全裸検査のある世界 第11話「性器検診」

前の話 目次 次の話




 千奈美は諦めの中にいた。
 この先の性器検診では自ら股を開く姿勢を取り、秘所を見えやすくしなくてはならない。そのために一糸纏わぬ姿となり、こんな丸裸で歩いているだなんて、心のどこかでもう自分の惨めさを認めていた。
 こんな姿で、歩く。
 学校側の指示とはいえ、全裸で移動を行う姿を見て、人はどう感じるだろうか。胸を覆い隠す腕も、アソコをぴったりと守った手の平も、持ち歩いている保健調査票の紙も、次の検診で順番が回れば、全てを解かなくてはならない。
 医師の待ち構える仕切りの区域へ辿り着き、千奈美はその診察台の上に横たわる。この仰向けの姿勢となる瞬間は、まさしく性器を眺めまわしてもらうための準備であり、固めていた恥部のガードは次の言葉で全て解除だ。
「はい。見せてくださーい」
 医師は女の子の気持ちをわかっているのかいないのか。やる気に満ちた表情で、さっそくのように仕事に取り掛かろうと、両手をすり合わせて千奈美の開脚を待ち構えた。
 まずは両腕を解き、仰向けのままの気をつけ。天井を向く乳房は真上へと乳首を突起させ、逆三角形の恥毛帯もこの時点で晒されている。
 平然とアソコを見せびらかす乙女など果たしているか。千奈美が素直に従うのは、そうしなければ終わらないことをわかっているからだ。
(もう……仕方ないんだ…………)
 静かに膝を立てていき、閉じていた太ももを左右に開く。自傷行為というわけではないが、屈辱や悲しみや恥ずかしさで、千奈美は間違いなく自分の心を突き刺している。ほけんだよりにあった指示を思い出し、自分の膝を手に抱え上げ、どうぞご覧下さいと言わんばかりの姿勢となった。
 割れ目の筋がよく見える。そのすぐ下には肛門があり、大きな尻は診察台の上でぷにりと柔らかく潰れている。
「ふむふむ。綺麗なもんだねー」
 医師の顔が接近して、まずは外側の視診が始まった。

 じぃぃぃぃぃ……。

 じっくりとした視線が、千奈美の縦筋をなぞった。
 目が、上下に動いている。視線を使った愛撫ともいえる医師の行為は、ヘラで掘り込んだような綺麗な合わせ目にぴったり沿い、これでもかというほどじーっと見つめた。
 もちろん、これは診察。どんなに小さな異常も見逃さないつもりの医師は、真面目だからこそ顔を近づけているのだ。

 じぃぃぃぃぃぃぃぃ……。

 千奈美の秘所へと息が吹きかかる。無骨な指が割れ目を開き、薄紅色の肉ヒダを開帳する。膣口さえも視線に晒され、耳まで赤い千奈美の顔は、これでもかというほど羞恥に歪みきっていた。
「うん。綺麗な色だねぇ? ん? この血色は――いや、問題無しか。見た目も健康も、どちらも良好のいいマンコだ」
 医師は玩具を楽しむ顔で診察を行って、わざわざ声に出して千奈美に聞かせる。性器へのコメントを浴びせられる惨めさは、千奈美の胸を始終締め付けていた。
(恥ずかしすぎる……)
 さらに指が挿入される。
「んんぅ…………」
 触診目的の中指は、決して愛撫のような動きはみせないが、膣壁を調べるために指腹でいたるところを擦っている。秘所に気をやればやるほど、指の形がアソコでわかり、好きでもない男に入れられている事実を実感する。
 恋人の指が入ってくるなら、それはどんなに甘い時間になっただろう。
 現実にあるのは好奇心に満ちていそうな医師の顔で、千奈美の表情をまじまじと眺めながら指を丹念に動かしている。自分の選んだ男だけを迎え入れたかった領域は、検査の名の元に侵攻され、無残にも検められていた。
 それから、綿棒で粘膜を採取する。
 性器検診が終われば安心というわけにはいかず、お次は臀部検診が待っているのだ。