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 検診日程が前日に迫り、放課後のホームループで女子達の手元には「ほけんだより」が配布されていた。
 そこに書かれている内容は、身体測定と内科検診はショーツ一枚での実施になること。
 性器にお尻の検査もあり、アソコの中身や肛門まで見られること。
 それら検診についての流れが書かれており、明日にでもこの内容を受けることになる平沢千奈美は青ざめていた。
(健一…………)
 電話を介した仮想行為で、二人は間違いなく繋がった。
 その翌日である今日は、健一の顔を見るだけでもセックスのことが蘇り、頭が沸騰してまともに口を利くことができない。慌しいような慌てふためいたような、あわあわとした呂律の回らなさで、今日一日は何も喋ってすらいなかった。
 あとでメールしよう。
 とは思うが、今日はもう恥ずかしくて口なんて聞けっこない。
 だって、健一は千奈美が全裸になったことを知っていて、人の肉棒を想像しながら自慰行為に耽った事実までわかっているのだ。もちろん、それは千奈美の方から誘ったものだが、あれは一時の嬉しすぎたテンションというか、少しばかり冷静じゃなかった部分もある。
 あとで思い出すと、自分があまりにも恥ずかしいことをしていて……。
 もう駄目だ。
 とにかく、今日だけは顔なんて合わせられない。
 だから、今日はメールにしよう。
 ほけんだよりを受け取ったのは、まさに送るメールの内容について考えていた最中で、検診についての内容を見るなり、それまで嬉しかったり恥ずかしかったり、とにかく舞い上がっていた千奈美の気持ちは、一瞬にして吹き飛ばされてしまったのだ。
(ショーツ一枚……全裸…………)
 わかっていた。
 こういうものがあることは……。
 自治体や各学校の判断により、小中学校の場合は必ずしも裸体の検査は行わない。実施しているところと、していないところでまばららしく、幸いにして千奈美がそれまで受けた診察方法といったら、せいぜい内科検診でブラジャーを脱いだ体操着の下に手を入れて、聴診を受けるということくらいだ。
 どうして、こんなタイミングになってしまったのだろう。
 次のゴールデンウィークには本当に寝る約束をして、実際のところ千奈美はほとんどその気になっている。
 五月に入れば交際から五ヶ月目。
 といっても、それ以前の友達だった期間から、ずっとメールを交わしていたことまでカウントするなら、ゆうに一年以上はお互いについて理解し合って来ている。肉体を使ったお喋りがきちんと通じることもわかっているから、そうなると愛する彼氏との本番がどんなものかは楽しみだ。
 大丈夫だ。
 健一にだったら、自分の裸を見せられる。
 せっかく、そんな心が決まっていたのに……。
(……私が初めて裸を見せるのって、健一じゃないんだ)
 そのことが、千奈美の気を重くしていた。
 乳房はおろか、性器や肛門にかけてが検診対象となっている。ついさっきまでは初めて健一に丸裸を見せることについても考えていた中で、その矢先にこんなほけんだよりの内容を突きつけられるのは、乙女心に対して残酷なことといえた。
(ごめんね。健一)
 何の非もない千奈美だが、そう思わずにはいられない。
 大丈夫。ただの検診だ。
 そんなものはノーカンにして、健一こそ初めての相手と思ってもいいのだろうが、そう簡単に割り切れていたら鬱々とした気分にはならない。
 だったら、千奈美の通っていた小学校中学校でも裸体での検診が導入されていて、場数さえ踏んでいれば割り切れたのだろうかとも想像するが、やっぱり恥ずかしい試練が無駄に増えるだけかもしれない。
「生徒全員にアンケートを実施するから、これもやっておくように」
 担任の伊藤敬介先生が配布を始め、前の席から千奈美の手元へと渡ってくる。
 それは――。

『性意識調査について』

 こんなものまであるんだ。
 見れば名前を記入する欄はなく、しかし生年月日の欄はある。同時に配られた封筒は二枚ずつあり、これで二重に封印しろということらしい。しっかりと口を止め、本名も記入することなく提出するから、こちらはプライバシーが守られるのだろう。
 やっぱり、検診の方が問題だ。
 本当に大問題だ。
 ……どうしよう。
 どうしようなんて思っても、検診自体をどうにかすることなんで出来はしない。
 どうしようもない。
 そのほけんだよりの内容は…………
 …………
 …… 



 
 
 

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