あずさはほとほと困っていた。
『どうしよう……どうしよう…………』
通話の向こうで、優がガチガチに震えているのだ。
登校を決意したはいいものの、この日から、と決めた日にちが近づくにつれ、緊張や不安が増しているようだった。
この経緯はまず、優を本番行為をしてしまった日に遡る。優はあの時、土下座をしてまで最後までさせて欲しいと頼んできて、必死の思いでこう言ったのだ。
させてくれたら、学校へ行く。
そして、自分のおかげで優がトラウマを克服したり、成長してくれるかもしれないと感じることで、あずさはそれを了承してしまった。
そこで体を許した要因としては、元々の押しに対する弱さもあるが、他にも優に対しての引け目が大きい。
中学時代、優はイジメを受けていた。
あずさはそのことに薄々と気づいていて、幼馴染みとして何かをするべきだと、正義感のような衝動に駆られはした。放っておくべきではないと、心の中ではずっと思い続けていたのだが、そのための勇気がなかったのだ。
その一方で、彼氏である和也は違った。
あるおり、イジメグループに連れられていく場面を見て、和也と二人でこっそりと、その後を追った時である。そこではなんと、優のことを全裸にさせて、自慰行為を強要している最低最悪のイジメが行われていた。
学校で起こることには、イジメという言い方が使われがちだが、それは立派な凶悪犯罪に違いなかった。
あずさにはイジメグループが悪魔に見えた。
人にそんなことを強要して、こぞってスマートフォンを向けてゲラゲラ笑う。一体、何が楽しいのか、本気で理解できずに怖かったのだ。怖くて怖くて、足が竦んで動けずに、まさか注意しに行くような真似などできなかった。
だが、和也は即座に飛び出していた。
その仕打ちを見るなり、相手が女子であろうとお構いなしに殴りかかって、たちまちその場は騒ぎとなった。騒ぎを聞きつけた教師が駆けつける事態になり、元より噂のあったイジメグループの陰湿行為は、全て白日の下に晒された。
学校が下した措置としては、厳重注意や別室登校など、もろもろの指導である。事実を知った一部の教師は、かなり激しく激高して、泣かせる勢いで説教したと、他の先生からの話で聞いてはいるが、立派な犯罪行為を警察沙汰にはしないようだった。
あずさ自身、このことをネットに晒し、世間の注目を集めようとする勇気はなく、勝手に警察に持ち込む気概もなかった。それに優本人に黙ってそんな真似をしてもいいのかもわからずに、結局は最後の最後まで、優のためには何もしていなかった。
気づいていながら、特別に相談に乗ったわけでも、支えになろうとしたわけでなく、ただただ心の中でだけ、何かしなくちゃ、という気持ちを抱くだけで終わってしまった。
それ以来、それが優に対する引け目となって、高校生となった今でも残っている。
勉強を教えることはした。
優は最後の最後まで、中学は不登校で終わっているが、高校受験はやってみると、部屋で参考書を開いていたのだ。勉強をしている姿を見た瞬間、せめて自分にできることとはこれではないかと、一緒に勉強をしたり、教えてあげたりするようになったのだ。
それが功を奏してか、優は見事に合格した。
だが、実際に登校したのは数えるほどで、行ったとしても保健室登校しかしていない。優はまだまだ、学校という世界に対してトラウマを抱えており、そのせいか優に対する引け目も消えていない。
そう、だからセックスをしてしまった。
押しに弱い性格と、自分は結局何もしていない引け目を背景に、土下座までしてきた優に本番を許してしまった。
させてくれたら、学校に行く。
その言葉が大きくあずさの心を揺るがし、和也というものがありながら、優と交わってしまったのだ。
当然、罪悪感はあった。
彼氏がいるのに別の男と、などというのは、まるで和也を裏切るようで後ろめたい。それに優には恋心があるわけでなく、弟に対するような好意しか抱いていない。恋愛感情による繋がりはなく、それでセックスをしてしまった罪悪感は、後々になってどんよりと背中を重くした。
しかし、自分のおかげで優が立ち上がり、再びきちんと登校をするのかと思ったら、それはそれでやはり誇らしい。優が前向きになったり、トラウマを克服したりしてくれれば、まるで自分の成果のように感じられて気持ちいいのだ。
押されるとつい頷いてしまう性格もそうなのだが、人の面倒を見ることで、誰かを助けることに喜びを見出す自分もいる。自分が勉強を教えたおかげで高得点を取ってくれたり、慰めたおかげで立ち直ってくれたりすれば、それは嬉しくてたまらない。
といった心理もあり、優の学校復帰の手伝いをするというのは、あずさにとってまさしく望むところである。
それに、わざわざ本番まで許したのだ。
葛藤や罪悪感を抱えてまで挿入を許したのに、それが無駄に終わっては悲しくてたまらない。優にはそれなりの成果を見せてもらわなくては困るわけであり、だから優の登校日には、優と一緒に行くと決めていたのだ。
優と一緒の登校については、和也の了解はきちんと得ている。
周囲の友達にも、優が幼馴染みに過ぎない存在で、親戚付き合いのために顔を合わせる機会が多く、弟のような感覚で接していると伝えてある。だから優と二人で歩く場面を見られたからといって、それが一度や二度くらいなら、みんなの誤解を受けることはないだろう。
何よりあずさ自身、和也の恋人をやめたつもりはない。
たとえ体を許していても、姉の弟に対する愛情が行きすぎた結果であり、恋仲になったわけでも何でもないのだ。
和也にセックスのことは話さない。
もちろん、優の口から漏れることもないだろう。
だから、もうそれはいい。
一度でも交わってしまった過去は、もう取り消すことはできないのだ。それがレイプによるものなら、もっと酷い形で引きずって、何日も暗い顔をしている自分がいたことだろうが、なまじ自分自身の気質であったり、イジメというい背景が絡んだ結果である分だけ、あずさなりに折り合いはついていた。
というより、結果としては頼まれて頷いたわけであり、折り合いは付けざるを得なかった。
だから、とにかく今はそれはいい。
問題は今、優がガチガチに震えていることだ。
『どうしよう……学校、やっぱり怖い…………』
ただ登校日の朝を迎えただけで、こんなにも震えているとあっては、登校中に家まで逃げ帰りそうにすら思えてくる。
一体、どうしたものであろうか。
*
その電話を始めたのは、とある夜のことだった。
その夜は和也の家で寝泊まりして、両親不在をいいことにした二人の時間を過ごしたが、盛り上がりもそこそこに、お互い眠りにつこうとした。和也は寝付いた一方で、たまたま眠りきれないまま、トイレのためにベッドを出たあずさは、その際に何となく握ったスマートフォンで連絡に気づいたのだ。
トイレの最中にSNSを開いて過ごす。
わざわざスマートフォンを握った理由はそれだったが、だからその時になって気づいたのだ。
『あずさ……ママ……』
メッセージ系のアプリであった。
『ごめん、いま気づいた。どうしたの?』
『どうしよう』
『だから、どうしたのって』
『学校……どうしよう…………』
向こうも起きていたらしく、すぐに返事が来たのでそのままやりとりを開始して、すると優は登校への不安を訴えてきた。
不安でいっぱい。緊張でたまらない。
そういったことを執拗に言ってくるので、しょうがないのであずさは電話をかけたのだが、通話をするなり、一人で行くのは怖いと言い出したのだ。
『どうしよう……学校、やっぱり怖い…………』
泣きそうな声で、そう訴えてくるのだ。
助けを求められているようで、とても放ってはおけなかった。
『だったら、和也と三人で行く?』
それが当然の提案だと思ったのだが、すると優は渋り始める。
『和也くんか……和也くんは、格好いいし、頼りになるけど……』
『けど、なぁに?』
『ほら、その……僕達……』
『あー……。そっか』
何やらぐだぐだと言ってはいたが、しどろもどろな言葉の中から、それでも言わんとすることは理解した。要するに人の彼女とセックスをしてしまって、それでいて何食わぬ顔で和也の親切に与るのは心苦しいらしかった。
(まあ、甘えるなら女の子がいいんだろうなぁ)
どうせ頼ったり甘えたりするのなら、その相手は異性がいいと、男の子の心理としてはあるとは思うが、和也への後ろめたさもまた大いにあるわけだ。
そして、あずさ自身にも同じ罪悪感がある。
優にそんな素振りは見せないだけで、加えて和也にも隠し通す必要があるだけで、これでも気にしているのだ。
二人一緒に後ろめたい気持ちを押し隠し、秘密を抱えて和也と接する状態というものは、いかにもぞっとしないものである。
だからといって、毎日のように一緒に二人きりで登校するのは、いくらなんでもよろしくない。いくら口先ばかりで親戚に過ぎないことを語り、あくまで幼馴染みとして、弟のように思っていると言ったところで、周りの人間はそのうち誤解し始めるだろう。
だから、あずさは条件を付けた。
二人きりの登校は、最初の一回だけにする。
その次からは、それでも和也を交えて三人で、あるいは和也と二人で、慣れてきたらいよいよ一人で登下校をするようにと言いつけた上で、あずさはその時の電話を切った。
しかし、切る直前にもう一つだけ約束したのだ。
朝早くに優の元を訪れて、優のことを励ますと。
だから、あずさは妹と一緒に過ごす名目で、日曜日は優の家に寝泊まりした。名目というよりも、実際に妹とゲームをしたり、たくさんのお喋りをして過ごし、もっぱら優の方がついでになっていたものの、約束通り月曜日の朝には優の部屋を訪れた。
*
なんとも、朝五時である。
ご両親や妹は眠っており、二人だけが起きているこの早朝、今なら何をしても気づかれない。おかしな声さえ出さなければ、後でいくらでも誤魔化しが効くことに気づいてしまう。そんな考えが浮かんでくるのも、それもこれも一度体を許してしまったせいだろう。
「ママ……」
「もう。またそんな呼び方」
「クラスには、どんな人がいるの?」
暗い上目遣いで不安そうに尋ねてくる優の気持ちは、痛いほどに伝わってきた。イジメを受けた経験がある以上、同じことをやってきそうなクラスメイトはいないかと、事前に聞いておきたいわけだろう。
まずはその点で安心してもらう必要がある。
「とりあえずね。中学のあの人達は、何かやってるんじゃないか、みないな噂には前からなってて、あの騒ぎで噂は本当だったんだ。って風になってさ」
「……うん」
「えーっとね。つまり、そういう裏で何かやってそう、みたいな感じのする人はいないかな」
「……うん」
「ああ、そうそう。優子って友達がいて、優と同じで優しいって書くの。名前が名前だから、その子のことはユウちゃんって読んでてね? 優は優だけど、あっちはちゃん付けなの」
そういった具合に、ひとまず自分の友達について話してみる。
普段はどういう子と喋っていて、その子はどんな部活に入っているか。どの友達が彼氏持ちで、どの友達が絶賛片思い中であるかなど、身辺にまつわることを喋っていると、優はそれに大人しく耳を傾け、しきりに頷いていた。
「どう? ちょっとは不安が晴れた?」
ひとしきり話したところで、あずさはそう尋ねてみる。
「ちょっとは」
「よかったー。まあ、何もないと思うけどさ。もし何かあったら、私に報告してよ。どんな話だって、私なら絶対に笑ったりしないから」
「うん……!」
曇りが少しばかり晴れ、優の瞳に明るさが宿る。
その手応えを感じた時、あずさは思わず心の中でガッツポーズを取っていた。
もしかしたら、自分は将来、こうやって誰かの相談に乗ったりして、人を支える仕事に就くべきなのかもしれない。
「ね、優。今日のところは私が一緒に行くからね?」
そう微笑みかけた時だった。
そーっと、優は胸に手を伸ばそうとしてきていた。
(あ、どうしよう……)
指先が迫って来る。
(まあ、いいか)
受け入れることにはしつつ、あずさは自らの胸元を拝んでみた。
寝泊まりの際に持って来たのは、自前の薄ピンク色のパジャマなのだが、実はサイズが少し小さくなってきている。
近頃、ブラジャーのサイズが変わり、Iカップへの買い換えを進め始めている。Hカップのブラジャーだと、少しばかり胸が苦しく感じるようになってきたのだが、このパジャマも買い換える予定があった。
中学の頃から着ていることもあり、制服や他の私服に比べて微妙にピチピチで、内側からの膨らみによって、ボタンが弾け飛びそうになっている。まさか、本当に弾け飛ぶ直前なら、さすがにもっと早く買い換えてはいるものの、そう言いたくなる程度には、胸の中央で布が引っ張られているのである。
そんな内側から衣類を押し上げた曲線は、やはり男子にとって魅力的なものなのか。
何かの魔力に囚われてでもしているように、優はゆっくりと手をやって、とうとう乳房を揉み始める。
「しょうがないなぁ……」
ため息をつきつつ、あずさは胸を揉ませてやった。
お互いに膝を突き合わせ、正座で向かい合う形となって、しばしのあいだ揉ませていると、優はやがてボタンを外し始めてくる。あずさはそれを無抵抗に受け入れて、脱がされるままにして、買ったばかりのブラジャーを曝け出す。
「ママ、新しいの買ったんだ」
真新しい純白は、一目で新品とわかるらしい。
「うん。サイズがちょっとね。HからIへの入れ替えを進めている最中だよ」
「ママって、本当に大きいよね。すっごく、視線が吸い込まれる……」
魅入られてしまった顔で、優はパジャマを引き下ろす。下げられていくにつれ、あずさの肩が徐々に剥き出しになっていき、上半身はブラジャーのみとなる。
最初のうちは、下着越しに揉んできた。
カップの上から揉み潰し、触感を味わってくる優の指遣いは、乳房ばかりかブラジャーの素材も気にしている。谷間にかかったレースをなぞったり、刺繍を指先でくすぐって、優は新品のブラジャーを楽しんでいた。
(そういえば、まだ和也には見せてなかったなぁ……)
れっきとした彼氏がありながら、優に先を越させてしまったことで、あずさは軽い罪悪感に囚われる。
(ううっ、しょうがないしょうがない)
もう触らせてしまったものは仕方がない。
まあ和也には和也で、またそのうち見せてやろうと、あずさは両腕を後ろに回し、おもむろにホックを外す。肩紐を一本ずつ下ろしていき、ブラジャーを外す動きを見せると、優はそれに合わせて手を引いた。
そして、ブラジャーを横へとどかす。
あらわとなったIカップは、メロンのような膨らみを少しだけ下垂させ、優の興奮しきった視線を引き寄せる。まるで吸引力でもあるように、これでもかというほどに、ギラついた眼差しを一点に集中させていた。
「ママ……」
優は直接揉み始める。
「上手だよ? 優」
「本当?」
「本当だよ? 女の子のことを覚えて、どんどん自信をつけていこうね」
「うんっ」
同い年なのはわかっているが、元々が童顔なせいもあり、やはり年下の可愛い子と接している気持ちになる。
実際、優の愛撫は上達していた。
何度となく揉ませてきたことにより、経験則であずさの反応を覚えた優は、指を押し込む際の力加減から、乳首をくすぐる際の指遣いにかけてまで、随分と早い上達でツボを押さえている。
甘い快楽が発生して、もう既に乳房の内側を漂っていた。
見えない何かが細胞を染色してくるように、甘ったるい感覚が少しずつ生まれては染み広がる。いつかは乳房の内側全てがそれに満たされ、丸ごと溶け落ちていくのかもしれない。
「ママ……」
優はおもむろに顔を近づけ、乳房のあいだに顔を埋め始める。
「はいはい。しょうがない子ね」
最初は引いていたはずなのに、もうとっくにママと呼ばれ慣れてしまった自分がいる。元より人に甘えてもらうと嬉しい気質があずさにはあり、優がきっかけでその性癖は大きく芽吹いているのであった。
「ちゅぱ」
と、今度はしゃぶってくる。
赤ん坊のように乳首に吸いつき、ちゅぱちゅぱと音を鳴らして刺激してくる。その快楽に目を細め、うっとりと浸りながらも、あずさは優の頭を撫でていた。
「赤ちゃんみたいだね」
「だって……」
「よしよし。でもお乳は出ませんよ?」
「でも、飲みたい」
「まったく、優はどこまで甘えん坊さんかな?」
頭を撫で、髪を掻き分けていたその指で、今度は耳を触ってやる。耳の裏側に指をやり、くすぐるように刺激した時、それがゾクっとしてのことなのか、優の頭は一瞬ピクりと動いていた。
「ふふっ、可愛い」
いつしか、愛しいものに対する母性に満ちた視線となって、あずさはゆったりとした手つきで優のことを撫でていた。頭を撫で、背中を撫で、たっぷりとした愛情の内側に包み込み、少しでも安心させてやるつもりになりきっていた。
「ちゅぱっ、ちゅぱっ」
と、そんな刺激が続くにつれ、あずさの乳首は唾液を帯びる。
片方の乳首をひとしきり吸い尽くすと、もう片方の乳首にも吸いついて、母乳でも飲みたいように吸引する。その際の、たまに歯の当たって来る刺激は、甘い痺れとなってあずさを大いに喜ばせた。
どちらの乳首も、固く突起を始めている。
唾液を纏っていくうちに、より敏感となった乳首から、すっかり快楽が生まれやすくなっていた。ペロペロと舌で上下に転がされると、心臓まで届かんばかりの快楽電流さえ生まれ、それが全身にまで行き渡る勢いだった。
「気持ちいい……」
「ママ、僕も……」
「うん?」
「僕も気持ち良くなりたい」
「大きくなっちゃった?」
「……うん」
「しょうがない子だね。ほら、そっち座って」
あずさがベッドを指した時、優はすぐさまパジャマズボンを脱ぎ捨てて、トランクスの中身さえも剥き出しに、早速のように座り込む。
そして、始めるのはパイズリだった。
優の肉棒をたっぷり癒やし、射精に導いてやろうと奉仕を始めた。
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