前の話 目次




 そして、全裸のあとに待っているのは、トレーナーの次なる指示だ。
「では佐藤くん。あなたは法子さんの裸をしっかりと観察して、法子さんは手で隠すのをやめるように」
「で、ですよねぇ……はは……」
 薄々とわかっていたが、やはり腕を下ろす瞬間は辛かった。
 佐藤の遠慮がちな視線は、それでも真っ直ぐに突き刺さり、撮影スタッフ達の目も、法子の腕を下ろす瞬間を見守っている。
(やらなくちゃ……ね……!)
 法子は「えい!」と、思い切った気持ちで腕を下ろした。
 控え目な膨らみ具合を曝け出し、綺麗に閉じ合わさったアソコをあらわにした時、佐藤の目つきは一瞬にして変わっていた。引き込まれてしまった表情で、すっかり法子の裸に夢中になり、心を奪われたような目で放心気味にぼーっと、しかし確実に熱気の籠もった眼差しで見つめていた。
「どうでしょう。ご感想は?」
(やっぱり……)
 このトレーナーが下すメニューでは、お互いにお互いの感想を言うものとなっている。下着姿の感想を聞かされるのも恥辱であったが、今度はそれが胸やアソコに対して行われる。
「ええっと、まず胸が……その、大きさがほどよくて、可愛らしいかと……」
「大きさと形状のバランスがちょうど良いと?」
「そうです。それが、とっても良くて、アソコもとても綺麗で、スタイルも良くて、上手な言葉は思いつかないんですけど、とにかく良いと思います!」
 佐藤は鼻息を荒くしていた。
 全裸を前にしていることで、さすがに興奮混じりのようだった。
「では法子さん。次はあなたがトランクスを脱がせ、そして感想を述べる番になります」
「じゃあ、やるね? 佐藤くん」
 法子はしゃがみ、佐藤の前に膝をつく。
 腰の両側に手をかけて、トランクスを下ろし始める瞬間から、法子はちょっとした覚悟を決めていた。内側から突き破らんばかりのテント張りは、言うまでもなく立派なものを飛び出させるに違いなく、法子はそれを眼前にすることについての気持ちを固めていた。
 下げていき、ゴムの部分が竿にかかった。
 その一瞬だけ、真っ直ぐ前に突き出た竿の角度は下がったものの、すぐに中身は飛び出てくる。バネ仕掛けで跳ね上がってきたかのように、下へ倒れたものが元の角度を勢いよく取り戻し、目と鼻の先に亀頭はあった。
「あ…………」
 たったそれだけの声が出るなり、何故だか法子は呆気に取られる。
(いけないいけない! 脱がせるんだった!)
 数秒後には自分のやるべき作業を思い出し、慌ててそれを行うが、トランクスを脱がせきっても、法子はその圧倒的なペニスに目を奪われたままだった。
「ご感想はどうでしょう?」
 トレーナーが尋ねてくる言葉に、法子はゆっくりと答えていった。
「すっごく立派で……佐藤くんって、控え目だから、アソコも何となくそういう感じかなって思ってたのに、なんかメラメラって覇気が出てるみたいで、思っていたよりずっと凄いものだと思うよ」
 率直な気持ちでペニスを称える。
 股間を褒められて嬉しいものか、法子にはわからないが、トレーニングメニューをこなすためには、思ったままを言葉にしていた。
「なるほど、ご立派だそうですよ?」
「あ、ありがとう……法子さん……」
「いやいや! あたしは本当にそう思っただけだから!」
 お礼を言われるようなことではなかったが、どうやら佐藤自身としては、そう嫌な気持ちはしていないらしい。
 むしろ、照れ臭そうにしている。
 場所が場所なので、困った風ではあるものの、決して悪い反応はしていない。
「はは……」
 何となく、苦笑いをする法子。
「…………」
 喋ることが浮かばないのか、押し黙る佐藤。
 二人のあいだに沈黙が流れつつ、裸を見せ合う照れくささと恥ずかしさで、お互いにモジモジとし合っていた。意味もなく肩を前後にくねらせて、気まずさと照れくささを体中の挙動として滲ませていた。
「では次のメニューですが」
 ぐっと緊張が高まった。
 お互いに全裸となり、その上での次のメニューとなると、下着を手放してもなお羞恥を煽るものに決まっている。
 きっと、まだこれ以上に恥ずかしい展開が待っているのだ。
「異性への免疫を強化するため、お二人には相手の身体に接触して頂きます。まず、佐藤くんから、法子さんの乳房を触って下さい」
「え……!」
 佐藤はぎょっとしていた。
「いきなりだぁ」
 法子も似たような反応だった。
 最初の方では、まずスカートをたくし上げることから始まって、段階を踏んでくれている感じがあった。しかし、裸になってから急に乳房への接触を許すのは、ステップを飛ばしているように気がしてしまう。
 かといって、撮影はスケジュールによって決まっている。
 細かな記載はなかったが、一日目はどこまで脱いで、二日目では全裸になって、といった大雑把な内容だけは事前に伝えられている。だから、全裸までの覚悟はあったが、乳房を触らせるというのは、前もっての心の準備はできていない。
「さあ、佐藤くん」
 トレーナーは佐藤の背中を軽く叩いて、少しばかり急かしている。
「は、はい。やって、みますけど……」
 一歩前に出て、手を前に出そうとする素振りこそ見せるのだが、こういう場所に触るとなると、躊躇いはより一層のものらしい。課題、メニューであるとわかっていても、どうしても触るに触れず、近づけた手を直ちに離してしまっている。
(でも、このままじゃ終わらないよね……)
 法子は思う。
 相手は控え目な性格で、テレビにも慣れていない一般人だ。ここはやはり、アイドルの自分がリードしなくてはと、たどたどしくも手首を掴み、佐藤の手を自らの胸に導く。
「ほ、法子さん……」
「ほら、大丈夫。あたしもこういうのは初めてだけど、やればなんとかなるよ!」
「は、はい……そう、ですよね……!」
「だから、揉んでもいいからね」
「はい……!」
 タガが外れたようにして、佐藤の指は動き始める。今まで躊躇ってばかりいたのが嘘のように、佐藤は指に強弱をつけ、息を荒っぽくして興奮しながら、法子の胸を揉んでいる。
「すごい……」
 佐藤に感激の眼差しが浮かんでいた。
「これが……これが……!」
 ますます指は活発に、佐藤は激しく揉みしだく。五指の蠢きが大きくなると、その分だけ法子の乳房は変形を繰り返し、薄らかながらにパン生地を捏ね続けているようだった。異性の手に触れられている事実が刺激となり、乳首に血流は集まって、法子は感じそうにもなっていた。
(あぁ……どうしよう……気持ち良くなったりしたら、余計に恥ずかしい…………)
 快楽の気配を堪えるため、ぐっと表情を引き締めながら、法子はひたすらに立ち尽くす。
「次は抱き締め合って下さい」
「えっ」
「えぇ……!」
 再びぎょっとするのは、二人同時であった。
 乳房への接触もなかなかのハードルだったが、抱き締め合うとなってくると、お互いに全裸である。皮膚と皮膚が触れ合う上に、佐藤の剥き出しのペニスも必ず当たる。服を着た状態ならば、それだけでハードルは下がるだろうが、今の格好では乳房を揉ませる以上にハードに思えた。
「や、やろうか……ね、佐藤くん……」
「あの……それでは、失礼します…………」
 お互いにそーっと、相手の身体に手を伸ばし合う。肩に触れ合い、明らかにドキリとしている佐藤の様子を窺いながら、しだいしだいに身体を接近させる。胸と胸との距離が縮まって、ついには法子の乳房が佐藤の胸板へとぶつかって、そのまま抱き締め合っていた。
 背中に腕が回っている。
 しかし、遠慮のある両腕は、決して強くは抱いてこない。裸で抱き合う事実に興奮して、鼻息を荒くしていながらも、佐藤は脱力しきった腕で、ただ沿えているだけであるような弱い抱き方に留めていた。
 法子としても同じである。
 力一杯、ぎゅっと抱き締めてしまうことが恥ずかしくて、弱々しい具合に抑えていた。
(当たってる……)
 太ももに肉棒が接触している。
 男性器に触れたのは、これがもちろん初めてのことだった。

     *

 そして、さらに翌日のこと。
 佐藤は少しばかり免疫を身に着けて、目の前に生身の裸体があったとしても、過剰な興奮には囚われず、理性を保っていられるようになっていた。
 最初のうちから、暴走しては悪い、相手を傷つけてしまうという怖さがあり、失わないようには意識し続けてきたものの、最初に比べてその理性の強靱さが増している感覚があった。
 勃起まで沈められるわけではない。
 いくらなんでも、生理現象の操作はできず、下着を見ただけでもムクムクと膨れ上がってしまうわけだが、少なくとも我慢できずに飛びつく真似はしない――最初から一度もしていないが、慣れないうちはそんな衝動自体はあったのだ。
 それが今はどうだろう。
 目の前に立つ全裸の法子に、随分と冷静に理性を維持して、自己を保っている自分がいる。
「では始めて下さい」
「はい」
 トレーナーの指示に従い、法子へと一歩迫ると、佐藤は乳房にぐっと顔を近づけ、まずは至近距離から観察する。薄らとしていながら、かといって膨らみが皆無なわけでもない、ささやかなボリュームが可愛らしい。
 顔を視界にフレームに加えると、赤らみの届いた顎が見え、恥じらっている様子が伝わるものの、昨日までよりはずっと羞恥心に強くなっているのが伝わってきた。
(……よし)
 観察した上、触ってみるまでが課題である。
 佐藤は薄い乳房に手の平を置き、ふんわりとした心地良い感触に指を沈める。厚みがない分、胸筋や肋骨まで、すぐに指は届いてしまうも、それをマイナスとは感じない。佐藤は無我夢中になりそうな自分を抑え、自制心を持って揉んでいた。
 横から「終了」の声がかかってきたら、すぐにやめられるように意識していた。
 自制心のある状態で揉むというのは、そういうことに決まっているのだ。
「んぅ……んっ、んぅ………………」
 法子の様子が変化してくる。
 五指に強弱を付け続けているうちに、しだいに手の平の中央には、乳首の硬い突起が当たるようになっていた。それに気づくと、まるで乳首の様子を透かして覗いていたかのように、トレーナーは指示をしてきた。
「乳首も弄ってあげてください」
「は、はい」
 乳首が感じやすいことは、ネットで朧気に得た知識に過ぎないものの、何となくだがわかっていた。
 法子を今より感じさせてしまうことへの、興奮のような申し訳なさのような、どちらともつかない感情を胸に、佐藤は指先に乳首を絡め取る。転がし抜く刺激を与え、上下左右や斜めなど、あらゆる角度に倒し続けているうちに、法子の表情にはより一層の快楽が見え隠れした。
(法子さんが……感じてる……)
 自分の指で目つきを変え、表情にも快楽を滲ませているのかと思ったら、佐藤としてもますます興奮しそうになる。
 もっと感じてはもらえないかと、そんな目論見が湧きすらする。
「佐藤くん」
 そんな時、トレーナーが次のメニューを言い渡した。
「このあたりで、今度は女性器を観察してもらいます」
「……わかりました」
 もう必要以上のぎょっとした表情は浮かべない。
 薄々と、想像のついていた展開だ。
「法子さんは机でM字開脚に」
「……はい。それじゃあ、恥ずかしいけど……しっかりお願いね、佐藤くん」
 法子は恥ずかしそうに机に上がり、足を左右に開いていく。体育座りの姿勢から脚を広げたような形で、下半身はやや手前に突き出しての座り方だ。
 そして、佐藤も佐藤で椅子に座ると、すぐ目の前に綺麗なワレメがやってくる。
 毛は薄く整えてあり、カットしてあるのか、元からなのかはわからないが、陰毛の存在はそう見栄えの悪いものではない。
「さあ、法子さん。中身までしっかりと見せてあげてください」
「ま、まあ……ドーナツ食べて、いっぱいパワーを溜め込んだし、大丈夫大丈夫……」
 その言葉は自分に言い聞かせているものなのか、佐藤に言ってくれているものなのか。
 あるいは両方なのかもしれない。
 法子自身の指がアソコへ周り、閉じ合わさった肉貝を左右に広げた時、その内側に隠れていた桃色の肉ヒダがあらわとなる。
(これが……実物の……!)
 佐藤は感激しそうであった。
 外側も綺麗であったが、血色の良い肉ヒダも、ビラビラの部分にかけてまで色合いが良く、いかにも視線が引き込まれる。
「佐藤くん。ご感想を」
「……すっごく、綺麗です」
 まず真っ先に出て来るのは、そんな簡単な言葉であった。
「あぁ…………」
 法子の表情が僅かに歪む。
 自分の性器についての感想を聞かされて、法子自身としてはどんな気持ちか。少なくとも、顔やファッションを褒めるのと違い、素直に喜ぶようなものではないだろう。
 だが、これも課題なのだと言い聞かせ、佐藤は続けて言葉を捻り出す。
「僕はその……あのっ、ネットで、ですね。無修正、検索したことがあって、中には黒々としたものもあるので……。法子さんの綺麗なピンクって、モモとかサクランボを見ているような気持ちになるんです」
「あまり綺麗とは言えない性器が存在する中で、法子さんの女性器は美観に優れており、まるで桃色の果実を見ているような気持ちになる。と」
「そういう感じです」
 そう締め括る瞬間の、法子の羞恥に歪んだ顔といったらない。
 顔中の筋肉が強張って、耳まで染まり上がった表情から、今にも熱気が伝わってくるかのようだった。
「なるほど、では続いてのメニューになりますが、アソコや乳房に愛撫を行い、法子さんを気持ち良くしてあげてください」
「…………」
 さすがに何の言葉も出てこない。
 ただ、ごくりと生唾を飲み、佐藤は改めて性器や乳房に視線を走らせる。全裸訓練という特殊な事情の中とはいえ、それらを好きに触ることのできる役得ぶりに、やはり興奮の情は大きく膨らみ、逸る気持ちで手を伸ばす。
(いや、駄目だ……乱暴にやったら……)
 一瞬だけ、佐藤は近づけた手を引っ込める。
 ここで無我夢中になったりしたら、せっかくのメニューで理性を鍛えたことにならない。佐藤は一度引っ込めた手を近づけ直し、もっとゆっくりとやっていこうと、そーっと指を当ててみる。
 狙いの場所はクリトリスだ。
 包皮を被ったその部分こそが敏感だと、知識としては知っていた。
「んぅぅ…………」
 法子の口から、甘い声が聞こえてくる。
(……平気みたいだ)
 何故だか、安心していた。
 もちろん、本当は嫌ではないか、触らせてもらって申し訳ない、そんな気持ちはあるのだが、少なくとも乱暴なやり方で痛がらせている様子はない。その一点については安心しつつ、佐藤は指で包皮をくすぐる。
 だんだんと、包皮の内側から小さな突起が顔を出す。
 ペニスでいうなら勃起にあたるクリトリスの反応を確かめると、佐藤はさらに愛撫を続け、そのうち指に愛液が付着するようになっていくる。
「あっ、んぅぅ…………んぅぅ………………」
 甘い声のトーンも上がり、佐藤の肉棒はこれ以上なく反応して弾み上がった。
(セックス…………)
 挿入してみたい欲望が、たまらなく湧いてくる。
 しかし、法子の意思も確認せずに、勝手な真似はできない思いもさることながら、そもそも周囲には大人の男が揃っている。トレーナーに撮影スタッフ、これだけの大人がいながら、強姦に走ろうとして成功するはずもない。
 理性によるブレーキは、そういった部分によっても効いていた。
 佐藤はぐっと欲望を堪えながら、たまに乳房にも手を移し、性器と乳房を交互に味わっていた。
「佐藤くん」
 その最中、トレーナーが告げてくる。
「クンニをやってあげてください」
「……はい。じゃあ、やってみます。法子さん、舌を使わせて頂きます」
 断りを入れつつ、佐藤は性器に顔を近づける。
 ――ちゅっ、と。
 まず手始めのようにキスの形に窄めた唇を当て、ワレメをペロペロと舐め上げる。舌に絡みつく粘液から、生まれて初めて愛液の味を知り、頭上から聞こえる喘ぎ声のトーンはさらに上がった。
「あぁ……あっ、んぅ……んぅぅ……んっ、あぅ…………」
(法子さんが感じてる…………)
 しだいに舌を差し込んでいた。
「あぁぁ……!」
 嬌声がさらに大きくなる。
(法子さん……!)
 こうまで感じさせている事実に、佐藤はますます興奮して、気づけば舌をより活発に動かしていた。ワレメの奥まで差し込んで、膣穴を狙ったピストンまで試みる。初めて行う方法に最初のうちは手こずりつつ、すぐに慣れていくことで、膣内への攻めも激しくなった。
「あぁ……あぁぁぁ…………!」
 喘ぎ声が大きくなっている。
 脚のくねくねとした動きが、髪を振り乱している様子が、視界のフレームに収まることで伝わっていた。
 だが、佐藤は気づいていない。
 自分が一体どれだけ感じさせ、法子を危うい状態に送り込んでいるわけなのか。初めてクンニをしている佐藤には、その予兆などわかるはずもなく、だからそれは佐藤にとって、実に唐突なことだった。

「あぁぁ――――――!」

 一際大きな声が上がった。
 その瞬間、ビクビクと全身が痙攣していた。電流でも送り込んでいるように、胴体は激しく鳴動して、脚は執拗な開閉を繰り返していた。
 絶頂したのだ。
 佐藤のクンニによって、法子は頂点にまで登り詰め、ついにその快楽が弾けていたのだ。

     *

 それから、数分間の休憩を挟んでのことだった。
 絶頂で滴り出て来た愛液は拭き取って、机に付いた汚れを綺麗にした上で、佐藤と法子の二人には、やはり次なるメニューが言い渡される。

「あっ、あぁ………………」

 今度は佐藤の方が喘がんばかりの反応を示していた。
「あむぅぅ……じゅぅっ、ずぅぅ………………」
 フェラチオを行っているのだ。
 コーチが奉仕を指示した理由には、不審者対策という理屈があった。学校行事として行う全裸登校は、自治体や地元警察との協力でパトロールを強化してのものとなるため、そのようなケースはほとんどないが、女子一人の状況で暴漢に出くわす可能性は、必ず想定しなくてはならない。
 そこで奉仕なのだ。
 挿入という事態だけは避けるため、奉仕で勘弁してもらう。都合よくそれで済むとは限らないが、口で精液を消費させれば、気休め程度には処女を失う確率を減らせる。加えて時間を稼ぐことにより、たまたま助けが来る可能性を引き上げられるという理屈であった。
 そういった理由を唱えた上で、コーチは法子にフェラチオを命じた。
 最初は抵抗を示していたのは言うまでもなかった。
 積極的にフェラチオを経験して、学んでおきたいような姿勢など、法子は決して見せていない。ただ自分は合宿の参加者で、トレーニングメニューはきちんとこなすべきであるから、仕事や指示をこなすべき義務感の形で行っているに過ぎなかった。
 それでも、法子の心情がどうであろうと、口腔の生温かさや舌から伝わる快感に変わりはない。
「ずずっ、ずぅぅ………………」
 だからこうして、アイドルが自分の足元で膝をつき、肉棒に向かって顔を前後させている状況になっているわけだった。
 その興奮といったらない。
(あぁ……なんて……なんて……!)
 まず恋人すらいないのだ。
 控え目な性格で、自分はモテないと思っている佐藤にとって、そもそも可愛い女の子が目の前で裸になっていること自体、本当は夢のような体験なのだ。しかもオッパイを触った上、アソコへの愛撫を経た上で、さらにフェラチオまでしてもらう。
 一体、どこまでお得な体験をしているのか。
 ここまで良い思いをしていると、自分が当選したテレビ出演の抽選は、宝くじで大金を当てる以上の価値があったとさえ感じられる。
 射精感が限界を迎えるまで、そう時間はかからなかった。
「で、出ます……法子さん…………!」
 そして、佐藤は放出した。
 法子の口の中に向かって、亀頭の先から白濁を弾けさせ、人の口内に出してしまった罪悪感が背筋を走る。全てを出し切った法子の元には、直ちにティッシュが差し出され、それをトレーナーから受け取るなり、すぐに精液を吐き出していた。
 やってしまっただろうか。
 いいや、射精の断りは入れたが、しかし――――。
 不安に駆られる佐藤へ向けられるのは、人を安心させようとするような、法子の明るい笑顔であった。
「大丈夫大丈夫、今日も無事にメニューをこなせたね」
 その笑顔の、一体どれほど救いになることか。

     *

 全裸訓練合宿は、まだその全てが終わったわけではない。
 最終的には全裸で登下校を行えるように、羞恥心への耐性を鍛え抜き、精神力を高めることが目的だ。
 それを達するためのメニューは終わっていない。
 しかし、きっとこなしていける。
 平気、大丈夫だと、その都度佐藤のことを安心させようとしてくれる。そんな法子の心遣いのためにも、きちんと成長してみせようと、佐藤は決意を固めるのだった。



 
 
 

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