(何をやっているの? 私は!?)
未だ涼しい表情を保ち続けるロウェルミナだが、顔色の変化までは隠しきれずに、元の肌の色以上に顔は白い。
青ざめているのはフィッシュも同じだ。
(皇女を説得するべき立場で、私が折れてしまうだなんて、これでは補佐官失格ね)
ウェインに目をやり、フィッシュは思う。
(だいたい、最初は止めにかかっていたのに、結局は女性の裸が見たいのね。最初に会った時は若くして貫禄を持つところに関心したけど、これでは評価を下げるしかないわ)
フィッシュの中でウェインの株価が暴落したのは言うまでもない。
とはいえ、政治的な話し合いで約束を引き出し、ウェインは目の前で書類まで書き始めている。どこまで恥をかくことになるのか、恐ろしくてたまらないが、これでロウェルミナの危惧したものは取り除かれる。
それにロウェルミナとウェインが共同で悪党退治を行ったことにするのなら、帝国内ではナトラはロワ派である印象が強まるだろう。
(プラスの面はある。プラスの面は……プラスの面は……)
フィッシュが心の中でひたすら唱え続けるうちに、ウェインは羊皮紙に書面の内容を書き上げる。
「難民を保護したロウェルミナ皇女であるが、その正体は盗賊であり、難民への成りすましで見事保護を勝ち取っていた。そのことに気づいた皇女は、それをナトラが国民として受け入れるものとして送り出し、実際にはナトラ兵がそれを待ち構えた。悪賊を罠にかける共同作戦だな。この内容にお互い調印していたものとしよう」
ナトラは元から移民国家で、難民を受け入れることに不自然はない。ロウェルミナが婚約のためにナトラを訪問し、ウェインと歓談を交わしたことも、帝国内では知られている。二人に繋がりがあったところで不自然はない。
この件はロウェルミナの評判を高め、派閥からの支持を強めるものとなり、その上にナトラはロワ派である印象も強化される。政治的にはロウェルミナが全面的にプラスを勝ち取ることになる。
そして、その代償は重い。
「では私達が服を脱ぐことで、その内容を公式のものとして頂けるわけですね」
ロウェルミナが問う。
「そうなる。約束は守るが、もう一度言う。裸になるだけでは終わらないぞ? その先こそがメインだ。引き返すなら今のうちだぞ?」
ウェインが最後の逃げ道を用意した。
フィッシュは縋る眼差しをロウェルミナに送る。自分自身が脱ぎたくないのは大いにあるが、皇女をそんな目に遭わせたくない気持ちも存分にあった。
「いいえ、引き返しません」
(殿下……)
ロウェルミナはきっぱり答えてしまうので、これで最後の逃げ道も断たれた。
「では早速、ストリップから初めてもらいたいが、本当にできるのかな? いやね。これがマジで最後ね? 裸になったら、もう引き返すの禁止だからね?」
やっぱり無理だと言い出す余地は、最後の最後まで残される。フィッシュの中で、ウェインの株価暴落に代わりはないが、この分だけは差し引いても良いだろう。
だが、もはやフィッシュは確信していた。
ロウェルミナは必ず全裸になる。
だったら、せめて皇女一人に背負わせず、自分も付き合うしかない。
フィッシュもいよいよ腹を括った。
(変態王子)
心の中で罵りつつ、腹を括った。
「では脱いでもらおう」
ウェインが告げる。
「…………」
「…………」
まず、二人はしんと沈黙した。
(本当に何やっちゃってるのよぉ! 私はぁ! ま、まだ引き返せるじゃない! 引き返す道はまだあるじゃない!)
引き返さないと宣言した手前、なおもあと一度だけ逃げ道を用意した心遣いは、ロウェルミナにもわかっている。
(もちろん裸が見たいのは本心なんでしょう!? 一応! わかってるから!)
欲望も無しにこの展開はなかっただろう。
ロウェルミナが後に引けずに主張を繰り返すのに釣られ、とうとうウェインも二人の裸を見たい気持ちに煽られた。ウェインはやがて欲望優先に路線を切り替え、そして話は成立したわけだ。
それでも、思うところあって最後の良心を見せたのだろう。
(気持ちの半分はポーズでしょうけどね!)
とにかく、もう脱ぐ段階までやって来たのだ。
ロウェルミナは立ち上がり、どこから脱ごうから自分の衣服を弄り始める。しかし、弄るばかりで脱ぐことが出来ず、ただただウェインの前に立っているだけの時間ばかりが延々と流れていく。
「うーん。どうしたのかなー」
ウェインはわざとらしく退屈そうにしていた。
「……あ、あらあら、焦ってはいけませんよ? 乙女たるもの、たった一枚脱ぐにも心の中で準備を整え、少しずつ曝け出していくものです。ねえ、フィッシュ」
「そ、そ、そうですね。その通りだと思います」
「焦らずとも? 脱いでみせますとも? 脱げないとか? そんなことありませんとも?」
驚くほど上擦って、珍妙な声が出てしまう。
ロウェルミナの心には、二つの感情が混ざり合いっていた。「はああ!? 脱ぎますけどぉぉ?」という、煽られればムキになる気持ちと、「やっぱり恥ずかしいんだけど……どうしましょう……これ、ホントどうしましょう……」という、切実な焦燥があった。
「ではゆっくりと拝見させて頂こう」
ウェインはまばたき一つせずに視線を突き刺す。
(もういいし! リスクとかいいし! こうなったら拝みまくるわ!)
というのがウェインであった。
完全に開き直って、楽しむ体勢に入っていた。
「さて、まずはこの小さな上着から脱ごうかしら?」
ロウェルミナが着ていた上着は半袖で、丈の長さも乳房より少しばかり下までだ。防寒の意味合いはまずないような、おそらくはファッション用の一枚だ。それも完全に左右にはだけており、胸元は解放しきっている。
そんな一枚目を脱ぐために、首のあたりで留め具となったアクセサリーを外し、手始めの一枚を手放してみせていた。適当なソファを見つけたロウェルミナは、そこに脱いだものを丁寧に折り畳む。
その下にあった白い衣服だ。腹を露出するファッションから、普通のシャツとは構造が違っている。ワイシャツのボタンを上だけ止めて、下の方は左右に開いたと例えるべきか。
それを脱ぐために、ロウェルミナは腕を片方ずつ袖の中に引っ込めて、内側からたくし上げるように脱ぎ去った。
ロウェルミナの上半身に残っているのは、現代であればショート丈のキャミソールに近い。肩は剥き出しに、腹や腰も露出しきって、ロウェルミナは既に赤らみ始めている。
「あれ? もう真っ赤っかなの?」
ウェインが煽る。
「はえっ!? そんな? そんなはずは? ありませんけど?」
声は完全に裏返り、指摘のせいか頬の色合いは強まった。
「おいおい、大丈夫かよ。気絶とかしないだろうな」
「はぁああ!? するわけないでしょう!?」
「ほーん。ま、じっくり見させてもらおうじゃねーか」
ウェインは楽しくてならない顔で、ロウェルミナの体をあからさまに、頭のてっぺんから爪先にかけて舐め回す。
「ブランデル補佐官。そちらも、そろそろ脱がれては?」
まだ一枚も脱いでいないフィッシュに目を向けた。
「……そうするしか、ないようですね」
フィッシュが最初に脱ごうとするのはスカートだった。
そのスカートはロングタイトで、腹から膝下十センチ近くにかけて丈が長い。シャツをベルトの内側にしまうことがあるように、フィッシュの場合はスーツを腹部にしまっている。スカートが上に重なる形から、どうしてもそちらを先に脱ぐことになる。
スカートの締め付けを保つ留め具は、乳房の真下、中央あたりにあるらしい。それを指でぱちりと外すと、フィッシュはチャックを下げ始めた。
さて、チャックを下げれば下げるだけ隙間が生まれ、中身が見え隠れしそうになってくる。しかもフィッシュの場合は、手前中央に位置したチャックであるから、下げた時点で下着が見えかねない。
フィッシュは左手で隙間を気にかけ、ショーツが見えないように気を遣っていた。
どうせ最後には全裸だろうに、チラチラと覗けて見えそうな恥ずかしさで、ついつい手で押さえてしまうらしい。
いじらしい仕草を眺めていると、下腹部に差し掛かったところでチャックは止まる。押さえてさえいなければ、ショーツが見える程度には下がっているが、生憎ながらフィッシュは右手で隙間を閉じているのだ。
もっとも、ここまでスカートの締め付けを緩めたのだ。
あとは下げていくしかない。
フィッシュはウェインに背中を向け、すぐさまにはショーツが見えないように、おそらくはウェインに隠れてチャックの部分を解放した。チャックを下げた分だけ、着脱に支障が出ないまでには締め付けが緩み、尻の向こう側では惜しみなく隙間が広がっている。
それを是非とも見たいようでいて、フィッシュのこうした恥じらい方を見るのも面白い。
(ってか、尻デカいな)
スカート越しのフィッシュの尻は、内側に閉じ込めた膨らみによって、布地がしっかりと押し上げられている。布越しでも形状を予測出来そうな程度には、形が浮き上がっていた。
フィッシュはいよいよスカートを下げ始める。
なんと、しゃがみこんでいきながら、ショーツの見える範囲を少しでも抑えようとしながら脱いでいた。下がっていくにつれて、姿勢も同時に下がっていく。膝まで脱げる頃には、地べたに尻が迫っていた。
椅子に座ったウェインからは、テーブルの陰ということもあり、フィッシュの尻は見えにくい。そのあいだにも脱ぎ終わり、フィッシュが再び立ち上がる頃には、畳み終わったスカートがテーブルに置かれていた。
フィッシュは真っ赤であった。
スカートを置く際に、右手だけはアソコを隠そうと股間に張りつき、腰をくの字に折るように、お辞儀じみた形で腕を伸ばして、折り畳んだものをテーブルに置いていた。
置き終わるなり、瞬時にその左腕は引っ込んで、両手共々ショーツを隠すために使い始める。手の平の面積が許す限り、少しでも見える部分を減らそうとしているが、残念ながら全ての領域を二つの手では覆いきれない。
主に股間やその周りを隠しているが、腰の両サイドにかかった布は隠れない。
ストッキングを穿くフィッシュの、純白であろうショーツに黒を被せたものが、生地の重なりで少しだけ色を暗くしていた。
「白じゃん」
ウェインは色を声に出してしてきする。
「っ!」
目元をピクっと反応させ、フィッシュは真っ赤な顔を素早く真横に逸らしていた。
(やっべ、最高だわ)
ウェインはそれを見て興奮する。
「ってなると、ロワの下着は何色かなー? 黒とか?」
「さ、さあ? それは見てのお楽しみでは?」
「じゃあ次、その上のやつ脱いでよ」
ウェインが次に脱ぐものを指定する。
「これは……」
「あ、無理? ブラジャーが見えちゃうから無理?」
「いいえ? 平気ですけど?」
ロウェルミナは簡単にムキになり、余裕で脱げると主張せんばかりに、ショート丈のキャミソールを持ち上げる。顔は真っ赤になっているのに、いとも簡単に脱いでのけ、黒いブラジャーをあらわにしていた。
漆黒の布に白いレースを当てたブラジャーだった。イバラの意匠を込めたレースを縫い込んで、カップを煌びやかに飾っている。そのブラジャーのさらに豪奢なところは、紐とカップの境目に薔薇のアクセサリーが付いているところだ。
肩紐の頂点にも、それぞれリボンが付いている。
良い染料を使ったものが、ロウェルミナの乳房にぴったり合わさり包み込み、ほどよく持ち上げているあたり、それを作った職人の腕が窺える。
「ほら、脱げたでしょう? ブラジャーくらい見せられますけど?」
「そうかそうか。ならパンツもいけるな」
「い、いけますけど?」
顔には「無理ですけど?」と言いたげなものが浮かんだが、口を突いて出て来るのは、やはり強がる言葉であった。
「……あ、あの。殿下、次は同時に脱ぎましょう」
不意にフィッシュが提案する。
「あら、同時にですか?」
「ええ、交互に脱いでいては時間がかかりますし、やるなら早くやってしまう方が、かえっていいでしょう」
「そうね。そうしましょうか」
気の利いた家臣を褒めてつかわす時の振る舞いだったが、「助かります!」と、救いの手に縋る心が表情にわかりやすく浮かんでいた。
裸に近づくことでの、恥ずかしさそのものは消えない。
しかし、 ウェインの視線はどちらか一方に集中することができなかった。
上を脱ぎ始めるフィッシュと、スカートを脱ぎ始めるロウェルミナで、片方だけを集中的に視姦することはできず、ウェインは極力どちらもを視界に収める。それでも意識は左右に行き来してしまう。
スカートが下がっていき、ショーツがあらわとなっていくロウェルミナ。
フィッシュの方は、豊満な乳房を包むブラジャーが谷間と共に姿を現す。
(おおお! これはいい!)
ウェインは満足げだ。
下着姿となったロウェルミナは、黒いショーツまで曝け出し、赤く恥じ入り俯いている。手で胸とアソコを気にかけて、上下を隠したがっているのが見て取れるが、強気なことを言ってきた手前、隠す動作すら取りにくいようだ。
黒のショーツもイバラのレースで飾られている。両サイドにリボンを咲かせ、豪奢に飾り付けられたロウェルミナの下着は、皇女に相応しい職人技術がふんだんに盛り込まれている。
ストラップとしての薔薇はショーツにも縫い込まれているが、その薔薇に使われている染料が良い。染め上げることで、たちまち光沢を帯びるように仕上げてあるのだ。
その布を薔薇の形に整えて、ショーツのデザインに落とし込み、見栄え良く縫い込むなど、よほどのセンスが使われている。
(いやいや、職人なんか褒めてる場合じゃないぞ?)
隣のフィッシュにも注目した。
純白の輝かしい生地に水色の刺繍で花模様を散らしてあり、実に爽やかなデザインとして作り込まれている。下着の良さを見るのも一興だが、何よりもウェインが注目するのは豊満な乳房である。
(やっぱりオッパイでかいな)
初対面でも思ったが、フィッシュの乳房は豊満だ。赤ん坊の頭部に比べて、それより少し小さいかどうかのサイズだろう。それをブラジャーで持ち上げて、垂らすことなく中央に寄せ、魅惑の谷間を形成している。
フィッシュの場合は、さらにストッキングも脱ぎ始め、いよいよ正真正銘の下着姿だ。
下着のみの美女が並んで、これだけでも眼福だ。
フィッシュもフィッシュで、手で隠したくて仕方がなさそうにして、実際に胸とアソコに手をやっていた。しかし、横目で見たロウェルミナが隠さずにいるのを見て、諦めたような腹を括ったような様子で、真っ赤な顔で腕を下ろしているのだった。
「いやー素晴らしい。既に大興奮なんだけどさ」
ウェインは問う。
「どっちからオッパイ出すの?」
その疑問を投げかけた時、二人が同時に横目を向き、お互いを見つめ合う。
二人とも、背中に両手を回しはした。
「フィッシュ? ここは皇女に先んじて、率先して殿方の視線を受け止めるというのは」
「いえいえ、そちらこそ。ご結婚の申し込みをなされるほどの仲なのでしょう?」
「いえいえそんな」
「いえいえいえ」
ホックに触れこそしていても、実際に外すことができずに、どちらが先か後かを押しつけ合う。
「まあ、仕方ありませんね。やはり同時、ということで」
「ええ、それが一番でしょう」
(てっきり、まだまだロワが強がると思ったけどな)
少々残念な気はしたが、まあいいだろう。
そして、実際に二人同時にホックを外した。
ロウェルミナの胸が、フィッシュの胸が、それぞれカップを内側から押し返し、どちらにも少しばかりの隙間が生まれる。
(お? お?)
まさに期待を煽られた。
既に十分に赤面しきって、これ以上は赤らむ余地がなさそうに見える二人だが、隙間が生まれた瞬間に、同時に自分の胸を気にかけ、反射的に視線をやっていた。
(そうよね! ま、まだ! そんな急に見えるわけないわよね!)
と、これはロウェルミナ。
(急にポロっといくことはないって、わかっているはずなのに……)
フィッシュもかえって自分の行動を気にしていた。
二人は顔を見合わせて、お互いの様子を気にかけながらも、時折ウェインにも視線をやる。
(す、すごく見てる……)
ロウェルミナは緊張を強める。
(外す瞬間を見逃さないつもりのようね)
硬くなるのはフィッシュも同じであった。
そんな二人が自分の肩紐を一本ずつ下ろし始めて、あとは乳房の上からどかすだけにまでなった時、ブラジャーが急に落ちてしまわないようにと、しっかりと手で抱き込んでいた。
それから、二人は目を合わせ、何か意思疎通を行う。
(……そうね)
(そうしましょう。殿下)
(何のやり取りだ?)
ウェインも心までは読めない。
首を傾げていると、二人は同時に後ろを向いた。
「お? なるほど」
そう、背中を向けた状態で脱いでしまえば、心の準備もなく急にオッパイ丸見えという事態は避けられる。手で隠して振り向き直せば、ギリギリまで見せずに済むわけだ。
(でも最後には全部見せてもらうもんねー)
ウェインは悪巧みの顔を浮かべる。
二人はウェインを向かないまま、肩越しに振り向きながらテーブルの上にブラジャーを手放して、続けてショーツを脱ごうとする。
「お」
目の前に下着が置かれたこともそうだが、いよいよショーツに手がかかった局面に、ウェインはこれまで以上に期待感を膨らませる。
ショーツには親指が差し込まれていた。
腰の両側に、右手と左手の親指がそれぞれ潜り、あとは下ろすだけの体勢となり、二人して固まっている。手は動こうとしているが、なかなか脱衣に踏み切れず、力をかけたり抜いたりが繰り返されていた。
(尻エロいな)
少しだけくの字に折れた腰を見ていると、ウェインへと突き出された尻の、むっちりとした色香が漂ってくる。布を内側から膨らませ、そのせいではみ出たように、尻たぶのぷにりと潰れた部分があるのも実にそそる。
(エロい。めっちゃエロい)
尻を視姦しているうちに、二人の腕がようやく動く。
(お? 脱ぐか?)
期待に反して、ショーツが下へずれようとしただけで、実際には一ミリとて脱げてはいない。脱ごうとはしながらも、実際に下げようとすれば、大きな羞恥心が邪魔をして脱げないのだとウェインには伝わってきた。
反発力が働いて、見えない力に押し返されるかのようになってしまう。
恥ずかしいあまり、そんな状態に二人は陥っているのだ。
(いいよ? だったら俺、そのあいだエロい尻見てるからさ)
ロウェルミナの黒いショーツと、フィッシュの白いショーツからなる白と黒の魅惑のヒップは、見ているだけで頬が緩む。色香に頭がくらりと揺れ、酔ってしまいそうだ。
(視線がすごいんですけど? すっごい見られてますけど?)
ロウェルミナはかすかに震えていた。
プルプルと足が震え、膝がガクガクとなっていた。
(そりゃ見てるわよね。この体勢、お尻が目立つものね……)
フィッシュも床ばかりに視線をやって、ショーツを下ろすに下ろせないまま、延々と固まり続けている。
二人とも、脱ぐ意思はある。
形はどうあれ、交渉が成立した以上、こうなったら政治的旨味を持ち帰るためである。身を切る覚悟くらいは決めてやろうと、気持ちはとっくに固めていたが、覚悟に反して羞恥心は強く働いてしまうのだ。
(さーて、何分かかるのかなー)
ウェインはじっくり楽しむつもりで尻の視姦に勤しんだ。
「おおっ」
やっとのことでショーツが下がり始めて、ウェインは思わず声を上げる。少しでも尻の割れ目のラインが見えたところで、その尻は床に向かって沈んでいく。二人はしゃがんでいきながら脱いでいた。
(はははっ、そうかそうか。やっぱ恥ずかしいか)
ショーツが下がれば下がるほど、二人の身体は沈んでいく。
尻が床にすれすれで、テーブルに隠れてウェインからは見えにくくなる代わり、二人はついにショーツを手放すのだ。
(ああ……これも脱いでしまったわ…………)
ロウェルミナは脱いだショーツを握り締め、手放したくないかのように胸元に引き寄せる。信徒が十字架を両手で握るかのように、ロウェルミナはショーツを大切に握っていた。
(このまま……全て、見せることになるんでしょうか……)
フィッシュも同じだ。
胸元にショーツを握り締め、手放したくない思いで握力がこもっていく。
だが、二人は立ち上がった。
尻が丸見えであることを意識して、揃って後ろに手をやった。お尻を手の平などで覆いきれるはずはなくとも、割れ目だけでも隠していた。
そして、ブラジャーの時にそうしたように、肩越しに振り向きながら、ほとんど後ろ向きのままショーツをテーブルに置く。二人の脱いだものが全てテーブルに積み重なり、下着さえもがウェインの目の前だ。
(うへへっ、いいじゃん)
ウェインが鼻の下を伸ばすのは言うまでもない。
「ぬ、脱ぎましたよ…………」
二人が振り向く。
すると、腕で必死に乳房を押し潰し、アソコは手の平でぴったりと、隙間なく覆い隠していた。肝心な部分は見えないまま、それでも二人は確かに全裸だ。一糸纏わぬ姿でウェインの前に立つ気持ちは、果たしてどんなものであろう。
「散々脱げるわけがないように言っていましたけど? この通りですよ?」
ロウェルミナは顔が必死であった。
どうだやってやったぞと、そう言いたげな表情を作ろうとしていながらも、どう見ても狼狽したまま耳まで赤いようにしか見えない。
「いやーマジか。まさかロワのこんな姿を見るとは思わなかったわー」
ついでに言うなら、ロウェルミナの面白すぎる表情を見ることができて、ウェイン的には最高に愉快であった。
「でしょうね! 私も見せるとは思いませんでしたけど!」
「ブランデルもだな。二人とも、なかなかのものじゃないか」
「そ、そうですか……。褒められましても、困るだけですが……」
フィッシュも赤くなりきって、どこに視線をやっていればいいかもわからない様子で、瞳を上下左右に落ち着き泣く泳がせ続けている。
ウェインは二人の胸を見比べる。
腕で隠し潰されているとはいえ、ロウェルミナの腕からはみ出た肉と、フィッシュの腕からはみ出た肉は、ボリュームの違いが一目瞭然だ。
(ふむ、戦闘力はフィッシュの勝ちか)
「裸にされた上に、凄く失礼なことをまで思われている気がしますね」
「ん? そうか? 気のせいじゃないか? ロワ」
「目が明らかに見比べていましたが?」
「比べるなんてとんでもない。ロワが女帝になったら、この思い出の価値が跳ね上がるなーって思って」
「それもそれで最低ですね!」
ロウェルミナは憤るが、すぐに諦めたようにため息をつく。
「まあ、脱ぐと言ったのは私ですけどね」
ぎゅっと、隠している手に力がこもる。
「おー。そうだそうだ」
「というわけで、これで手打ちに――」
「なに言ってんだ。どれだけ圧勝したって、損失ゼロの争いなんかないんだぞ。兵の死を布切れごときで補いきれると思っていたなら、そいつはなかなかの話じゃないか」
まともに話しているように見えても、声はわずかに震えているし、ロウェルミナの目もフィッシュほどではないが、あちらこちらに落ち着きなく動いている。
「……変態羞恥プレイとか言っていましたね。裸にさせるだけでは飽き足らないと」
まだ辱めには続きがある事実に、ロウェルミナは大いに引き攣っていた。
フィッシュの顔もなかなかに歪んで強張っていた。
「まず、気をつけだな」
「…………」
「…………」
沈黙の代わりに、顔にありありと浮かんでいる。「は? 嫌ですけど?」なんてことを言いたくてたまらなそうな、とても文句を言いたげな目と表情が浮かんでいる。
しかし、せっかく目の前に美女二人が全裸でいるのだ。
(それを見ないとかありえんわ!)
そんなわけで、ウェインは改めて命じる。
「気をつけ」
すると、二人はお互いの目を見合わせる。
「ええ? 気をつけじゃない? 腕下ろさない? ほらほら、国交問題のためなんだから、頑張れ! ふぁい、おー! だぞ?」
「そうですね。それはその通りですが、とはいえ腹が立ちましたので、今の台詞は頭の中で持ち帰らせて頂きます」
恨みは覚えておく宣言だ。
「あ、ちょっと怒った?」
「ちょっとじゃありませんけど? まあ、いいでしょう。ここは従います」
ロウェルミナの力が緩み、腕がだらりと垂れ下がろうとする。それを見たフィッシュも、主君がそうするなら自分もそうせざるを得ず、不満そうに諦めたように下げていく。
二人の乳房と、アソコがあらわとなった。
(思ったより……恥ずかしい……!)
ロウェルミナは前を向いていられずに、思いっきり上を向き、ぎゅっと目を瞑りながら、ウェインには突き上げた顎だけを見せている。
(手をどかしただけで、ここまで恥ずかしさが変わってくるなんて!)
フィッシュも天井に顔をやり、二人して顎の下をウェインに向けていた。
(すっげ! 最高じゃん!)
ウェインが浮かべるのは最低の笑みだ。
二人の乳房を交互に見比べ、下の方にも目を移し、陰毛の具合もチェックする。どちらも三角形に整って、見るからにふわふわと、さらさらとした毛の質感だ。
(やっぱブランデルの方がでかいんだな)
手で包みきることなどまず不可能、圧巻のボリュームである。
(んで、ロワのは形がすっげーいい!)
どちらも美乳なのだが、爆乳のフィッシュに対し、大きすぎないロウェルミナの方が、形の整いぶりがわかりやすい。似たような形状でも、垂れずに前へ突き出る感じが見て取れて、美しく見えやすかった。
「ね、ねえ、ウェイン? 今度こそこれで手打ちにしません?」
声は面白いほどに上擦っている。
「え? どうしよっかなー?」
「そう言わず! ほら、あと十分くらい見ててもいいので、その代わりこれで手打ちに……なんて…………」
前を向けずに、完全に天井に向かって喋っている。
「駄目」
「はは……やっぱり…………」
「裸だけでは済まないと、最初にそう約束したはずだ。断る道を与えたのも、ロワならわかっているだろう?」
「それはそうですが……」
「じゃあ、この先のプレイをやる前に、着るものくらいは用意しよう」
「本当ですか?」
「ああ、本当だとも。俺が嘘をつくと思うか?」
この時、二人は共に点を仰いだ。
天井に向け、いかにも疑わしそうな目を浮かべ、「いや、普通につくだろ」なんてことを思うのだった。
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