きっかけは一枚のチラシである。
美容には人並みの興味を持ち、それなりに気を遣っているつもりの白乃ゆらは、たまたま入っていたチラシの、開店記念クーポンにそそられて、ちょうど近場だったこともあり、足を運ぶことに決めたのだった。
なんと、初回無料である。
二回目以降のプランを見ても、月に数回程度なら通うのに無理はない。通うとは決めていないが、学生割りの料金が魅力的だと、やはり興味を持たされるものである。
そして、早速訪れた店の中、ゆらは受付の記入用紙に記入をするが、その時点では何も疑問を抱かなかった。英字を使った看板のデザインも、観葉植物を飾った内装も、受付の女性が美人なところも、何もかもがポイントを突いてきて、疑う気持ちなど微塵も湧かなかった。
記入欄に生理周期に関する欄があっても、ゆらは気にも留めなかった。何かホルモンバランスだとかを気にする理由があるのかと、そう思ったくらいである。
待ち時間中にドリンクを渡されて、血行を良くする効果があるから、事前に飲んでおくように言われたものにも疑惑を持たず、ここが怪しい店かもしれないなど、まず想定すらしていなかった。
やがて呼び出しを受け、更衣室で水着に着替える段階にでも、ゆらはやはり気づかない。
「えぇ……」
ただ、露骨に顔を歪めていた。
ロッカーを設置した更衣室の中、テーブルのカゴに入っていたのは、実にいやらしい白のマイクロビキニである。ブラジャーの三角形は乳首しか隠さない、ショーツの方も後ろ側がTバックな上、手前の方も布が少ない。
いかにも露出度の高い着替えを前に、さすがのゆらも躊躇っていた。
「なによコレ! これって普通なの!?」
ショーツを持ち上げてゆらは、着替える前から赤らんでいた。
「で、でもオイルマッサージだし……」
果たして普通のことなのか、疑問を抱くなり思い出すのは、チラシにあったオイル使用を謳う宣伝文句だ。特性の調合で肌をぷるぷるのツヤツヤにするという言葉に釣られ、ゆらはここまでやって来ている。
オイルを使うなら、肌を出すのは当たり前だ。
それにきっと、施術をやるのも女性のはずで、そう気にしすぎることはない――何よりも、専用の上着が用意されている。
つい慌ててしまったが、羽織るものを用意してあると、先ほど受付で聞いている。
ロッカーを開いてみれば、そこにハンガーでかかっていたのは、病院で検査着として着るような薄水色の上着であった。恥ずかしながらもマイクロビキニへの着替えを済ませ、なんて物凄い格好をしているのかと、我ながら思いつつも上着を羽織り、ゴムで髪をまとめていた。
オイルで汚すわけにはいかないので、髪が背中にかかる場合は、ゴムで縛っておく必要があった。
それら準備が済んだところで、施術室へと向かって行く。
やはり、待っていたのは女性であった。
「では白乃ゆらさーん? こちらにうつ伏せでお願いしまーす!」
やけに元気な女性に従い、施術用の台へ上がってうつ伏せに、自分自身の体重で大きな乳房を押し潰す。人より大きい方なので、この姿勢でいると痛いというか苦しいというか、寝る時にはあまり取らない姿勢だったりする。
「それではオイルを用意しますんで、ちょーっと待ってて下さいねー?」
靴が床を叩いての足音で、女性の気配が遠ざかる。
しーんと、少しのあいだ静まって、それから間もなく再び足音は聞こえてくる。今度は近づいてくる足音に、いよいよマッサージは始まるのかと思った瞬間、ゆらはぎょっとして引き攣ることとなる。
「ではゆらさん」
「え?」
「最初は背中からやっていきます。こちらで用意した上着や水着は、特に汚れても構いませんが、施術に関してはお肌に直接やっていきますので」
「い、いえ! あの! それはいいんですけど!? なんていうか、なんていうか――」
慌てふためき、焦燥に満ち溢れた表情で目を見開き、ゆらは思わず肩越しに振り向いていた。
男がいた。
女性による施術だと思っていたのに、男と入れ替わっていた。
「どうなさいました?」
「あの!? さっきの方は!?」
「ああ、先ほどの方は、ただの受付ですので」
「えぇ!? じゃあ、もしかして施術は……」
「ええ、私がやりますとも」
にっこりと、実に清々しくも明るい笑顔を浮かべてくる中年に、ゆらは心の中で悲鳴を上げる。
(いやぁぁ! オジサン!? こんなオジサンに!?)
キモい――とまでは言わないでおくが、あまり顔立ちが良いとは言えない、初対面で名前も知らない中年のオジサンに、JKのうら若き肌を触らせて良いのだろうか。
(ま、まずいでしょ……)
「さあ、始めますよ? ほらほら、下に水着は着ているのでしょう?」
「そうですけど……」
「じゃあ問題ないでしょう。きちんと綺麗にしてあげますから、美容効果抜群のマッサージをしてみせますから、どうか私を信じて下さい」
「えっ、えぇ……では……お、お願いしますけど、大丈夫なんですよね?」
「何がです?」
「だって男が女の子の肌にって、問題あるんじゃ――」
「そこは腕前で証明しましょう」
「自信満々ですね。納得いかなかったら、絶対二度と来ませんよ?」
「そうですね。気に入って頂けるように、精一杯尽くします」
「う、うむ……」
どうせここまで来てしまったのだ。
(まあいいわ。何かあったら訴える。絶対訴える。だからまあ、試してみようじゃない。何かあったら訴えるけど)
男だろうと、店を開いて客を集めるからには、どこぞの専門学校で学んだ上で、開業に漕ぎ着けたに違いない。性別など気にせずに、ここは技術を信じてみようと決心すると、まず最初に中年がしてくる指示は、背中をはだけるというものだった。
うつ伏せの姿勢から、身体を少し浮かせて、すると中年が布をずらして背中を剥き出しに、水着のラインの通った底へ、オイルが塗り伸ばされていく。手の平で人肌程度に温めて、冷たすぎないようにしてあるオイルは、皮膚にスムーズに馴染んでいき、ゆらはすぐにでも彼の技術を認め始めていた。
「へ、へえ? 上手いじゃないですか」
ゆらが感じる気持ち良さは、今はまだ性的なものではない。
媚薬を飲まされていることにも、そして効果が出始めていることにも気づいていない、ただ血行を良くするドリンクを飲んだだけの気でいるゆらは、適度に指圧しつつもみほぐし、凝り固まったものを柔らかくしてくる技巧に、そのマッサージとしての純粋な気持ち良さに満足しつつあるのであった。
別に、抵抗感はある。
肌に触れてくるのが男の手であることへの、抵抗と不快感はあるのだが、それを帳消しにするほどの技術を感じるのだ。
「もちろん、プロですから」
「なんか良い香りもしますね」
その時、ゆらは不意に気づいた。
ハーブなのか、何の香りかはわからないが、うっとりと目でも細めて、浸らんばかりの気持ちで楽しみたいような、とても良いものが漂っている。ゆらは密かに鼻息をして、鼻孔に香りを吸いあげていた。
そのアロマポットで焚かれるものにすら、媚薬効果があるとは知らずに。
「これも血行を良くするもので、マッサージの効果を上げてくれるんですよ」
布がさらにずらされる。
(ちょっ、やば――)
腰まで見えていた後ろの皮膚が、さらに露出範囲を広め、尻が出てしまっている。というより、上着そのものを抜き取られ、Tバックの尻を思いっきり、完全に見せびらかしているではないか。
(やば――やば――――)
ドクンと、心臓が跳ね上がる。
羞恥心から、みるみるうちに顔は赤らみ、頭にも熱は溜まっていき、そんなゆらの羞恥心を知ってか知らずか、中年の施術は続いていく。
腕に、足に、オイルは塗られた。皮膚に浸透させてくる施術によって、体のパーツが一つずつ順々に光沢を帯びている。水分をまとった皮膚の、しっとりとした感触から、ゆらはそれを自覚していた。
このうつ伏せの状態で、四肢も背中も腰も揉まれて、太ももにまでオイルが浸透している今、残る部位といったら一つしかない。
(ひょっとして、お尻も…………)
そう恐れ、警戒心で強張っていた時、両の尻たぶが本当に鷲掴みにされてしまった。
「あ、あの? 一体どこを触ってくれちゃってるんですか?」
上擦った声で、ゆらは強気に糾弾する。
「おや、マッサージだよマッサージ」
「お尻ですよね! そこはいいです!」
「いやいや、美尻マッサージだよ? ヒップも綺麗にしたいよね?」
「それは……でも……」
「せっかく来てもらったんだから、少しでも満足して帰って欲しいんだよね。だからこうして、効果を実感してもらおうとしているんじゃないか」
中年は決して手を離そうとはせず、それどころか撫で回す真似をして、オイルを塗り広げていた。尻にまで浸透してくるオイルの、滑りの良さを介して感じる手の平に、ゆらはぎょっとした顔のまま強張っていた。
「あ、あの……だから……!」
「いいからいいから、我慢我慢」
中年の指が食い込む。
指圧のために、痛いほどに押し込まれた指により、ツボ押しが行われた。その刺激を最初は痛く感じるが、すぐにでも肉がほぐれてか、数十秒もする頃には、揉まれるだけ尻が気持ち良くなっているのであった。
*
監視カメラのモニターを眺めて、この客はアタリと判断していた。
インターネットの予約受付で、女子高生が来るとはわかっていたが、そのルックスや豊満な乳房を見るなり、たちまち鼻の下を伸ばしたのだ。
これは楽しまなければ損である。
狙い目の客と見るなり、受付の女性に指示を出し、特別な用紙に記入をさせた。生年月日や氏名など、基本的な情報は当然のこと、スリーサイズや生理周期といったプライベートに踏み込んだ項目まで用意して、まんまと素晴らしい秘密を手に入れたのだ。
そうして、中年はこの手でオイルを塗り広げ、ゆらの体中にまんべんなく光沢を纏わせていた。尻ですら例外ではなく、肉厚のヒップが蛍光灯の光を浴びて、ヌラヌラとした艶めかしい輝きを放っている。
(ヤるしかないよね)
この客は最後までいってやる。
開店まもなく、あまりにも早速だが、女を食い物にするつもりで店を開いた中年は、今なら表情を見られる心配がないのをいいことに、緩みきった表情でニヤニヤしていた。
(そろそろ効果なんか出ちゃったりしてるよね)
期待に胸を膨らませ、中年はゆらに指示を出す。
「お尻を上げてもらえるかな?」
「えっ、いやその……」
「ほらほら、これも施術の一環だから!」
反論の暇を与えず、素早く大きな声を出しつつ、ぺたん! と、勢いを帯びた手の平を尻たぶに張り付ける。指を軽く食い込ませ、一瞬ほど揉んだ上、触れるか触れないかといった具合の、実に軽やかなタッチを施した時である。
「んぅぅ……!」
ぶるっと、尻が震えた。
腰が小刻みに痙攣じみて、まるで首でも振るようにして、実に素早く左右に揺れ動いているのであった。
(へえ、今のはいい景色だ)
良いものを見たことで、嬉しくなってニヤつく中年の目の前で、ゆらの尻は持ち上がる。
「こ、これでいいってわけ!? こんな変なポーズ取らせて、効果がなかったら許さないわよ!?」
震えきった声だった。
わかりやすく震えた声から、ゆらの羞恥心がありありと伝わってきた。
(どれどれ?)
四つん這いのポーズとなり、持ち上がった尻を覗いて、アソコの布を確かめる。オイルを広げたのは背中側ばかりであり、前側はほとんど濡れていない。その証拠のように、アソコを覆う細い二等辺三角形の、周囲のゴムにオイルが少しも付いていないが、中央には楕円形の染みが浮かび上がっていた。
(よし、濡れてる濡れてる)
中年はもうしばらく、尻への施術を中心に行って、撫で回す感触を楽しんだ。オイルを表面に塗りたくり、ぬかるみを帯びていることで、ヌルヌルとした滑りやすさに、さらにオイルを塗り足し光沢を強めていく。
表面をパックしてしまう勢いでオイルを広げた。
Tバックの溝に流れ込み、表皮を伝って流れる滴は、とうとう二等辺三角形のゴムに触れ、ショーツはオイルによっても濡れ始める。しかし、その頃には毛が透けるほどの愛液が出ているので、今更になってオイルが及んでも、もう愛液とオイルの区別はつかなくなる。
「では改めて背中をっと」
オイル濡れの手で背中を揉む。
マッサージのついでのように、結び目をつまんだ時だ。
「あの? と、取りませんよね!?」
やや強気で語気の荒い、まさか妙な真似はしないだろうなと、人を脅そうとしたがる声だった。
「この締め付けがね? 実はマッサージ効果を阻害するんだよ」
中年は聞く耳を持たないままに引っ張ると、一瞬にしてブラジャーは緩み、はらりと落ちそうになっていた。ゆらは慌てて胸を押さえ、右腕に覆い隠しているが、ここまで来れば取り去ることは簡単だった。
「さて、次は仰向けになってもらおうかな」
「ちょっと……無理なんですけど……」
悲痛な声が上がってきた。
「こらこら、わがまま言わない」
その瞬間、ぺちん! と、尻に平手打ちを入れ、一発ほど叩いてやる。
「うぅ……」
それが効いてか、観念したように姿勢を変え、上向きになるゆらだが、右腕だけは胸を守って、乳房を見せまいとしているのだった。
「気をつけ」
「は、はい……」
また観念したように、ゆらは両手を真っ直ぐ下へ伸ばしていく。
そして、紐のすっかりたるんだブラジャーは、ただ上に乗せてあるだけの、取り去れば簡単に離れていく状態だった。
大きな胸があらわにする。
「うぅぅぅ…………」
瑞々しい乳房が露出して、綺麗な乳首まで見えた瞬間、それでなくとも赤かったゆらの表情は、より濃い色へと染まり変わった。
(これはやっぱり、最後までヤってあげないとね)
美貌といい、胸の大きさといい、楽しまなければ損である。
しかし、まだまだマッサージを装う必要があると判断して、中年はやはりオイルを手の平に乗せ、改めて施術を行う。腹部や鎖骨のリンパを刺激して、太ももなども触っているうち、媚薬の浸透が進んでか、ゆらは明らかな我慢の表情を浮かべ始める。
恥ずかしそうに赤い上、快楽も堪え始めた我慢の顔で、唇を内側に丸め込んでいた。
「どうかな? 気持ちいいかな?」
「は、はい…………」
困ったような、焦燥じみた表情でゆらは答える。
中年はそんなゆらをより感じさせようと、乳房や性器に触れないギリギリの、際どい位置を責め始める。山にギリギリ一歩踏み込んでいると言えなくもない、しかしはっきりとは触っていない、境界線の位置をなぞって、乳房の周囲をくすぐると、みるみるうちに乳首が突起していった。
アソコにも際どいタッチを施して、はっきりとは肉貝に触れることのない、境界線だけを狙った愛撫をするうちに、ますます愛液は溢れてくる。今までは中年の手からゆらの身体へ、オイルが移っているわけだったが、今度はゆらのアソコから中年の指へと、汁気が絡みつくようになっていた。
ゆらの呼吸は荒く乱れる。
中年は胸とアソコを交互に責めて、いずれもはっきりとは触れない、境界線狙いのタッチだけに徹していた。その領域に踏み込みそうで踏み込まない、際どい位置への焦らしを続けるほどに、乱れた呼吸からは熱気が伝わり、目もとろっと蕩けていく。
(食べ頃が近づいたねぇ?)
見ればアソコは完全に透けていた。
まだ残してあるショーツだが、ワレメも陰毛も、どちらもくっきりと見えていた。
(さて、そろそろ)
と、中年がアソコに指を接近させ、今度はきちんとワレメを触ろうとしているのは、そんな焦らしを延々と、十分も二十分も繰り返して、やっとのことなのだった。
「ひゃぁああ!」
指を押し込み、ラインをなぞり、その一瞬にして大きな喘ぎ声が上がっていた。
「ど! どどどどどどこを!」
「アソコだよ?」
「あっやっ、ちょっ、んぅぅ――んぅぅぅぅぅ――――――!」
慌てふためく表情で、一度は手を下にやり、抵抗じみて中年の手首を掴もうとしていた。その指先が微妙に絡み、掴まれかけこそするものの、迫り来る快楽の波に、それどころではなくなっていた。
「あぁぁ……!」
ゆらは髪を振り乱していた。
たっぷりと愛液の滴り出て、これでもかというほど滑りの良い、ぬかるみに満ち溢れたワレメへの刺激で、ゆらは快楽に翻弄されている。抵抗するより、よがることの方に忙しく、もう中年の手首を掴む暇もなく、ゆらは大声で喘ぎ散らした。
「あっ! あぁ! あっ、あぁぁ!」
中年は布をずらして、指さえ挿入していた。
指先から根元まで、愛液の滑りによってあっさりと収まると、ヒクヒクと活発に蠢く膣壁が指に絡んでたまらない。ますます愛液を滲ませるアソコの中に、指によるピストンを始めると、よがる反応はますます大きくなっていた。
喘ぎ、髪を乱し、シーツを掴み、両足さえもしきりに動かす。脚を開閉させながら、膝をやけに動かしたり、足首を反り返したり、快楽に反応しての挙動がいくらでも増えていた。
「ひっ、ひやっ、あぁぁぁぁぁぁ――――――――――」
絶頂まで、そう時間はかからなかった。
ドリンクで、アロマポットで、オイルによっても媚薬効果が浸透して、長い時間をかけて焦らし続けた肉体は、絶頂の準備を整えきって、あとはその引き金を引くだけだった。
ゆらは背中をアーチのように反り上げていた。
大きく浮き上げた胴体の、海老反りのように突き上がった腹部は、そのままの形にしばし痙攣して、数秒経つと急に力が抜けたようにしてシーツへ落ちる。
中年は舌なめずりをした。
ゆらから巻き上がった愛液の潮で、頬にいくらかの滴がついて、中年はそれを舐め取っていた。
(頂きまーす)
そして、とうとう中年は、自らのズボンに手をかけて、カチャカチャとベルトの金具を弄りだしていた。
*
ゆらは余韻の中にいた。
溢れんばかりに膨らむ快楽で、どうする暇もなくイカされて、頭を真っ白にして天井を無意識に見つめていた。
その時、ハっと目を覚ます。
ベルトを外す音を聞き、本能が危機を察知してか、急に我に返っていた。見れば中年はズボンを脱ぎ、逸物を出そうとしていた。
(ま、まずい! わかんないけどヤバい!)
物事を冷静に判断する余裕はなく、自分は一体、今まで何をされていたのか、考えることもなく、目と鼻の先にある危機だけを理解した。それだけはさせまいと、急いで体を起こそうとするが、その瞬間に中年は脱ぎきっていた。
「デカ……」
何故だか、目を奪わた。
それは媚薬のせいであり、危機感や貞操観念よりも、欲望を優先する領域が心に形成されているためだ。
(って! まずい! 逃げなきゃ!)
そう気づいた時には、男は施術台の上に上がって、ゆらの胴体へ馬乗りになっていた。
「オジサンのおチンチンに見惚れたんだね?」
「違うから!」
「でも、逃げなかったよね?」
「それは……!」
言い訳が出て来ない。
言葉に詰まっているうちに、中年は胸に肉棒を挟んでくる。獲物に食らいつかんばかりの獣の目で、乳房を両手で鷲掴みに、そして腰を前後に揺すってのパイズリを開始していた。
(嘘――えっ、何これ――何なの――――)
頭の中で、何一つまとまらない。
恐怖のために、パニックになってもおかしくない状況で、既に性行為が始まっているというのに、どうしよう、どうしよう、と思いばかりが頭をぐるぐると回っている。
「何……してるんですか……!」
戦慄で瞳を振るわせていた。
両腕は脚の内側に封じられ、馬乗りによる体重のかかってくる状態で、ゆらには何一つの抵抗ができない。恐怖を帯びた表情で、自分を獲物と見てくるギラついた視線を見つめ返して、震えた声を上げることがせいぜいだった。
「ああ、パイズリだよ」
「そんなことを聞いてるんじゃ……」
「君、とっても気持ちよさそうにしていたから、エッチなサービスをしようと思ってね」
「頼んでません!」
「大丈夫だよ。サービスサービス」
中年はゆらの上げる拒絶の声など聞き入れず、欲望のままに腰を揺り動かし、閉じ合わさった乳房のあいだに肉棒が出入りする。揉むような動きを交えた両手で、中央へ寄せられている乳房の内側は、今まで浸透してきたオイルもあり、実に滑りの良いピストンを成立させていた。
「オジサンもイっちゃおうかな」
などと言い、その瞬間だ。
ドクッ、ビュルン!
精液が噴射する。
「きゃ!」
撒き散らされたものが乳房のあいだに、鎖骨や顎の裏側に、頬や額にまでかかってきて、青臭い匂いが漂う。臭気はもろに鼻孔へ流れ込み、嗅いでしまったゆらの反応は、下腹部を熱っぽく疼かせるものだった。
(なになに! なんで! 興奮してる場合じゃないでしょうが!)
叫ぶ勢いで、自分に対して言い聞かせる。
だが、身体を抱き起こされ、目の前に亀頭を突きつけられた時、引力に逆らえないようにして、ゆらはフェラチオを始めてしまっていた。
*
ぺろっ、ぺろっ、ぺろっ、ぺろっ、
きっと生まれて初めての奉仕であろう少女の拙い舌使いで、亀頭がくすぐったく舐められる。出したばかりの精液で鈴口の周りに付いた汚れは、そのぎこちない口の中へと舐め取られていた。
(うんうん、堕ちたかな?)
中年は満足そうにゆらを見下ろす。
この店で用意している媚薬は、肉体の反応を引き出すだけでなく、思考さえも鈍らせる。まともな判断力を奪い取り、レイプへの恐怖だの、体を守ろうとする危機感だの、そういったものより欲望が優先させてしまう。
「あむぅ……」
しまいには咥え始めて、ゆらは素人ながらの奉仕をする。
そんなゆらのフェラチオを、中年はしばし見下ろしながら、自分の股に向かって少女の頭が前後してくる様を鑑賞する。目で楽しみ、肉棒に生まれる感覚も味わって、うっとりとした気持ちでニヤニヤと鼻息を荒げていた。
そしてフェラチオを数分は眺めているうち、いよいよ挿入をしたくなり、中年はゆらのことを押し倒す。
(妊娠しちゃうかもねぇ?)
記入用紙に書かせた情報では、排卵日が近かった。
「ねえ、ゆらちゃん」
脚を持ち上げ、M字を作り上げながら、ゆっくりと語り聞かせるように中年は言う。
「最初に飲んだドリンクを覚えているかな?」
などと尋ねる頃には、もう入口に亀頭が埋まっている。
ゆらからすれば、もはや挿入を避けることなど不可能な状況だった。
「な、なんだっていうんですか……あれが…………」
「あれね? 排卵誘発剤が入っていて、妊娠しやすくなるんだ」
その時、ゆらが浮かべるものは戦慄だった。
「い、いや! やめてお願い!」
急に喚いて暴れ出し、手足をがむしゃらに振り動かすが、少女のか弱い抵抗などで、中年の行う挿入は阻止出来ない。ゴムも付けない生の肉棒を沈めることで、戦慄と絶望を浮かべるゆらの表情を楽しんだ。
「あっ、あぁ……あっ、あぁぁ! あん! あん!」
そして、入ってしまったことへの震えを瞳に浮かべ、しかしそれらの戦慄は、ピストンを始めた瞬間に掻き消される。
「あぁん! あん! あん! あん! あん! あん!」
ゆらは大きな声で喘いでいた。
激しく髪を振り乱し、抵抗の意思や絶望を胸に抱いていたはずの、正気の痕跡などどこにもなくなっていた。
「おおっ、気持ちいいなあ! オジサン嬉しいよ!」
中年は大喜びで腰を振り、肉棒をまんべんなく包む膣の感触を楽しんだ。
せっせと腰を振り、ゆらのことを喘がせながら、射精感が高まったところへ放出する。何の遠慮もない中出しで、支配感を覚えながら、中年はゆらのことを何度も犯した。体位を変えさせ、前からも後ろからも、騎乗位で自ら動く真似までさせ、そして射精は全て膣内に行っていた。
*
自分が排卵している感覚があった。
自ら腰を跳ね上げて、上下に動いてしまっているあいだ、ゆらの脳裏にはイメージが溢れていた。それは卵子に向かって無数のオタマジャクシが泳いでいく、受精直前の光景を浮かべたもので、精子が中に入ってくるのを薄らと感じていた。
もちろん、それは知覚できるものではない。
想像のあまりに生まれた幻に過ぎないが、自分が受精したイメージを脳裏に抱いた瞬間、その頃にはもう何度目かもわからない絶頂に至り、ゆらは絶叫と共に失神していた。
*
数日後、ゆらはインターネットの販売ページを見ることで、絶望めいた暗い面持ちで俯いていた。
発売されているのだ。
あのマッサージで起こったことは、全て動画に撮られていて、サンプル画像に写る少女は、目線による目隠しこそしてあるが、紛れもないゆらだった。
販売数の表示があるので、いくつ売れているかが見てわかる。
人気商品になっていた。
しかも、スマートフォンのアプリには、あの中年からのメッセージが届いている。
『次の撮影は明日だからね? 忘れずに来るように』
ゆらは腹部を手で押さえる。
それは妊娠の不安である一方で、性犯罪の被害者である自分が、よりにもよって快楽を期待などしてしまっている事実があった。また、あんな風に楽しめてしまうのではと、どことない期待感から、手で下腹部を気にしているわけだった。
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