前の話 目次




 そして、執務室でのこと。
「なあニニムってばー」
「はい。なんでしょうか」
「なんか事務的すぎない? 今俺達だけだよ!?」
「そうですね」
「なんで敬語!? 他に誰もいないよ? 私的な時間だよ?」
「ええ、だからなんでしょう」
「マジで冷たい! いつになったら機嫌直してくれるんですかニニムさん!」
「直る方がおかしいと思いますが?」
 あれから一週間以上が経っているも、ニニムは未だに機嫌を直さない。散々謝ったつもりだが、二人の時でも公的な口調を崩してくれない。開ききった距離感が元のように縮まる気配がなく、ウェインもさすがに堪えていた。
(やばい……マジでやばい…………)
 もし、このまま永遠にニニムの態度が変わらなかったら、そんな不安と恐怖を切実に抱えていた。
 顔は一応隠してあったとはいえ、だからといって大勢の前であれは、いくらなんでもトラウマが強すぎたらしい。その後のニニムは、普通に服を着ていながら、周囲の視線をしきりに気にして、急に胸や尻に手をやるようになっていた。
 裸で徘徊させたため、城内はニニムの裸を知る人間で溢れている。
 この状況もニニムには堪えているらしい。
「はぁ……。ま、そろそろ、いいかしらね」
 その時、ニニムは急にため息をつき、呆れきった顔で態度を変える。
「もしかして……」
「まだ許さないわよ」
「そ、そうか……」
 その言葉にウェインは狼狽える。
 だが、ニニムはそんなウェインに詰め寄って、赤らみながら、躊躇いながらこう言った。
「責任を持って、もっときちんと私を慰めなさい」
 真正面から熱っぽい視線を向けられて、照れくささからウェインはついつい背けてしまう。
「え? ええっと、ニニムさん? どう慰めろと」
「いちいち言わないわよ。自分で考えなさい」
 ニニムの方から答えを出すことはないらしい。
 ウェインの方から正しく接するしかないのだが、一体ニニムは何を望むだろうか。背けた視線をニニムにやると、あちらの方もどことなく照れ臭そうな顔をしている。
 それを見て、ウェインはおもむろに手を伸ばして撫でてみる。
 ニニムは特に抵抗もなく、むしろ自分から頭を差し出してきた。さらりとした灰色の髪を撫でているうち、何故だか急に愛おしさが増してきて、ウェインは席を立ち上がるなり抱き締める。両腕を回し、その内側にニニムの頭を閉じ込めた。
(ニニム…………)
 抱き締めていると、ニニムの腕がそっと背中に回って来て、ウェインの背中を軽く掴む。
「今夜、寝室に来い」
 ウェインは緊張を押し殺し、静かな声でそう告げる。
「……わかったわ」
 ニニムはそう答えると、ウェインの腕の中から抜け出ていき、何事もないかのように仕事に戻って、書類の一部に手を伸ばす。ウェインも席に戻り、まるでお互いにそのことには触れてはならないかのように、粛々と職務に当たる。
 しかし、この仕事のあいだ中、ずっとお互いに意識がいき、しきりに視線を及ばせて、目が合うたびに背け合う。集中しきれていない時間ばかりが続いていき、書類一枚にかかる時間がいつも以上に長く感じられるのだった。

     ◆◇◆

 王室のベッドに横たわり、ニニムはかつてないほど緊張していた。
 全裸なのだ。
 一糸纏わぬ姿で、柔らかな素材のシーツに背中を沈め、仰向けとなって相手を見上げる。これまでになった裸と、今の裸とでは、緊張の意味合いが異なっている。今までも裸で何度も緊張してきたが、今はそこに激しい心臓の動悸が重なっていた。
(駄目……爆発しそう…………)
 内側から心臓が弾け出てきそうなほど、今のニニムは動悸が激しい。
「……するぞ。ニニム」
 ウェインの手が頬に触れ、ニニムはより一層に緊張に強張っていた。
 体中が固くなる。動けない。
 動けないところにウェインの顔が迫って来て、まるで魔法にかかったように逃げられず、抵抗も何もできないが、決して拒否感はない。むしろ、ニニムも目を瞑り、強張りながらも受け入れる姿勢を見せた。
 唇が重ね合わさった瞬間から、心も体も一気にとろけた。
 甘い何かが体中に広がって、自分が解けてなくなるかのような熱い感覚に指先まで支配され、心まで熱くてたまらない。目もとろけ、唇が離れた途端に開いたまぶたから、自分が一体どんな熱っぽい視線を向けているかの自覚はあった。
(でも……今は…………)
 政治に関わる者として、様々な事柄が頭を駆け巡る。
 政略、結婚、王妃の座……フラム人であり、補佐官でもある自分は、決してウェインの妻の座に納まることはない。だが、自分はウェインの心臓だ。ウェインに忠誠を誓い、身を捧げる者として、これから起こる全てのことを受け入れようと覚悟した。
「ニニム」
 耳元で名前を囁かれ、皮膚がぞくりと熱く震える。
「ウェイン…………」
 見つめ返すと、真剣な眼差しが降り注がれ、それがあまりにも照れ臭くて、とても目を合わせていられない。照れくささに負けて目を背けると、ウェインはニニムの頭を撫でたり、頬をしきりに可愛がる。
 キスの雨を降らせてきて、ウェインは丹念に愛してきた。
 唇が触れるたび、その部分に甘い感覚が生まれて、皮膚が溶解しているような気がしてしまう。浸透してくる唾液は快感で、ニニムはこの甘さに酔い痴れていた。
(ウェイン…………)
 うっとりと目を細め、そのままニニムは目を瞑る。
「ニニム、お前は俺の…………」
 再び唇が重なって、ニニムは思わず手を回す。ウェインの後頭部を掴み、逃がさないようにしていると、やがて舌がねじ込まれる。ニニムはその舌を受け入れて、自分自身も舌を差し出し、お互いに絡め合う。
「んちゅぅ……んっ、んちゅぅ…………」
 口の中身も溶けていく。
 何もかも、心まで解けていく。
 陶酔しきったニニムの肉体は、いつのまにか乳首を突起させ、アソコの肉芽までもが興奮をあらわにしていた。媚薬など使っていない、ただ純粋な興奮だけで、体中がどんどん敏感に発達している。
「んぅ!」
 胸を触られた時、その快感にニニムは驚いていた。
 今度ばかりは、本当にニニム自身の素質だけで感じたのだ。
 卑猥な自分を見せてしまったかのようで、小さく恥じ入るニニムだが、そんな気恥ずかしそうな様子を見ることで、ウェインの方は得意げな顔で愛撫を始める。両手で乳房を楽しんで、指先に乳首を絡め取る。
「んぅ……んあっ、あぁ……あぁぁぁ…………」
「どうだ? 気持ちいいか? ニニム」
「気持ちいい……とっても、いいわ…………」
 答えるのは恥ずかしかったが、ニニムは赤らんだ顔で素直に答える。
「よし、次はこっちも感じさせてやる」
「あぁぁ…………!」
 下の方に触れられて、ニニムは弾けたように顔を動かし感じていた。今の今まで乾いていたワレメの表面だが、その内側にはとっくに気配を醸し出し、ウェインの指という合図を得ることで示し合わせたように滲み出す。
 すぐさま、ウェインの指には愛液が絡みつき、離せば糸が引くようになっていた。
「ニニム、いい顔だ」
「いや……あんまり……見ないで…………」
「そうはいかないな。しっかり拝ませてもらうぞ?」
「やだ…………」
 恥じらいながら、ニニムは指の愛撫を受け入れる。
 静かに快感に浸っていき、ニニムは呼吸を熱く乱していた。熱気の宿った息を吐き出し、自分自身の激しい動悸を感じながらも、うっとりと目を細め、快感に身を委ねる。広場での連続絶頂とは違い、今ここでの快感は安心して受け入れることができた。
(気持ちいい……ウェイン…………)
 浸っていると、その指が不意にクリトリスに当たって来る。
「ひっ!」
 強い電気が弾けたような快感に肩が弾んだ。
「お、声が出ちゃったか?」
「うるさいわよ」
「悪い悪い」
 ウェインは軽く謝りつつ、急に表情を変え、真っ直ぐに見つめてくる。その目が何を意味しているか、それを悟ったニニムは、緊張と覚悟を胸に抱いて脚を左右に広げていく。

「……そろそろ……いくからな?」

 耳元に顔が近づき、囁くように告げる言葉に、ニニムはゆっくりと目を閉ざすことで応えていた。
 広げた脚のあいだに逸物が触れてくる。
 石のように固いそれが入り口を押し開き、ニニムの内側へと侵入を開始した時、生まれて初めて入り込んでくる感覚に苦悶を浮かべる。太さによって穴を拡張され、内側から圧迫される苦しさと、破瓜の痛みに汗が噴き出るが、ニニムはシーツを鷲掴みにして耐え忍ぶ。
(ウェイン……ウェインが……! 私の中に……!)
 ニニムの心には、痛みや苦しさのことはなかった。
 ただただ、ウェインと一体になっている事実だけに心は揺さぶられ、根元まで差し込まれた瞬間の、ついに繋がり合った充足感で舞い上がる。
「ニニム」
 熱い瞳を注ぎながら、ウェインは両手で頬を包んで来る。
「ウェイン……!」
 同じだけ熱い瞳で見つめ返した。
 頭を撫でてくる。頬を撫でてくる。存分に愛でてくるウェインの手に、ニニムは目一杯甘え尽くして、ひたすらに一体感を味わっていた。自分とウェインの心身が融合して、溶け合っているかのような至高の瞬間に、ニニムの心は本当にどこまでも舞い上がり、気づけば嬉しさだけで涙まで浮かべていた。
「痛いか?」
 違う、痛みで泣いているわけではない。
 だから、ニニムは必死で首を振る。
 痛みはあるが、痛みなどどうでもいい。破瓜の血など頭の片隅に追いやられ、本当に痛みなど忘れてしまうほど、ニニムは一体感だけに心を浸していた。
「動くぞ?」
 ウェインの言葉にニニムは頷く。
 そして、ゆっくりとしたピストンが始まった。ウェインの身体が動き出し、重なり合った上半身が下へとずれる。その動きにつれて、収まっていた肉棒は外へ出ようと後退するが、全てが出て行くことはなく、途中で再度進行してくる。
 そんなウェインの出入りに対して、ニニムの膣には愛液が滲み出る。
 愛液が破瓜の血を薄め、ウェインの見え隠れする肉棒には、そちらの粘膜によるコーティングの方が目立ちつつあった。
 お互いに言葉はない。
 視線を絡め合うことで二人だけの時間に浸り、ウェインもまたニニムとの一体感を味わっている。肉棒に広がる快感を意識の片隅に置きながら、無意識のうちにニニムを見つめることばかりに心を費やしていた。
 体は無意識に動くばかりで、表面的な心はほとんどニニムに注がれている。
 ニニムもそれを一身に感じ取り、まるでバケツで浴びせられるような大量の気持ちを全身で味わっていた。
(ニニム……ニニム………………)
 ウェインがニニムだけを見つめ、ニニムの存在だけを心や思考の中に置いている。
 ニニムはそれを全神経で受け止めて、全身を駆使して味わっていた。

 ぎしっ、ぎしっ、ぎしっ、ぎしっ、

 いつからピストンが激しくなり、活発な出入りで身体を揺らされるようになっていたかもわからない。
 ふと気づけば、挿入の動きに慣れたウェインの体は、だんだんと速度を上げて貫いていた。腰を打ちつけた衝撃でニニムの乳房を上下に揺らし、ベッドからも木材の軋んだ音が響き渡っていた。
 急に夢から覚めてみれば、いつの間にそうなっていたかのように、ニニムの体感的には本当に気づけば速度が上がっていた。
 その頃にはニニムの膣もほぐれきり、痛みもしだいに薄れている。
 初めて出入りしてくる感覚に、膣壁への負荷がないでもなかったが、それ以上に愛液が滲み出て、中身の肉棒を粘膜に包んでいる。ヌルヌルとした液体の層が膣壁を守り、滑りを良くして快感さえ与えてくる。
「はぁっ、はふぁ……あっ、あんっ、んぅ……あっ、やっ、やぁ…………」
「ニニム……!」
「ウェイン……! あぁっ、あぁぁぁ……!」
「ニニム、ニニム……!」
「ウェイン……!」
 感情が燃え上がり、ウェインのピストンが激しくなる。
  それに呼応したように、ニニムの心も激しい炎と化していく。
「ウェインっ、ウェイン――あぁっ、あぁぁ――――――!」
 無意識に名前を呼びながら、ニニムは喘ぐ。
 それに応じてウェインのペースもさらに上がった。

 ぎしっ! ぎしっ! ぎしっ! ぎしっ! ぎしっ!

 ウェインの動きに揺り動かされ、木材の軋みから鳴る音も、ピストンのペースと共に激しさを増していく。
 そして、とうとうウェインは達した。
「ニニム!」
 直前になって咄嗟に引き抜き、ウェインの吐き出す白濁は身体へと噴きかかる。腹から胸にかけて付着して、ニニムは生まれて初めて感じる精液の感触や香りに身を浸した。
(これが……ウェインの……)
 書物で得た知識だけで、実物を見たことは一度もなかった。
 その精液が今、ニニムの皮膚に熱気と共に浸透してくる。自分の体で気持ち良くなってくれた証拠に、どこか得意げになってウェインのことを見つめ返すと、ウェインもそれに気づいてニニムの頭をたっぷりと撫で回す。
「…………許してあげる」
「……ああ、よかった」
 そこまで不安がるくらいなら、初めからあんなプレイに目覚めなければ良かったのに、しかし思い返せば、ストリップに応じた自分も悪いのだろうか。
 それから、付着した精液を拭き取って、シーツの取り替えなどの後始末を済ませた後、ニニムとウェインは抱き合いながら眠りにつく。
 目一杯に甘え尽くした。
 ウェインの胸にしがみつき、胸板に頬ずりして、撫でてもらう。
 その体温を全身で味わいながら、髪の隙間に入り込んでくる指の感覚にうっとりと目を細め、ニニムはしだいしだいに意識を遠のかせ、夢の内側へと入り込む。
「……寝たか」
 まだ意識を残したウェインは、胸に乗ったニニムの頭を両手で包み、たっぷりと愛するように撫で回す。
 ゆっくりと、優しく撫でて、そのうちにウェインもまた眠りについた。



 
 
 

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