いよいよ残り二日になった時、二人揃って校庭に立たされていた。
課題の内容はこうである。
校庭をぐるりと一周した後、ロッカーで靴を履き替え、その後は校舎内の徘徊を人通り行っていくものだ。
ちょうど部活もなく、校庭には誰もいない。
人目を気にせず屋外を出歩くわけだが、もちろん裸である。
「と、とうとう外に出ちゃったね? 田中ちゃん」
田中を隣に、唯は改めて顔を真っ赤に染め上げる。
初日の方がもっと恥ずかしくはあったのだが、ここ何日かの裸は全て空き教室の中、現場に立ち会う人間も決まっていた。しかし、人はいないとはいえ、外を出歩く抵抗感はなかなかのものがある。
人目がないといっても、校庭は金網越しに道路と面しているわけで、一般人の視線が絶対にないとも言い切れない。
「とにかく、行こっか。田中ちゃん」
「う、うん……」
二人並んで歩いていった。
課題によって定められたのは、陸上に使うトラックをぐるりと周り、その後は校舎の一階から三階へ上がっていく。廊下を進み、上がったのとは正反対の階段を下りていき、あとはいつもの教室に戻ってゴールである。
当然、撮影陣のカメラが着いて来ており、誤魔化しは効かない。
かくして、二人はトラックを歩いている最中だ。
(なんかヘンタイさんみたいだよね……)
青空の下、校庭で裸。
これだけでも十分におかしいわけだが、格好についても思うところがある。ただの全裸でなく、首にはわざわざリボンを巻き、靴と靴下は履いている。外を歩くのだから、靴は確かに履くのだが、裸なのに靴は履いているアンバランスというべきか。
完全な全裸ではない、装飾品の付いた状態は、何とも変態っぽさを増して思えるのだ。
「ホントにヘンな気分しちゃうよねー」
「そ、そうだよね。まだ全裸登校期間じゃなくて、だから僕達だけ……」
「うんうん。ほんっと、困っちゃうよ」
お喋りで気を紛らわせ、トラックを回りきる。
こうして堂々と歩いていると、歩行動作に伴い乳房がぷるぷると揺れていた。持ち上げた足を地面に突き、その際に走るちょっとした振動が伝わりぷるっとなる。それを延々と繰り返しているために、乳房は小刻みに上下し続ける。
田中がそれを横目でチラチラと気にしてくる。
女の子と一緒に歩いて、照れながらドキドキしているようで、乳房の方もしきりに窺ってきているのだ。
(そりゃ気になっちゃうかー)
もう、手で隠そうとはしていない。
だいぶ晒し慣れてきた。
校庭のコースを歩ききり、校舎内に入ると教員と何度かすれ違う。少し気まずいようでいて、しかしこの学校のことなので、訓練中なのだと教員は理解を示す。声をかけられ、立ち止まる機会は何度かあったが、向けてくるのは普通の目だ。
裸を不思議がる態度が何もない。
ああ、なるほどね――とでもいう風な、わかってくれている顔だけだったのは、さすがにこの学校の先生ということか。
ゴール後は触り合いを行った。
胸やアソコを触らせるのは相変わらず恥ずかしいが、繰り返したおかげか慣れてきた。田中も少しは堂々としてきたもので、唯の手コキも気持ちよさそうにしてくれた。
あとは痴漢対策、暴漢対策などの講習が行われる。
女子が裸で歩く以上、それは当然想定されるべき事態であり、期間中は町中に警備がつくことにはなっている。警察はもちろん、OBによる勇姿で見回りが行われ、安全対策は学校としても行っているが、生徒自身にも身を守る術を教えることになっている。
そんな講習を終え、いよいよ次は最終日だ。
最終日は市内の徘徊だった。
しかも、一人だ。
田中とは別々に、唯一人で通学用の電車に乗り、唯一人で通学路を歩いて学校まで向かっていく。家の方向が違うので、道のりが違うのは当然だが、そもそも各自別々にやらせる内容なのらしい。
撮影の関係があるため、遠巻きの撮影班はいるのだが、訓練目的の兼ね合いで直接後ろを着いて来るわけではない。
何かあった時のため、私服警備がルート状に紛れ込んではいるらしいが、やはり不安は拭いきれない。
(やっばぁ……)
正直、非常に恥ずかしい。
学校の中と違って、外の方が裸を不思議がる視線に満ちている。
何だアイツ、変態か、露出狂か。
そんな疑惑の眼差しもさることながら、今はまだ全裸登校週間の期間には突入していない。トレーニングの名目で唯一人が電車の中を過ごしているのは、必要以上に注目を集めるものだった。
期間中であったなら、唯以外の生徒も裸になる。唯一人だけが注目を集めるわけではない。視線は分散されることだろうが、今ばかりは唯だけに集中する。
まして休日だ。
部活動すら休みの日に、学校生徒そのものが少ない中では余計に目立つ。同じ車両に乗り合わせた誰も彼もが、それぞれの頻度でチラチラと視線を向ける。あるいは堂々と凝視して、好奇心たっぷりに視姦する者もいた。
窓の前でつり革を掴み、スクールバッグを肩に景色を眺める。
努めて気にしないようにはしているが、ヒソヒソとした声まで聞こえて来た。
「あれって何で?」
「期間中じゃないよな?」
「じゃあ、ただの変態?」
「いやいや、訓練中かもよ?」
誰もしもが全裸登校週間を理解したり、内容を把握しているとは限らない。訓練中だろうと推測しつつ、本当にそうなのかを測りかねるヒソヒソ声は、本人達が自分の声量をわかっていないのか、唯の耳にも届いていた。
降車駅に到着すると、ドアが開いた瞬間に、待っていた一般人がぎょっとする。
え? え?
と、困惑しきった顔が広がっている。列を成していた全員が目を丸め、呆気に取られた顔でまじまじと唯のことを見てくる状況は耐えがたい。唯は小走りで下りていき、一刻も早く駅を出たいと改札口へ駆けていく。
駅から学校にかけ、早足で突き進み、やっと到着した頃には安心さえしていた。
全裸には変わりないのに、一般の通行人や乗客のいる中で過ごすのと、全裸登校週間が当たり前にある敷地内に立つのとでは、もはや感覚が違っていた。裸が普通の国でもあって、ようやく国境線の中に入ったようにさえ思っていた。
「アタシ、なんか染まって来ちゃった?」
そうかもしれない。
全裸で過ごすことに慣らされて、だいぶこの学校に染まっているのだ。
*
最後のトレーニングでも、触り合いの実施がある。
「さ、どーぞ! 田中ちゃん!」
「……では、失礼します」
もちろん、お互い裸である。
唯は田中の前で堂々と胸を張り、そして田中も乳房に手を伸ばす。少しばかりのたどたどしさがありながら、最初に比べて随分と慣れてきていた。
神妙な顔で乳房を包み、揉みしだく。
指に強弱をつけ、食い込ませるように捏ねるばかりか、表面をすりすりと撫で回し、乳首を刺激するような真似までする。単に揉むだけではない、バリエーションに満ちた手つきが乳房を攻め、唯はしだいに胸を興奮させていた。
「……た、田中ちゃん?」
「あれ? い、痛かった?」
「いいや、ヘーキかな。なんてゆーか、上手くなったなー。なんて……」
「そう、なんだ」
本人には実感がないらしい。
しかし、田中の指遣いは格段に変わった。指遣いに遠慮がなく、揉み心地をじっくりと味わいつつも、唯に快感を与えてくるのだ。
そればかりではない。
田中の目には、最初の頃にはなかった落ち着きがある。
理性があるのだ。
確かに息は乱れている。目に興奮は浮かんでいる。勃起は言うまでもなく、しかし怖いほどのギラつきはなくなっている。餓えた獣のような荒々しい眼差しがなくなることで、揉まれる方としても不安は薄れ、安心して揉ませていられる。
安心して、というのもおかしいが、暴走して乱暴なことはしてこないだろうとは思えるのだ。
(これって、トレーニングの成果ってカンジ?)
唯は素直に感心していた。
こうやって、異性の前で緊張をし過ぎない、どこか堂々とした男子をこの学校では育てているのだ。
「成長したね! 田中ちゃん!」
「……え?」
「課題だからさ。他にも、好きな場所を触ってね?」
「じゃあ、あの、お尻も」
「いいよ?」
そう返すと、田中は後ろに回り込む。
尻たぶの上に手の平をぺたりと置き、撫で始めていた。
(なんか痴漢? されてるみたい。ちょっと落ち着かないな……)
決して、頼まれれば誰にでも触らせるわけではない。
課題だからという線引きの上で、唯は快く応じている。
田中の手はすりすりと這い回り、尻の感触を丹念に味わい尽くす。やがて指を食い込ませ、捏ねんばかりの手つきで揉みしだくと、今度は正面に回り込む。唯の目の前でしゃがむなり、課題の消化として性器の愛撫を始めていた。
上手かった。
「んっ、んぁ……あぁ…………」
乳房を揉まれ、胸で感じてスイッチが入っていたこともあるのだが、それにしてもワレメへのタッチが上手い。すぐにでも愛液の分泌は始まって、息は乱れてしまっていた。
「痛くはない?」
「ヘーキだよっ、田中ちゃん……よしよし、上手上手……」
唯は頭を撫でてやる。
すると、田中の指遣いは活発に、クリトリスを刺激しながら膣口に挿入する。両手を使って穴と肉芽の二点を攻め、アソコの中にはたちまち快楽が溢れていた。
「あぁ……や、やば……き、気持ちいい……よ……? 田中、ちゃん…………」
快感で脚が震える。
「へ、平気?」
「ヘーキっ……っていうかねっ、ホントに、よくって……あぁ……! 田中ちゃん、今のいいよ……? 今のっ、クリトリスの触り方……あっ、穴の中も、ソコ、ソコがいい……!」
感じるポイントを教え始めてしまっていた。
そうしろという具体的な指示はないのだが、そうすることで田中に自信をつけさせて、一人前にしてやれそうで、気づけばコツを伝えるようなことを口走り、それを吸収した指遣いで余計に気持ち良くなっていた。
「あっ、あっ、あぁ……! いいぃ……いいよぉ…………!」
膣への指の出入りは愛液でスムーズに、そしてクチュクチュと水音も聞こえるようになっている。クリトリスの突起も極限を迎え、ワレメのあいだからでも肉芽が見える。
そして……。
「んぅぅぅぅ………………!」
唯はビクっと震えていた。
ほんの数秒ほどではあるが、体中を痙攣させながら、頭も真っ白にしてしまっていた。その次の瞬間には、だらだらと愛液を垂れ流す。どっと量が増えたため、皮膚の表面を伝って流れ落ち、内股が光の反射で輝いていた。
指を入れていた拳にも、愛液はたっぷりとまぶされていた。
「どうやら絶頂したようですね」
そこで女教師が言う。
「せっかくです。絶頂したばかりの、イキたてホヤホヤのアソコを田中くんによーく見せてあげて下さい」
そんな指示に従って、唯はハァハァと息を乱しながらも机に上がり、寝そべって、M字開脚でアソコを晒す。自ら股に両手をやり、指でワレメを開いてやると、田中は食い入るように中身を見つめてきた。
「どうです? 田中くん」
「……は、はい。愛液の香りが凄くて、だらだらになってます」
(うぅぅ……!)
性的な接触には慣れてはきたが、濡れっぷりを声に出して指摘されると恥ずかしい。
「あ、下の方に滴が流れて、お尻の割れ目に入り込んでますね」
(いやぁぁ……! ハズい! ハズい!)
アソコから出て来る液体なのだ。
オシッコというわけではないが、排泄してしまったものをまじまじ見られ、指摘までされるなど悶絶ものだ。
そして、羞恥の余韻も冷めやまぬうちに、最後の指示が与えられる。
「さあ、手で抜いてあげて下さい」
「……お、オッケー……ははっ、最後だね。田中ちゃん」
力なく苦笑しながら起き上がり、唯は田中の前に膝をつく。肉棒を握り前後にしごき、肩に精液を浴びるまで快感を与えてやった。
*
その後、二人は制服に着替えていた。
もっとも、明日からはこの制服を着ることなく、首にリボンを巻くだけで登下校を行うことになる。
「終わったね。田中ちゃん」
「うん。ありがとう」
「へへっ、こっちこそ」
唯は彼に笑いかけ、校舎を出た後、手を振って別れを告げた。
「明日からガンバローねー!」
ここまで撮影してきた映像は、田中の成長を交えたドラマ仕立てに編集されるのだろう。
もちろん、明日からの全裸登校も収録して、誰もが裸で机に座る授業風景を収めていく。この学校の取り組みを全国に伝え、その意義や歴史を広めるのだ。
仕事はまだ終わっていない。
まだ、ここからが本番だ。
がんばるぞー!
今度は自分自身に言い聞かせ、明日への意気込みを胸に帰路につく。
こうして、全裸登校訓練は終了したのだった。
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