最初は身体測定らしかった。
「モデルさんのデータはなるべく把握したくてのう? ほれ、体重に対する薬の量の計算なんかもあるしのう」
そんな理由で身長計に背中を預け、背筋を伸ばしたライザは、老年医師でも生徒二人のどちらでもいいから、早く測ってくれないものかと待ち構えるが、三人揃ってただただライザのことを見ているだけで、一向に測ってくれる様子がない。
「あ、あのう?」
どうして測ってくれないのか。
ライザは困り果てていた。
(仮にも裸なのに、あんまり待たせないでくれると助かるんだけどなあ……)
大事な部分こそ隠しているが、アソコや乳首を視線から守ったところで、恥ずかしいことに変わりはない。それどころか、自分だけが全裸で男三人は服を着ている。身分に差をつけられたかのような、貴族と貧民ほどに格差が作られた気持ちがする。
「ら、ライザさん」
「姿勢を正して頂かないと……」
短髪少年と、長髪少年は、言いにくそうな困った顔で告げてくる。
「え、このままじゃダメかなー」
ライザは苦笑いを浮かべてみる。
「すみません」
「腕を下ろして頂けると……」
二人して、非常に申し訳なさそうである。
「あー……ははは……。しょうがないなー……」
もう少しだけ隠していられると思っていたライザだが、仕方なく右腕を下にやり、三人の前に乳房をさらけ出すのだった。
(ううっ、思ったより恥ずかしいなぁ)
見るからに顔が染まって、ライザの赤色は増していく。
目を見張るボリュームの乳房は、丸っこい可愛らしい形でもって膨らんでいた。焦げ茶色の乳首は一目で色の濃さが伝わり、乳輪もやや大きい。当然のように胸に視線は集中して、ライザは恥じらいを浮かべていた。
(あーもう、あたし絶対に顔真っ赤だよ)
一体どれほどの恥じらいが顔に浮かんで、それを見られてしまっているか。そんな想像をしてさえ、余計な羞恥が込み上げる。
「これでいいかな」
と、尋ねてみる。
「あの、まだ……」
「左手が……」
「ええっ、こっちも?」
わかっている。
どうせ全て見せるのはわかっているが、まだ少し待って欲しい思いにかられ、許しを乞う眼差しを返すのだが、二人の申し訳なさそうな面持ちが強まるばかりだ。
(もう、これじゃあ、あたしが二人を困らせてるみたいだよ)
「すみません。お願いします」
「姿勢も関係あって」
「あー、うん。わかったから……」
ライザは左手さえもだらりと下ろし、アソコまでもを晒していた。とうとう全てが視線に晒されしまった羞恥によって、赤面しきった顔の熱はより高まり、頭の中まで染まっているような気がしてくる。
(うううっ! 普通に恥ずかしいし、それに……)
当然、視線は来る。
(こんなことなら、剃っておくんだった……)
ライザの陰毛は伸びきっていて、毛深いためか肛門にまで及んでいる。人に見せることなど考えてもいない密林ぶりで、アソコを晒す恥ずかしさがこれでは割り増しではないか。
みっともない、汚いと思われていたらどうしよう。
そんな不安まで湧いてくる。
「ふーむ。では頼むぞい?」
老年医師は二人に測定を手伝わせるつもりらしい。
「一六一センチ」
ライザの頭にバーが下ろされ、短髪少年が読み上げると、それを長髪少年が紙に書き込む。 そして、次はそちらへとばかりに、老年医師は体重計を指していた。
「体重もかぁ……」
乙女としては、あまり男に知らせたくない情報だが、こんな格好では今更だろうか。なんてことを思うと、自分で依頼を受けておきながらも泣けてくる。
ライザは体重計に足を乗せ、改めて胸やアソコを隠していると、少年二人と老年医師が何かを言いたげにしていた。
(もう、なんでよぉ)
仕方なく両腕を下ろす。
「五二キロ」
声に出される。
「五二キロっと」
そして、やはり長髪少年が書き込みを行っていた。
「うーむ、それにしても」
「な、なんですか」
乳房に顔を近づけられ、ライザは思わず両腕で胸を隠した。
「これまでモデルを頼んで来た子達の中でも、一番の大きさかと思ってのう」
「ええっ、いや……そう言われましても……」
「いやいや本当になかなかじゃ。平べったいのとか、かなり垂れているのとか、色んな胸を見て来たがのう。ライザちゃんはサイズだやのうて、とっても丸っこくて、本当にええ形じゃ」
老年医師はまるで悪意のない顔で、芸術でも評価するように、しきりに頷きながらライザの胸を品評する。
「乳輪がもうちょい小さければ、色なんかもピンクだったら本当に芸術的じゃった」
「す、すみませんね。こんな茶色で」
悪く言われたような気がして、ライザはムっとした顔をする。
「まあそんな顔するでない。次はスリーサイズじゃろうて」
「むー……」
納得のいかない気持ちで老年医師の顔を見て、仕方がなさそうに次に備える。
長髪少年がメジャーの用意を行っていて、次は彼が測定をするようだった。
*
ライザが軽く腕を上げると、長髪少年はまるで抱きつくようにメジャーをかけ、乳首の上をとおして横乳に目盛りを合わせる。一瞬、密着されるのかと思うような接近に、ライザはかなり驚いたが、測定を行う長髪少年も緊張しきっている様子だ。
(脇は剃ってあってよかったぁ……)
とはいっても、剃ってから伸び始め、じゃりしゃりとした見た目である。人前で裸になるのなら、もっと丁寧に処理しておきたかった。
一瞬、目が脇に行く。
(やだ……)
剃り跡の目立つ距離から見られたくなはない。
それに……。
(おっぱいに顔が近いと、余計恥ずかしいというか……)
長髪少年はメジャーの具合が気に入らなくてか、しきりに緩めては締め直す。そのせいか乳首に擦れ、その刺激に肩が悶える。
「んっ、んぁ……」
まずい、この感じはまずい。
「あの、どうかしましたか?」
「ん? ううん? なんでもないよ?」
ライザは適当に誤魔化すが、実のところ困っていた。
――乳首が感じてしまう。
「んっ、ん……」
我慢しないと、感じているとバレてしまう。
快楽を感じてしまうなど、一体どう思われてしまうだろう。喜ばれてしまうのか、いやらしい女だと低く見られてしまうのか。どちらにしても、感じた顔は反応は見せたくない。
「九三センチ」
長髪少年が読み上げる。
「九三、と」
短髪少年が書き込んだ。
(よかった。これで胸は終わったから、もう大丈夫)
ウエストの測定に移ってしまえば、もう乳首に刺激を受けることはない。快楽に体が悶えそうだったと、これでバレずに済むだろう。
だが、メジャーが下に移った瞬間だ。
「おや? 乳首が硬くなっておるかのう?」
言葉による指摘を受け、ライザは真っ赤な顔で全力で首を振る。
「いやいやいやいや! き、気のせいですよ!」
「そうかのう? 感じておった風に見えたがのう?」
「そ、そ、そうですか? いやー、そんなことありませんけど……」
「ふむ、なら見間違いかのう?」
老年医師はそう言って引き下がるが、感じていた事実を暴かれそうだったライザは内心かなりドキドキしていた。心臓が破裂せんばかりに鼓動を上げ、ただ裸を見せているだけでは済まない、新しい羞恥が込み上げる。
短髪少年も長髪少年も、見るからに乳首を意識して、そわそわとした様子になっている。感じたのだろうか、どうなのだろうかと、心の底では気にしているのがよく伝わる。
「気にしないでさ。ほら、早く次次!」
さっさと今のやり取りを流し、何者なかったことにしたかった。
「は、はい。そうですね」
メジャーが腰に巻かれていく。
軽い締め付けと共に、目盛りがへそに合わさった。
「六五センチ」
長髪少年が読み上げる。
そして、短髪少年による書き込みの音が、静か部屋の中ではよく聞こえる。ペン先が紙を引っ掻く音は、自分のデータが取られている実感を掻き立てる。
「うんうん。腰つきもなかなか。歴代でもトップのスタイルじゃぞい?」
「ありがとうございま――じゃなくて! もう少しデリカシーというものを」
「ははっ、そうじゃったそうじゃった」
反省しているのだか、いないのだか。
「あの、次も測りますね」
長髪少年は遠慮がちに測定を進めようとしていた。
「ああ、うん。どうぞ」
ライザがそう答えると、長髪少年はメジャーを緩めてしゃがみ込む。
(ま、前かぁ……)
羞恥の熱を高めながらも、苦笑いを浮かべるライザだが、内心では腰の横側あたりに目盛りを合わせて欲しかった思いでいっぱいである。アソコのすぐ前に男の子の顔が来るなど、これでも裸を見せることさえ初めてなライザにとって、この上なく恥じらいを煽られるものだ。
ライザ自身、びっしりと範囲を広げた陰毛の、長々と毛先の伸びた手入れのなさを気にしている。剃る時は剃っているのだが、今のところ人にアソコを見せる機会のないライザには、常日頃から見栄えを気遣うべき理由がない。
蒸れるから、何となく嫌だから、それで剃ることはあるものの、こうして放置していることもあり、見栄えの悪い密林を見られる羞恥は、ただアソコを見せる恥ずかしさよりも割り増しされている。
寝起きのみっともない顔でも見られた感覚、だろうか。
(こうなるってわかってたら、絶対に剃っておいたのになぁ……)
ツルツルにするか、量を整えるに留めるか、どの程度の処理にするかはともかくとして、ケアをしたかった気持ちはある。
(せめて明日とかにしてもらえば)
思えば、そういったことを思いつく暇もなく、脱ぐ流れになってしまった気がする。
「失礼します」
アソコの上に、茂みに数字が隠れやしないかという心配をしたくなる場所に、メジャーは重ね合わさる。
当然、視線の圧は強まった。
(やっ、ちょっと……)
さらに長髪少年は、毛を指でどかそうと、メジャーの上にかかったものをずらそうとまでしていた。
(うううっ、ちょっとぉ……)
ライザは困り果てた顔をより濃い色へと赤らめていく。
「九六センチ」
「ほほう」
読み上げられた瞬間に、老年医師は感心しきった声を出す。
「お、大きいっ」
短髪少年まで感嘆の声を上げていた。
「そんなに大きくないと思いますけど……」
「いやいや、なかなかのヒップじゃよ。最初に見た時も思ったが、とってもボリューミーで素晴らしい。去年の子なんかは、ほっそりした太ももが美しかったが、ライザちゃんの太い脚っちゅうのは、また別の趣があっての。デカい尻も最高じゃよ」
ここまでライザのことを論評して、しかも去年のモデルと比較するようなことまで言われるのは、嫌なような気もするが、かといって誉められて悪い気もしない。何とも言えない感情が胸に渦を巻くのだった。
デカい、太い。
素直には受け止めにくい言葉も複雑だった。
「あとは乳輪の直径じゃの」
「え?」
「乳輪の直径じゃ」
「へ? え? そんな変なデータまでいるんですか?」
「いるとも。さ、頼むぞ? 少年」
老年医師は長髪少年の背中を叩く。
「は、はい。ではライザさん。失敗します」
改めてメジャーを伸ばした長髪少年は、指で短くピンと張らせたものをライザの乳房に近づける。指が触れ、乳首にもメジャーのこすれたライザは、顎も強ばらせながら快感の刺激を堪える。
「んぅ……」
「その、指が当たってしまいますが、少しだけ我慢して下さい」
長髪少年は礼儀正しく振る舞おうと、理性を失うことはないようにと努めている。ライザに不快感を与えないように、だけど女の子の裸にも興味のある様子で、心が理性と本能のあいだを揺らいでいる。
「八センチ」
(や、やだぁ…………)
大きな乳輪の、なかなかの直径を数字で暴かれ、ライザの顔には苦悶めいたものが浮かんだ。
「やはり大きいのう?」
「悪かったですね! あんまり綺麗じゃなくて!」
「すまんすまん」
本当に反省しているのだか。
「もお、いいですよ。それより、もう終わりですか?」
「次は資料掲載用のスケッチじゃ」
「まだですかー……」
ライザは小さくため息をつき、諦めの念で次に望んだ。
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