とある脅しによって体の関係を強要されている円香の、いかに気持ち良くとも心は不本意である状態を描写した作品


第1話 突起する乳首第2話 快楽の本番第3話 跨がる円香第4話 絶頂


 羞恥心が顔を焼く。
 頬から生まれた赤色が周囲を徐々に蝕んで、いずれは全体に広がるだろう。その時は耳まで赤く、もう何をどう足掻いても、恥じらう思いを隠しようがなくなっている。
(ほんっと、思ったよりも恥ずかしい)
 樋口円香は天井を見上げていた。
 柔らかいベッドの上で、背中や尻を高級な繊維のシーツに沈める心地良さはなかなかだが、残念ながらうっとりとした顔でくつろげる気分などではない。
 むしろ、状況は最悪だ。
 円香は今、丸裸なのだ。
 シャツも、スカートも、それにショーツやブラジャーも、ベッドから少し離れた床に散乱している。つい先ほどまでストリップを強要され、この生まれたままの姿で横たわっているのだが、こうして円香の置かれた状況は、まな板の上の鯉という諺の通りであった。
 相手の男は最悪だ。
 清潔感あるさっぱりとした顔立ちで、第一印象までは良かったが、下種な目論見によって人を部屋まで連れ込んで、円香の体に手を触れ始めている。
 マッサージ師でも気取っているのか、瓶からオイルを垂らしていた。手の平に乗せたオイルを散布するため、円香の手首を持ち上げて、まずは指から順々に、やがて肘へ、二の腕へ、塗り伸ばしていきながら、少しずつ胴体へ迫っていく。
(エステのつもり? 人を脅迫しておいてサービスとか、世の中の性癖は色々だね)
 円香の皮肉めかした思いは顔に表れ、触れてくる男に対して、見下すような、蔑むような、それとも嫌悪感で堪らないような眼差しを遠慮無く向けていた。
 感情を隠すつもりはない。
 ここには好きでいるわけではない。
 言うことは聞いている。下手な犯行もしていない。心で悦ぶ真似をせずとも、従ってさえいれば十分のはずだ。
(いいご身分)
 円香のもう一方の手首が持ち上がる。
 それなりに甘いマスクの持ち主だ。
 きちんとした関係の上でそうされれば、一体どれだけとろけてしまうかは想像に難くない。だが、溶けるどころか、円香の心はむしろ硬化していく一方だ。
(気持ち悪い)
 ちらりと視線をやれば、男の欲望が如実に伝わってきた。
 彼自身も服を脱ぎ捨て、トランクス一枚でこのベッドに上がっている。裸の少女を見ることで、下着の中身をむくむくと膨らませ、ほとんどテント張りとなっている。
(その汚い欲望で計画を立てたってわけ? 本当にご苦労様、早く捕まればいいのに)
 足首が持ち上げられ、やはり男は指の一本一本の隙間にかけて、丁寧にオイルを通してくる。足の裏側も指圧され、こんな形でなければくつろげそうな刺激であっても、円香は顔を顰めた表情のまま変わらない。
 足りなくなれば瓶の中身を垂らし直して、ふくらはぎにも塗り伸ばされる。膝にもじっくり擦り込まれ、そして太股を撫で回される拒否感に、頬の筋肉を硬くしていく。
 内股に手が滑り、性器にほど近い位置を撫でられての緊張も大いにあった。
 しかし、まだ肝心な部位に触れる気はないのか。
 四肢が終われば、次は胴体だった。
 腹に直接オイルは垂らされ、ヘソの周りに塗り伸ばされる。円香の体はその保湿によって皮膚が潤い、風呂上がりであるような、まだ拭いて間もない時のしっとりとした質感が全身に及んでいる。
 肋骨に触れられた。鎖骨にも塗り伸ばされた。脇下にも手が入った。肝心な部分は避け、その周りばかりを狙うタッチによって、もう胸とアソコしか乾いた部位は残っていない。それとも、うつ伏せにでもさせて、背中にも塗ってくるだろうか。
(……来た)
 とうとう、男は乳房に触り始めていた。
 肝心な部位への接触が始まって、円香は大いに顔を顰めて拳を固め、唇を噛み締めていた。

     *

 ただの仕事のつもりであった。
 どこぞの現場で撮影を行うからと、付近の高級ホテルが手配され、円香と――そして浅倉透にも個室が宛がわれた。
 だが、そこから男の目論見は始まっていた。
 用意されたディナーの中に、酒が仕込まれていたのだ。
 酔った透をプロデューサーが部屋へと連れて、きちんとベッドに寝かせたと思うのだが、その決定的な場面を写真に撮られた。

「これが人にはどう見えるかな?」

 未成年を連れ込む大人にしか見えない、そんな写真を突きつけての、脅迫対象に選ばれたのは円香であった。

     *

 最低の男である。
(あんなご苦労な計画を用意して、写真まで撮って、脅迫のネタがなければ作る)
 そんな真似をする男のことだ。
 きっと前々から弱みを探していたのだろう。
 見つからないから、作ろうと考えたのだ。
(そんな奴に……)
 人を脅すような人間の前で裸になり、そして体に触られることの悔しさといったらない。しかも四肢や胴への散布が終わり、いよいよ指が乳房に触れてきている。
 最初は周囲ばかりであった。
 円に沿った曲線をそーっと、産毛だけに触れるようなタッチでなぞり、はっきりとは揉んでこない。しかし、確かに乳房に接触して、何分もかけてくすぐってきた。
 下乳に沿った部分、横乳に沿った部分、鎖骨のすぐ下の部分、乳房と胴の境界線の、際どい位置であるような、やっぱり乳房に踏み込んでいるような、微妙なラインを狙っていた。
 その刺激でだんだんと、乳首に血流が集まっている。
(なんで感じなきゃいけないんだか)
 硬く突起する事で、乳首が敏感になっている。
 直後、揉みしだかれた。
 急に手の平全体で食らいつき、指を存分に蠢かせ、男は胸を揉んできていた。
「――――っ!」
 奥歯を噛み締め、その顎の力によって円香は頬を歪めていた。
「おっと、痛くしているつもりはないんだけどね」
 男は指遣いを変えないまま、柔らかに指を踊らせ揉んでくる。芋虫が暴れたようにくねり動く指の中、円香の乳房は延々と変形を繰り返していた。
「痛いですけど」
 ぶっきらぼうに円香は言う。
 本当は痛くもなんともなく、むしろ快感が走っているが、この男の手で気持ちいいなど癪でならない。快楽の事実を認めないため、気持ち良くなどなってやらない反抗の意思から、円香はそう吐き捨てていた。
「これは失礼、レディの胸は丁寧に扱わないとね」
 口先ではそう言うが、やはり指遣いに変化はなく、円香の胸は捏ねられるパン生地のように変形を続けている。
「んっ、くぅ…………んぅ………………」
 円香は顎の力を意識していた。
 歯を食い縛っていなければ、もう呼吸が熱っぽく乱れている。胸でこれだけ気持ちいいなら、下に触れられた時には喘ぎ声を出しかねない。
(こんな人に……)
 感じた声を聞かせたくない。
 快楽の様子も見せたくない。
 むしろ、痛がっているフリでもしてやろう、というのが円香の腹に潜ませた考えだった。
「本当は気持ちいいんだろう?」
「別に」
 そっぽを向く。
「乳首も責めて欲しいんだろうね」
「馬鹿言わないで下さい。呆れるんで」
 頬と耳を向けたまま、壁に視線を突き刺しながらそう答えるが、乳首はもうとっくに硬くなっている。見た目にも、突起している事実は誤魔化しようがないだろう。
「まったく、君はいい反応をしてくれる」
 指が乳首に迫った。
 皮膚の表面を滑らせて、指先が迫ったことで円香は強張る。てっきり、このまま乳首をやられると思っての緊張だったが、乳輪に踏み込むだけでさっと遠退き、つままれることも、弾かれることもなく済むのであった。
(よ、良かった……けど…………)
 心が、体が、余計に乳首を意識してしまい、まるで風に当たっても気持ちいいようにジンジンする。そんな敏感な部分へと、男はまた指を近づけ、乳輪の端を少しなぞっただけで引っ込める。
(こいつ……)
 明らかに、わざと焦らしている。
 思えば先ほどから、揉みしだくのも乳首を避けて、下乳や横乳だけを包んでいる。
 そして、ここぞとばかりの顔で乳首を狙ったフリをして、そのたびに手を引っ込めているわけだ。
(思い通りになんて、ならないから)
 どうせ焦らすことが楽しいのだろう。
 そのうち観念でもして、自分から乳首を触って欲しいと言い出すような、下らない妄想でもしているのではないか。
(本当に下らない。安い妄想。ありえないから)
 思い通りにならないため、どれほど乳首が気になっても、円香は唇を結び続けた。
「ほーら」
 また指が来る。
 今度はもっと長々と、それも意地悪な笑みまで浮かべながらに乳輪をくすぐってくる。円周に沿った線ばかり、指をぐるぐると回してなぞり、乳首には決して触らない。
「我慢しているね?」
 両手によって、そうしていた。
 長く伸ばした指先をどちらも同じリズムで回転させ、左右の乳輪を同時になぞり続けていた。
(やだ……こんなこと、続けられたら……)
「乳首を責めて欲しいかい?」
「なに言ってんの、わざわざありえないから」
「そうか。それは残念だ」
 ちっとも残念ではなさそうに、男は乳輪をなぞり続ける。一体いつまでそうしているつもりかと、いい加減に聞きたくもなってくるほど、本当にいつまでも、何分もかけて同じ行為を継続していた。
 乳輪とその周囲、色の変わる境目だけに指を走らせ、その刺激に円香は顔を顰めている。
(やっぱり、下らない妄想。馬鹿みたい)
 誰がその通りになどなるものかと、円香は頭の中で吐き捨てていた。
(ありえないから、馬鹿馬鹿しいから)
 どこか必死に、男を見下そうとしていた。
 男は決して飽きないように愛撫を続ける。乳輪だけをなぞる指遣いで、いつまでもいつまでも、本当にいつまでも乳首に触れず、その周囲だけに刺激を加える。
(くっ、本当に……いつまで…………)
 いずれは飽きて別のことを始めるだろうと、円香はホテルの内装だけに視線を突き刺す。男には耳や頬を向けたまま、そっぽを向いた上での険しい顔で、壁の模様をもはや睨みつけていた。
 そうして視線を注ぐこと、果たして何分経っただろうか。
(本当に飽きないつもり?)
 きっと二分か三分は経ったと思ったところで、円香の心にはそんな言葉が浮かんでくる。
 それから、さらに十数秒。
 またさらに十数秒。
(…………)
 無言の時を挟み、五分以上は経ったはずのところで、やはり円香は思うのだ。
(どうせ最後までやろうって腹のくせに、いつまでそんなことばかりしてるんだか……)
 本当に馬鹿みたいだと、円香は男を蔑もうとしているが、どこかその余裕がない。
 これだけ焦らされ続けては、どうしても乳首が気になっていた。揉まれるのも、なぞられるのも気持ちいいなら、では敏感な部分をやられた時、その刺激はどれほどになるだろうか。
 抱いてはならない好奇心が湧いてしまい、そんな円香に対して不意打ちのような言葉がかけられる。

「乳首、触ってあげようか?」
「触るならささっと…………」

 答えかけ、口を噤んだ。
 自分から求めるような言葉を出しそうだと、そんな危機感に駆られて唇を結ばずにはいられなかった。
「まったく、君は可愛い子だ」
 その時である。

「…………っ!?」

 胸がビクッと弾けた。
 気づけば円香の乳首は、どちらも指でつままれていた。
「触るならさっさと、だったね。うん、触ってあげよう。まさか君自身の方から望むはずもないだろうし、僕が触りたいから触ることにしよう」
 すぐさま円香はのたうち回った。乳首に走る刺激があまりに強く、男の手首を掴まずにはいられない。痛いわけでも、今になって抵抗を始めたわけでもなく、気持ちいいせいで反射的な行動を取っていた。
 だが、直後にその握力は緩む。それでなくとも、男の力を相手に引き離そうにも手は離れず、お構い無しのように乳首への愛撫が続いる。指先が蠢く事で上下左右に弾かれ続け、その快感によって、拳にまで痺れが及んで握力を維持できなかった。
 そして――。

「くっ、んっあぁぁ――――――――!」

 頭が真っ白になった。
 気づけば男の手首を離していた。
 円香は乳首で絶頂してしまったのだ。




 胸中にはじわじわと無念が広がる。
(い、イカされた? 絶頂、だよね。今のって、たぶん……)
 円香は動揺していた。
 思った以上に乳首への刺激は気持ち良く、しかも頭が真っ白になるような、全身のビクっと弾ける感覚に見舞われた。その余韻が今なお乳房の内側に、甘い電流として行き交っている。
 触られもしないのに快感が続いているような、細胞が甘く溶かされている感覚に、また乳首がやられたらどうなるかと恐ろしい。
 気持ちいいせいでの不安であった。
 次はどれだけあっさりイカされるか、身悶えせずにはいられない大きな快感にやられるか。円香が恐怖を抱く理由は、大きな快楽なのだった。
「ここが濡れているね」
 男はヘソの下へと指を置く。
「んっ……」
 性器ではなく、その近く。
 しかし、あと数センチでワレメに触られてしまうギリギリを撫でられても、円香は快楽を感じてしまっていた。必要以上にアソコが気になり、膣壁もムズムズして、体が反射的に引き締まり、太股を擦り合わせてしまっていた。
 すると、本当に濡れている事に円香は気づく。太股で擦り合えば、ぬるっと滑る感触があった。それを感じるや否や、肉貝に広がる愛液のぬかるみにまで意識は及び、自分が本当に胸だけで濡れた事実を突きつけられた。
(アソコは……一度も……な、なのに……くっ…………)
 体が男の思い通りだ。
 その悔しさに歯を噛み締め、円香は男を睨み返していた。
「挿入、させてもらうよ?」
 指がアソコへ滑ってくる。
「んぅぅぅ……!」
「これだけ濡れているんだ。準備はもう出来ているだろう? いやまったく、胸しか触っていないはずなんだがねぇ?」
 わざとらしく呆れてみせつつ、男はアソコをなぞってくる。筋に沿った指の上下は、下腹部を電流で引き裂くかと思うほど、強い快感を走らせていた。
「んっあっ、んぅ……! んっ、ぐっ、ぐぅ……!」
 歯をきつく食い縛り、両手で口を押さえる真似までしなければ、とても喘ぎ声を封じられない。
「んっぐっ、ぐ……!」
 聞かせたくない声を出さないため、円香は両手で強く押さえ、口周りを両手で隠したその上で、男をより強く睨み返しているのだった。
「脚を開いてもらおうか? 正常位、わかるだろう? 経験があってもなくても、知識ぐらいは持っている年頃だ」
 指が離れる。その際の、皮膚が僅かに、本当に微かに引っ張られるような感覚は、きっと愛液で糸が伸びたせいである。
 円香は脚をM字にした。
 全裸だけでも恥ずかしいのに、ポーズによってより大きな羞恥を味わう事で、赤面は耳にまで及んでいく。今や首から上のラインで、染まっていない部位などない。
 肉棒が触れてきた。
 入口に当たる亀頭の感覚に、円香は硬く身構える。
(こいつに……こんな……人に…………)
 自分の処女を奪う相手がこの男であることへの、大きな憤りを腹に抱え、歯を食い縛るための顎の力がますます強くなっていく。
 挿入が始まった。
 亀頭のいくらかが膣内に収まって、その太さに合わせて穴の幅が広がった。さらに奥へと入れようとしてくる腰使いで、アソコが穂先を飲みきって、その先にある竿さえ迎え入れている。
 信じられないことに痛みがなかった。
 個人差があるのはわかっていたが、それにしても微塵の痛みも生じないのは、たまたま穴が緩めだっただけでは説明できない。激しい運動で処女膜が損傷する場合もあると聞いた事もあるのだが、レッスンを原因に加えてもまだ足りない。
 それだけ、濡れている証拠だ。
 気持ちいいのは愛液が出てしまっているせいだ。
(これじゃあ、まるで……)
 肉体的には男を歓迎してしまっている。
 それを感じて、彼はいい気になることだろう。どれだけ内心では調子に乗り、勝ち誇っているかもわからない。そんな男の歓喜を想像するだけで、癪で癪で堪らない、腹のむかつきが収まらなくなってくる。
「さあ、全て入った」
 円香の腹には、男の肉棒が根元まで収まっていた。股にぴったりと腰が触れ、その接触部分に相手の体温が伝わってくる上に、陰毛で肉貝あたりがくすぐられる。
(これ、動かれたら…………)
「初めてだろうに、気持ちよさそうだね?」
「は? 別に?」
 それが反射的な答えであった。
 これだけ愛液が噴き出して、アソコも肉棒を歓迎していて、それでも円香が自然と口にする言葉は、相手を拒む反抗的なものなのだった。
「ま、動いてみよう」
 ピストンが始まった。
 ゆさゆさと、まだ最初のうちだからか、妙にゆったりと腰を動かす男だが、円香は大いに顔を引き攣らせ、歯を食い縛る力を強めていた。
(ぐっ、なに……これ…………!)
 想像以上に快感が強い。
「そうだ。今から、一分は絶頂を我慢してもらおう」
「なにっ、それ……!」
「ちょっとしたゲームだよ。もし我慢できなかったら、あの写真の使い道を具体的に考えてしまうかも、とか」
「我慢すればいいんでしょ? どうせ、絶頂とかありえないし」
 ぶっきらぼうにそう答え、顎に力を入れ直す円香だが、ピストンによる刺激を受けるうち、すぐに予感する事となる。
 耐えきれないかもしれない。
(や、やばい……)
 ピストンのペースが上がり、その分だけ膣壁への摩擦も勢いを増している。快楽を刻み込まれるペースがそれに釣られて上がった事で、たかが一分でイカされる危機感は濃密なものとなっていた。
 まずい、まずい、まずい――。
「ま、待って!」
 あまりの危機感から、円香は慌てて停止を求めていた。
「どうしたのかな?」
 肉棒が静止する。
 しかし、ただ収まっているだけでさえ、膣壁がヒクヒクと反応している。この一時停止に心では安心しても、アソコの方は焦らされた事が気に入らないように脈打って、まるで肉棒に向かって動け動けと命じている。
「ど、どうって、その…………」
 円香は口を噤む。
「おや? 言わなければわからないよ?」
「そんな事わかってるから」
 声を荒げ、真っ直ぐに睨みつつ、円香は唇を噛み締めた。
 許しを乞おうと思ったのだ。
 やっぱり、すぐにイカされそうだから、どうか許して欲しい。写真を使って何か企むのはやめて欲しい。ゲームに勝てないことを認めるから、罰ゲームを許して欲しいと言おうとして、さすがにプライドが邪魔をする。
「わかるよ? 君の考え」
 見透かしたように言ってくる。
「……へえ」
「そうだね。どうかイカせてください、お願いしますと言えたら、君の思っている通りにしてもいい。さしずめ、ゲームに勝ち目がないと悟ったんだろう?」
「…………」
 円香は唇をぐにゃりと歪めた。言おうとは思ったが言い出せず、ほんの少しでも開いた唇をすぐに閉ざし直していた。
「言えなければ、そうだな。浅倉透にも手を出すとか、そういう事を考えてみようかな」
「――い、イカせて下さい! お願いします!」
 人にものを頼むにしては、怒りで荒っぽくなっていた。やめろ、ふざけるな、口にした言葉は絶頂を求めるものでも、宿った意思は罵倒の方に近かった。
「ま、いいだろう」
 それでも、男は納得したようにピストンを再開して、円香の体を大胆に貫いた。
「あぁん!」
 さらに強い快感が全身を駆け巡る。
「あっ、あん! あん! あぁん! あっ、あん!」
 快楽の嵐に襲われていた。
 壮絶な刺激の中、ただひたすら喘ぐ円香には、自分がいつイったのかもわからない。
 ただ、気づけば目が覚めていた。
 まるでいつから眠っていたかもわからずに、目が覚めた事実に困惑するような顔をして、円香は頭の真っ白な状態から立ち戻っていた。
 前髪が乱れている。シーツも相当に乱れている。そして、股には円香自身が流した愛液の、染み広がった円の感触がぐっしょりと、絶頂後の瞬間まで、時間がスキップでもされたかのような感覚だった。
 まだ、体が火照っている。乳首にも、アソコにも、ピリピリとした甘いものが駆け巡り、今なお次の快楽を求めている。
(私、こいつの思い通りなの?)
 気に入らない。
 そうやって、人に優越感に満ちた顔を向けてくるのが、本当に気に入らない。




 体位は変わり、円香が上に跨がっていた。仰向けの男を見下ろして、その硬い腹筋に両手を置きつつ、股にはやはり肉棒を収めている。
「さあ、動くんだ」
「わかってるから」
 円香は腰を持ち上げる。
 たったそれだけで刺激が走った。勢いを出したわけでもなく、ゆっくりと上昇を始めただけで、淡い摩擦が快楽となっていた。
「んっ、んぅ……んっ、ぐっ…………」
 どこまでか持ち上げれば、今度は逆に下降させ、尻が男に触れたところでまた上昇する。その上下運動はゆったりと、できるだけ気持ち良すぎないようにペースを意識していたが、それだけ勢いを抑えていても、円香は顔中を歪めていた。
 顎や口周りの筋肉に力が入り、強張りで歪んだ表情で、円香は同じ動作を繰り返す。機械になりきり延々と、いつ終わるとも知れない上下運動を行っていた。
 腰が持ち上がるたび、にちゅりと音が鳴りながら、愛液が流れ出ている。肉棒の表面を伝って根元へと、男の陰毛は愛液を吸って濡れ潰れ、すっかり皮膚に張りついている。
「んっ、んぅ……くっ、んぅ…………」
 円香は無意識のうちにペースを上げていた。
「んっふぁ……はぁ……はぁ……んっはぁ……ふはぁ…………」
 明らかに熱っぽく、そして色っぽく、完全に呼吸を乱している。険しい表情そのものは、いかにも我慢してしか見えないものの、上下運動のリズムは確かに変わり、円香は快楽を味わい始めている。
 自覚もなく、腰使いがごく僅かに前後左右に、膣壁に対する亀頭の当たり方を調整している。少しでも気持ち良く擦れるように、円香は自らの下腹部を貫いていた。
「あっ、んぅ……んっ、んぅ……あっ、あぁ…………」
 歯を食い縛る力が緩み、呼吸が乱れるばかりか、喘ぎ声まで聞こえ始める。
「んっ、あっ、あぁ……あっ、あぁ……!」
 その時、男は円香の手首を掴む。自身の腹に置かれた両手を握り、逃がさないようにする事で、彼は円香に口を塞がせないように封じたのだ。男が手首を確保している限り、歯を食い縛る以外の方法では、もう声を抑えられない。
「んっ、あっ、あぁ……あっ、あぁ…………」
 喘ぎ声がよりはっきりと漏れ始める。
 ペースがさらに上がっていた。
 持ち上がった腰を落下させ、その勢いで下腹部を強く貫いている。愛液の溜まった陰毛に胴が落ちてくるせいか、ピストンが生み出す落下のリズムで、ぐちゅっ、ぐちゅっ、ぐちゅっ、と、音が延々と鳴り続けていた。
「あっ、あぁ――あっ、んぅあっ、あぁ――――」
 円香はさらに乱れていく。
 髪を悩ましげに振り乱し、この時には手で口を塞ごうと、反射的に腕を持ち上げようとしていたが、男の握力がそれをさせない。円香の両手は彼の腹部に囚われて、だから代わりのように顎に力を加えていた。
「んぅ…………んっ、んぅぅ…………!」
 大きくなった喘ぎ声が、急に噛み殺されて呻き声に変わっていた。
「んぅぅぅぅ…………!」
 喘ぐまいとしていながら、円香の腰の勢いは緩まない。快楽を求めんばかりに、ぐちゅぐちゅと、水音によるリズムを刻んでいる。
「んぅ……んぅ……んぅ……んぅ……んぅ……んぅ……!」
 我慢に満ちた表情とは裏腹に、活発な上下運動で円香は快楽を貪っている。腰を落とすたび、持ち上げるたび、摩擦で生じる甘い電流が全身に駆け巡り、腹や足まで痺れる事を楽しんでしまっている。
「んぅ……んぅ……んぅ……!」
 そして、円香は何かを目指していた。
 無意識の行動なので自覚もなく、どこか目指す場所でもあるようにペースを上げ、せっせと腰を振り動かす。
 円香の中で、上り詰める感覚があった。どこに登っているわけでもないのに、しだいに山頂が近づいて来たような、もう少しで辿り着ける感覚に囚われて、円香は何かのゴールを目指す。
「んぅ……んぅ……んぅ……!」
 そんな円香の様子を見て、急に男は彼女の腰を掴んでいた。腕力と握力をかけ、力尽くでピストンを停止させていた。それでも持ち上がろうとする腰を押さえ込み、上下運動を封じ込んでしまうのだった。
(えっ……)
 困惑と動揺が円香に浮かぶ。
「どうしたのかな?」
 ニヤニヤと、何かを見透かしたような顔で問われて、円香は男から目を逸らす。
「別に」
 気に食わない表情を向けられて、不快そうにした円香に対して、その時だった。

「もしかして、もう少しでイけそうだったとか?」

 唐突な問いに、円香は慌てて声を荒げていた。
「ち、ちがっ!」
 あまりにも反射的に、力強い否定をしてしまっていた。
 直後、赤らむ。
 これでは図星を突かれた反応そのものだ。しかも、無意識にイこうとしていた円香だが、こうして問われ、慌ててしまった事で自覚した。
 自分はこの男とのセックスでイこうとしていた。
 イカされるのでなく、自分から絶頂を目指していた。
 その事実を突きつけられ、円香は拳を硬く震わせる。
(な、なんで? なんで私は……!)
「あともう少しだったのに、がっかりだなぁ?」
「別に? 何がそんなにがっかりなの」
 バレているとはわかっていながら、円香はそうしてしらを切る。
「気持ちいいんだろう? 僕とのセックス」
「べ、別に……」
 快楽さえ否定するのは、さらに無理があるとは思いつつ、素直な肯定は出来なかった。
「もっと素直に答えてみたらどうかな?」
「馬鹿みたい。そもそも、気持ち良かったら何? そんな安い優越感に浸りたいわけ?」
「おっと、また可愛いことを言ってくれる」
「うるさいんだけど」
「ともかく、また動いてくれたまえ」
 男は円香の腰を手放した。
「…………」
 心底気に入らないものを見るような、実に嫌そうな表情で円香は動く。
「んっ、んぅ……んっ……んぅぅ………………」
 再び上下運動を始めれば、やはり刺激がアソコに走る。沈めても持ち上げても、肉棒と膣壁の擦れ合いから、濃密なものが足腰を駆け巡って背骨にさえ伝ってくる。
「んぅぅ……んっ、んぅ……んぅぅ…………」
 関係無い乳首までじんじんと、この上下運動で浴びる風が気持ちいいように痺れている。
「んっ、んっ、んぅ……んぅ…………」
 円香は顎を力ませていた。
 わざわざ喘ぎ声など披露したくはないために、それだけ歯を食い縛っているのだが、しかし快楽は誤魔化せない。こんな男とのセックスで、誰が楽しんでやるものかと、そう頭では思っていても、刺激が消えてくれるわけではない。
「んっ、あっ、んぅ……んぅ…………」
 しかも、両手首がまた囚われ、手で口を塞ぐという事ができない。
(見てるってわけ? 人が喘ぐかどうか)
 この男を悦ばせなどしたくない。その一心から、円香は歯を食い縛る力を維持しているが、唇を結んでいても、喘ぎ声の代わりにくぐもった声が漏れている。
「んっ、んっ、んっ」
 そして、そのうちにまた、円香は無意識のうちにペースを上げ、夢中になり始めていた。
「んっ、んぅ……んぅぅ……んっ、んぅっ、んあっ、あっ、あっ、あああっ、んっ、んっ、んぁ……あっ、あぁ…………」
 知らす知らずに絶頂を目指し、上り詰めていくほどに、顎の力が緩んでいる。生まれた唇の隙間から、甘く喘いだ声が漏れ聞こえる。
「んっ、んぅ…………」
 しかし、ふと気づいたように顎に力を入れ直し、閉まった唇の内側に喘ぎを封じる。
「んぐぅ……んっ……ぐっ…………」
 すっかり強張った表情で、円香は上下運動を続けていた。
「んぅ……んっあっ、んぁ……んぁぁ…………」
 それからまた、締め直したはずの唇が緩み始めて、円香は山頂に近づいている。気持ちいいことで何かを目指しているような、もうすぐ到達できそうなそれを求めて、上下運動のペースは無意識のうちに上がっていく。
 ぐちゅり、ぐちゅりと、落下のたびに愛液の音が鳴る。
 そしてまた、男の両手が腰を捕らえた。力ずくで上下運動を封じるため、男は腕力を駆使していた。
(なっ、また……!)
 円香は思ってしまう。
 この急な中断に対して、もう少しだったのに、と……。




 円香は限界に近づいていた。
(やばい……もう、かなりやばい……すっごく、やばすぎて、本当に…………)
 今、円香は動いていない。またしても腰を掴まれ、上下運動を停止させられ、絶頂に達する事を邪魔された直後である。だから腹には肉棒が根元まで収まって、そのピクピクと脈打つ小さな動きを膣壁で感じている。そこまで些細な感覚からさえ、円香にとっては小さな快楽だった。
 熱さも、硬さも、膣壁が読み取っている。
(いつになったら、イクことが……違う、私は何考えて――――)
 円香は呼吸を熱っぽく乱していた。
「はぁ……ふはぁ……はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」
 興奮を隠しようがないまでに、乱れきった息遣いと共に肩まで上下させている。
 全身が敏感になっていた。
「ほれ」
「……っ!」
 急にヘソの近くを触られて、腹の皮膚が撫でられただけでさえ、ビリっと電流の弾けたような刺激が走る。
 また再び上下運動を始めれば、すぐに絶頂へ近づくだろう。そして男は寸止めを楽しんでいるので、人のイキそうな様子を見計らって食い止める。動けば動くほど焦らされて、この肉体の中にイってしまいたい衝動が蓄積される。
 それを嫌い、円香は動かずにいた。
「俺とのセックス、気持ちいいんだね?」
 問いかけられ、そっぽを向く。
「……なんで、別に」
 感じている事実はとっくに誤魔化しようのないものだが、それでも問われさえすれば否定していた。否定によって円香は自分の態度を示していた。
「休憩はそこまでだ。そろそろ動いてもらおう」
「早く満足して欲しいんですけど」
 一秒でも早く行為を切り上げたいように言ってみせるが、アソコの方はそう思っていないのが、円香の肉体における現状である。上下運動を再開すれば待っていたように体が悦び、それを表現してやまないように愛液を垂れ流す。
 腰が持ち上がり、膣に収まった肉棒が見えるたび、その表面にはべったりと愛液が付着している。それだけぬかるんだ肉棒に対して腰を落とせば、ぐちゅりと音が鳴っている。濡れた陰毛が叩かれる事もあり、円香の上下運動はそのままリズム通りの音を繰り返した。
 ぐちゅり――ぐちゅり――ぐちゅり――。
 それが延々と続くうちに円香は絶頂へ近づいて、イクと思ったところで男の両手が上下運動を食い止める。少しの休憩を挟んでまた上下運動が始まって――。
 ぐちゅり――ぐちゅり――ぐちゅり――。
 それがまた、停止する。
 いつまでも、本当にいつまでも、円香はその繰り返しの中に置かれていた。
 ぐちゅり――ぐちゅり――ぐちゅり――。
 絶頂が近づく事で男の手が伸びてきて、がっしりと腰を掴まれるのがもう何度目かもわからない。
「僕とのセックスが気持ちいいんだろう? イってみたいんじゃないかな?」
 久々に行われる問いかけで男は既に勝ち誇り、円香の答えを確信しきっていた。
(なんだっていうの? そんな安い優越感のために、こんなに馬鹿みたいに時間かけちゃって、本当に……)
 プライドを保とうと円香は意地でも男を見下すが、もはや体は焦らされ過ぎてしまっている。もう何度も絶頂を我慢などしていられない、どうしてもイってしまいたくて仕方のない衝動で全身が逸っている。
「別に好きで気持ちいいわけではありません。ここまで生理的な反応を溜め込んでくれたのはどこの誰ですか」
 ただ認めるという事は出来ず、あくまでもお前のせいだと円香は眉間に皺を寄せ、決して心では受け入れていない険しい表情を向けていた。
「それで、イキたいのかな?」
「……たい、です」
「聞こえないね」
「イキたいです! イカせてください! ほら、言いましたよ? こんな言葉が聞きたいだけで、本当にご苦労様です!」
「では好きにイったらいい。次は止めないから」
 ほら、好きなだけ動いてみせろ、と。男の目がそうヘラヘラと語っていた。円香はそんな眼差しを睨み返して、男も男で我こそが勝者のような目で見つめ返して、拒否感や嫌悪感をアピールする少女と、我が物顔となった男の見つめ合いとなっていた。
 視線が重なったまま円香は動く。
 ぐちゅり――ぐちゅり――ぐちゅり――。
 上下運動は数秒もすればペースが上がり、乳房がぷるぷるとした揺れを伴い始めていく。
 ぐちゅっ――ぐちゅっ――ぐちゅっ――ぐちゅっ――。
 音のリズムが上がれば、それだけ円香の呼吸も乱れ、息遣いには喘ぎ声が入り混ざった。
「んっ、あっ、あぁ……あっ、あぁ……! んっ、んっ、んぅぐっ、んん……んぁっ、あぁ……やっ、いやっ、あぁ……!」
 喘ぎ声を聞かせたくない思いで顎に力を入れながら、それでもたまに力を緩めてしまい、くぐもった声にはっきりとした嬌声が混ざっている。
「あっ、あぁ――あっ、あぁ――あぁぁ――――」
 ついには我慢を忘れていた。
 絶頂が迫った事で、円香は一気に頂点を目指していた。快楽の高みへみるみるうちに近づいて、ついに邪魔も入らずその地点へ辿り着く。

「んぁっ、あっ、イク――――――!」

 絶頂について無意識に口走り、肩を高らかに跳ね上げていた。仰け反る勢いで天を仰いで、真上に向かっイクことを宣言してしまっていた。
 全身に稲妻が駆け巡る。
 そして、頭の中にも、指先にも、その駆け巡った余韻が漂い、上下運動を停止した絶頂後も、円香はしばしのあいだ息を乱したままでいるのであった。

     *

 それからだ。
 騎乗位での絶頂を許されて、数分ばかりの休憩を挟んだ先で円香を待つのは、バックへの体位変更の命令だった。
「まだ続けるなんて、盛んすぎて呆れますよ。欲情した動物って感じで」
「そして君は動物のような体位。面白い話じゃないか」
 男は円香の尻に手を置き撫で回し、愛おしむような優しげな手つきでフォルムを確かめ、徐々に活発に這い回らせた。欲に満ちた手つきとなるに、円香はその触られる不快感を堪えるために、唇を内側へと丸め込み、軽く噛み締めているのであった。
 円香は確かに、間違いなく我慢をしている。心の中から不快感も嫌悪感も消えていない。だが、それでも快楽を感じてしまうのが、生理的な反応というものだった。だから今の円香にとって、気持ちいいことが不愉快な思いに繋がっていた。
 人を感じさせたり、人の絶頂する姿を見て、男はまるで大手柄でも立てたような顔をする。そのふざけた顔を見る事で、自分が相手の思い通りとなり、脅迫犯がいい気になっている実感が深くなる。
 どんなに気持ち良くても、円香の中にはセックスを拒みたい心が根強くあった。
 そして、心理面とは裏腹に、入口に亀頭が触れた途端にアソコが喜ぶ。
「くっ……」
 恥辱感でシーツを握り、拳に力を込める円香の、憤りや不快感から来る反応は、かえってポーズを固定してしまっている。土台のしっかりとした四つん這いへと、男からすれば挿入がしやすくなっていた。
 愛液をたっぷりと含んだ膣内へと、肉棒はあっさりと沈んでいき、すぐにでもピストンは始まった。
「んっあっ! あっ、あぁっ! あっ、あぁぁん!」
「気持ちいいか?」
「うっ、うるさ――あっ、あぁ……! あっ、あっ、いいっ! 気持ちいい! 良かったら何!? あっ、あぁ……!」
 喘ぎ声を出しながら、円香はどうにか悪態を突いていた。
「嬉しいねぇ? 感じてもらえて」
 男の腰振りが加速する。
「んっあ! あっ、あぁぁ……!」
 より大きな喘ぎ声が出た。尻を激しく打ち鳴らす勢いでぶつけられ、円香の胴は大胆に前後していた。その揺れが前髪と乳房でさえも前後させ、視界も上下に大きくブレ続けていた。
「あっ! あん! あっ、あぁ……もう……もっ、もう……!」
「イキそうなのか?」
「だっ、だから何!? い、イク――お望みっ、通りですよねっ、こうやって――あっ、私をっ、感じさせ――るのぉ……!」
「そうだね。望み通りだ」
 男が与えてくる快感は円香にとって嵐となり、凄まじい風速の中でひたすらに翻弄される。激しさに全身を削り抜かれていくような、しかしそれが快感となる状況で、円香はとっくに声の我慢など忘れていた。

「あぁぁ………………!」

 そして、絶頂した。
 その際の円香は四つん這いのままに仰け反って、だから狼の遠吠えにもにたポーズで天井を見上げていた。そうして、しばし反り上がっていた頭は、どすっと、落下のようにシーツへと押しつけられ、円香は尻だけを高らかにした形で息を切らしているのだった。
 肉棒が引き抜かれる。
 すると、亀頭と縦筋の間に伸びる糸は濃密なアーチとなり、質量のあまりスムーズに垂れ下がり、シーツに触れて吸収される。そうなってなお、しばらくは糸は消えずに生き残り、亀頭とシーツが繋がっていた。アソコとシーツも繋がっていた。二本の糸が十秒以上もの間、V字を成しているのであった。
 それがようやく消えてもなお、アソコから新しい滴がぷっくりと膨らんで、それが下へ落ちようとする事で、次の糸が今度は真っ直ぐ伸びていく。少しばかりのぷらぷらとした揺れを帯びながら、その糸はやはりシーツを目指していた。付着の後にはまたしばらく繋がって、何秒もの果てにようやく糸の形を保つための質量が失われ、ぷっつりと急に消失する。
 円香の体はすっかり快感を覚え込んでいた。
 しかも彼女にはまだ体力が残っている。ならば改めて入口に亀頭が当たり、先端が入って来た時、もう何回戦目とも知れないセックスを全身が楽しみにしてしまっていた。
(私、こんな人と………………)
 そう自覚することで打ちのめされ、それでも険しい表情を浮かべつつ、円香はまだまだ結合を繰り返す。
 向こう数時間、犯され続けた。
 ようやく解放された頃には、深夜の何時かもわからないのだった。


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