前編後編


 ロドスからの任務により、とある男を捜し出すため、サリアは町を徘徊していた。
 サリアに与えられているのは、捜索対象である男の名前、年齢、表向きの職業と顔写真だ。闇雲に探しても見つからない。出歩く際は偶然の目撃を期待して、常に周囲の顔を窺うが、やはり重要なのは足を使った聞き込みだ。
 特に情報屋がいれば、有用なものを得られる可能性は跳ね上がる。
 サリアはまず情報屋を見つけ出し、金銭のやり取りから知るべきことを聞き出すが、一人だけの情報屋では手がかりが不足する。別の情報屋、また別の情報屋、といった具合に人から人を渡っていき、広い町のどの区域を探せば良いか、少しずつ絞り込む。
 サリアが徘徊している今この場所は、そうやって範囲を絞った有力ポイントだ。サリアが握る情報には、数週間前や数ヶ月前の目撃談もあり、少なくとも半年近くはこの付近に滞在していることがわかっている。
 生活圏の徘徊を繰り返せば、偶然の目撃しての発見も現実味を増す。
 しかし、未だ対象を発見できていない。
(警戒されたか?)
 任務内容はロドスへのスカウト、相手の警戒を嫌って単独行動となっている。
 とはいえ、相手はそんなことは知らないのだ。自分に危害を加えうる人物に狙われ、追い回されていると誤解してもおかしくない。露骨な聞き込み調査でこちらの同行を察知され、身を潜められてしまっている可能性はある。
(となれば、接触は困難。何とか敵意がないことを伝え、向こうから出て来てもらえる算段を立てた方が良いだろうか)
 頭の中で作戦を浮かべてみるが、それとて罠として警戒される恐れがあるだろう。
(結局は潜伏先さえわかれば、踏み込んでしまうのが手っ取り早い。雇う際の待遇はロドスが決めることだ)
 いずれにせよ、動かずして見つかるものではない。
 これ以上は情報屋の当てもなく、今のところは偶然の目撃に期待して、サリアは時間帯を変えながら徘徊を繰り返す。早朝、日中、夕方、夜間。相手の生活行動に一致した場所と時間に踏み込めれば、偶発的な発見はあり得てくる。

 今日は夜の徘徊。

 町の明かりが夜を照らし、賑やかな繁華街に雑踏が行き交う中で、サリアは周囲の顔ぶれに注意しながら突き進む。足のふらつく酔っ払いも歩く中、下手をすればいつ誰と肩がぶつかってもおかしくない混雑具合では、やはり特定の人物の目撃はしにくいか。
 いいや、場所を絞り込んでいる以上、それでも多少の確率はある。
(もっとも、本当はまだ情報が欲しい)
 徘徊を開始してから数分かけ、飲食店のずらりと並ぶ道を進んでいる。
(せめてのんびり構える余裕があればいいのだが)
 実のところ、サリアは焦っていた。
 というのも、多数の情報屋を回っていた際、対象が町を出る可能性について語る者がいた。おまけに警戒されている可能性まであっては、急がねば任務失敗として報告せざるを得なくなる。
 その時だった。

「おい」

 それは雑踏を掻い潜り、サリアの後ろ姿を追いかけてきた人物からの、背後からの声だった。
「誰だ?」
 サリアは立ち止まり、振り向くことなく言葉だけを後ろに返す。
「情報屋だ。しかも、今なら仲介屋になる可能性もある」
「仲介だと?」
「アンタの探している対象、あっちもアンタの動きに気づいていてね。アンタの目的を知りたがっている」
「つまり、居場所を知っているな?」
「金額交渉がしたい。ついてきてくれ」
「いいだろう」
 相手の思い通りの場所に誘い出されて、みすみす一人で行くことに、内心では警戒していた。これが罠であり、行ってみた先で敵に囲まれる可能性は十分あると、心は戦闘に備えつつ、サリアは男の後ろについていく。
 ビルとビルの隙間にある小さな道へ入っていき、何度か曲がる。
 小さな路地を少し歩いただけで、もう周囲に人などいなくなり、ただ賑やかな気配が遠くから伝わるのみとなる。
(敵の気配などは、なさそうか。だとしたら、順調に任務を進められるか)
 サリアは男の顔を見据えた。
「アンタ、サリアってんだろ?」
「そうだ」
「アンタの目的しだいでは仲介できる。少なくとも、危害を加える意図さえなければな」
(なるほど)
 つまりこの男は、サリアが危険人物である可能性を想定している。もしもサリアの目的が対象の抹殺で、おまけに手段も選ばなければ、目の前の男を拷問して場所を聞き出し、奇襲をかければいい。
 強行手段に出たとしても、逃げ切るなり、戦い抜くなり、どうにかできる自信を持った男というわけだ。
「危害は加えない。私はロドスの任務で目標を捜索している。目的はスカウト。雇用後の待遇はロドスと直接話し合ってもらうことになるがな」
「待遇はアンタの一存では決まらないと」
「そういうことだ」
「ま、いいだろう。しかし、彼は必ずしもロドスに雇ってもらう必要がない。生活は十分安定しているんでね」
「はっきり言え。金を出さなければ、情報も出さないし仲介もしないのだろう?」
「話が早くて助かるが、俺が要求したいのは実は金じゃなくてね」
「なら何だ? 物か? 情報か?」
「体さ」
 聞くにサリアは眉を顰めた。
「よく聞こえなかったな。もう一度言ってもらおうか」
「うん? 俺の答えは変わらんぞ? 俺はアンタの体が欲しい」
「正気で言っているのだろうな?」
 名前すら知らない男になど、好きで体を明け渡す趣味はない。娼婦として生きた覚えのないサリアには、当然のようにあって然るべき抵抗感があった。
「正気も正気。ま、サービスで一つだけ無料で教えてやるが、彼は日付が変わりしだい町を出る」
「……ほんの数時間後か」
 対象が町を出る可能性については、他の情報屋からも掴んでいる。
 でまかせではないだろう。
「情報は鮮度が命だぜ? 特に定期的に拠点を変える奴の居場所なんて、真実の情報が時間によって虚偽に変わる」
「相場よりも多く払う。金で話せ」
 サリアは実に冷ややかな視線を送っていた。
 道ばたを這う虫を見下し、いっそ踏み殺してやろうかとさえ思っているような、まともな人間に向ける種類の目ではなかった。
「生憎だが、今日の俺は金に興味がなくってな」
「欲しい品物もないか」
「品物ねぇ? そりゃアンタの肉体だ」
「金に何らかの物資を付けよう」
「いいのか? こんな押し問答をいつまでもしていて。もう一つサービスすると、今夜の彼は拠点には帰らない。飯を食い、どこぞで遊び、そうやって時間おきに居場所を変える。今現在の居場所だって、すぐに情報は古くなる」
「それを仲介してくれるんだろう?」
「俺なりの仲介方法では、その時の彼の居場所を教えた上、アンタがそこへ向かったことを彼に伝えるっていうやり方だ。彼がアンタに会いたがってくれれば、逃げずに大人しく待つだろうさ」
「お前はその行動内容を把握していると?」
「大まかにはな。この場所からだんだん遠くへ移動して、下手すりゃ追いつけずに終わる可能性もある」
「確かに時間はないな」
 サリアは表情を変えることなく、怒りを表に出さずに奥歯だけを噛み締める。
「どうする? サリアさん」
 迷いはあった。
 任務のためにそこまでするのか。体を明け渡すほどの価値がこの任務にはあるのか。意地を張って自力で探してみせるか。
 いくつもの計算が浮かび上がって、サリアはそれらを心の天秤にかけていた。

「いいだろう。ただし、敏感な部分には触るな。クリトリスは感じやすいのでな」

 毅然とした顔で言ってのけ、サリアは交渉に応じていた。
「なら、早速だが触らせてもらおう」
「なに? ここでか?」
「早い方がいいだろう? 急に彼の気が変わって、町からの出発時間が早まらないとも限らないんだ」
 男は早速のように胸を揉む。
「……ちっ」
 衣服の上から手を置かれ、揉みしだかれるが、同意した以上は何も言わない。任務遂行のために身を捧げ、目標の人物を仲介してもらうまでである。
「なかなかだな。これを脱がせたら、一体どれほどのものが出て来るか、今から楽しみになってくる」
「ふん。黙ってできないのか」
 サリアは不快そうに目を細める。
 身に纏った衣服には、ちょうど二つの乳房に重ねるように、ベルトが「×」の形を成している。そんな固い素材の上から揉みながらも、男は確かな感力を指に捉え、その大きさや直に触れた場合の感触をありありとイメージする。
「多少はトークを交えるのも楽しみの一つでね。ところでクリトリスは嫌なんだな?」
 男は下へ手をやって、スカートの上から脚をまさぐる。少しばかり太ももを撫でたところで内股に指を入れ、スカート越しに性器を狙う。
「私には楽しむ意思がないということだ」
「なるほど? しかし、多少は感じてみせた方が、俺の口も軽くなるとは思わないか?」
「馬鹿馬鹿しい。私は金の代わりになるものを支払っている。お前は黙って粛々と受け取っていればいいんだ」
 無駄口を叩いていないで、さっさと楽しむだけ楽しんで、それから情報を差し出せというのが、今のサリアが抱く感情の全てである。
「このスカート、上げてくれないか?」
「ふん」
 サリアは鼻を鳴らし、黙ってスカートを持ち上げる。丈の長さを巻き取るように、丸めるようにたくし上げ、壁に背中を預けながら穿いている下着を公開する。
 押し問答は時間の無駄だ。
「黒か」
 男は興味深そうにしゃがみ込み、ショーツに視線の高さを合わせてくる。真正面から視姦して、繊維を細かく観察してくる眼差しに、しかしサリアは顔色一つ変えなかった。
(恥じらう価値などない)
 こんな男との出来事など、虫に刺された程度に受け止めようとしていた。
 サリアのショーツは黒い。
 漆黒の生地にそのまま黒いレースリボンをかけ、二本の黒いラインが縦向きに、前側の布を三つに切り分けるように通っている。薄暗い路地では無地と見間違いかねないが、建物の窓から漏れる光が辛うじてそれを照らし、陰影や光沢が柄の存在を浮かべている。
 フロントリボンだけは赤く目立っていた。
 男はしばし視姦した後、再び立ち上がり、サリアの顔にぐっと迫った。
「……なんだ」
 サリアの目は、それを不快そうに迎えていた。
「そうだな。六十分好きにさせろ」
「今からか」
「ああ、今から六十分。済んだら即座に移動して追いかけた方がいい。だから、情報も色々としながら聞かせてやるから、気持ち良さで聞き逃したりするんじゃねーぞ」
 男は端末機器の画面を起こし、タイマーをセットしながらニタニタ笑う。
「そんなヘマはしない」
「んじゃあ、ここに手を入れさせてもらおうかな」
 男はサリアの瞳を見つめたまま、右手をショーツのところへ移す。最初は生地の感触を確かめて、布越しにタッチしていたが、やがて中へ潜り込ませる。ショーツは右手の分だけ膨らんで、サリアのワレメには指が直接置かれ始めた。
「好きにすればいいだろう」
「おやおや、実にびっしりとした茂みだな。毛は濃いというわけか?」
「無駄口を叩くな」
 サリアは顔を背け、苛立ち紛れに尻尾を揺らす。
 男はワレメに指をやりつつも、手の平で陰毛の具合を確かめていた。太い毛が密集して、肉貝の領域にまで至らんばかりの三角形は面積が広く、鼠径部のラインの半分は捉えている。外側にいくほど量が減り、長さも縮む密林は、ワレメを指でなぞればなぞるだけ、さながらブラッシングのように当たってる。
「無駄口はお嫌なようだし、ここで話をまとめよう」
「ああ、早く肝心なことを聞かせてもらおう」
「まずまとめると、サリアさんの探す人物は日付が代わる頃には町を出る。アンタの目的がロドスへのスカウトとは知らず、てっきり危害を加えられる危険性があると思っていたので、既に拠点からは引き払い、寝る場所もなく彷徨っている状態だ」
 情報を口にしながら、男はワレメへの愛撫も続けている。
 産毛だけを撫でるタッチで肉貝を刺激していき、たまに強めに擦りつけ、やっぱりフェザータッチを中心に愛撫する。
「カフェ、飲食店、風俗、カジノ……彼はこうしている今にも滞在場所を変えながら移動をしており、時間が経ちすぎると、追いつく暇もなく町を出られてしまう」
 既に述べた内容をまとめ直して聞かせていると、サリアはそれに静かに耳を傾けていた。
「俺達がいるこの場所は西。対して、彼は東に都市からの離脱ルートを用意している。どこぞ遠くの移動都市へお引っ越しってわけだが、その行き先まで俺は知らない。この町から逃がした場合、捕捉には手間がかかるだろうな」
 ここまで説明したあたりで、男の指には愛液が絡み始めていた。
 そっけなく、表情も変えないサリアだが、よく観察していれば、愛撫に応じてほんのわずかに肩が動いている。愛撫に使う右手からも、太ももの動く気配が伝わって来る。ほんの一センチかその程度の、実に小さな動きであるが、快楽で体が反応しているのだ。
 男は指先でワレメの線をなぞった。
 下から上へ、腕を持ち上げながら指腹をラインに沿わせ、端から端まで指先を移動させると、肉芽の突起を見つけて刺激する。
「っ!」
 頬がぴくりと動き、顔を背けているサリアの、瞳だけがギロっと男を睨みつけた。
「そこはやめて欲しいと言ったはずだが?」
「これはすまない。しかし、あまり言い合っている時間もあるまい?」
「……っ、ん、んぅ……っ、ん…………っ……っ………………」
 微妙に息が乱れている。
 反応も数センチは大きくなり、先ほどよりもモゾモゾと動く様子がわかりやすくなってきた。
「ここから、だんだんと重要な話をしていくが、きちんと頭に入るかな?」
「……問題ない。続けろ」
 クリトリスに関する抗議は、即座に諦めてしまったのだろう。
 男は遠慮なく敏感な部分を責め立てる。
「まずは六十分後。つまりアラームが鳴る頃の彼の居場所から教えてやろう」
 男はわざとらしく顔を近づけ、髪に隠れた耳に向かってねっとり囁く。そうすることで建物の名前を口にしつつ、即座に補足した。
「もちろん、彼は移動してしまう。ということは、その次の移動先を知る必要がありそうだ」
「どこだ」
「その前に、もう一つだけ重要な補足をしよう……おっと、アソコがどんどんヌルヌルになっているが、快感に頭が染まりはしていないかな?」
「していない」
 にべもないサリア。
 だが、男の言葉に嘘はなく、真夏の汗ばんだ肌のようにアソコは濡れていた。手の平に粘液が付着して、邪魔なショーツさえ脱がせてしまえば、糸を引かせることも簡単だろう。
「おお、そうかそうか。息が乱れているし、反応もわかりやすくなっているんで、エッチに夢中になっていないか心配だったよ」
「ふざけるなよ? あまり私を挑発するな」
「これは失礼。今から指を入れて責めまくるが、心して聞いてもらおう」
 男はワレメに指を這わせて、閉じ合わさった貝の向こうにある穴を狙った。膣口の位置に指を合わせて、先端から少しずつ埋めていくと、サリアの頬が微妙に強張る。爪の先から、しだいに関節を越える位置まで膣に入れ、男は軽くピストンを開始する。
「んぅ…………っ、っ……っ…………っ……………………」
 呼吸だけがボリュームを上げ、さほどわかりやすくは乱れていない。息遣いの音をわざと立てているかのような音量で、喘ぎ声の代わりのように、時折強めの息を吐き出している。
 ただ、モゾモゾとした反応だけは、動きの量をさらに一センチほどは増やして、そちらの方はもう少しわかりやすくなっていた。
「俺が最初に言ったのは、仲介も兼ねるという約束だったが、直接あいだに立って三人で会うわけじゃない。アンタに居場所を教えた後、彼にも動かないように伝えるだけだ。ここで問題になるのが、彼が俺やアンタの話を信用しない場合だ……いや、たとえ信用しても、興味がなくって、無視する可能性もあるだろう?」
 ピストンをしていることで、手の甲がショーツを前後させている。膨らんで、萎んでと、風船に空気が出入りするかのように、黒いショーツは絶えずゴムを伸ばし続ける。指を押し込む際はゴムの力に任せつつ、引く際はゴムの力に抗って、指を出入りさせるのだった。
「ところで穴が随分お熱いようだ。とってもヌルヌルで指がスムーズに出入りしてくれる。中の感触も悪くない。たまーに、キュッて締まるみたいな反応してくるのがエロいじゃねーか」
 アソコの状態を指摘して、膣に締め付けられた一瞬をここぞとばかりに実況すると、サリアの瞳にみるみるうちに怒りが浮かぶ。
「無駄口だな。情報だけを喋れ」
 その声は今まで以上に怒気を含んでいた。
「なに、まだ十分かそこらしか経ってない。無駄口を叩く余裕はいくらかあるさ」
「私はその戯れ言をいちいち聞きたくないんだがな」
「おおっと、ここからは俺の機嫌しだいだぜ? 俺にデタラメを喋られたくなかったら、少しは気前の良いところを見せてくれよ」
「ふん、どうしろと」
「そうだな。オナニーしたことはあるか?」
「あったらどうする。クリトリスはやめてもらおうと思ったのも、それで敏感なのがわかっていたからだが?」
 どうだ、言ってやったぞ。だからどうした。
 サリアの顔はそう言わんばかりのものだった。
「ってことはサリアさん。アンタだって、こういう好奇心そのものはきちんとあるわけだ」
「人並みにはあるが、この状況を喜ぶ趣味まではないな」
「オナニーはどれくらいするんだ?」
「滅多にはしない。半年に五回もあれば多い方だ」
「なんだ。少ないじゃないか。もっとすればいいのに……にしても、処女か」
「処女ならなんだ? お前の機嫌が良くなるのか?」
「多少はな」
 男は何度か指を抜き、気まぐれにクリトリスへの集中攻撃を行った。指がまとった愛液を利用して、ぬかるみを塗りつける刺激を与えるが、サリアはここをやられるたびに頬をピクピクさせていた。普通以上に呼吸音を大きくして、ふー……ふー……と、喘ぐ変わりの乱れた息を吐き出していた。
「パンツとスカートを脱げ、おっぱいも見せろ」
「なんだと?」
「やれ、情報を逃がしたくなければな」
「……ちっ」
 サリアは舌打ちしながらスカートを脱ぎ、おざなりに畳んだ上にショーツを投げる。衣服の内側に手を入れて、ブラジャーのホックを外した後、たくし上げることで乳房を出して、肝心な部分の全てを外気に晒していた。
「いいおっぱいだ。ここはどれくらい感じるのかな?」
 男はいい気になって胸を揉み、指を押し返さんばかりのプルっとした弾力を味わった。ひとしきり撫で回し、乳輪の近くを指先でくすぐるうちに、見るからに乳首が大きさを増し、そこに触れれば肩がぴくりと動いていた。
「さあ、早く残りを話せ」
「そう慌てんな。次は口で気持ち良くしてやるぜ?」
「なんだと?」
 眉を顰めるサリアの前で、男はアソコの前にしゃがみ込む。
 顎に指を当てながら、陰毛やワレメの形をニヤニヤと観察する。
(クズめ)
 性器を視姦される恥ずかしさを抑え込み、サリアは頑として赤らもうともしなかった。目の前の男を虫けらかその程度に思うことで、恥など感じるに値しないと切り捨てながら、不快感だけを抱えて唇を引き締める。
 男の手が陰毛を触り始めた。
 指先で毛並みを確かめ、次には両手でワレメを開く。中身をまじまじと拝む視線に、再び周知が湧きかけるも、やはりサリアは赤らむことすらしなかった。
(犬猫に見られて恥ずかしいか? この程度の男など、そのくらいに思っておけばいい)
 頭の中で男を人間以下の存在に置き換えて、懸命に抑え込むことにより、サリアは頬を桃色にすら変えることはなかった。恥じらう気持ちが表情には微塵も浮かばず、だから男もサリアが平然としているようにしか見えていない。
 抑えに押さえ込まれた羞恥心は、外側からは見抜きようがないのだった。




 男はまるでご馳走でも頂くように指を近づけ、愛液の滴る表面をなぞり抜く。わざとらしく糸を引かせて、それをサリアに見せつけるが、当のサリアは下らんと言わんばかりに鼻を鳴らすだけだった。
「ま、そういう反応も新鮮かもな」
 男はおもむろに顔を近づけ、ぺろりと舐める。
「!」
 サリアは驚愕したが、こんな男に悲鳴を上げたり、まして驚いた顔などするものかと、ほとんど表情を抑え込み、声も発してはいなかった。ただ腰だけがビクっと反応して、反射的に奥へ引っ込み、後ろの壁に尻と尻尾をぶつけているのだった。
「どうした? そんなに刺激的だったか?」
「……黙れ」
「はーい。ではしばらく黙りまーす」
 男はそう言って腰を掴むと、一気に顔を埋め込み口による刺激を開始した。
(くっ! なんなんだ! こいつは!)
 舌が小刻みに素早く上下して、チロチロとワレメを舐め上げる。まるで愛液を舐め取っているかのように、舌先のタッチが肉貝をなぞり抜き、サリアの股にはその刺激が広がっていた。
 愛液が量を増やす。
 じわっと、まるで水を吸わせたタオルの表面から滲みでて、浮かび上がった水滴が流れ落ちようとするように、サリアの膣壁は存分に汁の分泌を開始する。アソコは悦んでしまっているように、愛液をだらだらと垂れ流し、それは男の舌へと広がっていく。
「じゅるるるっ! じゅむっ、じゅるるる!」
 男はただ舐め回すに飽き足らず、唇を押しつけ吸い取ろうとする真似までした。
 膣の中身を直接吸引しようとする口づけで、中身を吸われる刺激にも快感は迸り、腰がしきりにクネクネと動きそうになってしまう。
(こんな真似をして、何が面白い!? わけがわからんぞ!)
 サリアは声を出すまいとして、ぐっと歯を食い縛る。
 だが、舌先がクリトリスを集中的に虐め始めると、もはや完全な抑えは効かず、今まで以上に呼吸が乱れた。
「……っは、はぁ……ふっ、ふはっ、はぁ…………はぁ…………はっ、はふっ、んっ、んふぁ…………はっ、はっ、はっ…………はぁ……んっ、んはっ………………」
 乱れきった息遣いから、喘ぐまいとしている代わりに出て来る呼吸音は、全力疾走をした直後の息切れに少し似ている。力強くハァハァ吐き出してしまう呼吸と共に、肩も微妙に上下に動いて、表情には我慢の色が浮かび始める。
「じゅじゅじゅじゅじゅじゅじゅ! じゅぶ! じゅぶ! じゅぶ! じゅぶ! じゅぶ!」
 男は膣口に舌をねじ込んでいた。
 舌の長さが許す限り極限まで、どうにかワレメの向こうに差し込んで、挿入せんとばかりに責め立てピストンしていた。せいぜい入り口付近にしか入りはしないが、届きうる場所まで舌を埋め、激しいヨダレの音を立てながら出し入れする。
「じゅむむ! じゅむ! じゅず! じゅぶ! じゅぶ! じゅぶ! じゅむむ!」
(ま、まずい――何か――あ、アソコの中で、妙な感覚が――――!)
 決して顔には浮かべない。
 意地でも平静を装い続け、サリアは男を見下し睨み続ける。眼差しだけは保ちながらも、心の中では焦っていた。
 何か尿意に似たものが迫ってくる。
 オシッコが出そうな感覚とは違い、しかし確実に似ているものの接近に、サリアは頬を固く強張らせた。
(なんだ!? なにが来る!? ど、どうなる!?)
 歯を強く食い縛り、何かの訪れに対してサリアは備える。
「レロレロレロレロレロレロレロレロ――――――」
 男はクリトリスを舐め始めた。
 舌先で転がし続けるようにして、縦横無尽に舌を踊らせる。肉芽の突起をありとあらゆる角度に倒し続けて、舐め抜く刺激をこれでもかというほど与え続けていくうちに、膣から滴る愛液は、いつしか内股の皮膚までしっとりと濡らしていた。
 そして、次の瞬間だった。

「…………………………っ!?!?!?!?」

 サリアは歯の食い縛る力を強め、顔の強張りさえ強固にしながら、腰だけを痙攣のように震わせていた。先ほどのように、つい腰を引っ込めてしまう失態は犯さず、姿勢は保ってみせながら、筋肉だけは電流を流し込んだようにビクビクと弾んでいた。
 そして、アソコから長い長い糸が引いていた。
 愛液が玉となり、下へと滴り落ちようとしているのが、粘液故の粘り気に引っ張られ、すぐには垂れずに糸を伸ばす。
 太い糸である。
 多量の水分を含みつつ、それなりの粘度のある糸は、パソコンや携帯端末に使うコード類ほどの太さはある。
 その先にある滴の玉は、豆粒ほどの大きさに至っていた。
 豆の重量が下へ下へと糸を伸ばし、長くなるにつれて質量は引き延ばされ、しだいしだいに細くなる。ついには滴の玉を支えきる太さではなくなって、ぷちりと糸が千切れることで、地面にはまるで雨粒が染みたかのような痕跡を作っていた。
 それが一滴や二滴ではない。
 つー……つー……と、愛液を多量に分泌してしまった膣壁からは、糸が途切れた直後に新しい玉が浮き上がる。ワレメから生まれる水滴は、また新しい糸となり、数秒をかけてぷちりと千切れ、また新しく伸びてくる。
「絶頂したみたいじゃねーか」
「……黙れ」
「いったい何回垂れてくるんだ? もう十滴ぐらいの粒が出て来てるぜ?」
「……黙れと言っている」
 サリアは見るからに苛立ち、低い声には重々しい怒気を含んでいた。アソコを舐めるなどという侮辱を受け、しかもそのせいで気持ち良くなってしまい、あまつさえイってしまった悔しさに、拳に爪が食い込み震えていた。
 ここで男は端末を取りだして時間を見る。
「へー? まだ十五分だったのか。もっと経っちまってると思ったが」
 その言葉に引き攣った。
(まだ……十五分だと……?)
 男が要求した時間は六十分だ。
 この最悪の時間の終わりがまだ遠いことに歯噛みして、怒りに満ちた視線を下ろす。
「そう怖い顔したって、アソコはびしょ濡れだぜ? サリアさん」
「……っ!」
 ワレメを触られ、腰がピクリと反応する。
 そのまま指を埋め込まれ、イった余韻のせいか最初にやられたよりも気持ちがよく、不本意ながらに顔に出そうだ。
「飽きない奴め、いい加減に残りの情報を話せ」
 サリアは表情を硬くして、あくまで力強い目つきを保つ。
「えーっと、これが終わった時点での彼の居場所は言ったっけな」
 男はわざとらしくも、どこまで話したかどうかについて迷い始める。
 指を動かしながらだ。
 ワレメに入れた指を軽やかにピストンして、腕ごと上下させながら、男は首まで傾げて本当にわざとらしい。
「……んっ、んぅぅぅ…………それは聞いた。その先だ」
「ああ、そうそう。引き合わせる際の問題だったな。彼が俺やアンタの話を信じない、あるいはロドスへのスカウトに興味を示さない。何らかの理由で、サリアさんが来るのを無視して行っちまう可能性についてだったか」
「んぅぅ……んっ、そうだ。その先を早く聞かせろ」
「んーっと、そうだな。とりあえず、もう一回クンニさせろ」
「なに? んっ、んぅ……も、もういいだろう!」
 サリアは声を荒げる。
「なんだ? またイカされるのが怖いか?」
「……んっ、ふはぁ…………っ、挑発する気か?」
 指のピストンが続く気持ち良さに、喋りながらも呼吸が乱れる。言葉の途中途中で甘い声が出かかるのを、喉を固くして封じ込めるが、息遣いばかりは誤魔化しきれない。
「もう一回舐めさせてくれたら俺の口が軽くなるぜ?」
「……ふん。好きにしろ、変態め」
 サリアは虫を見下す視線を送りつけてやりながら、実に不快そうに許諾する。
 改めて顔が近づき、ワレメを舐められた瞬間に、サリアは見るからに嫌そうな、毛虫やナメクジに引き攣るような顔をしていた。
(やはり不快だ! 何故こんなものに快楽がある!)
 二度目のクンニでも、男はじゅるじゅると大きくヨダレの音を立て、丹念に愛液を舐め取りながら、やがて膣に舌を差し込む。
 先ほどと同様に、またしても尿意に酷似したものが膨らんで、アソコで弾けそうになったところを、まるでトドメでも刺すかのようにクリトリスを集中的に嬲ってくる。

「んぅ……………………ぐぅ……………………」

 出した声はそれだけだが、今度は潮を吹いていた。
 スプレーを真下に向けたかのように、放射状に飛沫が散り、それがサリア自身の内股や男の衣服に降りかかる。
 その直後に糸が引く。
 やはり、先ほど同様に、コードほどある太さの糸が伸びていき、長さに応じてしだいに細くなっていく。玉粒を吊しきれない細々とした糸になるたび、ぷちりと千切れて水滴を落とし、その次の瞬間にまた新しい水滴をワレメが生む。
 何本も、何本も、サリアの股から糸が引き続けていた。

     *

 今度こそ残りの情報を出すように求めたが、男はニヤニヤと首を振る。
「ここで喋ったら時間が余っちまうじゃないか。約束の六十分までは、なんとしても付き合ってもらうぜ」
「……ちっ」
 サリアは悪態を隠しもしない。
 いいように快感を引き出され、潮まで噴かされた屈辱で、こんな男など本当はどうにかしてやりたくてたまらない。もし煮るなり焼くなり好きにしても許されるなら、是非ともそうしたいとさえ思っている。
「セックスさせろ」
 男はそう告げてきた。
「なんだと?」
 冗談じゃない。
 サリアはこの男に対して、怒りと苛立ち、人間性に対する侮蔑といい、あらゆるマイナスの感情を向けている。そんな相手に股を開くなど、本当に出来の悪い冗談だ。
「おっと、情報の続きはいらんと見える」
「力ずくで聞き出してもいいんだぞ」
「そいつは困る……と言いたいが、俺も多少はアーツが使えてね。逃げるだけなら得意中の大得意。やれるものならやってみてくれ」
 男は自信満々に肩を竦めた。
 もしも自信通りの力があれば、時間を無駄にする恐れも、情報自体を逃す恐れもある。
(……くそっ、させるしかないか?)
「嫌なら今までの情報だけで頑張りな。見つかるといいな」
 それは無理だと、サリアにはわかっている。
 苦渋の選択だった。
 だが、捜索対象の発見とスカウトには重要な目的があると言われており、どうしても機会を逃したくはない。
(覚悟を決めるか)
 サリアは深く歯を噛み締め、男を睨む。
 そして、告げた。
「いいだろう。ただし、中には出すな? さっさと済ませろ」
 威圧的に許可を出す。
 少しでも気に触れたら許さないかのような鋭い目つきで、男を萎縮させるつもりの強気と高圧の態度でもって受け入れる。
「決まりだな。脚を上げろ。立ってやる体位でいく」
「ふん。せいぜい楽しむことだ」
 ベルトを外し、逸物を取り出す男の前で、サリアは右足を持ち上げる。男はそんなサリアの右膝を腕に抱え、ぐっしょりとした性器に亀頭を当てる。
 相変わらず糸を伸ばし続けていたワレメの上で、途切れた直後に生まれる玉粒が、ちょうど亀頭に潰されていた。鈴口がそれを飲み込んだかのように消失して、切っ先がそのまま膣口へと切り込んでいく。
 体位のために、サリアは男の首に両手を回していた。
 対面立位の挿入で、まずは亀頭が埋まっていき、サリアは初めて男を知る感覚に苦悶する。意外にも痛みはなく、個人差のおかげか快感さえあるのだが、いずれにしろ穴を太さによって拡張され、害虫程度にしか思わない相手の逸物が馴染んでくることに、何も良い感情など抱いていない。
(気分の悪い……! 不快な虫が詰め込まれるかのようだ!)
 ナメクジ、ゴキブリ、そういったものを穴に詰め込まれるような、全身に寒気と鳥肌が走るほどの不快感に、サリアは心から苦悶しきっていた。
(冗談じゃないぞ! なぜこんな男で快感が!)
 さらに肉棒は埋め込まれる。
 膣壁の表面を愛液でコーティングしきった状態だ。厚みある活性油の層により、穴の大きさよりもいささか太いにも関わらず、つるりといった具合に飲み込まれる。
「くぅ………………!」
 浮かべるのは苦悶の汗だ。
 不快感や嫌悪感によっても滲んだ汗は、無理にでも何かに例えるなら、真夏の蒸しきった空気で浮かぶ汗とでも言った方がいいだろう。ちっとも快適ではない状態で、体中が汗ばむせいで余計に気持ち悪くなるといった具合に近い。
 根元まで埋まったことで、お互いの陰毛が絡み合い、腰と腰が触れ合い密着する。乳房が男のシャツと接触して、顔まで目前に迫ってくる。表情を観察されないことへの嫌悪感と、ニヤついた目つきに対する苛立ちに、ますます強張りが増していく。
「気持ちいいぜ? サリアさん」
「ふん、それは良かったな」
「いい感じの締まりがしてよ。圧迫感が心地良いぜ?」
「私が聞きたいのは情報だけだが」
「ま、焦るなって。時間までには話してやるさ」
 男は右手を胸にやり、下半球を揉みながら、軽いジャブのつもりのように腰を動かす。ピストンの動きが小さい、ちょっとした腰振りで、棒の出入りというよりは、亀頭を使って中身を捏ねられる感覚がサリアにはあった。
「マジでいいわー。気をつけるけどな? うっかり、すぐに出しちまいそうだぜ」
「……ふざけるな」
 たとえ冗談だとしても、中出しを煽る言葉は腹立たしい。
「お、そういえば時間はどれくらい残ってるっけなー?」
 実にわざとらしく、すっかり忘れていた風な台詞を棒読みで、ポケットから携帯端末を取り出すなり、時計機能の画面を確認する。それをサリアにも見せつけるが、カウントダウンはちょうど三十分を切ったばかりであった。
「そんなに長く入れている気か? 迷惑だな」
「アンタが手早くスムーズに満足させれば、時間が短くなる可能性もあるぜ?」
「何?」
「そっちの方から一生懸命腰を振って、気持ちいい気持ちいいって、色っぽい声で吐いてみるとかな」
「ふざけたことを」
 本気で苛立ち、怒りによって声が震えた。
「なら長々と楽しむまでさ」
 男は本当にじっくりと楽しんでいた。
 うっとりと目を瞑り、ゆさゆさとした小さな動きだけで、亀頭が届く部分をかすかに捏ねている。乳房に触れている右手は、たまに思い出したように活発に揉みしだき、乳首を指で転がすが、激しいピストンは一向にしてこない。
 結合を長引かせるために、刺激を抑えているに違いなかった。
(本当に三十分近く入れている気か?)
 せめて五分かその程度で終わって欲しい。
 そう願ってやまない不快感がそこまで長いなど、いっそ絶望でもしたくなる。
(くっ……おのれ……何故だ……!)
 さらに業腹なのは、恨めしくも快感が湧くことだ。
 濡らしたタオルからいくらでも染み出るように、サリアの膣は愛液を流し続ける。元から膣壁に活性油の層は出来ていたが、なおも層に厚みを与え、肉棒をまんべんなく包み込もうとするように、分泌は続いている。
 棒が入った状態で、その愛液は収まりきらずに外へ流れる。
 結合部の隙間から染み出た粘液は、男の陰毛に付着していた。ゆさゆさと動いているせいなのか、陰毛から陰毛へ移る形で、サリアの毛にも付いている。内股に滴って、皮膚の表面にしっとりとした面積が広がっている。
「そうだ。サリアさん、気持ち良さを白状したら残りを教えるってのはどうだ?」
 急に思いついたような提案に、サリアは怒気を膨らませた。
「ふざけるな害虫め、ここまでさせているんだぞ」
「けどさー。俺、逃げ切る自身だけはあるからさ。サリアさん、こうして俺を捕まえてるうちに喋らせないと、マジでヤリ逃げとかあり得ちゃうかもよ?」
「私をそんなに怒らせたいか?」
「そういや、さっきから怒ってるよねー。けど」
 男は何かを試すかのように、今までよりも数センチほど大きくピストンして、まだまだ勢いは緩めてあるが、サリアのことを責めて来る。
「くぅ………………」
 すぐさま歯を食い縛った。
「あ、やっぱり」
 男は嬉しそうに右手で顔に触った挙げ句、頬や顎の周りをベタベタと撫で回し、軽い指圧で内側を確かめる。
(こいつ……!)
「顔色一つ変えてないけどさ。アンタ、けっこう感じまくってるよな」
(黙れ!)
「マン汁だらだらだったし、そりゃ感じてないわけないんだけどよ。こうして、いざはっきりしてみると、なんか余計に燃えるよな。本当は我慢してるだけで、実は顔がアヒアヒしまくっているはずだって思うと」
(黙れ! 下らん妄想をするな!)
「ねえ、実際どう? 気持ちいいの? 気持ちいいって認めてみてよ。でないと俺、ヤリ逃げするから」
 どこまでも調子付く男に対し、その分だけサリアの瞳に浮かぶ怒りも増す。
 もはや睨み殺す勢いだった。
 睨むことで人を呪い殺す力があったなら、男の心臓などとっくに止まっている。凶悪な獣の眼差しで、サリアは慎重に口を開いた。
「ああ、気持ちいいが?」
「お?」
「認めたぞ。望み通り白状したが?」
 それがどうしたと言わんばかりの態度を取った。
「へええ? そういう感じ? なるほど、そう来るのね?」
 一体、今の何が嬉しいのか。
 男は妙に機嫌を良くしてピストンのペースを早めていく。サリアの膣を大胆に抉り抜き、より強い刺激を与えるようになり、サリアの歯を食い縛る力も強まった。
「んぅ…………! んっ、ふっ……ふぁ…………はっ、ふぅ…………!」
 呼吸が荒れた声しか出さない。
 そんなサリアの顎をまた確かめ、男は嬉しそうにニヤニヤする。
「んぅぅ…………んっ、はっ、ふはっ、はぁ…………はっ、はっ、はぁ…………!」
 ピストンによる刺激は背骨を伝って脳まで来る。
 サリアはそれに全身を収縮して、男の首に回した両手も、いつしか拳に形を変え、やたらに力を出し入れするようになっていた。
「はっ、はぁっ……んぅ………………んっ、はぁっ、はっ、ふっ、ふぁっ、はぁ…………!」
「喘いだっていいんだぜ?」
「はぁっ、は……だ、だまれ…………!」
「それとも、ヒィヒィ言わなきゃ情報やらないってことにしようか?」
「な……んっ、だと? はぁっ、はぁっ、はぁっ」
「冗談冗談、それは許してやるよ」
 まるで命だけは勘弁してやるように言われたことで、サリアの自尊心はさらに傷つき、ただでさえ鋭い視線により一層の目力がこもる。
「ちょいと休憩するか?」
 といっても、肉棒を抜きはしない。
 ただ動きを止めただけ、結合は維持していた。
「……いつまでする気だ」
「時間いっぱいに決まってるだろ?」
「お前……」
「いやー。にしても、動いてるあいだのサリアさん。ずーっと、アソコを反応させまくってたよな。ヒクヒクする感じ? 刺激でヒクって動くみたいに、小刻みに締め付けてくるの。あれ凄い気持ちいいわ」
 サリアが無意識のうちにしていた身体的な反応をあげつらい、それがいかに気持ち良くて最高だったかを語り聞かせる。
 その言葉の全ては怒りを煽るものでしかない。
「無駄口が多すぎるぞ」
 サリアは凄む。
 だが、結合している男には、萎縮などありはしない。
「ま、時間も経ったことだし、そろそろ喋ってやるよ」
「ふん、ようやくか」
「それじゃあ、よーく聞いておけよ?」
 男は妙にニヤニヤと口角を釣り上げる。
(まさか……)
 サリアがそう予感した瞬間だ。
 男はピストンを再開して、最大の腰使いで貫き始める。
「んぅぅぅぅぅぅ………………! んっ! んふっ、くっ、くふぅ………………!」
 声の我慢に無理が出ていた。
 荒々しく乱れた呼吸には、甘い声でしかないものがどうしても混ざっている。力の限り歯を食い縛っているにも関わらず、腰から脳天にまでせり上がる電流で、筋肉のピクっとした反応から緩んでしまう。
「んぅ……! んっ、んっ、んっ、んっ、んっはぁっ、はふぅ…………ふぁっ、あっ、ふぅぅ……はぁっ、はぁっ、はぁっ…………」
「えーっと、そうそう。無事に彼が俺やアンタを信用し、ロドスへのスカウトに関して興味を示した場合についてから話そうか。その時に奴がいるのは…………」
 彼は一体どの時間、どの場所で相手が待つかを口にする。
「んで、無視してばっくれる場合、彼は俺にも明かしていない行動ルートに入るはずだ。だが情報通の俺には、そのケースのルートも予想がつく。予想に過ぎないっちゃ過ぎないが、何の当てもないよりはいいだろう?」
「あっ、くぅぅ…………! んっ、はぁっ、はぁっ、はふっ、ふぁっ、んぅぅ……! んぅぅう……! んっ、んふぁ…………!」
 男は耳元に情報を囁くが、それがまともに届いているのか、男にはわからない。
「ま、話したぜ?」
 話すだけ話したとばかりにピストンに集中すると、その数十秒後にはサリアの全身が痙攣していた。
「ぬぁ…………!」
 サリアの首が反り上がる。
 足腰がビクビクと震えた上に、本来なら潮を噴いていたはずのアソコから、密着状態が故に男の陰毛に直接愛液が染み込んでいた。
「はぁ…………はぁ………………はぁ………………はぁ………………」
 そこでピストンを止めたことで、サリアにも少しは休む余裕が生まれる。
 肩で大きく息をしていた。
 なおも表情を変えようとはせず、赤らみすらしようとしないが、体だけは呼吸が大きくなっていた。
「……………………お前」
 サリアの小さな声が辛うじて耳に届く。
「なんだ?」
「……もう一度、言ってくれ」
「おいおい! おいおいおい! 俺は十分にはっきりと伝えたと思うが? まさかとは思うけど? 気持ち良すぎてまともに聞こえてなかったとかぁ? だとしたら傑作だな!」
「だ、だまれ!」
「いやいや、別にいいけどよぉ? そうならそうと、白状くらいはして欲しいぜ。なあ、どうだったんだ?」
「ぐぅ…………!」
 途方もない屈辱が込み上げていた。
 怒り一つで脳が沸騰し、もはや感情のままに暴れ出したくなるほどに、全身に力が籠もっていく。拳は怒りでプルプルと、歯を食い縛る顎にさえ、歯茎が押し潰される勢いの力がかかっている。
 怒り狂う獣の目つきで、今にも牙で食らいつかんばかりにサリアは男を睨んでいた。
「ほら、どうした。もう一度言って欲しいんだろう?」
 今にも爆発しそうな頭の中に、あらん限りの理性を流し込み、無理にでも脳を冷却するサリアだが、それでも抑えきれない怒りで胸がムカついて仕方がない。当たりの物の全てに八つ当たりをしたくなる。

「……ああ、気持ち良かった。快楽で頭がいっぱいだったせいで、まともに話を聞くこともできなかった」

 サリアは男を睨み付け、苛立ちを隠すことなく、その上で事実を伝えていた。
「仕方ない。なら、もう一度教えてやる」
 男はそう言いながら、激しく激しくはないがピストンを再開する。
「っ!」
 サリアはひどく引き攣った。
 最初のように、亀頭のあたる部分を軽く捏ねているだけの、実にゆっくりとしたピストンだったが、快感のせいで話が頭に入らなかったと白状した手前である。それなのに、なおもピストンしながら喋ってくるなど、嫌がらせ以外の何だというのか。
 その怒りを抱え、加熱している頭の中に、サリアはどうにか男の話す情報を叩き込む。
「……用は済んだ」
「そうだな。ちょうどあと十分くらいだし、俺も最後と思って楽しむぜ」
「ちっ」
 サリアが舌打ちした直後、ピストンは激しくなった。
「ぬぅっ! くぅっ、んぅ……! んっ、くふぁ…………! ふっ、はっ、はあっ、はあっ、はあっ、はあっ……!」
 喘ぎ声こそ抑えても、その息遣いは興奮しきって荒れ狂ったかのようである。
「マジで気持ちいいわ!」
 男も興奮していた。
 サリアに対するピストンは、肉棒があっさりと沈んでくれる。きつめの膣に対して、男の太さでは摩擦に引っかかり、もっと動きが悪くていいところを、活性油が実に滑りを良くしているのだ。
 しかも、貫くたびに下腹部が反応する。
「キュゥキュゥ締め付けてやがるぜ? サリアさん!」
 サリアの膣は収縮していた。
 快楽電流が拡散して、その信号に筋肉が嫌でも反応するせいで、ピクッピクッと足腰は動いている。それと同様のものが膣にも現れ、きゅっ、きゅっ、きゅっ、と、肉棒に対して悦んでしまっている。
(ふっ、ふざけるなぁ! 誰が嬉しいものかぁ――!)
 自分自身の反応に対しても、サリアは激しく憤る。

 きゅっ、きゅっ、きゅっ、きゅっ、

 それはピストンのもたらす衝撃で、立位の背中が前後に揺れるリズムにぴったりと一致していた。
「ふっ、はぁっ、ふはっ、はぁっ、はぁっ、あっ――くぅっ、んっ、んっ、んっ、んっ、んっ、んっ、んっ…………」
 本当に少しだけ、時折出てしまう甘い声は、辛うじて声量だけは抑えている。
 だが、体の反応だけはどうにもならない。
 快楽信号が全身に行き渡り、乳首でさえもますます興奮して、乳輪がぷっくりと浮き上がる。男が思い出したように乳房を求め、揉みしだくと、乳首をやられた途端にサリアは胸を反射的に引っ込めそうになっていた。
 そして、サリアはイキそうになっていた。
 二度も絶頂したおかげで、もうイク時の感覚はわかっている。アソコの中で見えないものが膨らんで、やがて弾ける瞬間に備え、サリアは全身を固くして身構えていた。
「あっあぁっ」
 明確な喘ぎ声を出しかけて、サリアは咄嗟に噛み殺す。
 おかげで小さな声量に留められ、おそらく男には聞こえていない。
「さぁて、そろそろ」
 中出しはしない約束を守るため、男はピストンのリズムに乗せる形で、腰を弓なりに引く際の勢いに合わせて肉棒を引き抜いた。
 その瞬間、サリアはイった。
 引き抜く時の摩擦は、破裂直前まで膨らんだものにトドメを刺し、途端に指先にかけてまで痙攣が行き渡る。
「――――――――――――っ!」
 声は出さない。
 しかし、脳天まで激しく震える。
 肉棒が抜けた直前の、広がったままの形で少しのあいだ固定され、元の形状に戻るまでいくらかの時間がかかる膣口は、ワレメをぱっくりと開いて外気に曝け出されていた。それが痙攣することで、ヒクっと閉じて、そのまま肉貝を収縮させる。
 潮吹きは今度こそ潮だった。
 先ほどの潮吹きは、挿入状態で腰が密着してきていた。潮が潮吹きになり得なかったが、今回ばかりはきっちりと、スプレーを一回だけ噴射したように、水滴が放射状に拡散して、それから愛液の糸を垂れ流す。
 その直後、サリアはとっさに危機を悟った。
 急に尿意が強まったのだ。
(ま、まずい! 堪えきれない!)
 もう放尿そのものを抑えることは出来ないと、たったそれだけは辛うじて冷静に判断して、あとはせいぜい数歩ほど動いて場所を変える程度のことしかできなかった。脱ぎ捨てたスカートやショーツだけは濡らさないため、せめて側溝に出すために壁と向き合う。
「お? わかるぜ? アンタがどうなってるのか」
 途端に男が背後に迫る。
「な、なにをする!」
「いいからいいから」
 男によって後ろから持ち上げられて、サリアのM字開脚が宙へ浮く。しっかりと両側に開いた股から、黄色い水のアーチが放出されると、それはチョロチョロと壁を塗らし始めた。
(くっ、屈辱だ…………)
 サリアは無念にうなだれる。
 どんな形であれ、これでは放尿を手伝ってもらったことになる。排泄の面倒を見られてしまったことで、赤ん坊扱いを受けた気になって、いっそ惨めですらあった。
(屈辱で消えたいと思ったのは初めてだぞ!)
 サリアは激しく歯を食い縛り、顎をプルプルと震わせる。
 数秒ほどは勢いの続いたアーチは、徐々にその長さを縮めていく。壁を濡らすには勢いが足りなくなり、しだいしだいに着弾位置は手前となって、路面に弾ける尿が周囲に滴を跳ね飛ばす。
 男の靴がかすかに濡れて、サリアの放尿は終了した。
「アンタもかなり満足したんじゃないか? 体はこんなに気持ちよさそうにしてたんだからな」
「……戯れ言を」
 サリアは最後まで表情を崩さない。
 ただ、心は怒りや屈辱に荒れ果てていた。

     *

 最後の五分を利用して、男はサリアの口を射精場所に選んできた。
 文句があるのは言うまでもない。
 威圧的な眼差しで、睨み殺そうとしながら口に含むと、ものの数分ほどの奉仕によって白濁は解き放たれる。サリアの膣を散々に楽しんできた肉棒は、あとは排泄さえ済ませれば満足な状態だった。
 口内に広がるおぞましい味に、サリアは激しく顔を顰める。
「必要な情報は全て教えた。約束通り、連絡もしておく。問題なく会えるといいな」
 男はズボンの中に逸物をしまい、悠々と去っていく。
 サリアはその背中を見送って、たった一分だけ休むことにした。すぐに立ち上がる気分になれず、かといって任務のためにも時間はない。他に情報源がなかったために仕方がないが、捜索対象に追いつくのはギリギリになるだろう。
 サリアはショーツを穿き直し、スカートも元に戻してその場を去る。
「害虫め、二度と顔も見たくない」
 男の去った方角に悪態をつき、サリアは任務に戻って行った。


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