笑顔の作り方には慣れている。
爽やかで印象の良い表情を作り上げ、清潔な服でもって身なりの良くして、相手から見た自分の雰囲気を操作する。対人関係で多少の演技ができる者なら、大なり小なり身につけている技術だが、中年のそれは真奈美に対して大きな効果を発揮していた。
紐同然の下着を着せたにも関わらず、露骨な疑いの視線は刺さってこない。
(げっひひっ、可愛い目をしてたよねぇ?)
最初に恐る恐ると下着に言及し、言外に替えがないかと尋ねようとしてきたのは、本当に可愛らしいことこの上ない。小動物のようにつぶらな瞳で、うるうると目を震わせ、どうか助けて下さいと懇願してくるような面持ちは、見ていて面白いものだった。
普通の感性をしていれば、可哀想な子犬を見捨てられない心境になるだろう。
だが、中年は違う。
(もっと虐めたり、可愛がりたくなるよねぇ?)
接客用の笑顔の裏には、真奈美をいかにして味わってやろうかと画策する悪魔の顔が隠れている。
焚いているアロマも思考力を鈍らせるものだ。
正常かつ理性的な判断力が低下して、まず騙されやすくなる。無理のある話でも、どうにか理屈を捏ねて押し通せば納得してしまうようになる。
この効能に中年自身は耐性があり、麻奈美だけが一方的に低下するのだ。
「一度起きて頂いて──ああ、まだ隠したままでいいからね? これから行う施術効果を高めるために、特製のドリンクを飲んで欲しくてね」
スポーツドリンクの味にみせかけたものをコップで渡し、飲んでもらう。
媚薬入りである。
(いやぁぁ、準備が整ってきたよ?)
思考が鈍る上、肉体は敏感になる。
快楽に流されやすい女の子は、こうして簡単に出来上がりだ。
そして、それらを目論む邪悪を欠片も表に出すことなく、麻奈美から見た中年の顔は、爽やかなお人好しであり続けた。
(でも、まだ焦ってはいけない。効果の浸透を待たないとね)
中年は落ち着いている。
獲物を前に牙を隠して、今のところは羞恥心に気遣うポーズまで取っている。
「ではね。そろそろ、お体に触れていくけど、最初は無難なところからやっていこうね」
「は、はい」
麻奈美は明らかに硬くなる。
「仰向けになってもらえるかな? そう、大丈夫。初めは肩の周りからほぐしていって、乳房をぐるっと囲む部分の血行から良くしていく。慣れないうちは、なるべくタオル越しにやっていくからね」
仰向けである麻奈美に対し、中年は頭上に回る。
腹のすぐ前には頭があるポジションから、ピアノでも奏でるように指を起き、両肩をタオル越しに揉んでいく。
「どうかな? 不快感はない?」
「いえ、そんな……」
「一応ね。男の手で女の子に触っているから、我慢の気持ちになるかもしれないけど、この触り方にもきちんと施術としての意味がある」
中年は実際にマッサージを装って、いかにも皮膚の表面をぐにぐにとほぐしている。
「乳房はね。乳腺組織っていうものの周りに脂肪がくっついて、それが山のような形になっているんだ。バストアップは乳腺への刺激が肝心で、その準備も兼ねて、まずは周囲からというわけだね」
言葉そのものはあながち嘘を言っていない。
ただし、それらしい理屈をでっち上げ、最終的には女の子を餌食にすべく仕入れた知識だ。
「こういう調子でね。鎖骨、脇下、肋骨といった具合にほぐしていく。乳腺に刺激を与えるための準備が進んでいくわけだね」
肩肉に集中していたピアノタッチの指先を下へと移し、鎖骨へのマッサージを開始する。
脇下へ手を潜らせ、揉むように圧した。肋骨も同じく表面の皮膚を揉み込むように手圧をかけ、それら全ての施術はタオル越しに行っていた。
「このあたりで、少しだけタオルをずらしてもいいかな」
「え……」
麻奈美は抵抗を示す。
「鎖骨あたりまででいいんだ。ほら、オイルを使いたいから」
肌に直接塗り込む必要があるものだ。
それを鎖骨までで良いとしているのだから、麻奈美には断りにくい。押しが強いと自分の意見を引っ込めたり、強くものを言えなくなる性格は、もうとっくに見抜いているのだ。
「それなら……」
答える麻奈美には緊張が浮かんでいる。
「では少しだけ」
中年はタオルをつまみ上げ、少しばかり浮かんだだけで、まだ少しも肌を出していないうちから、頬の桃色が強まった。
そのままずらす。
ここで中年が狙ったのは、鎖骨よりもう少し下にかけ、乳房の端っこが少しだけ見える上手い位置にやることだ。
「あっ……」
上端が一センチか二センチほど、本当にその程度だけ見えただけでも、瞳が真下へ向けられていた。恥じらいが強まり、頬の染まり具合は増していた。
やだ……どれくらい見えてるの……?
と、そんな声が聞こてくるかのようだ。
「ではオイルを使っていくので、ヒヤっとするかもしれないけど、我慢してね」
中年は瓶からオイルを手に垂らし、それを手の平に馴染ませる。親切心を演じるために体温で温めて、ひんやりとした感じを減らしてから、肩から鎖骨にかけての塗り伸ばしを開始した。(いいねぇ? この肌触り)
オイルのぬかるみを介してはいるものの、皮膚の表面に指を滑らせ、触り心地を楽しんだ。
(いいお肌だ。いい石鹸を使って、美容に良い食事をしているのかな?)
手の平で肌を撫で、ひとしきり塗り広げたオイルが皮膚に染み込むのを見計らう。
「どうかな? オイルの感じは」
「ちょっとだけヒヤっとしました」
「感触が嫌だとか。そういうことはありそうかな?」
建前としては、評判の悪いオイルを本格導入するわけにはいかない。これは駄目だろうと思ったら、その場で言って欲しいものとしている。
「……うーん。ないかと思います」
真奈美としても、何かを言った方が良いのだろうかと、少しは考えて話そうとする素振りを見せたが、とはいえ何もないようだ。
「ではこのままやっていくけど、途中からやっぱり嫌だとか、ヒリヒリして皮膚に影響を感じるみたいなことがあったら、なるべく早めに言うようにしてね」
「わかりました」
「それじゃあね。オイルは手足にも広げていきます。バストアップが目的でも、まず胸の周りの血行を良くした方がいい。で、その周りに当たる部分。腹とか鎖骨とかいった部分の、さらにその周りも血行が良い方がいい。究極的には全身をほぐした方が良い。手足など末端部分にもやっていくからね」
もっともらしい理由を作り上げ、全身へのタッチが許される土台を固める。
真奈美の反応を伺うに、そういうものかと思い込み、特に疑ってはいない様子だ。
アロマの香りが効いている。媚薬も少しずつ効果を現し、そしてオイルの効果が出る頃には、全身がポカポカと暖かいかのような、火照った感じになるはずだ。
中年はさらに手の平にオイルを取り、両手に塗り伸ばす。
(すべすべで良い手だねぇ?)
内心の邪悪を本当に内心だけに留めきり、表面的な表情は真剣そのもの、ふとした拍子に真奈美の視線が来ても、疑われることはない。
中年は手への触り心地を味わった。
マッサージにかこつけ手を握り、手首や手の甲を細やかに撫で回し、やがて肘や二の腕にかけて伸ばしていく。左手にオイルを塗る際も、やはり指の一本ずつを細かく触り、両手で包んで握ってみたり、好きなように楽しんだ。
足に関してはタオルを膝までずらしてやり、指先から膝にかけて塗り伸ばした。
足の裏に塗る時は、くすぐったそうにしていたが、ふくらはぎをモミモミとする時は、どうにも緊張のご様子だ。
「ではもう少し上の方もやっていこうか」
「え……」
タオルを持ち上げ、太ももを半分まであらわにする。
「どうしたのかな? スカートの時とか、みんなこのくらいは見えているものだけど」
「そ、そうだよね? このくらいは普通……なので、大丈夫です……」
本当は大丈夫じゃなさそうな、強張った緊張感が顔からひしひし伝わった。
(うーん。もしかして、丈を長めにしているタイプかな?)
街で見かける中高生は、大なり小なり脚を出しているように思うが、膝まで隠れる丈にしている子も見かける。さらにはズボンを選んでいる子もいるだろうから、この子はこれしきの露出にさえ慣れていないのかもしれない。
(ま、恥ずかしがり屋さんの方が虐めて楽しいからねぇ?)
中年は心の内でほくそ笑む。
もし、今の表情をきっちりと顔に出していたのなら、下品なまでにヨダレを垂らし、いやらしさに溢れているはずだった。
*
気になる、凄く気になる……。
というのが真奈美の心境だ。
真奈美の身体にかかっているタオルは、きっちりと広げていれば、肩から足の先までまんべんなく、首から下は全て隠せる。それがマッサージの進行に合わせてずらされて、乳房がほんの少しだけ出ていることが気になった。
乳房の露出も、上端が数センチといった具合だ。
世の中、ファッションで胸の谷間を出している女性もいる中で、これしきは露出のうちに入らないという感覚もあるのだろうが、真奈美に言わせればとんでもない。薄くて、控え目で、さして色気などないかもしれないが、男の目から見てどうであれ、肌を出す真奈美からすれば恥ずかしいのだ。
脚もそうである。
真奈美の場合、スカート丈は膝の皿のラインに合わせ、膝くらいまでは出しているが、それ以上の露出は普段はしない。せいぜい、体操着の短パンが短めなくらいなもので、それも本当はもう少し長い方が落ち着くくらいだ。
クラスの友達に言わせれば、真奈美の羞恥心はさすがに強すぎるものらしい。
自覚がないことはない。
さすがに過剰ではないかと思うことはあるのだが、恥ずかしいものは恥ずかしいから仕方がない。
「うーん。今度はうつ伏せになってもらおうかな」
「あの、タオルは……」
「もちろん隠したままで大丈夫。オジサンが持ち上げておくから、そのあいだにうつ伏せになってごらん?」
中年はタオルをつまみ上げ、身体とタオルのあいだに隙間が生まれる。
「じゃあ……」
真奈美は姿勢を変え、うつ伏せになるなり背中にタオルはかけ直される。肩から足にかけ、きちんと隠れたことに、不安で落ち着かない感じは軽減される。
かと思いきや、すぐだった。
「次はね。背中に塗っていくからね」
「えっ、あっ……!」
思いっきり、大胆にタオルがどかされて、すぐさま背中は剥き出しになった。わざわざ隠し直した意味もなく、むしろ少しでも安心した隙に露出させられ、真奈美は一気に顔の赤らみを増していた。
(嘘っ、ちょっと……これじゃあ、背中が全部……!)
タオルの感触から、骨盤のラインより少し上まで隠れているとわかるが、それより上は全てが丸出した。
うつ伏せで、胸は見えないかもしれない。
腕を下にしているから、覗き見ることもできないだろう。
しかし、背中が丸出しなだけでも十分に……。
(くぅぅぅ……! は、恥ずかしいってば……!)
「こちらにもオイルをやっていくからね」
中年は真奈美の心境など知りもしないように、平然とオイルを塗り広げる。手の平の温かな温度が当たり、皮膚に馴染ませてくる感覚に、とても穏やかではいられない。どうしても落ち着かない。
確かに、胸に触られる可能性は理解して、承知でここに予約を入れた。
不快とは言いたくないが、、男性の手が素肌を撫で回してくる感触は言い知れないものがある。
肩甲骨に、背骨のラインに、腰のくびれに、その全てにまんべんなく塗り広がり、皮膚がしっとりしたところへ、さらにオイルが垂らされ広げられていく。
「今、どんな状態かわかる?」
「え? っと、どんな状態ですか?」
「皮膚がオイルで濡れてきて、水分を帯びるでしょう? ヌルヌルっとした感じで表面が塗り固められていってね? 光でテカテカになっているんだ」
視覚的にどう見えるかを教えられ、それはますます真奈美の羞恥を煽る。
「では足の方も」
「やぁ…………!」
タオルを上にずらされて、脚がほとんど丸出しとなった。
ミニスカートで出歩く女性なら、露出度合いには問題を感じないことだろうが、真奈美の感覚からすれば大問題だ。
ずらしたタオルは折り畳まれ、もはやお尻だけが隠れている状態だ。
「はーい。じっとしてね?」
中年は遠慮も無しに太ももに触り始めた。
……わかっている。
(うん。わかってるよ? マッサージだって、変な目的じゃないって、わかってるよ? けど、でも太ももって……!)
両手で包み込む形で、膝の裏側にオイル盛りの手が当たる。そのまま上下に動かすことで、中年はオイルを塗り伸ばす。
(ううっ、手が……!)
上下に動くマッサージで、皮膚の内側を押し流すかのようにしてくる中年の手は、今にもお尻に触れて来そうな、ギリギリのラインにまで迫ってくる。
それを左脚にも行われ、今度はこちら側の尻たぶに指が接近してくるのだと、真奈美は緊張で強張ってしまう。
(で、でも……ヒップアップは頼んでないし……お尻は触らないはずだし……)
ただし、胸へのタッチは時間の問題だ。
そう、わかっている。
自分で決めて、自分で予約してここに来た。覚悟しているはずだったが、マッサージの進行によって、その時が着実に迫っているかと思ったら、何か危機感のようなものが芽生えていた。
このままじゃ触られちゃう――とでも言うような気持ちが膨らんでいた。
(そうだよ。自分で来たんだから、危機感みたいのはおかしいもんね。何か、別のことを……別のこと考えたら、気が紛れるかな……)
不安や恥ずかしさを少しでも誤魔化すものは何かないのか、考え事のネタを脳内から掘り起こす。
(そうだ。そういえば、なんか妙に暖かくて、ポカポカして……)
ふと、真奈美は気づいていた。
アロマ成分が体内で分解され、ドリンクの効能も血中に入り込み、皮膚にはオイル成分が浸透している。
これらの作用によって、少しばかり体温は上がっていた。
「このオイルも血行促進効果があるんだけど、そろそろ温まってきたかな?」
「……はい。なんか、ちょっと」
室温によっては、そのまま暑く感じることもあるだろう。
「また仰向けになれるかな?」
「でも、そしたら……」
ブラジャーがあるとはいえ、限られた布面積しかない上半身が見えてしまう。
「なら、もう一枚タオルを持って来よう。最後には取らなきゃいけないけど、最初のうちは隠しておこうね」
「なら、それでお願いします」
真奈美は気づいていない。疑問すら抱いていない。
タオルは後々必ず取り去るもので、身体を隠しておくのは今のうちだけであると、中年はさりげなく述べている。それを真奈美は自然と受け入れ、疑問や抵抗の気持ちすらなく、そういうものだと感じてしまっている。
真奈美は仰向けになった。
白く薄手の、乳房を隠すためだけの面積しかないタオルが、その通りに胸を隠している。折り畳まれた方のタオルは、うつ伏せの尻から仰向けのアソコへと、位置はそのままに隠す対象を変えている。
(裸に近い……ほとんど……)
露出度を思えば思うほど、恥ずかしさを訴える信号が顔中を駆け巡る。
「次はお腹に塗っていくからね」
ヘソの上へと、瓶から直接オイルが垂らされ、ぬるっとした粘性のある水たまりが円を広げる。
それが手の平で塗り伸ばされ、真奈美は腹部の皮膚で中年の手を感じた。オイルを挟み、よく温まった手の温度を感じていると、それが妙に気持ち良く感じるのだ。
(マッサージとしては気持ちいいけど……)
中年の手で触られて、それが嬉しいわけではない。
気持ちいいけれど、不快感はあるという、何か相反した感覚が真奈美にはあった。
(とにかく、我慢しないと……)
自分から来て施術を拒否する選択肢は、やはり真奈美の中にはありはしない。嫌だと感じることはあっても、説明を聞いた上できちんと同意し、それを後出しで覆すのは失礼で言い出せない。
(でも、やっぱりマッサージとしては……なんだろう、この気持ち良さ……ぞわぞわ、ムズムズするような……)
例えるなら、大量の蟻が歩き回るようなくすぐったさ、それともむず痒いというべきか。そんな感覚が今までオイルを塗り込んだ箇所に広がり始めていた。
指がささやかに押し込まれ、手の平全体を使った圧が来るのも、心理的な不快感と区別をつければ、肉体的には心地が良い。
「どうかな? 気持ち良さの方は」
「……はい。気持ちいいです」
それは確かだ。
ただ、タオルさえどかしてしまえば、布の少ない胸が見えてしまう。布の少ないアソコが見えてしまう。心許ない感じは否めない。
「このあたりで、少しだけ際どいところをやっていきたいんだね」
中年が胸のタオルを触ってきて、真奈美は一気に不安になる。
「あ、あの……もうどかしちゃうんですか……?」
目が潤んだ。
つぶらな眼差しを向け、目が無意識に許しを求めていた。
「これは困ったな。じゃあこういうのはどうかな? 胸が少しだけ、ちょこっとだけ見えるくらいにずらして、そこからだんだんと慣れていくのは」
と、中年は妥協案を出す。
「それなら……なんとか……」
いいや、本当はそれすらも……。
かといって、バストアップが目的なのに、中年を困らせるわけにもいかず、真奈美は妥協案を受け入れる。
タオルが上にずれ、乳房の下弦が数センチほど見えてしまった。
(や、やだ……やっぱり……!)
羞恥が強まる。
ほんの二センチ程度の露出だが、平らに近い薄らかな膨らみは、確かにタオルからはみ出ていた。その間近に指が置かれて、真奈美は一気に全身を強ばらせた。
ピアノタッチの四指が左右それぞれの乳房に触れ、下弦を指先だけで揉んでいる。
(うそっ、本当に――本当に触られちゃってる……)
辱めを受けている感覚に、顔が燃え上がりそうだ。
「どうかな?」
尋ねられ、真奈美は大いに困る。
(だって、答えにくいよぉ……)
乳房に触れらる感覚を答えるなど、恥ずかしいに決まっている。
「ねえ、どうかな?」
しかし、中年は悪気もなく繰り返し尋ねてくる。
こうなっては追い詰められ、答えずにはいられない気持ちに陥る。
「き、気持ちいい……です……マッサージとして…………」
あくまでマッサージとしてのことであると、くれぐれもわかって欲しい意思を込め、真奈美は快感を白状した。
本当に気持ちいいのだ。
指の当たった部位だけがピンポイントに揉みほぐされ、ぐにぐにとやられ続ける感覚で、乳房の芯がむずむずとしてくるのだ。触られているのは端っこなのに、乳首を通した芯の部分に、何か甘い電流めいたものが生まれかけ、奇妙な気持ち良さが広がり始めている。
これは性的な快感なのだと、真奈美はどこかで悟っていた。
(マッサージでそういう気持ち良さを感じるなんて、いやらしいし、バレたくないよ……)
真奈美は唇をぐにゃりと歪め、恥じらいで顔を燃やしていた。
「うーん。乳房を触られてね? 不快感はどうか、我慢できそうかって意味で聞いたんだけど」
「え……」
一瞬、真奈美はポカンとする。
「気持ち良かったんだね? マッサージとして」
そして、気づいてしまった。
今の中年の言い方は、そういうことにしておいてやろう――という意図である。本当は別の意味で気持ち良かったのはわかっているが、気づかなかったことにしておこう。そんな気遣いの意思が見えてしまい、顔から炎が噴き出そうな勢いだった。
(うそっ、うそうそ! 絶対バレちゃってる!?)
そういう快楽を感じたと、中年にはしっかりと気取られて、いっそ死にたい衝動に駆られていた。穴があったら入りたいということわざの通り、せめてどこかに入り込み、密閉空間の中にこもりたかった。
「まあね。感じちゃう子も多いから、エッチな快感も意外とおかしいことじゃない」
(フォローしないで……)
追い打ち、死体蹴り。
そういうことをされている気にしかなりはしない。
「大丈夫、普通だよ普通」
励まされると、余計に自分がみっともない。
「さあ、続きをやろうか」
そして、その時だった。
(え? や、やぁ……!)
急にタオルをどかされて、真奈美は思わず両腕で胸を隠していた。ぎっしりと、固いクロスで抱き締めて、ブラジャーの存在にも関わらず、全力で胸を守っていた。
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