドピュン!
次の瞬間、さちの膣口から精液が飛び出ていた。
ショーツが被っている以上、本当に飛び散るわけではないが、飛び出ようとしたかのように、膣の内側にポンプでもあったようにして、白濁は飛び散ろうとしていた。
再生数が伸びている。
キャンペーンの参加者が、さち自身の映像が漂っているその横で、視聴者数のカウントが進んでいき、果ては一万を越えようとしていた。
「なんで!? なんでこんなにいっぱいいるのぉ!?」
あまりの再生数の多さに顔を赤らめ、恥じらいいっぱいの表情で叫んだ時、またさらに数字が上がり、さちは激しく悶絶する。
ドピュン! ドピュン!
ドピュン! ドピュン!
そしてまた、精液が四連続で転送される。
「いやぁぁぁ! 気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い!」
ショーツが連続して濡らされて、楕円形の染みはより大きく広がると、内股にまで及んだ濡れ具合もまた広がる。動画に拡大されている精液濡れは、繊維の表面から白濁を染み出して、一体どれだけの量を吸っているかを物語る。
ドピュン! ドピュン!
射精される精液は、参加者達のティッシュを汚すことなく、転送によって直接膣内に現れている。膣壁の狭間から押し出すように噴き出し続け、吸水の進んだクロッチの内側には、かすかな水溜まりさえ形成されつつあるのだった。
「ねぇ、さっちゃん? いっぱい赤ちゃんの素が届いたし、そろそろ妊娠しちゃったのかなぁ?」
「いやいや! してないしてない! 絶対しないもん!」
「うっへっへ、どうだろうなぁ? オジサンの妖術で、命の育みを確かめて上げるよぉ」
中年霊はワイシャツの内側に潜り込み、腹を直接撫で回す。
「ひぃ――無理ぃ……!」
もうとっくに乳房を吸われたり、尻を触られた後ではあるが、まだ綺麗だった部分に汚れが広がるかのようで、腹を撫でられることにも拒否反応が働いていた。
「デキちゃってるね?」
そして、その絶望感を煽る言葉に、さちの表情は凍りつく。
「う、嘘――」
「というわけで、そろそろ夢のキャンペーン勝利者を招待しちゃおっかなー」
さちはたちまち狼狽した。
参加者として映し出される中年の、誰かが車内にやって来る。一人としてまともに見える男はいない中、誰が招待されたとしても、さちには最悪でしかない。
「では」
中年霊がぱちりと指を鳴らした時、表示ウィンドウの一つから、参加者映像の中から一人の男が消失して、その気配はさちのすぐ近くへと現れていた。
ぞくりとする。
人を舐め回し、激しく視姦せんばかりの視線が嫌でもわかる。
「え、えっと、もしかして――――」
これは、間違いない。
この感覚は、あの男しかいない。
いや、そもそも映像から消えている人物がその人なのだから、気配で判別するまでもなく、もうその人に決まっていた。
「さちちゃーん! 僕と結婚しようねー!」
ストーカーの男であった。
唇がタラコのように分厚く、鼻もブタのように反り返り、肥満体格で全身がぶよぶよしている醜い男が、心の底から嬉しそうな顔をして、さちの元へと駆け寄ってくるのであった。
*
さちの身柄は呆気なく引き渡された。
駆け寄るブタ男へと、中年霊は何の執着心もなく、簡単にさちのことを渡していた。人の背中を手で押して、後ろから押し出される形となって、ブタ男の前に晒されると、さちはたちまち抱き締められる。
「さっちゅわーん! 大好き大好きぃ! 今日から僕の奥さんだぁ!」
激しい頬ずりを行ってきた。
「いやぁぁぁ! いや! 無理! 絶対無理!」
さちはその頬ずりから逃れようと、全力で背中を逸らしているが、抱きつかれたせいで胴に両手は巻きついている。逃れようにも逃れきれずに、頬ずりの頬はさちの顔へと触れてきて、ニキビだらけの肌が擦り着けられ、さちは体中に鳥肌を広げていった。
「そんこと言わないでさぁ!」
「無理! 無理! 無理!」
生理的に受けつけない。
ブタ男からは独特の体臭まで香ってきて、それがいくらでも拒否反応を煽ってくる。こんな男と一緒になるくらいなら、死んだ方がマシだという気持ちを本気で抱くほどだったが、さちの霊力はまだまだ回復する様子がない。
「ねえねえ! 僕達は夫婦になるんだし、今すぐ契りを交わそう! ね、今すぐ!」
などと言い、ブタ男はさちのことを押し倒す。
「や!」
床にそのまま寝かしつけられ、軽い悲鳴をあげたさちの前で、ブタ男は惜しげもなくシャツやズボンを脱ぎ散らかし、こんな電車内だというのに裸になり始めているのである。
「いぃぃぃぃ! やっ、やだってば! お願いやめて!」
必死で叫ぶが、ブタ男に止まる兆候などありはしない。
それどころか、さち自身の両足さえ、M字の形に固まって、正常位の挿入を今にも受け入れようとしているのだ。見ればブタ男の向こう側、その肩越しに見える醜い顔から、長い長い舌を伸ばしてニヤける中年霊の表情が見えた時、やはりポーズを操られているのだと確信した。
「だ、駄目! 解いて!」
訴えかけるが、通るはずもない。
「そんなに嫌がるフリをしちゃって、とうとう僕を受け入れてくれる気になったんだね?」
「うひぃぃぃ! 無理! すっごく無理ィィ!」
ストーカーによる都合の良い解釈は、生理的な拒否反応をますます大きく掻き立てる。
「さっちゃーん! 僕達、これから一つだねぇ?」
嫌だ、嫌だ、嫌だ――嫌悪感が無限に膨らむ。
ここまで気持ち悪い顔をして、夫婦だなんだと本気で口にしてくる異常者の、破綻した人物からの挿入に、体中が危機感を訴えている。
初めて家を特定された時、玄関を開いたその先に、ブタ男はニヤニヤしながら立っていた。街角で偶然出会うのでなく、わざわざやって来た上での待ち伏せに、一体どれほど戦慄したことだろう。
そのブタ男の肉棒が入ろうとしているのだ。
「いやぁぁぁ!」
ショーツがずらされ、既に何人分もの精液が転送されてきている膣内へと、その汚れようにも関わらず、ブタ男は何ら気にすることなく、そんなことよりさちと繋がることの方が大事であるように、肉棒を押し込んでいた。
「入ったぁぁ! 僕、これで童貞じゃなくなったぁぁ!」
ブタ男は歓喜していた。
分厚く醜い唇を吊り上げて、おぞましくもニヤニヤとした表情で、鼻息を荒げながら腰を振り、さちへのピストンを開始している。
「いぃぃぃ! んっ、あ! あん! あん! な、なんでっ、なんでぇ!?」
気持ち良かった。
「感じてくれてるんだねぇ? さっちゃーん!」
「ちがう! ちがうのぉ! あ、あん! あん! あん!」
さちは必死で髪を振り乱し、否定の言葉を重ねようとしているが、ブタ男の腰振りから生まれる激しい快楽は、その口を嫌でも閉ざさせるものだった。
「ブラとパンツも可愛いねぇ? ピンクがよーく似合ってるよぉ?」
「いやぁ! 抜いて抜いて! 今すぐ抜いてぇ――あっ、あぁあ!」
喋られるだけでさえ、鼓膜に汚染物質でも染み込まされているようにして、拒否反応を激しく煽られる。
それなのに――。
(なんで!? なんで気持ちいいの!? ありえない、ありえないよぉ!)
嫌で嫌でたまらない、最高に無理な男の挿入で、こうも感じてしまっている。快楽があるということが、さちにとってはある種の絶望感だった。
「口ではイヤイヤ言ってても、僕を受け入れてくれているんだね?」
「ひぃぃ! ちがうちがう! 全然違うってばぁ!」
さちが先ほどから口走る「ちがう」の言葉は、もっぱらそれだった。快楽は信じられないが、受け入れてくれているだの、気持ちをわかってくれただの、そんな風に解釈されることへの拒否感が猛烈なまでに働いて、それがさちにそんな言葉を口走らせる。
「恥ずかしがらなくてもいいんだよ?」
だが、ブタ男に話は通じない。
「あぁ! あん! あん! あぁん! あぁん! あぁん!」
初めてとは思えない、激しいピストンで電撃のような刺激が生まれ、さちは大声で喘ぎ散らしてしまっていた。叩きつけられる腰からの、与えられる衝撃に身体は上下に揺らされて、ブラジャーの乳房もまた上下に弾む。
「んぅ! ん! んっ、あん! あぁん!」
電流は足首にまで流れ渡って、その刺激でピクピクと太ももの筋肉が跳ね回る。足首は反り返り、両手は何かを求めて掴もうとするように、ここがベッドであればシーツを鷲掴みにしていたはずのようにして、彷徨うようによがっている。
「あっ、あぁぁ! あぁぁん! あん! あん!」
喘ぎ声は激しくなる一方だった。
快楽の波に溺れそうな、しかしそれほど大きな刺激を受けている中で、さちはひたすら辛抱強く、それでも気持ち悪さや拒否反応を堪えていた。
ここまで快楽が走っていても、なお気持ち悪いのだ。
状況が相反していた。
ナメクジやゴキブリを詰め込まれ、生理的な鳥肌が立つかのような反応だって、挿入に対して確かにあるのに、膣壁には愛液が滲み出て、それがピストンにかき混ぜられている。
「んっ! ん! あん! あぁん!」
そして、周囲にスマートフォンは浮遊している。
物体が妖怪化してのスマートフォンは、主に結合部や乳房を中心に撮影して、動画の中に下着を拡大しているのだった。
肉棒が出入りしているショーツの濡れ具合には、愛液も多量に混ざり、フロントリボンの位置まで湿り気は広がりつつあった。谷間が汗ばみ、揺れが激しいあまりにブラジャーの締め付けにも関わらず、ぷるんぷるんと弾んでいる。
やがて、その果てに――
「ちゅぅぅぅぅ!」
ブタ男は急に大きな声で、そんな風に叫んだ上で、両手で頬を捉えて口づけする。ベロベロと舐め回し、舌もねじ込もうとする獣のキスで、二人の上半身ま密着するまで重なり合い、ブタ男の脂肪に乳房は潰れる。
腰の上下はより活発にペースを上げ、とうとうビクビクと震わせながら、膣内に直接注ぎ込む瞬間はやって来るのだった。
「え!? うそ、ま、また――やだ直接って、やだやだやだやだ――――」
「照れなくていいんだよぉ? 僕達の愛の結晶を育もうねぇ?」
「いやぁぁぁぁぁぁ!」
さちは悲鳴を上げるばかりであった。
だが、そんな悲鳴も、ブタ男の中では照れ隠しに変換されている。イヤよイヤよも好きのうち、本気で嫌がっているのでなく「いや♥」と、色気ある反応として捉えられ、まさか本当に嫌がっているのだとは、夢にも思ってもらえない。
だって、感じているからだ。
嫌がっていたら、気持ちよさそうにするはずがない。
それを根拠に都合の良い変換がされ続け、その果てに行われた膣内射精で、さちは青ざめた顔のままぐったりと手足を投げ出す。
れ、霊力が回復したら……堕胎術が使えるかな……。
受精卵を受精前の状態に書き換えて、命が命となる前に、それをなかったことにする方法が、確かどこかにあったはず。
さちの頭の中は今、それだけでいっぱいだった。
このキャンペーンの中で呪いをかけられ、ブタ男にはもう一生、生涯にわたって逆らえなくされるなど、今だけはすっかり忘れているのだった。
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