前の話 目次




 この店にいた人間と、店員も含め、十人近くが外界から隔離されている。
 防護スーツの男が見張りに立ち、許可のない人間の出入りは封じられていた。
 最初のうちはまだ良かった。
 良くはないのだが、十人はいる中で女の子は聡美一人ということで、男達は距離を取ってくれていた。レジの裏側に隠れるように勧めてくれ、その厚意に感謝の言葉を告げながら、聡美はありがたく身を潜めていた。
 ここなら、誰からの視線も浴びない。
 毛布で男の群れに取り残される不安は大きいが、この状況としては最大限に落ち着ける状況を手にできた。
 不幸中の幸いという意味で、最初のうちは良かったのだ。
 だが、時間が経つにつれてである。

「あー畜生!」

 タトゥーの男が苛立ち始めていた。
(やだ……)
 聡美はそれを直接見て確認はしていない。
 ただ、あからさまに声を荒げ、物に八つ当たりをする乱暴な物音は、あの強面の男しかいない。
 床を蹴る。声を荒げる。
 そのたびにビクっと肩を弾ませる聡美だったが、その時はまだそれだけで済んでいた。
 しかし、何時間経っても解放されない。

「いってぇいつになるんだ? 糞が! 女と約束があんのによォ!」

 床を強く踏み鳴らす足音で、ずかずかと突き進む気配がわかる。
「おい! いつまでかかってんだ! いい加減ぶっ飛ばすぞ!」
 タトゥーの男は店の外に顔を出し、どうやら見張りの男に絡んでいるらしい。その揉めている声が届いてくる。
(そ、そうだ……あの人が怒鳴ったおかげで解放の時間が早まってくれたり、なんて……)
 淡い期待を抱き、頼もしさを感じようとしてみることで、恐怖を誤魔化そうとしてみていた。
 そんな誤魔化しも、いつまでも続くものではない。
 結局、揉めても駄目と引き返し、店内で苛立ちを振り撒き続ける。もっぱら床を蹴ったり、やたらに踏み鳴らすことが多く、商品棚に蹴りを入れることは少なかったが、それもしだいに変わっていき、店員が店の備品を傷つけないように懇願する事態にまで発展した。
 それでも、まだ解放されない。
 日が沈み、外が暗くなってもなお解放されない。
 途中で一度は静かになり、恐る恐る様子を見てみると、タトゥーの男は眠ることでどうにか時間を過ごそうとしていた。
 あのまま彼が大人しいうちに、どうにか解放の時間は来てくれないものかと期待してみるも、本当にいつまでも隔離は続いた。
 とうとう、夜の二十時を過ぎる。
 いつもなら、とっくに夕食を食べている時間でも、まだ帰らせてもらえない。
 二十二時を過ぎる。二十四時を過ぎる。
 やがて深夜になってなお、まだ外には見張りがいて、解放の時は来ない。

「あー! 我慢ならねぇ! 結局女も抱けはしねぇ!」

 今まで静かになっていたタトゥーの男は、急に思い出したように怒鳴った後、ずかずかと大きな足音を立てながら、レジの方へと――聡美の方へと迫って来た。
(え? やだ! 何!? 来ないで!)
 心から祈る。
「あの、ちょっとそっちは……」
「ほら、女の子だから……」
 周りの男性が小さな声で、いかにも腰が引けながら、恐る恐ると声をかけては止めようとしてみるも、タトゥーの男は止まる様子を見せもしない。

「おい」

 レジの裏側に回り込み、声をかけてくる。
 顔を上げれば、そこには獲物を前にヨダレを垂らした獰猛な笑みがあるのだった。

     *

「やれ」
 赤夏聡美の眼前には、獰猛なペニスが突きつけられていた。
 止める者は誰もいない。
 このタトゥーの男の行動に、さすがに何人かの男が立ち上がり、説得にやって来てはいたのだが、それに対するタトゥーの男の答えは暴力だった。「うるせぇ!」と怒鳴って殴り飛ばし、店内には戦慄が走ったのだ。
 しかも、その直後にこう言った。
「言っとくが俺は人殺してムショに入ってた男だ! テメェらに怪我さすくらい、躊躇ったりしねーぜ?」
 前科持ちをアピールする言葉の真偽はわからない。
 だが、暴力に躊躇がないことは、実際に行動で示している。そこに犯罪者がいる恐怖には変わりがない。誰一人として聡美を助ける者はいなくなり、黙って見守るしかない暗いムードが出来上がっていた。
 そして、タトゥーの男は力尽くで毛布を奪って投げ捨てた。
 聡美は丸裸で座り込み、その前に仁王立ちしたタトゥーの男は、ペニスを突きつけることで奉仕を要求するのであった。
「お、お願いします……やめて下さい…………」
 精一杯の声を振り絞った。
「ああ?」
「お願い……します…………」
 恐ろしい暴力魔を前にして、聡美にできる抵抗など何もない。
 たったこれだけで、もう限界だった。
 次の瞬間には、逆らった罰として殴られるのではという恐怖が込み上げ、こんな余計な言葉を吐いてしまった後悔の念すら湧いてくる。
「あんまし可愛い子を殴りたくはねーんだけどなぁ? 言うこと聞かねーと、代わりに他の奴でもぶっ飛ばそうかなぁ?」
 店内の空気がより一層の恐怖で張り詰めた。
 この男ならやりかねない。
「いいからとっとと咥えろや!」
 怒鳴られて、身が竦む。
「は、はい……」
 涙がこぼれた。
 頬に涙の筋を伸ばし、顎に滴を溜め込みながら、もはや逆らえずに唇を近づける。震えきった口を亀頭に付け、こんな形で男性器と接触してしまった無念で悲しみがいっぱいに溢れてくる。
 ぺろり、ぺろりと先端を舐めた。
「よーし、いいぜ? ま、文句なら機関の連中にでも言えや。こう見えても、俺は今まで我慢してたんだからなぁ?  だがもう限界ってもんだ。お前らだってわかるだろう?」
 大仰に腕を広げ、他の面々へと語り聞かせる。
「こんな時間まで放っておいて、男女も分けねーで一緒にしておく方が悪い。そうだろ? 機関が悪いんだよ機関が。俺が悪いわけないだろ?」
 タトゥーの男が唱えるのは、自分本位の意見に他ならないが、聡美だけを別の空間に分けておくような対応があれば、実際にこんなことは起きていない。
「ま、よろしく頼むぜ? どーせ、まだまだ時間は長いんだろうしなぁ?」
 その言葉で聡美は悟った。
 彼は機関の対応にもう期待していない。迅速に調べを済ませ、最速で隔離状態を解除する気がないのだと、切り捨てて考えている。行政がそんなものだから、ならば自分も好きにやってやろうというのが彼の在り方だ。
 その矛先は自分に向き、聡美は今まさに性的被害に遭っている。
(最悪っ、最悪……! なんで? なんでなの!?)
 聡美は泣きながら奉仕していた。
 性への好奇心は人並みにあり、自慰行為の経験もありはしたが、こんな形など望むはずもない。初めて異性に裸を見せるのも、奉仕をする相手も、全て雄一だと思っていた。
(それなのに……)
 聡美は竿を頬張る。
 怒鳴られることが怖いからだ。人を平気で殴る人物を怒らせて、自分にも暴力を向けられる可能性が怖いのだ。怒りを買わないためだけに、聡美は涙を流しながら奉仕に励み、慣れないフェラチオで一生懸命にタトゥーの男に快感を与えようとしていた。
 自分の奉仕がどれほど相手を気持ち良くしているかなど、聡美には想像もつかない。
 ただ、口内を肉棒の太さに占領される息苦しさと、好きでもない男と濃密な接触を行う時間にさえ耐えていれば、いつかは射精するはずだと信じていた。
「あむぅ……はずっ、じゅずぅぅ…………」
 こんな奉仕からは早く解放されたい。
 一度でも射精すれば満足してくれはしないかと、薄らとした願望を胸に頭を前後させていると、タトゥーの男は満足そうに目を細め、聡美のことを見下ろしてくる。
「いいぜぇ? その素人っぽさ。ははっ、処女か? こいつはいい」
 タトゥーの男の舌なめずりに、聡美はこの男が挿入までしてくるだろうと確信して、それだけは何としてもと懇願した。
「お願いします…………」
「あん?」
「どうか……それだけは…………」
「処女だけは勘弁しろってか? どうしよっかなー」
 ニヤニヤと楽しげにするタトゥーの男に、聡美はより必死になった。
「お願いします! 初めてなんです! 彼氏がいるから、だから……!」
「おうおう彼氏ねぇ? ま、いいぜ? 頑張りしだいでは奉仕だけで許してやるよ」
「やります! やりますから!」
 聡美は許しを得ようと懸命に励み始めた。
「じゅじゅぅ……じゅっ、ずむぅぅっ、じゅずりゅぅ――――」
 コツも何もわからない。
 ただ、処女だけは守りたい一心だけで、がむしゃらなまでに頭を振り乱す。激しく前後するあまり、二本の三つ編みが肩で揺れる。
(お願い……お願い……!)
 力も何もかも向こうが上だ。
 誰の助けもない中で、せめてフェラチオだけで済ませることだけが唯一の希望であった。
 しかし、ふとした瞬間に頭を掴まれ、指が食い込むような痛いほどの握力に、聡美は奉仕を強制的に中断させられる。
「立て」
 命じられ、立ち上がる。
 手で隠せば怒鳴られると思い、怯えから両手はだらりと落としている。
「はーん? ま、悪くねぇ体だなぁ?」
 品定めのように視姦して評価を下し、タトゥーの男は聡美の腕を掴み引っ張る。
「いや……!」
 力尽くで引っ張られ、聡美は悲鳴を上げた。
「嫌じゃねぇ! 来いよ! いつまでも隠れてんじゃねぇ!」
 怒声を浴びせられた。
 そして、力尽くに対して反射的に抵抗してしまい、後ろに逃げようとする聡美のことを、それでも人前に引きずり出す。男達の前に突き出され、一気に視線が集まって、この人数に裸を見られる恥ずかしさに顔が改めて真っ赤になる。
「せっかくだ! みんなで楽しもうぜぇ?」
「みんなって……」
 聡美の声は震えていた。
 急な提案を前にして、男達はぎょっとした顔をしていたが、その誰もがタトゥーの男に逆らう勇気を持っていない。
(助けて…………)
 聡美は皆に懇願の目を向けていた。
 唇だけを動かして、助けを求めていた。
 だが、そんな聡美と目が合うと、誰もが顔を背けてしまう。一人だけ立ち上がろうとする気配を見せ、一瞬だけ期待を寄せるが、やはり勇気が出せずに座り込む。
「君、みんなでって……」
 唯一上がって来た声も、本当に恐る恐るのものだった。
「みんな退屈だろ? お、そこのお前! お前だよお前! さっき俺に殴られたろ? 悪かったなぁ? こいつが代わりに誠意を見せてくれるぜ? お前もしゃぶってもらったらどうだ?」
 頬にアザのある青年がいた。
「で、でも、そんな無理に……」
「あん? 俺の優しい提案に文句あるってか?」
「そういうわけじゃ……」
「は! だったら、素直にやってもらえよ! なあ? 兄ちゃん。さっさと立てや!」
 タトゥーの男に命じられ、青年はたどたどしく立ち上がる。
 その青年に向かって背中を叩かれ、前に出させられた聡美は、悲しみと絶望に満ちた目を浮かべ、静かに目の前にしゃがみ込む。
「…………ごめん」
 小声で謝ってくる。
 それはタトゥーの男には逆らえないという意思表示に違いなかった。
「はじゅぅ……ずじゅぅ…………」
 聡美は名も知らぬ青年の逸物を咥えた。
 この一人だけは済まない。
「オラオラそいつの次は誰だぁ? 並べ並べぇ! おい、並べっつってんだろうが!」
 きっと憂さ晴らしなのだ。
 床や棚を蹴るだけの八つ当たりでは足りなくなり、もう他の誰かを傷つけることでしか、自分の中に沸き立つものを発散できない。その矛先が自分に向いたのだと、聡美は理不尽に対してひたすら悲しみばかりを抱いていた。
 誰もタトゥーの男には逆らわない。
「し、仕方ない……ね……」
「そうだ。仕方ないんだ」
 さすがにまずい、助けるべきだといった気概など、最初のうちに殺されている。タトゥーの男に逆らってはならない空気感が充満した結果、今度は逆らえないのだから仕方がないような、言い訳めいた空気が形成される。
 言われるままに列まで作り、聡美はその全てを咥えなくてはならなくなった。
 隔離時間さえ終了すれば、きっとこの地獄からは解放される。
 もはやそれだけが希望であったが、その時間さえもやっては来ない。青年が射精すると、タトゥーの男によって飲むように強要され、青臭いものを喉に通した。次の中年の逸物も咥え、その次の三十代ほどのものも咥え、一人一人の精液をその都度飲み干す。
 舌には青臭い味が残って、こんなにも多くの男に口や胃袋を怪我された嫌悪感に、腹の中身を掻き毟り、全て掻き出せたらどんなに良いかと切実な願望さえ抱いていた。
 そして、全員へのフェラチオが終わった時だ。

「さーて、そろそろ頂きますか」

 その言葉に聡美は戦慄した。
「そんな……私ちゃんと……!」
「ああ? 知るかよ。誰も処女は取らねーなんて約束はしてねーぜ?」
「お願いします! それだけは! だ、誰か……」
 せめて、たったそれだけでいいからやめて欲しい。阻止して欲しい。必死の眼差しで訴えるも、タトゥーの男は言うまでもなく、他の目の合った周囲の男達も、残らず聡美から目を背ける。
「観念しな」
 タトゥーの男が迫って来た。
「嫌……嫌ぁ…………!」
 聡美は立ち上がり、たまらず逃げ出す。
 ここで犯されるくらいなら、裸で外に出た方がマシとばかりに出口へ駆け、そうすることで今更になって気がついた。
 そうだ、見張りの防護スーツが立っている。
 公的機関の人間なら、きっとすぐにでも警察を……。
 僅かな希望に縋り付こうとドアノブに手を伸ばし、しかしその手は届かなかった。
「オラ! 逃げてんじゃねぇ!」
 追いつかれ、腕を掴まれ引っ張られる。
 力尽くで引き戻され、あとは犯されるだけだった。
「いや! やめて! 助けて!」
 聡美は必死に叫ぶ。
 タトゥーの男はそれを強引に押し倒し、脚を開かせ、今にも挿入しようとする。誰も助けに動くことはなく、ただ戦慄の眼差しで見守っていた。
「やめて! やめて!」
 聡美は必死に手で押し退け、覆い被さる相手を押し返そうとしているが、少女のやわな腕力では屈強な男には歯が立たない。
「いつまでも暴れんじゃねぇ!」
 次の瞬間、ビンタをされた。
 頬に痺れが走った時、これ以上抵抗すれば、今度は拳が振り下ろされるかもしれない恐怖に囚われて、もう暴れることはできなくなった。
 すっかり大人しくなり、脚を開こうとしてくる力にも無抵抗だ。
 逆らえば何発殴られるか。
 怖くて怖くて、ただ固まり、ワレメにペニスが迫った時には、震えながら身構えることしか出来なくなっていた。
(こんなの……あんまりだよ…………)
 生まれて初めての挿入により、ワレメは大きく割り開かれ、処女膜を破る痛みと共に避妊具もない肉棒は収まっていた。
「うぅ……んぐぅぅ………………」
 破瓜の出血を伴う痛みと、太さによって穴を無理に拡張される苦しさに聡美は呻く。
「へへっ、いい穴じゃねぇか」
 タトゥーの男は嬉々として腰を振り始めた。
「あぁ……! あぐっ、んぅぅ……! んぐぁっ、あっ、いやぁ…………!」
 そこに快楽はなかった。
 強姦される恐怖と、痛みと苦しみとで精一杯で、どこにも快感は生じていない。指の一本や二本を入れた経験がせいぜいの、大して磨き込まれていない膣口は、初めての肉棒に苦悶する一方で、聡美はもったら苦しさから喘いでいた。
「あっ、あぐぅ…………! い、痛いです! 痛いです!」
 そう訴えることで許してもらうことを期待して、しかしタトゥーの男は関係無くピストンを繰り返す。
「知るかよ! こっちは溜まってんだ!」
 緩めるどころか活発に腰を振り、乳房まで乱暴に揉みしだく。
「あぁ……やっ、やめて! 無理、もう無理です!」
「うるせぇんだよ。こっちは気持ちいいんだ」
 タトゥーの男に気遣いの意思はない。
 自分の快楽だけを求め、聡美の訴えなど心には届いていない。
「おら、出すぜ?」
 タトゥーの男はそこで引き抜き、射精した。
 何の気遣いもない彼だ。まさか避妊を意識して、ゴムがないからせめて外に出したのかといったら、そんなことは一切ない。ただ身体にかけてみたいと思ったから、たまたま外に射精しただけの話であった。
「で? 次は誰がやるよ」
 彼はまだ満足していない。
 自分の気晴らしのためだけに、一人の少女をとことんいじめ抜こうとしていた。

     *

「うぅ……うぅぅ…………」
 四つん這いとなった聡美は涙をこぼし、床に三つ編みを垂らしながら、バック挿入で突かれている。
 青年が腰を振っていた。
(しょうがないだろ……逆らえるわけないし、喧嘩なんて出来ないし……)
 自分に言い訳をして、仕方がないことだと言い聞かせながら、その両手で腰を掴んで、何の罪もない少女を犯している。どんなに罪悪感があろうと、生挿入の肉棒はたまらない快感に包まれて、もうピストンが止まらない。
「うぅ……うぐぅ…………」
 痛みに呻き、泣きながらの喘ぎ声から、少女が決して感じてなどいないことは伝わっていた。
 だが、青年は構わず動いてしまう。
 やがて射精感が溢れた時、白く丸っこい尻を白濁で穢し、次の順番待ちに少女を譲る。
 そして、次に挿入を行う中年も、タトゥーの男に逆らえるわけがないことへの言い訳を心に抱え、罪の意識を忘れようとしながら押し込んだ。バック挿入の体位をそのまま引き継ぎ、ピストンを始めると、もう欲望に飲み込まれ、罪悪感など忘れて射精感を高めることだけに夢中になった。
 次の男も、その次の男もそうだった。
 正義感を発揮する勇気はなく、自分の順番が回った途端に理性は崩れ、目の前に裸に欲望を優先してしまう。快感を味わう言い訳のため、心の中でしきりに唱える。仕方がない、逆らえるわけがないといった感情を必死に強め、自分の行動を正当化している。
 尻が何度も穢された。
 最初の青年がかけた精液が乾き始めて、皮膚の表面がカピカピとなる頃に、新しく白濁が上乗せされる。それがまた乾き始める頃、次の精液が振りまかれる。
 一周では終わらなかった。
 聡美の膣にかける負担など考えず、何周もかけて回し続けて、体位は正常位へと変わっていた。腹や胸が執拗に穢され続け、もう何十回分もの精液が皮膚の表面で乾燥している。
 地獄が続くにつれ、聡美の眼差しは虚ろとなり、ついには心の死んだ表情となっていく。
「ははっ、あとは俺一人で楽しむからな。テメェら、離れろ」
 そして、タトゥーの男が独占して、執拗な中出しを行った。
 聡美が妊娠しようとするまいと、どうでも良いことだと彼は考えているのだった。

     *

 そのニュースを知り、高橋雄一は呆然としていた。
 あの店が隔離状態にあり、そこに聡美が居合わせていたことはわかっている。思わぬ事態に驚いているであろう聡美を慰めるべく、何か差し入れなりメッセージでも送ろうかと、見張りの男に掛け合っても、そういった対応は出来ないと拒否されて、結局は何もせずに帰ったのだ。
 それを知った時の後悔といったらない。

 集団レイプ事件が発生したのだ。

 ニュースによれば、機関のずさんな対応により、男だらけの空間に少女を一人残しておいたことから発生した事件とされている。長時間にわたる隔離に耐えきれず、やがて不満を解消しようと、その場に居合わせて少女で憂さ晴らしを始めたというのが事件の全容だ。
 報道の中ではタトゥーの男が実名報道され、前科持ちであることも明らかされていた。
 誰も止める者はいなかったのかという疑問は当然出るが、犯人達の供述によれば、怒鳴り声や暴力を上げる男が怖くて逆らえず、みんなで犯せという言葉に従って、集団レイプを行ったのだという。
「ふざけるなよ…………」
 何が怖くて逆らえないだ。
 そのせいで、聡美は…………。
 腹立たしい気持ちは当然ながら、あの時もっと食い下がり、何なら自分も一緒に隔離しろとでも申し出ていれば、もっと守ってやれたのではないか。聡美のために出来ることは、本当は何かあったのではないか。
 過ぎたことをどんなに後悔しても、起きてしまった出来事を無しには出来ない。
 だからこそ、悔やんでも悔やみ切れない。
 その後、犯人達に対する批難はもちろんのこと、機関のやり方にも世間からのバッシングが飛び交った。女の子を特別な空間に確保して、きちんと守るべきだったような声が上がった。あるいは警察官をその場に置き、未然に防ぐべきだったような声が上がった。
 それを実現できるか否かは関係無い。
 義憤に駆られた外野の声は、思い思いの言葉で機関を詰り、思いつく案を投げつける。
 もっとも、その中に雄一はいない。

 支えないと、駄目だよな……。

 自分の恋人が、その肉体が名前すら知らない他の男に奪われて、穢された悔しさで胸がいっぱいになってたまらない。
 だが、自分が無念を抱く以上に、聡美自身はもっと傷ついているはずなのだ。
 自分に何ができるのか、どんな言葉をかけるべきなのか。
 まるで想像はつかないが、彼氏である自分が支えないわけにはいかない。
 その使命感を胸に、雄一は聡美に連絡を取る。
(頼む……元気になってくれ……)
 立ち直ってもらうことだけが、とにかく今の目標だった。



 
 
 

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