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 ジョリ、ジョリ……。

 それは毛を剃り落とす音だった。
 二人が開脚を行って、アソコに集中的な視線を浴びた後、次に始まったのは剃毛だった。カミソリを用意して、魔法で泡を作って行う剃毛は、全て指輪の手によって進められた。
 指輪が分身を生み出したのだ。
<羞恥の指輪>には次元のポケットがあるらしく、その空間にはあらゆる道具が漂っているという。その中にある道具の一つがカミソリであり、若い人間の男にしか見えないボディである。
 教師でも生徒でもなく、指輪によって剃毛が行われているというのは、分身体を利用してのことなのだ。
 しかも、ポーズは固定されている。
 人の身体を強制操作できる力があるなら、一度取ったポーズそのままに固めることは造作もないわけだった。
「うっ、うぅぅ…………」
 隣でミーシャが苦悶していた。
 制作者とやらが生み出した仮想の存在であり、本当の魔族でも、人間でもない、正真正銘のただの人形であることはわかっている。理屈では物がアソコに近づいているだけなのだが、それが生身の生きた人物にしか見えない以上、他人の顔が性器に迫っていると感じるのが、やはり当然の反応だった。
 だからミーシャは恥じらいの炎を噴き上げ、羞恥熱のあまりに脂汗まで滲ませている。
 刃物が肌に触れていることへの緊張もあるだろう。
(何よ毛を剃るって――)
 それも羞恥プレイの一環であり、契約解除に繋がる試練の一つだそうだが、サーシャにはまったく意味がわからない。人の陰毛を剃って悦ぶ性癖が存在して、制作者にもそれがあったとでもいうのだろうか。
 理解できないことに付き合わされる感覚で、何かが煮えくりかえってくる。
 そして、ミーシャの剃毛が終われば、指輪の男はサーシャの方へ移ってくる。
「やだ……なんなのよ……本当になんなのよ……」
 サーシャへの剃毛が始まった。
 魔法によって泡が現れ、陰毛がその固まりに包み込まれる。カミソリの刃を当てて、それをスライドさせることにより、刃が泡をどかした下の皮膚があらわとなる。生えていた毛がごっそり落とされ、ミリ単位だけを残した部分に改めて刃を滑らせ、より深く剃り落とす。
 それが終わった頃には二人してツルツルに、生まれたてのように一本も生えないアソコに仕上がっていた。
 言うまでもなく、それは全て見られていた。
 指輪の男は告げたのだ。
 一人でも目を逸らしたり、教室を出て行く者がいれば、その際のペナルティは全てサーシャとミーシャに降りかかる。二人を思うのなら、きちんと見届けてやることだと、全員に視姦を強要していた。
 堂々と眺めて楽しむための、いい免罪符を得たと思う生徒もいれば、本当は目を逸らしてやりたいが、そうもいかなくなって心苦しく感じる生徒もいるのだろう。
 そして、そんなクラスメイトの面々に向け、指輪の男は両手を広げて宣言する。

「次はオシッコだ」

 二人の顔に絶望が浮かんだ。
「いま……なんて…………」
 サーシャの声が震えていた。
「嫌……そんなの嫌だ…………」
 ミーシャも同じだけ震えていた。
 剃毛が終わってなお、ポーズを固定するための魔力が解かれていない。アソコを見せびらかしたままにされ、そして行われた宣言を聞いて想像するのは、このまますぐに放尿をさせられて、クラス全員にそれを見られるに違いない展開だ。
 その想像の通りに、早速二人のアソコには魔力が働く。
 すぐさま尿意が強まっていた。
「もちろん、全員で見守るのだ。そうしなければ、二人がこういった目に遭う回数が増えるだけだ」
 今にも我慢の限界を迎え、出てしまいそうな危機感に、サーシャは必死の形相で耐え忍ぶ。自分の表情が一体どれほど滑稽で、前後の状況を考えることなく、そこだけを見れば笑えるかなど、本人には考える余裕がない。
 普段は表情に乏しいミーシャにさえ、我慢のあまりの形相が浮かんでいた。
 二人して、滑稽すぎる顔をしていた。
 その滑稽な表情は、実に真っ赤で湯気さえ立って見えるほどのものだった。

 ジョォォォォォォ……!

 魔法で強まる一方の尿意に対して、我慢など意味を成さずに、あえなく二人の黄色いアーチが放出されていた。
「やぁぁぁぁ……!」
 サーシャが悲鳴を上げた。
「見ないで! 見ないで!」
 ミーシャも叫んだ。
 二人とも、屈辱と恥ずかしさのあまりにパニックめいて、無意識のうちに全身に力を込めていた。ポーズを固定しようとする力に抗って、拘束に逆らってでも放尿を隠そうと、手足が筋力の限りを尽くしていた。
 しかし、それは決して意味を成さない。
 せいぜい、手足がプルプルと震えて見える結果にしかなりはせず、どう足掻いても放尿を隠せない。
 教室の床が汚れていく。
 二人の股から伸びるアーチは、着弾地点で飛沫を広げ、徐々に水溜まりを形成していく。臭気が漂い、それがサーシャやミーシャ自身の鼻孔に流れ込んでいくことで、自分がこんな形で教室を汚していることへの、たまらない汚辱感が広がっていた。
 お漏らしをする年齢など、とっくに通り過ぎているのは言うまでもない。
 幼年期でしかありえない失態を強制的にさせられて、そこにクラス全員の視線が集まってくる感覚は、脳が煮えそうなほどの羞恥熱を催していた。
 ようやく、尿の勢いは弱まっていく。
 アーチが縮み、もう一滴も出なくなった時、二人が抱くのは絶望だった。
 確かに、強制放尿だ。
 しかし、まるで自分自身で失態を犯してしまったような、それを大勢に見られてもう生きていけないかのような気持ちが、二人の胸には広がっているのだった。

     *

 次は何をさせられるのか。
 不安と恐怖に苛まれ、赤面しきった表情を暗くもしている。俯きながら目を瞑り、未だポーズを変えることも許されずにいる二人に向け、指輪の男は大々的に宣言した。

「まだまだポイントの溜まりが悪い! ここは別のクラスの人々も招待しようではないか!」

 二人の顔に絶望が浮かぶ。
「やりすぎなんだぞ!」
 エレオノールもいきり立つ。
「ふむ、しかし私の制作者は、ポイントの獲得率を随分と低く設定している。あれだけ恥じらわせたにも関わらず、契約解除にはまだあと八〇ポイントは必要なのだ」
「まだそんなにいるなんて……どうすればいいのよ……」
 サーシャは戦慄しきっていた。
 いくつものポーズを取り、放尿までして溜まったポイントが二〇ポイントなど、もはや契約解除などさせる気はなく、永遠に呪いに縛り続けようとしている勢いだ。
「反対しても、この二人のためにはならない。もうわかっているはずだ」
「うぅ……」
 エレオノールが押し黙る。
 何かを言いたげにしているファンユニオンも、何も言えずに口を閉ざしているのみだった。
「では全生徒に<思念通信>を行い、サーシャ・ネクロンとミーシャ・ネクロンの置かれた状況を全て伝えよう。この教室では全員は入りきれないが、中継魔法を使えば問題なく見てもらえる」
「嫌……嫌…………」
 そんなことになったらもう終わりだ。
 とても生きていけなくなる。
「二〇ポイントも溜まったなら、クラスのみんなだけでも……!」
 ミーシャがそう反論した。
 そんなことはしなくても、きっとポイントは溜めきれるという意見で、何とか全校生徒に晒されることだけは阻止しようとしていた。
「そうだぞ! クラスだけで十分だぞ!」
 エレオノールがそれに飛びつく。
「そうよ! 私達だけで見守るわ!」
「他のクラスなんて絶対駄目!」
 ファンユニオンも口々に声を上げるが、指輪の男は何ら動じる気配も見せない。
「その意見に対する私の答えは、繰り返しになるが私はネクロン姉妹の味方ではない。制作者の意に沿って、対象となる女を少しでも辱める必要がある。よって、必要・不必要という理由では、このアイディアの撤回はありえない」
 サーシャの中で、ミーシャの中でも、何かが冷え切っていた。
 赤面しきった顔の色は変わらずとも、まるで凍りついたような表情だった。
「では全生徒に<思念通信>を行おう」
 指輪の男が魔力を発揮した瞬間から、校舎内や学校敷地の生徒全てに、サーシャとミーシャの事情や<契約>の内容を全て伝えるものが発信される。複雑な情報が一瞬で、否応無しに受信側の脳に届けられ、全校生徒がものの数秒以内に二人の状況を理解した。
 数分もすれば、教室には他クラスの生徒が現れ始める。
「ま、マジか……」
「今の<思念通信>って、全部本当なのか」
「よし、協力するか」
 ぞろぞろと、見知らぬ顔ぶれが集まっていた。
「やだ……」
「こ、こないで……」
 二人がどれだけ悲痛な表情を浮かべても、学年やクラスの異なる何十人もの面々は、遠慮することなく輪に加わる。クラスメイトの中に混ざり込み、教室の人口密度が一気に高まる。その分だけ視線の数は増えていき、それだけに留まらなかった。
(お高くとまったサーシャ・ネクロンの裸!)
(ミーシャもすっげーエロいことになってるー!)
(すっげー! 魔王配下の裸なんて、二度と拝めねぇだろ!)
 心の声が聞こえてきた。
 やはり<思念通信>を応用した魔法により、読心術で読み取った心の声が二人の脳に届けられ、聞きたくもない声の数々を強制的に聞かされる。
(へへへっ、『協力』してやらないとな)
(だって<契約>をぶち壊すとか無理だしー)
(それだけ凄い指輪ってなら、アノス様いないと無理じゃん?)
(あーあー。アノス様がいる時だったら、こーんなことにはならなかったのにねー?)
 教室に入ってくる顔ぶれは、さも真面目な顔をして、自分は『協力者』であるように振る舞っている。
 理屈では実際にそうなのだ。
 羞恥心をポイントとして換算する仕組み上、視姦する人数が増えれば恥じらいが増し、契約解除に近づくと考えるのは、それ自体はごく自然な発想だ。そのために参加する以上、協力者とは言える。
(裸を拝めてラッキー!)
(お、おっぱいエロ!)
(二人ともスタイルは同じくらいか?)
(双子だけあって、おっぱいも双子かぁ?)
 心の声は下品そのものだった。
 真面目な協力者を装う仮面の下には、ただ異性の裸が見たいだけという、欲望に満ちた顔が隠れているのだ。
「何が協力よ……」
 どうせ裸を見に来ただけだろうと、ここに集まる全ての男を声高に糾弾してやりたい。集まった全ての男に、何かの刑を科してやりたい。
「さあ、集まったところで次の羞恥プレイを始めよう」
 その言葉に身構える。
 一体、何をさせられるのか。どんな仕打ちを受けるのか。サーシャは額に汗を滲ませながら、刑罰の発表でも待つような気持ちになりきっていた。
(一体どんなエロいことするんだろう)
(楽しみだなー!)
(期待してるぞ! 二人とも!)
 聞こえてくる心の声は、全てろくでもないものだった。





 
 
 

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