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 丸裸になった羞恥心に飲み込まれる。
 先頭集団の視姦は言うまでもなく、台の周りを囲む兵士からも、尻を眺める視線が来る。カバリヌ兵にとってみれば、自国が倒した国の王族が辱めを受けているのは、自分達の勝利をより深く実感できて、さぞかし面白いことだろう。
(……さあ、脱いだわよ……これでご満足なの?)
 ゼノヴィアは密かに拳を握り締め、握力によって震わせる。
 その時、先ほどの臣下が再び台に上がって来る。

「見ろ! 元マーデン市民よ! これが今のゼノヴィア殿の姿である! 唯一の王族の生き残りにも、我々に逆らうだけの力は残っていない! ここはもはやカバリヌなのだ!」

 高らかな宣言だった。
(くぅ……!)
 自分の裸がマーデンの制圧をより確実な形で知らしめている。
 わかってはいたが、羞恥の上にさらに屈辱が膨らんで、気がどうにかなりそうだ。湧き出る怒りで歯を強く食い縛り、表情をみるみるうちに険しくしていた。
「さあ、見ろ! 目に焼き付けろ! 我らの命に従いストリップショーを行ったその姿を!」
 この場はしばし、鑑賞会となっていた。
 先頭集団がますます目つきをギラつかせ、ヨダレまで垂らした鼻息の荒い獣の顔で、一心不乱になって視姦する。いかに強烈なまでに頭に焼き付け、いつでも思い出せるようにしようとしているか、その熱心さがひしひしと伝わってくる。
(こんな……こんな……!)
 それでも、ゼノヴィアは耐え忍ぶ。
 ストリップの命令に従って、既に十分な効果を発揮してしまったかもしれないが、ここで泣き喚いたりしようものなら、王族の情けない姿によって、より一層のものとなる。せめて気を強く保ち続けて、カバリヌに対する反乱分子に折れない心を見せつけ、奮起させたい願いを胸にしていた。
(そんなもの……いるかも、わからないけど……)
 残党軍に志願するような反乱分子がいるのかどうか、そんな素養のある市民がいたとして、本当に効果を発揮しているかどうか。
 そんなことはわかりはしない。
 ただ、せめてもの努力だけはしたかった。
「プルプルなオッパイがエロいなぁ」
「揉みてー!」
 下品な言葉を投げられようと、こんな先頭集団が国民の全てでないと信じ込み、耐え抜こうとしていた。
「時にゼノヴィア殿」
 カバリヌ臣下の男は言う。
「この後は、町を裸で徘徊して頂く」
「は、裸でって……そんな……このままだなんて…………!」
 ゼノヴィアは衝撃に打ちのめされた。
 ストリップを披露して、裸を大衆に見せびらかせば、それでひとまずの地獄は終わるものと思っていた。済ませてたと思った試練に続きがあると知らされた瞬間の、胸に浮かんだ絶望といったらない。
(お、折れない……耐え抜くわ……絶対……!)
 ゼノヴィアは望むところだと言わんばかりの目つきを浮かべる。
 そうすることで、自分を保とうとしていた。
(負けない、負けないわ)
 その後、ゼノヴィアは台から下ろされ、そして衣服は着せてもらえない。脱いだものは使用人の者に持っていかれて、履いている靴ぐらいしか身につけているものはなくなった。服が遠くへいってしまった心細さは、言い知れないものだった。
 市中を歩かされ、先ほどのように前後には兵士が見張りとして同行する。
 大衆の前に立つより視線の数はマシになったが、好奇心たっぷりの男達がニヤニヤと見に来る様子に恥辱感を煽られる。
 手で隠すことは禁じられていた。
 両腕はきちんと下にして、胸も尻も、アソコも、全ての恥部をきちんと晒しながら歩かなくてはならない。
 当たり前のように視線が絡む。
 好奇心たっぷりの視線が来る。見て見ぬフリをして逆に目を逸らされる。同情や哀れみの目を向けられる。道行く通行人達は思い思いの目つきを浮かべ、ショックを受ける姿や落ち込む様子が見受けられる。
 しかし、百の称賛よりも一の中傷こそが心に染みつくことが人間にはありがちだ。
 王族の扱いに思うところがある様子の市民より、年頃の少女を視姦する男ばかりがゼノヴィアの中で印象付いて、絶えず恥じらい続けている。
 わざわざ駆けつけて来る者までいた。
「いたぜ? な、俺の言った通りだろ?」
「へえ、あれがマーデン王族の娘か」
「かなりの美少女じゃねーか」
「くー! 得したぜ!」
 四人組の青年だった。
 ゼノヴィアが全裸徘徊をするという一大ニュースに、いてもたってもいられずやって来た四人組は、なんと各々の仕事まで投げ出している。
(何が得したよ!)
 ゼノヴィアは歯を食い縛り、顎を震わせる。
 通りがかりの市民が視姦してくるのも辛かったが、こうして駆けつけてまで人の裸を見に来る者がいるなど、その事実に胸を深く抉られるかのようである。
「ちょうどいい。彼らにもっとよく見せてやれ」
 カバリヌ臣下が思いついたように命じてくる。
「なんですって?」
「ほら、あの四人に近づいてやれ。体中をくまなく観察させてやるんだ」
 ニヤニヤと楽しそうに提案を口にしてくる。
 兵士に背中を押され、四人組の前に立たされる。四人組は思わぬ幸運に驚きながら、ゼノヴィアの肢体をまじまじと眺めていた。
「青年達、運が良いな。好きなだけ拝むといい。このことで金品を要求したり、財産をどうこうすることはない。安心して楽しむことだ」
 カバリヌ臣下が告げると、何かを不安がっていた四人は、表情から一片の曇りもなくした嬉しそうな顔で視姦を始める。
「あ、ありがとうございます!」
「この恩は忘れません!」
「まさか、カバリヌの占領でかえって得をするとは」
「マーデン国王の統治は最悪だったからな」
 ゼノヴィアを前にしながら、遠慮のない言葉が出て来たことで痛感する。
(そうだ。評判は悪かったんだ……)
 今は亡くなったマーデン王は、その前の王に比べて市井での評判は悪く、そこで真っ当な統治が始まろうものなら、きっと市民の心はカバリヌの政治へ傾く。そんな可能性を垣間見て、逆転の希望が薄れたようでゼノヴィアは密かな絶望を抱く。
 乳房にぐっと顔が近づいて来る。
 アソコにも顔が迫って来る。
 至近距離から視姦され、その恥ずかしさに表情を覆いに歪める。ストリップもそうだが、こうして近くで視姦されるのも、敗戦でもなければあり得ない。そのあり得ない体験を今まさにしていることで、心の奥に敗北の念が刻まれる。
「ほら、前ばかり見せていないで、尻も見せてやったらどうだ」
(こいつ、調子に乗って……!)
「さあ見せてやれ、ゼノヴィア殿」
 ゼノヴィアが振り向くと、当然のように尻に四人の視線は殺到する。皮膚の表面に見えない何かが細かく這い回り、それでムズムズするかのような、視線の感触で肌が震える。
(やだ……そんなにジロジロと……)
 恥ずかしさだけではない。
 カバリヌ臣下の調子付いた様に怒りが湧くのはもちろんだが、それに加えて市民が遠慮なく視姦してくることへの悲しみがある。前の政治がいかに支持されていなかったか、こんな形で身を以て味わっている。
「十秒だ」
 カバリヌ臣下は言う。
「一人十秒。欲望に駆られ、狼藉に走れば罪人と見做して捕らえることになる。十秒を守れるのなら、触ってもよいぞ?」
「なっ、な……! な……!」
 動揺するのはゼノヴィアだけではない。
 触っても良いチャンスを得て、四人組にあるのは嬉し混じりの動揺だ。本当にそんなことをしてもいいのか、金も何も払っていないのに、お得な体験をしてもいいのか。嬉しい驚きに胸をときめかせ、四人組はしきりに頷く。
 そして、順番に触り始めた。
(うっ、嫌だ……こんなの…………)
 耐えがたい屈辱だった。
 婚姻や子作りについて考えたことはあっても、こんな思いもしない形で体を触られるのは想像もしたことがない。恥辱感が一気に膨らみ、顔中が激しく歪む。耐え難さのあまり、ゼノヴィアは唇を噛み締めていた。
 尻に触れてくる手の平は、十秒という時間を惜しみなく楽しむため、執拗なまでに這い回る。短いあいだに存分に味わって、時間が来れば名残惜しい気持ちをたっぷりと感じさせながら離れていき、交代で二人目の手に触れられる。
 二人目には左右の尻たぶを両方掴まれ、なんと割れ目を開かれた。
(――いっ、いやぁぁぁぁぁ!)
 頭から火柱が上がる勢いだった。
 二本の親指でぐいっと開かれ、その内側にある皺の窄まりを覗かれて、その恥ずかしさといったらない。胸を見られたり、裸で歩く以上の羞恥と屈辱が途方もなく膨らんで、頭が破裂するかのようだった。
 三人目にも、四人目にも、存分に揉みしだいた上で割れ目を開かれ、肛門を覗き込まれた。
「ほら、お前は見てなかったろ?」
 などと、幸せを分かち合うようにして、四人目に至っては一人目にも見せてやっていた。最後の瞬間だけは二人分の視線を一度に浴びせられ、肛門を熱い目つきに焼き尽くされた。



 
 
 

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