ヴィーヴル女は戻ってくるなりフィアメッタのことを押し倒し、熱烈なキスで唇を激しく頬張る。舌の侵入に口内を蹂躙され、その甘美さに思わずうっとりと目を細め、自らも舌を伸ばしそうになっている自分がいた。
(何を……考えているの……)
シャワーを浴びられた。食事も与えられた。
そんなことで拉致監禁を許すには値しないと思ってみても、最初はもっと最悪な扱いを想像していた。殴る蹴るは当たり前といった部類の想像からしてみれば、体を好きにされるのも当然のように最悪だが、少なくとも痛みを伴う暴力は受けていない、拷問も何もされずに済んでいるという安心はしてしまう。
(違うわ……気を許しちゃ駄目――――)
そう頭ではわかっている。
わかっていても、キスによって理性を溶かされ、脳の中には甘い何かが漂い始める。官能的なものが体中に満ち溢れ、肉体が快楽を思い出す。何かに夢中になっている最中は、痛覚が置いてきぼりになり、痛みに後から気づくことがある。フィアメッタの快感はまさにそれで、食事のあいだに忘れていたものを体が思い出していた。
とっくに性感帯のスイッチが入り、いつ感じてもおかしくなかったことを体が思い出しているせいで、ちょっとした摩擦が必要以上の刺激となる。
ヴィーヴル女が覆い被さり、キスをしながら身じろぎする。そのちょっとした身体の擦れからくる感覚から、今にも細胞を溶かしていくような、甘い痺れが神経を伝って広がっていく。
「ねえ」
唇が離れていく。
フィアメッタの閉ざした唇と、ヴィーヴル女の舌先のあいだには、ねっとりと唾液の糸が引いていた。
「身も心も私のものにならない?」
冗談にもならないことを、しかし本気の眼差しで伝えて来る。
「私に心を捧げるなら、男には手は触れさせないわ。ああ、もちろん男とのセックスもしたいなら、それはそれでいいんだけどね」
ありえない、懐柔されるような理由が何もない。
そのはずなのに、心がくらっと揺れ動き、このままヴィーヴル女の元に居続けるのも悪くはないと、気の迷いでしかないものが湧いてくる。
モスティマの顔が頭を掠めた。
そして、手元に確保しているあの銃のことも――。
帰るべき場所も、果たすべき目的もあるのに、こんなところで誰かのペットになるつもりはない。
「ふざけないで」
フィアメッタはそう一言答えていた。
「あら、残念。でも、時間はいくらでもあるんだから、あなたの気が変わるまで努力するわ」
「そんな努力……んっ……」
口答えしようとした時には、もう唇が塞がれていた。改めてのキスはやはり甘美で、酔いが体に回っていくかのようである。
(こんな……ことで……)
こんなキスの快感ごときに惑わされてなるものかと、気を確かに持とうとしていると、ヴィーヴル女の両手が胸を揉む。
「……っ!」
ビリっと強い電流が弾けたような、強烈な刺激にフィアメッタは大きく目を見開いていた。今は服を着ているはずなのに、着衣越しの手がこんなにも気持ちいいことに、衝撃さえ受けていた。
やはり、媚薬の力は恐ろしい。
その効力を改めて実感していると、結んだネクタイを引きほどかれ、ブラウスのボタンが一つずつ外されていく。もうとっくに裸は見せて、放尿すら見られているというのに、こうして脱がされてみると、これから初めて肌を出すかのように恥ずかしい。
羞恥心が湧いてきて、顔に赤らみが浮かび始める。
「可愛い顔ね」
それに気づかれ、ヴィーヴル女は愛おしくてたまらないものを見る目を向けてきていた。
「……うるさい」
「いいブラよね。羨ましい」
ブラウスのボタンが全て外れて、下着が解放されてしまう。ブラジャーからヘソにかけ、上半身がブラウスから露出しきると、今度はその下着越しに胸を揉まれた。
「ん!」
喘ぎそうな声を咄嗟に抑えようとして、しかし抑えきれなかった嬌声が上がっていた。
「あら、いい声」
「う、うるさ――んぅぅぅ…………!」
下手に口を開いていると、もう甘い声が出てしまう。
胸を揉まれ始めたフィアメッタは、唇をきつく結んで力も込め、間違っても下手な声は出さないようにしていると、そんな唇目掛けてまたしてもキスを繰り返す。今度は力強く閉ざしているので、どうやら舌は入れられずに済むものの、代わりに周囲を好きなだけ頬張られ、フィアメッタの口周りは唾液に汚れた。
「んっ、んぅぅ……んぅぅぅ………………」
昨日などより、感度の上昇はよほど早い。
体中の熱が上がって、スカートに隠れたショーツの中身は、とっくに愛液の分泌を開始している。あるいはもう、ショーツに染みが浮かび上がって、目視可能な濡れ具合となっていてもおかしくない。
「んっ、んっ、んっ、んぅぅぅ……!」
これだけ体が感じていれば、ブラジャーの内側では乳首が突起しているに決まっていた。
そのブラジャーを外すため、ヴィーヴル女はフィアメッタを抱き起こす。背中に上を滑り込ませて、ぎゅっと抱きついてきながら身体を引き上げる。上半身を起こされたフィアメッタの両肩から、ジャケットの袖が抜かれた。
はらりと、まずはブラウスが残る。
そのブラウスも脱がされて、ブラジャーのみになった瞬間に、ヴィーヴル女は改めて抱きついた。彼女の体温が肌に伝わり、人肌の心地良さに何故だか安心していると、少しでも気を許しそうになっていた自分に気づき、フィアメッタは気を引き締め直していた。
(駄目……思い通りになっちゃ……)
背中に回った両手により、ブラジャーのホックは外れる。
肩紐は一本ずつ下ろされて、そして取り去られたブラジャーの下には、まさにビンビンと言って良いほどまでに、固く突起した乳首があった。
「まあ」
その果実を見て喜びながら、ヴィーヴル女は早速のように乳首をしゃぶる。
「んぅん!」
フィアメッタは反射的に両手で口を押さえていた。
きっと、筋力抑制剤のことなどなくとも、フィアメッタはそうせずにはいられなかった。皮膚が内側から弾け飛ぶかと思うほどの、かといって痛いわけでも何でもない、むしろ甘さすらある感覚に、間違いなく大きな喘ぎ声を出しそうになってしまっていた。
両手でなければ、その声をとても出ないが抑えきれない。
「んっ、んぅぅぅ……!」
フィアメッタは顎を固くしながら、両手によっても唇を封鎖して、懸命に声を出すまいとし続ける。そんな健気な我慢に対して、可愛くてたまらないものに対する眼差しが始終向けられ、どちらにせよ反応を楽しまれていた。
乳首を吸いながら押し倒す。
どすんと、背中が勢いよくベッドシーツに落下して、スプリングがかすかに身体を跳ね上げる。あってないような微妙なバウンドで一瞬の浮き沈みを見せた後、ヴィーヴル女はもう片方の乳房も激しくしゃぶり、どちらの乳首も唾液濡れに輝かせる。
そして、またも唇に食らいつく。
両手で口を塞ぐフィアメッタだが、その手首を掴まれれば、邪魔な両手はいとも簡単にどかされていた。
「んぅぅ……!」
唇同士が触れ合って、同時にアソコへも手が伸びていた。
(ま、まずいわ……!)
フィアメッタを襲う危機感も当然だった。
ここまで感度が上がっていて、乳房への刺激で声を必死に抑える始末だ。ならばアソコを触られれば、もやは電気拷問でも受けてのたうち回り、激しく絶叫する勢いで、雄叫びさえ上げてしまうのではないかと恐れていた。
スカートが捲られて、ショーツの中に手が潜る。
手の甲によって押し上げられ、内側から膨らむショーツの中で、ヴィーヴル女の指が即座に膣へ侵入していた。
「んぅぅぅぅ…………!」
何の準備も整えず、いきなり膣口に挿入できるほど、フィアメッタのアソコはしっかりと濡れていたのだ。
「――――っ!」
すぐさま頭が真っ白になっていた。
激しい快楽電流が弾け回って、脚がビクっと跳ね上がったと思いきや、脳細胞まで弾け飛んでしまったように、思考が一瞬にして掻き消されていた。あまりの快楽の津波が押し寄せて、フィアメッタはただただ驚愕のように目を見開ききっていた。
*
イカされると思っていた。
実際、フィアメッタのことをイカせるなど、もはや軽くスイッチを押す程度のことに過ぎないだろう。
しかし、とある瞬間に指がぴたりと止まっていた。
「え……」
ピストンしてきた指の可動は、絶頂の直前に合わせて綺麗に停止し、フィアメッタは寸止めを受けているのだった。
「あら、どうしたの?」
ヴィーヴル女は嬉しそうにニヤニヤしている。
「なんでも……ないわ…………」
フィアメッタはそう答え、顔を背けるのだが、わざとらしい質問に対する感情は、ひたすら恥辱ばかりであった。このまま自分はイクはずだと、当たり前に考えていたフィアメッタは、だから寸止めに対して困惑をしていたのだ。
だが、違う。
断じて、イカせて欲しかったわけではない。
「正直に言ってもいいのよ?」
「な、なにを……正直に言うことなんて……何もないわ……」
乱れきった息遣いで、熱い呼気を吐き出しながら、フィアメッタは赤らみきった顔で答える。
「あらぁ? じゃあ、こっちのお口に聞こうかしら」
ヴィーヴル女は楽しみそうにピストンを再開する。
「んぅぅぅ……! んっ、んぅぅぅ……! んぅぅぅ…………!」
その喘ぎ声はくぐもったものだった。
再開と同時に唇が塞がれて、フィアメッタは口づけに対して呻くような声を漏らしていた。
「んぅぅぅぅぅ………………!」
今頃は甲高く出ているはずの喘ぎ声は、他ならぬヴィーヴル女の唇によって遮られ、呻き声にしか聞こえない。
「んぁ……あぁぁ………………」
またしても、絶頂が近づいていた。
ところが、イクと思ったところで指は停止し、今度もイカせてもらえない。
(やっぱり、わざと……!)
モスティマは戦慄していた。
ヴィーヴル女の巧妙にタイミングを見抜き、上手いこと指を停止してみせる手腕もさることながら、今の自分は簡単にイってしまうはずなのだ。絶頂に到達することはいとも容易く、ならばタイミングさえわかるなら、いくらでも寸止めが可能ということになる。
(それじゃあ、これをあと何回……やられるの…………)
不安を煽られている中で、また指は動き始める。
「んっ! んぅぅぅぅ!」
フィアメッタは脚を暴れさせていた。
弾ける足はしきりに動き回った挙げ句、かかとで何度もシーツを打つ。次の絶頂が訪れようとしてきた時、フィアメッタが抱く予感は、決してイカされることではない。二度もやられて、だから次も寸止めに違いないと予め感じ取り、そちらの方を予感していた。
「んぅぅぅ――んぅぅぅぅ――――――」
もう、イく。
そう思う瞬間こそ、指が止まるはずの瞬間でもあった。
予感の通りにぴたりと止まり、イカせてもらえず、もはやフィアメッタは自ら懇願の眼差しを浮かべてしまっていた。
(違う……じ、自分から求めるなんて……ありえないわ……)
そうは思っていても、体の方が絶頂を求めるせいで、フィアメッタはイカせて欲しい願いを瞳に宿し、目一杯に要求を送りつけていた。次は寸止めなどせずに、きちんと絶頂させて欲しいと、目で訴えてしまっていた。
顔が勝手に動いてしまう。
抑えよう抑えようとは思っていても、表情をどうにもできず、フィアメッタはどうしてもそんな目をしてしまっていた。
「あんらぁ? 何か言いたそうだけど、言葉にしてくれないと、全っ然っ、わからないわぁ?」
「くぅ……!」
煽られて、今度は逆に怒りが浮かぶ。
「怒った? でもそろそろ、下の方も脱いじゃいましょう? あなたのアソコの具合はね、いつスカートが汚れたって、もうおかしくないんだから」
ヴィーヴル女の手によって、スカートの留め具が外される。引っ張り抜かれていくことで、尻とベッドシーツの隙間から、布がだんだん遠ざかる。輪が両足の向こうへ行き、フィアメッタは下着一枚の姿となった。
ショーツのゴムにも指が入って、それはするすると下ろされていく。
ヴィーヴル女の手に渡り、獲った獲物のように掲げられているショーツは、愛液によってぐっしょりと、触れれば糸が引きそうなほどに濡れていた。それどころか、脱がされる際の摩擦でさえも気持ち良く、フィアメッタのアソコはより多くの汁をこぼして、ベッドに染みさえ広げていた。
「凄い香りよ? こんなに興奮しちゃったのね?」
「……そんなの、媚薬のせい」
「あらあら、強がっちゃって。いいのかしら? そんな態度じゃ、イカせてなんてあげないわよぉ?」
「……っ」
フィアメッタは憤りで歯を噛み締め、やはりまた顔を背ける。
「じゃあ、味を確かめてみようかしら」
ヴィーヴル女はフィアメッタの足を持ち上げ、股のあいだに顔を埋め込んできた。アソコに唇を近づけて、ベロベロとワレメを舐め回し、舌を駆使した刺激を送る。唾液をまとったねっとりとした先端にやられての、爪先にかけてまで電流の走る快感に、下半身がまんべんなくビクビクと反応してしまっていた。
「あうぅぅぅぅ……!」
フィアメッタはシーツを鷲掴みに、仰け反るように反応していた。
気持ちいいあまりに背中を浮き上げ、胴体のアーチを成しながら、脚をしきりにモゾモゾと動かしていた。
「あっ、んぅぅ……! んあっ、あぁぁぁ…………!」
もう声を抑えていられない。
上下往復によってワレメをなぞりつつ、クリトリスに舌先を引っかけもしてくる愛撫により、下半身の神経が快楽で弾け飛ぶ。脚が何度も跳ね上がり、無意識のうちに空中へキックを放ち、指をやたらに開閉させる。
「んあっ、んぁっ!」
髪を振り乱していた。
浮かんだ汗で額に髪が貼りついていた。
「あぁぁ……あっ、あ……ま、また………………」
そして、絶頂が近づいての寸止めである。
「ほーら、言ってごらんなさい? どうして欲しいか」
「馬鹿に……しないで……あっ、あぁ…………!」
「どんなに強気でも、ペロっとされたら声が出ちゃう。喋る余裕なんてなくなっちゃう」
「あっ、あぁ……あぁ……あぁぁ…………!」
「もっと感じなさい? もっと喘ぎなさい?」
「あぁぁ…………!」
ワレメへと繰り返される刺激に翻弄され、フィアメッタはもう観念することを考え始めてしまっていた。
だいたい、どうして我慢することがあるだろう。
どうせイカされたからといって、快感を理由にここに居付くことはない。何かの拍子に脱出のチャンスが訪れてきたとして、快楽と脱出を天秤にかけるはずがない。ここで快感に身を任せ、好きなだけイったとしても、それは今この場限りでの話に過ぎないはずだ。
(駄目……自分に、言い訳して…………)
違う、そうじゃない。
合理的にはそうだとしても、誰がこんなところで感じたり、思い通りになってやるものかと意地を張っていたはずである。その意地を自ら捨てるのは、どうしても負けた気分になってしまう。
このヴィーヴル女の勝ち誇った表情も、あえて見たいものではない。
しかし、それでも……。
「あぁぁ…………」
また、寸止めをされていた。
それにより、さらに一層、絶頂への欲は強まっていた。
「ほーら、これで何回目?」
人を弄ぶことが楽しくてたらまらい、興奮しきった顔が目の前に迫ってくる。今まで舌で攻めてきていたために、その口周りは愛液でべったりと汚れていた。自分がいかに濡らされているか、尻の下にまで伝わるシーツの具合でわかっているが、ヴィーヴル女の口元を見ることで、視覚的にも伝わってきた。
「知らないわ……」
「ねえ、ならいいわ。イカせてあげようか?」
「え?」
つい、期待の眼差しを浮かべてしまった。
何度でも寸止めを繰り返し、人を観念させることが目的かと思いきや、不意にそんなことを言ってくるのが意外なあまり、絶頂への期待感を胸に抱いてしまっていた。
うっかり、期待していた。
ヴィーヴル女の思惑通りに。
「なーんてね。まだ、駄目よ」
「くぅ……!」
からかわれた。
しかも、こんなからかい方に惑わされるなど、今のフィアメッタはよほど扱いやすい状態らしい。もっと気を引き締めなければと思ってみても、そんな心構えは次の瞬間に訪れる快楽の波に晒されれば、いとも簡単に瓦解してしまう。
指でワレメをなぞられていた。
「んぁぁ……!」
その指がクリトリスに引っかかることで、大きな喘ぎ声が搾り出されて、フィアメッタは今にもイキそうになっていた。
だが、指は止まる。
決してイカされることはなく、何度でも寸止めは繰り返された。
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