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 堀はショーツのゴムに指をかけ、五人の視線に見守られ、視姦されながら脱ぎに入って、実際にはなかなかショーツを下げられずにいた。
 教師によってサインをさせられ、同意を強要されることとなった書類には、恐ろしいことに性器や肛門について調べる旨まであった。人権はどこにいったのか、どうしてこんな検査が存在するのか。末恐ろしい内容に、強要とはいえ応じてしまった。
(最後まで受けなきゃ終わらない。って、それはもちろんわかるわよ)
 わかる、わかるのだが。
(だからって、なんで包囲されなきゃいけないの!?)
 堀が囲まれていた。
 円陣の中心に立たされて、その中でショーツを脱がされようとしているのだ。
(もう拷問じゃない……)
 こんな刑を受ける謂われはない。
 それなのに、まるで犯罪者として扱われている屈辱が込み上げる。
 堀はそんな恥辱に歯軋りして、視姦に肌を炙られる感覚を覚えながら、ショーツを下げていくのだった。
(やばい…………)
 いざ脱ぎ始めると、生尻を露出して、アソコまで晒す未来がすぐそこに迫り、顔に油でも注いだような羞恥の炎が吹き荒れる。顔から火が出る現象が存在すれば、とっくに周りを燃やし始めている。
 下がるショーツが足首に達し、続けて両脚を穴からどかす。
 もう何も身につけていない、完全な丸裸となって、堀は自分の脱いだショーツを握り締めながら、片手ではアソコを隠して立ち尽くす。
「それは預かっておくよ」
 教師は堀のショーツを指す。
「……やだ」
 つい、小さな声をこぼしていた。
「何か言ったかな」
「いえ」
 堀はきつく歯を食い縛り、強張った頬を震わせながら、右手に握るショーツを差し出す。ただの衣類だというのに、身内を差し出すような無念に溢れ、悔しさで頭がどうにかなりそうだ。
 右手が空くなり、堀は両手ともを使って、ほとんど反射的にアソコを守る。手の平がぴったりと重なり合い、大切な部分のガードを固めていた。
「気をつけ」
 単なる姿勢の指示が、今の堀には屈辱的な命令だ。
 腕を左右に下ろし、背筋を伸ばすだけのことで、堀はより一層の屈辱に震え、目の前の教師を睨み殺しそうにさえなってしまう。
 アソコも見えていた。
 教師の視線はそこへ向き、薄らとした陰毛が視姦の対象となっている。その下にあるワレメも、後ろからは生尻も、全てがジロジロと眺め尽くされている。
「ほら」
 教師はショーツを見せびらかした。
 目の前で左右に引っ張り、堀の目の前でこれみよがしに伸ばしてみせ、それどころかクロッチまで裏返す。
「おりものの跡が見当たらないね。新しいのかな」
 こうしたプライベートな質問も、調査の一環だと言われている。
「そうですけど」
「いつ買ったの?」
「何週間か前。そんなに覚えてないです」
「数週間前ね」
 すると、やはり職員がボールペンで紙を引っ掻く音が聞こえ、こんな情報さえも書き込んでいることが堀に伝わる。
「じゃあ、ね。この辺りで、今度は私が中心になっていくので、どうぞよろしく」
 堀のことを覚えているのかいないのか、長髪眼鏡の医師が前に出て、頭の上からつま先にかけ、舐め回すような目つきを寄越してくる。視線で撫でられることが、まるで舌でベロベロとやられるように気持ち悪い。
「まずは皮膚なんかを観察していくので、そのまま動かないように」
 医師が始めるのはさながら点検だった。
 身体のあらゆる箇所に顔を近づけ、肩や二の腕、腹や背中に至るまで、皮膚という皮膚をくまなく凝視する。当然のように乳房も観察され、後ろにしゃがみ込まれた際には尻への視線を強く感じた。
 前にしゃがみ込まれれば、アソコに視線が注がれるのも、言うまでもなかった。
(これって、どういう扱いなの)
 機械の点検のような感覚で、堀にはわからないチェックが行われている。
(耐えきれるの……? 既に頭とか爆発しそうなんだけど……)
 アソコをジロジロと見られることで、脳が沸騰を始めている。頭の中から蒸気が上がり、中身が少しずつ消えていくような感覚に、堀はとっくの昔に耳まで染め上げていた。
「テーブルで横になってね。脚を開いてもらうよ」
「それって……!」
 堀は引き攣った。
 どうせM字に決まっていた。
「さあ、どうぞ」
 テーブルを指す医師に従い、粛々と上がっていく堀は、処刑台に上がる気持ちそのものになり果てていた。これから死ぬかのような顔で、本当は真っ青でもいいはずの表情が、しかし熱く真っ赤なのだった。
 テーブルの板に背中をつけ、堀の脚が左右に開く。

 かぁぁぁぁ…………!

 ポーズを変えて、アソコを大胆に目立たせたことにより、より一層の羞恥が堀を襲う。これ以上はもう赤くならないまでに、完全に赤面しきっているはずの顔に、なおも恥じらいの信号が集まりじわじわと広がっている。
 赤面の見た目こそ変わらずとも、皮膚の内側にある羞恥の密度は増していた。
 単に開脚するというよりも、両手で膝をしっかりと持ち上げて、平らになるまで左右に開ききる。そんな細かな指示まで出ている上に、腰の下には厚手のタオルが三重に敷かれ、腰の角度がやや上向きに調整されている。
 アソコばかりか、肛門さえもが丸見えなのだ。
「うーん。実に健康的だ」
 そして、医師は堀の真正面に椅子を置き、アソコと向かい合う形で腰をかけ、改めて性器の観察を始めていた。
(一体どれだけ見れば気が済むの……)
「中身は、と」
 唐突に指が触れてきて、堀は緊張に身構える。
 親指の力によって、ワレメが左右に開かれて、中身が視線に晒されたことにより、堀の頭はそのまま炎の玉となっていた。羞恥の炎に包み込まれて、頬で焼き肉でも出来そうな熱が発せられ、堀はある意味正気ではなくなっていた。
(~~~~~~~~~~~~~っ!?!?!?!?!?)
 心の中に、声や言葉というべきものすらない。
 ただただ、羞恥心を伝える神経信号が嵐のように激しく飛び交い、神経を焼き切らんばかりとなっている。顔から火が出る現象があったなら、首から上はとっくに炭化しきっている。
「処女ですね」
「!?!?!?!?!?!?」
 そこにまともな反応はない。堀の反応は言語を伴うことすらない。
 羞恥を煽られたことに応じて、ひたすら激しく信号が弾けるだけだ。
「お尻の穴は、と。おお、これは綺麗で可愛らしい」
「……っ!?!?!?」
「お尻の穴と、アソコと、胸と、恥ずかしい部分が全て同時に見えているわけだけど、今のお気持ちはどうかな?」
「――っっっっ!」
 堀はいかにも泣きそうな目で、ぐにゃりと変形させる勢いで頬も歪めて、もはや滑稽といえる表情のままに激しく顔を左右に振る、嫌だ嫌だと、必死なあまりのアピールを披露して、それを見た教師も、三名の職員も、それぞれクスっと笑ってニヤけていた。
 そして、こうした堀の反応は、何か学術的な調査対象にでもなっているのか、どうなのか。職員達は忘れずにペンを走らせて、描き込みに励んでいる。
「肛門の皺の本数はね」
「??????」
 堀の瞳がぎょっと大きく見開かれる。
「はい。一、二、三、四、五……」
 皺の一本ずつを指先で丁寧になぞりながらの、本数のカウントが始まって、堀は顔から火柱を噴き上げていた。天井まで届く炎を上げたとまで言わなければ、とても表現したと言い切れないだけの羞恥心が、おぞましくも膨れ上がっていた。
「うん、本数はね」
 医師が数字を職員に伝え、肛門の皺さえ書き込まれる。
「では指を入れてみて、と」
 ビニール手袋を嵌め、ジェルを纏わせた指先で、膣への挿入まで行った。
「………………!?」
 指が、異物が、生まれて初めて侵入してくる。処女膜を傷つけないように、注意を払いながらの慎重な人差し指は、そうして根元まで埋まっていき、堀の穴へと収まっていた。
「おっ、これは!」
 医師は感嘆の声を上げる。
「いいねえ! これは名器! 膣壁にいい感じのザラつきがあって、ペニスを挿入した場合、これが良い具合の刺激となって、通常よりも気持ちいいわけだ。堀京子のアソコはセックスに適した最高の一品というわけだねぇ!」
「!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?」
 性行為にまつわる評価まで下されて、堀の脳では神経がいくつも弾けた。脳のありとあらゆる箇所が火花を上げ、神経がショートして焼き切れんばかりに、許容できないほどの量の羞恥が押し寄せていた。
 だが、医師は決して手心を加えない。
「ではメジャーを」
 そうして教師からメジャーを受け取り、医師が行う作業は計測だった。
 乳首や乳輪に目盛りを当てる。アソコのワレメに、膣口に、クリトリスにも目盛りを当て、性器各部のサイズまで明らかに、それらは順次職員の紙へと書き込まれる。肛門の直径も、肛門から性器にかけての長さも大声で読み上げられ、脳が羞恥に締め上げられていた。
 目には見えない万力で締め上げて、圧縮して潰してしまうかのような、途方もない恥ずかしさに苦しめられ、堀の心の奥底には、羞恥心でショック死する自分の姿でさえも漂い始めているのだった。



 
 
 

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