前の話 目次




 美鶴は脚を開いている。
 正常位のためのM字開脚には、既に亀頭の先端が収まっている。あとは腰を進行させ、最後まで押し込むことで、美鶴の処女は散らされることとなる。
「さっさとしなさいよ」
 美鶴は睨み返していた。
 自分の顔を覗き込み、ニヤニヤとしてくる表情に対して、いかにも嫌がっている風な、決して好きで応じているわけではない思いを込めた眼差しを送っている。
「んじゃ、遠慮なく」
 男が腰を進める。
 膣内に収まる異物感は、実にあっさりと潜り込み、美鶴の下半身には男の腰が当たってくる。穴の幅より大きなものが無理にでも入れられて、内側から拡張される苦しさを感じないでもないものの、何故だか痛みは出ていない。
「なんで痛くないのよ。これも超能力?」
 文句しかない顔で美鶴は言う。
 こんな形で処女を奪われ、名前すら知らない男をいい気にさせている。最悪の形で始まった性交への、ショックも動揺も大いにあるが、それ以上に美鶴は動じない性格だ。近くで爆弾が爆発しても、びっくりこそすれどもパニックは起こさない。そんな美鶴の性格こそ、気丈な振る舞いを保たせていた。
「これもマッサージだからね」
「どこが」
「十一本目の指を使った膣内マッサージっしょ? だから痛くないのは当然だし、むしろ気持ち良くなきゃおかしいってわけよ」
「自分も相手も気持ちいい、素晴らしいマッサージというわけね。でも、私には性交させられているようにしか感じられないから、せめて早いうちに済ませなさいよ」
 何の疑問もなくそう答える自分に対して、美鶴はふと疑問を抱く。
(いや、おかしいわ。膣内マッサージ? どうして私はそんなものの存在を……どう考えてもイカれているじゃない。もっと疑問を――あれ、おかしくないんじゃ……そういう技法は確か、存在するんじゃ……)
 美鶴は顔に苦悶を浮かべた。
 自分の中にある思考の、どこまでが催眠によるもので、どこまでが自分自身によるものなのか、判別がつかなくなってくる。
(とにかく、膣内マッサージさえ終われば帰れるはず)
 試練にでも耐えるつもりで構えていると、いよいよ肉棒は動き出す。
「んぅ――」
 美鶴はすぐに感じた。
「んっ、あっ、あん! あぁん! あっ、あぁぁ――――!」
 声がどうしても出てしまう。
 こんな男に聞かせてやりたい喘ぎ声などないのだが、抑えようとしても出てしまう。最初のうちは歯を食い縛ろうとしてみたり、喉を強張らせるなどして、抑えよう抑えようと努力するが、それが意味を成さないので、美鶴はものの一分以内に我慢を諦めてしまっていた。

「あぁっ、あん! あん! あぁん! あぁん! あっ、あぁん!」
(く、悔しい――感じた顔も――見られて――――)

「んぅぅぅ! んあっ、やっ、あぁっ、い――くぅ――い、イったわ――――」
(イった宣言……ま、まだこの効果が残っているなんて……!)

「んあ! あっ、ま、また! い、イク! あぁぁ!」
(だ、駄目――気持ち良すぎて……うっ、どこまで……意識を保てるの……)

 ピストンが始まってから数分は、声が出るほど気持ちいいという、それ以上でもそれ以下でもなかったが、さらにもう少しだけ経過する頃には、だんだんと絶頂をするようになっていた。
「あっ! また! イったわ……!」
 そして、嫌でも宣言してしまう。
 絶頂してもピストンが止まることはなく、それどころか男は射精まで行っている。ゴムも付けない肉棒から、膣内に噴射した上、なおも止まらず愛液と精液をかき混ぜる。
 美鶴は喘ぎ声を搾り出し、脚を跳ね上げながら絶頂して、足首まで痙攣させつつイったという宣言を繰り返す。
 あまりの連続絶頂だった。

「イった――あぁ――!」

 意識を保てそうになどなかった。
 それでも、美鶴の中にはなけなしの意思が残り続けて、津波のように激しい快感に髪を振り乱している中でも、たまに男を睨み返したり、何か思うところのある表情を浮かべたり、このセックスが不本意であることを顔に見え隠れさせていた。

     *

「ずっ、じゅりゅぅ――ちゅむぅ――」

 仁王立ちの男の前に膝を突き、美鶴は身体を前後に動かす。
 マイクロビキニのショーツはすっかり布をずらしきり、性器を隠す意味を成さない部分から、白濁と愛液の混ざったものをポタポタと、一滴ずつ垂らしていた。
「こんな支払い方法、あったかしら」
「キャッシュレスだよキャッシュレス」
「現金を使わずに、お金に換えられる行為によって支払う方法も、キャッシュレスではあるけど、ここに来てからずっと、自分がどこまで正常なものの考えをしているか。まったく不安でならないわ。これも本当は非常識なんじゃないかしら」
 とは言いつつ、一切の抵抗感を抱くことなく、美鶴は逸物を咥えている。
「常識常識」
「じゅぶぅ――信じないことにしておくわ……はじゅっ、ずりゅぅ……違和感とか、抵抗とか、そういうものがないからしているだけで……じゅずっ、じゅりゅぅ――――」
 美鶴はフェラチオという方法で料金を支払っていた。
 風俗の利用であればいくらかかるといった理屈で、現金を使うことのない精算をしているが、美鶴の中には最後の最後まで疑問があった。

 私は本当は催眠にかかっているんじゃないかしら?

 そんな疑問を胸に、しかし常識が改変されている以上は、疑問までは抱けても、かけられた魔法を本人の意思によって解けるわけでもない。
 それどころか、店を出る頃には記憶が消えていた。

(随分と、寄り道をしてしまったわ)

 マッサージ店を背に、元の制服姿で去る頃には、飲まされた精液の味まで忘れ、ただ漠然と気持ち良かった記憶だけを残していた。
(あれ、おかしいわね。何がそんなに気持ち良くて、お金はどこから……)
 ふと、疑問を抱く。
 自分は一体、いつからマッサージ店の利用を考え、それに大したお金など持ち歩いていなかったのに、どうやって支払いを済ませたのか。浮かび上がった疑問はしかし、かけられた催眠の力によって沈んで消える。
 美鶴はやはり、何となく気持ち良かったという記憶だけを持ち帰った。
 自分が体験した内容全ては、美鶴本人の中ではなかったことになっていた。

      *

 あー最高だったわー。
 こういう楽しみ方、またしてみよっかなー。
 しっかり記録も撮ったし?
 次はどーやって遊ぼっか。
 ある日突然映像を見せつけて、自分が催眠調教を受けていたって事実を突きつけるとか?
 それとも、シンプルに身体操作とかして楽しむとか?
 ま、それはまた、なーんかアイディアが出た時にでもってことで。



 
 
 

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