前編 中編




 そして、彼は凛を脅迫した。
「君はアイドルの渋谷凛だよね?」
 そんな風に言ってやり、すると凛は見るからに緊張して、全身を指先にかけてまで強ばらせていく。
「今までの動画、見る? ネットに上げようか? 顔とパンツがばっちりと一緒に映った瞬間なんかもあるよ?」
 コレクションの自慢のように、彼は今まで撮った写真や動画について語って聞かせ、そこには何がどれほど揃っているかを凛本人へと教え込む。もう何日も前から繰り返し、おびただしい枚数の逆さ撮りを集め、凛が現在所持している下着の色を把握していること、様々な風チラ写真を顔付きで撮影していること。
 あらゆることを写真を見せつけながら語り聞かせて、流出させることは簡単だと脅してやる。
 だが、言葉だけの脅しでは済まさない。
 おもむろにポケットに手を突っ込み、実はナイフを持っていることまでアピールすると、凛は完全に逆らう気力を失っていた。
「……どうすればいいの?」
 凛の声は震えていた。
 金、セックス、どんな要求をされるだろうかと、完全に怖がっていた。
「まずはここから移動しようか。濡れちゃうからね」
 彼はそう提案すると、まずはバス停の屋根に目をやって、そこにビニール傘が放置されているのを見つけた。
「さあ、あっちへ行こう」
 ともかく、彼は傘を差す。
「ほら、もっとこっちへ」
 歩き出す際、さも傘の内側に入れるためであるように、腕で肩を抱き寄せる。
「ひっ」
 そんな悲鳴が聞こえた。
「そうそう。風で捲れちゃうからね。押さえて置いてあげるよ」
 彼はそんな風に言いながら、手の平を尻へ移して、すっかり濡れてしまったスカート越しに尻を味わう。
「ほーら、こうしないとおパンツが見えちゃうからねえ?」
 尻肉をもみもみと、こんな形のエスコートで歩かせている最中、凛は下ばかり向いていた。
 前髪を垂らし、毛先から滴を落としながら、凛は肩を震わせている。指に力を入れ、尻肉に食い込ませるたび、ブルッ、ブルッ、と、寒気でも走ったように震えるあたり、よほど鳥肌が立っているらしい。
 そのまま、どこか雨宿りができる場所はないかとしばし彷徨い、近くにあった高架下へと辿り着く。頭上を電車が行き来するその下で、柱を背にして凛を立たせ、彼はニヤニヤと妄想を膨らませる。
 さて、どんなことを要求しようか。
「まずはシャツから脱いじゃおうか」
 カメラを向けながら、彼は脱衣を命じる。
「……そんなこと……ひっ!」
 そっぽを向き、拒みかける凛に対して、再びポケットの内側に忍ばせたナイフをちらつかせ、凶器による脅しに凛は引き攣り青ざめる。
「脱げるね?」
 こくっ、こくっ、と、凛は涙目で頷く。
 動画撮影のカメラの前で、凛はワイシャツのボタンに指をやる。それが命乞いであるかのように、心なしか必死に脱ごうとしているものの、凛は明らかに手こずっていた。脱がなくては命が危うい危機感と、それでも裸を拒む羞恥心で、凛の心には反発でも起きているのかもしれない。
 まるで絡まった糸を解こうと苦戦しているかのような、ボタンを外す行為への手こずりぶりを、彼は楽しく鑑賞していた。
 やっと、ボタンが一つ外れる。
 次のボタンに移れば、またしても指先で苦戦して、ただボタンを外しきるだけでも、一体どれほど時間がかかったことか。

 カァァァァァァ……!

 大胆な赤らぶりを披露しながら、凛はワイシャツを左右に開く。
 その下にあるキャミソールは、すっかりとまんべんなく水を吸い込み、内側から肌が透けていた。ヘソの影がくっきりと、フェミニンな花柄の刺繍を入れた水色のブラジャーも、よりはっきりと浮き上がっているのだった。
「スケスケだねぇ?」
 と、言葉をかける。
「うぅ……!」
 頬がピクっと弾み、凛の赤らみはさらに濃くなっていた。

 パシャリ、

 スマートフォンを向け、ビデオカメラでは動画撮影を行う一方で、もう片方の手では写真撮影を開始していた。
「ひっ!」
 撮影に応じて、震えた声を凛は漏らす。

 パシャッ、パシャッ、パシャッ、

 大きなシャッター音声を鳴らすことにより、撮られている実感を凛に与える。
「そのキャミも脱ごうか」
「は、はい……」
 凛の涙目から、いよいよ滴が流れ落ち、頬を伝って顎先から地面に垂れる。
 キャミソールを両手によってたくし上げ、腹から順々に露出が進む。ブラジャーが曝け出される流れに沿って、キャミソールは足下のワイシャツへと重ね置かれた。
「スカートをたくし上げなさい」
「…………」
 凛は無言でスカート丈を握り締め、ゆっくりと持ち上げる。

 パシャ、パシャ、パシャ、パシャ!

 丸出しのパンツも、生のブラジャーも、どちらにもスマートフォンを近づけて、それぞれをアップで映した挙げ句、直立の全身もきっちりと収めていた。
「いい写真がどんどん増えてるよ?」
「うっ、うぅ……」
「お? パンツから毛が透けてない?」
 そう気づいた彼は、確かめんばかりにしゃがみ込み、ぐっと顔を近づけた上、やはりパシャリと撮影する。スマートフォンの画面には、水色の生地の向こう側にある陰毛の黒が薄らと、わずかながらに見えていた。
 そして、そんな陰毛の透け画像を凛に突きつける。
「ほら、透けてる透けてる」
 証拠を直接本人に見せびらかし、凛の赤らみはさらに加速していた。
「やっ、やぁ……!」
 凛は顔を逸らしていく。
「見なさい」
「うっ、くぅ……!」
 きちんと視線を向けるように強要すれば、羞恥に歪みきった真っ赤な顔で、凛は自分自身の下着を凝視する。
「透けているのがわかる?」
 尋ねると、こくっと頷く。
「いい子だ。ブラも外そうね」
「そんな……!」
 下着以上の露出を要求すると、赤面のままに絶望を浮かべた。本当なら、もっと青ざめた蒼白な顔で浮かべる表情が、真っ赤な顔に広がってた。
「うん?」
 彼はポケットに手を近づけ、中身を取り出そうとする素振りを見せる。
「いやっ、脱ぐ! 脱ぐから……!」
 たったそれだけで、凛はあっさり言うことを聞き、慌てて背中のホックに両手を回す。ボタンの時にも負けない苦戦ぶりで、何分もかけて手こずる凛は、すぐさま焦り始めていた。
 きっと、乳房を出さないと死ぬかのように思っている。
 生殺与奪を握る相手に、そうしなければ許しを請えないのに、どうしても恥ずかしいせいで苦戦して、それが余計な焦りを招く。

 脱がなきゃ! 早く! 早く脱がなきゃ!

 というような。
 大慌てな心の声が聞こえる気がする。
 やっと、後ろでホックが外れ、凛はカクカクとした固い動きでブラジャーを脱いでみせ、きちんと両手を下げて乳房を曝け出していた。隠したら何を言われるかわからない恐怖から、命乞いのようにそうしたのが、全身から信号でも放たれて来るようにひしひしと伝わった。
「可愛いおっぱいだ」
「うっ……!」
「乳首が突起しているよ? 興奮してるの?」
「ち、ちが……いえ、その……し、してます…………」
 さぞ屈辱であろうに、そう答えた方が、刃物を持つ男に対して安全だと思ってか。その方が刺される確率を減らせると判断しての、屈辱をぐっと堪えた返答を凛は行う。興奮したから許して下さい、そんな気持ちが大いに感じられたのだった。
「へえ? してるんだ?」
「は、はい……み、見られて……突起、しました…………」
 惨めさに歪む表情は、ぐしゃぐしゃとしか言いようがない。頬も目尻も、顎も額も、顔のパーツのどれもこれもが滑稽に歪んでいる。
「じゃあ、スカートも脱ごうね?」
「はい……!」
 凛はスカートでも苦戦して、時間がかかればかかるほど慌てる様子をまたしても披露しながら、一分以上はかけて脱いでいく。
 ショーツ一枚の姿となり、心なしか蒸気が上がって見えた。
 もちろん、本当に顔から煙が出るわけがない。
 しかし、赤らむあまりに熱っぽく、触れば火傷しそうに見える羞恥顔から、何となく蒸気の上がる気配が感じられてならないのだ。
「壁に手をついて、お尻を軽く突き出そうか」
「はいっ」
 凛は従う。
 ロングヘアーのかかった背中と、それに連なる尻が向けられ、バックの布は水色無地の下着がくいっと少しだけ飛び出ていた。
 彼はスマートフォンをポケットにしまっていき、片手では動画撮影を維持したまま、もう片方の手で尻を掴んだ。
「ひゃっ!」
 見るからに全身が強張る。
 彼はしばし撫で回し、手の平で感触を味わい尽くして、ペチペチと叩いて遊ぶ。
「いやぁ……うぅぅぅ…………」
 やがて思いついたようにショーツを引っ張り、尻の割れ目に食い込ませ、擬似的なTバックにしてやると、剥き出しの尻たぶを交互に叩いた。

 ぺん! ぺん! ぺん! ぺん!

 右、左、右、左――。
 よく音が鳴るように意識して、平手打ちで尻肉を揺らして遊ぶ。
 さらに今度はTバックの紐を、紐状に収縮した布を引っ張り、そうすることで凛のアソコに刺激を与えた。ぐい、ぐいっと引くことで、アソコへ与えるはずの摩擦によって愛撫をすると、しだいに甘い声が聞こえてきた。
「あっ、あぁ……いやぁ…………」
「感じてる?」
「……いえっ、えっ、あ! はい!」
 否定すれば刺されるとでも思ってか、反射的な言葉を直ちに取り消し、凛は慌てたように肯定した。
「偉い偉い。感じてるんだね」
「感じて……ます……あっ、あうぅ……んぅっ、んぁぁ……!」
 彼はショーツ越しのワレメに指をやり、前後になぞることさえ始めていた。始めは雨で濡れての水気しかなかったが、続けるうちに粘液のぬかるみが感じられ、指を離せば糸が引くまでに愛液は分泌されていた。
「ほら、もっと感じていいんだよ?」
「はいっ、いぃぃ……! んっ、ん! んあっ、あっ、あっ、あっ!」
 腰が左右にくねくねと動き出し、喘ぎ声も大きなものとなっていく。
 指先に感じる愛液も、明らかに量が増えていた。
「あぁ……! あっ、あぁぁ……!」
 完全にヌルヌルだ。
 ただ雨で濡れていた状態から、愛液を吸いきった状態へと移り変わって、刺激のリズムに合わせて尻がフリフリと振られている。彼の眼前で前後左右に、刺激への反応でついつい動いてしまう形での腰振りダンスが披露されていた。
「よし、今度は自分でパンツを下げろ。尻が出ればいい」
「うぅ……はい……」
 凛の両手が伸びてきて、細い指がゴムへと潜る。
 地面に向いた凛の顔は、果たしてどれほど壮絶な恥じらいを浮かべているか。
 ショーツが下がり、生尻が徐々に現れる。
「もっと突き出せ、自分で割れ目を広げて尻の穴を見せろ」
「は、はい……」
 思春期の少女には、恐るべき屈辱に違いない。万力で脳を締め上げ、頭の中身を潰してしまう勢いで、激しい恥辱が吹き荒れているに違いない。
 凛の両手が自らの尻たぶを掴む。
 柔らかな肉に、左右の尻たぶに指が食い込み、そして左右へ開かれると、放射状の雛菊皺があらわとなって、彼はすぐさまスマートフォンを取り出した。

 パシャ! パシャ! パシャ! パシャ! パシャ! パシャ!
 パシャ! パシャ! パシャ! パシャ! パシャ! パシャ!

「ほらほら、撮ってるよ? お尻の穴を撮影してるよ?」
「うぅぅぅ……!」

 パシャ! パシャ! パシャ! パシャ! パシャ! パシャ!
 パシャ! パシャ! パシャ! パシャ! パシャ! パシャ!

 肛門をただ撮っているわけではない。
 シャッター音声を聞かせてやり、恥ずかしい部分がこんなにも撮られ続けているのだと、実感を与えてやるための撮影だ。羞恥に苛み、悶絶した顔が見たいがための行為である。
 もちろん、今の彼には尻と背中しか見えていない。
 だが、球体浮遊型カメラを透明化して、凛の表情もきちんと記録している。顔から炎が噴き出る光景をきっちりと、間違いなく撮影している。
「肛門ヒクヒクさせて?」
「ヒクヒクって……」
「力を入れたり抜いたりして、ヒクヒクさせて?」
「こ、こうでしょう……か………………」
 声が一層のこと震えていた。喉に電動マッサージ器か何かを当て、ブルブルと声を振動させているかのようだった。

 ひくっ、

 肛門が収縮する。
 力の入った肛門は皺を内側に丸め込み、脱力することで元の形へと伸びている。

 ひくっ、ひくっ、ひくっ、ひくっ、ひくっ、
 ひくっ、ひくっ、ひくっ、ひくっ、ひくっ、

 肛門がリズムを刻んでいた。
 秒刻みで一定の収縮を披露して、それが延々と続いている。

 ひくっ、ひくっ、ひくっ、ひくっ、ひくっ、
 ひくっ、ひくっ、ひくっ、ひくっ、ひくっ、

 その様子に、言うまでもなくビデオカメラを向けていた。
 肛門が蠢く様を動画に収め、最後には……。

 最後にはショーツを脱がせ、膝のあいだに招き入れて座らせていた。

 胡座をかいた脚の中に尻を置かせて、背中に抱きつく形で密着して、彼は凛の体を両手でまさぐる。アソコのワレメから愛液を掻き取って、乳房を活発に揉みしだき、突起した乳首を指先でクリクリと転がし遊ぶ。
「ほら、見てごらん?」
 凛に動画を見せてやった。
「やっ、やぁぁぁぁぁぁ…………!」
 壮絶な炎が頭から噴き上がり、彼はまさしく羞恥の熱気に肌を炙られていた。

 肛門ヒクヒク運動を本人に見せつけたのだ。

 動画鑑賞を強要して、目を逸らすことは許さない。
 あえて脅迫するまでもなく、見なければナイフをチラつかされると、凛はとっくに学習している。だから始めから目を逸らさず、とはいえ最初の一瞬だけ、バネに弾かれた勢いで顔を横に向けていた。
 逸らした顔を直ちに画面に向け直し、顔を燃やしながらの鑑賞をしているわけだった。
「あっ、あ……ああ……あぁぁぁ…………!」
 恥ずかしさのあまりの声を、なんと形容すべきだろう。
 こんなにもマニアックな映像を撮られてしまい、それを自分で確認することで、締め上げられた喉から漏れる呻きは、実に耳に心地良い。
「へへっ、このまま最後まで……」
 しかし、その時だった。

「こら! 何をしている!」

 驚きと共に顔を向け、すると声の聞こえた方向には、一人の警察官が鬼の形相を浮かべてずかずかと、勢いよくこちらへ歩んで来ていた。
 よほどの正義感の持ち主か、このままでは胸倉でも掴まれて、殴られそうな予感さえするものの、彼は決して焦らない。この星の人間ではない、トゥーサッツ星から来た彼には、こうした事態など恐れるに足らない。
「認識操作をやり忘れたか」
 彼は小さくぼやきつつ、ポケットの中に手を入れると、直ちにワープ装置を起動する。
 一瞬にして、宇宙船の中に戻っていた。
 現場の警察は、急に解放されることとなった凛は、果たしてどんな反応をしていることか。そこにいたはずの中年が、何かの切り替えのようにパっと瞬間的にいなくなるなど、きっと呆気に取られているだろう。
 宇宙船の座席で背もたれに背中を沈め、彼は口角を釣り上げる。
「ま、今回はここまでにしておくか」
 だが、次は……。
 次は最後までしてやろうか?

     *

 数日後。
 警察に保護されて、しばらくは仕事と学校を休んだ後、ようやく今まで通りに振る舞うことができるようになり、渋谷凛は日常生活を取り戻す。
 だが、見る人が見れば、普段の笑いにも影がかかっていることがわかるだろう。
 そんな凛の元へと、とあるメッセージとURLが届いていた。

『この前のオジサンだよ?
 君の記録を投稿したから、是非見てね?』

 凛は戦慄した。
 終わったはずの恐怖が蘇り、顔面蒼白になりながら、指はアドレスに向けて動いてしまう。震えた指でスマートフォンの画面を突くも、何度も何度も、アドレスとは関係のない位置を繰り返し叩いてしまう。
 やっと、凛はアドレス先へ移動した。

「………………っ!?!?!?」

 そして、さらに青ざめた。
 会員制のサイトらしいそこには、いくつもの動画サムネイルが並んでいた。
 タイトル付きの動画には、それぞれ小さく時間が記され、ほとんどが十分以上にわたる長々としたものとなっている。
 捲れ上がったスカートがサムネイルになっていた。電車でつり革を掴む少女にモザイクをかけ、凛であることをわからなくしつつも、痴漢動画がアップされていた。肛門を大きく映したサムネイルには、『アナルヒクヒク運動』というタイトルが添えられていた。

「そんな……そんな…………」

 あの痴態の数々を楽しむのは、あの時の中年だけではない。
 不特定多数の人間さえ、凛の恥辱を娯楽として消費するのだ。



 
 
 

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