目次 次の話




 年末放送予定のバラエティ企画のため、四人のアイドルが服を脱ぐ。
 最初の場所は温泉。
 テレビ局が事前に撮影許可を得て、計画的に用意したエキストラを温泉に入浴させる。バラエティ企画である以上、ただ出演者の入浴風景を撮るわけではない。
 アイドルの裸が目的だ。
 温泉で服を脱ぐのは当たり前だが、この企画では脱衣所にもカメラが入り、一人一人のストリップを撮影する。
 四人のアイドル達は自然とカメラを気にかけて、頬を朱色にしながら裸となる。
 話はそればかりに留まらず、この脱衣所は男湯だ。
 脱衣の最中にも一般客を装ったエキストラが配置され、彼女達は男という男の数々に身を囲まれて、恥ずかしながらの脱衣となる。しかもアイドルの配置はバラバラで、四人を固まりにさせないことで、それぞれ孤立させている。
 四人並んだ状態なら、励まし合い慰め合い、その集団心理が支えとなって、羞恥心が少しは和らいでいたことだろう。
 だが、複数設置されているロッカーの、各地に四人は散らされている。その一人一人の周囲に男はいて、同じ部屋空間にいながらも、男の中に女一人、自分だけが紛れ込んだ状況を作っている。

『絶対に恥ずかしがってはいけないアイドル24時!』

 それこそ、四人のアイドルが出演する番組名だ。
 渋谷凛、鷺沢文香、塩見周子、アナスタシア。
 この四人こそがエロバラエティに出演して、濃密な辱め――もとい、恥ずかしめに遭うこととなる。

     *

 渋谷凛はカーディガンのボタンを外し、白いワイシャツの姿を晒す。この一枚目はまだいいが、ワイシャツやスカートを脱いでしまえば、その下はもう下着なわけで、大いに躊躇うところである。
 肩越しに後ろを気にかければ、そこには一人のカメラマンが膝を突き、凛の後ろ姿を映している。脱衣を撮られているのも嫌なのだが、さらに気になるのは男の視線だ。カメラマンが男性なだけでなく、ここが男湯である以上は、周りに配置されたエキストラも男に統一されており、チラチラと寄せられる眼差し全てが、人のストリップに好奇心をあらわにしたものだ。
 アイドル四人を出演させ、恥ずかしい目に遭わせていこうという企画の、なるほど趣旨にぴったりの状況である。
 凛のちょうど両隣で、二人の中年が脱衣を進める。そこに何の恥じらいもなく、カメラなど気にせず裸になろうとする。男といえど、一般人から募集されたエキストラなので、撮られ慣れてなどいないだろうに、よく平気なものだと凛は思う。
 テレビに出たり、ステージで大勢の前に立ったり、そんなことを繰り返している自分が手を止めて、ワイシャツのボタンを外せずにいるというのに、両隣の中年はシャツまで脱ぎ、それぞれの肌を出し始めている。
 凛も凛で、自分の隣で男が脱ぎ、最終的にはトランクスの中身も出すであろう状況は気になって仕方がない。
 左右を中年に挟まれているだけではない。
 振り向けばそこには、どこかチャラついた金髪が後ろのロッカーに寄りかかり、ニヤニヤしながら凛の様子を見守っている。カメラマンを挟んでその隣に、同じく髪を染めた大学生が凛のことをじっと見つめて、今か今かと人の裸を待ち侘びている。
 ざっと周りを見るだけでも、実に五人もの視線が集中しているのだ。
 そして、両隣の中年の、さらにもう一つ隣、さらにまた隣へと辿っていけば、そこにいる老人や若者も、大なり小なり凛の裸を見ようとして、何度もしきりに視線を寄せてくる。こうなると何人から視姦されていることになるのか、もう考えたくもない。
(でも、あんまり恥じらった様子を見せたら……)
 凛が出演する番組タイトルは『絶対に恥じらってはいけない』である。恥じらったと見做された場合、そのアイドルには毎回ペナルティが用意されており、つまり裸を晒した上で罰ゲームも受けるので、余計に恥ずかしいことになる。
 何も気にせず、ケロっとしていた方が、罰ゲームだけは回避できるが、そうと頭でわかっていても、なかなか羞恥心を掻き消せはしない。
(アウトになった時の指示は確か……)
 確か例年の内容では、笑ったらアウトとして、たちまち現れる黒子がハリセンで芸能人の尻を叩くというものだ。凛が事前に受けた指示でも、アウト判定が出た場合は、その場で壁に両手を突いたり、姿勢を変えるなどして尻を突き出すように言われており、つまりハリセンで叩かれる。
(ちょっと勘弁して欲しいね)
 周りから見られながら、そして撮られもしながら脱ぐのは嫌で嫌でたまらないが、罰ゲームが後ろに迫っていると思うと、全裸というゴールがわかっていても、脱がざるを得ない気になってくる。
 前には地獄が広がっているのに、後ろから猛獣に追いかけられて、残念ながら前に逃げるしかないような心境だ。
 凛はワイシャツのボタンを外し、まずは下着を出すことから、順に覚悟をしていくのだった。


 その一方、塩見周子も脱ぎ始め、下着姿になったところで、さすがに顔を赤らめる。
 周囲の状況は、ほとんど凛と同じである。
 真後ろにでカメラマンが膝を突き、そのカメラマンの両隣には、視姦役の男がお決まりのように配置されている。裸になった周子の両隣にも、脱衣中の男がだんだんと裸に近づき、周子の意識の中には、実に五人の男がいるわけだ。
 そして、パっと見てわかる通りの、身の周り以外にも、もう少し遠くから人の裸を見ようとしてくる視線はいくらでもあり、一体何人に視姦されていることになるのか、もはや考えない方がいいだろう。
(いやー。最初はアイドルになるつもりなかったんだけど)
 何故だか急に、デビュー前後の記憶が蘇る。
(こんなことになっちゃうとは)
 プロデューサーに声をかけられ、スカウトされた時までは、アイドルになることなど考えてもいなかったが、実家から追い出されてしまっては仕方がない。実家では店の手伝いをしていたが、手伝いといってもたまに店番をする程度で、ほとんどダラダラ過ごしていただけである。
 働かない娘に喰わせる八つ橋はないので、勘当というほどではないが、出て行くことになったところで、スカウトの件を思い出したというのが、デビューまでの流れである。
 そして、ものの最初からアイドルを夢見ていたわけではないい、テレビに出る仕事自体を考えていなかった周子にとって、当時はこんな状況を想像すらしていなかった。
(この状況、親が見たらなんて言うやら。もううちの娘じゃない、とか言われたりしないよね……)
 全裸が放送されてしまえば、それが親の目に触れる可能性はいくらでもあるだろう。もしもそのことに言及され、詳しく話す羽目になったら、一体何を言えばいいのか、まったく想像もつかなかった。
 周子は背中に両手を回し、指先でブラジャーのホックを見つけ出す。
(正直、既に恥ずかしくて死にそうだけど)
 今のところ、アウト判定は出ていない。
 尻を叩かれずに済んでいるのはいいのだが、周子がこうして少しばかり躊躇って、ブラジャーを脱げずにいる両隣では、もう男がトランクスを脱ぎ始めている。
(だいたい、何かな。この変わった状況は)
 テレビ企画だからと言えばその通りだが、男女が当たり前のように同じ脱衣所で服を脱ぎ、何の疑問もなく裸になろうとする。いや、実際には疑問はあって、躊躇いもしているが、傍から見た絵的には、そういうことになっている。
 男女混浴どころか、脱衣スペースすら共有なのが当たり前の国でも存在して、その国での文化を再現でもしている気分になる。
(とにかく、脱がないと)
 こういう企画番組に出ている以上、どちらにせよ裸にはなる。どうせ恥部を晒すのなら、その上で尻を叩かれるより、どうにか恥を抑え込み、平気な顔で堪え抜いてみせる方が、遭う目は多少だがマシになる。
 本当に、多少だが。
 周子はそのために羞恥心を押さえ込み、歯を噛み締めながらホックを外す。なるべく早めに肩紐も下ろしていき、ブラジャーをロッカーの脱衣カゴへと押し込んだ。ショーツ一枚になった途端の、左右からの視線といったらなく、やはり抑えきれない赤らみが湧いてはくるが、それも乗り切れとばかりにショーツを下げる。
 ひと思いに、一気に下ろしていた。
(あぁ駄目っ、やっぱ恥ずかしすぎる……!)
 そして、真後ろのカメラや男達に向かって、思いっきり尻を剥き出しにした瞬間の、湧き上がる炎によって顔中が染まり上がって、周子の手は停止していた。ショーツを足首の位置に停止させ、それっきり動くことなく数秒は、激しい羞恥の熱のあまりに体中を硬直させてしまっていた。
『塩見周子! アウト!』
(う、うっそー!)
 しまった――と、後悔した時にはもう遅く、周子はよりにもよって、裸で尻を叩かれることとなる。たちまち乱入してくる黒子に対し、周子は恥辱を噛み締める思いでロッカーに両手を突く。
 腰をくの時の形にして、その瞬間に尻へ炸裂する軽い痺れと衝撃に、ますます恥ずかしいような、屈辱の情が噴き上がった。


 アナスタシアの指は震えている。
 やはり両隣で男が脱ぎ、真後ろにカメラマン、そのカメラマンの両隣には視姦のためだけの男が立っている。計五人に囲まれつつ、さらにその周囲からも視線が刺さる状況は共通して、そんな状況下で脱ぐ恥ずかしさは、もちろん言うまでもない。
 どうにか下着姿にまではなるものの、羞恥心から指の動きは鈍くなり、ブラジャーのホックを外そうとする指は、震えを帯びて苦戦している。普段は何気なく行う動作に、何秒もの時間をかけて、やっとホックを外したところで、アナスタシアのただでさえ染まった顔は、より赤らんでいくのであった。
(とっても、ハズカシイです――この企画、エッチな番組? こういうの、日本ではフツーなのですか?)
 肩紐に指を絡め、片方ずつ下ろしていく。
 そのあいだにも、アナスタシアは左右からの視線を大いに気にかけ、できるだけ目の前のロッカーだけに視線を突き刺していた。そうしなければ、脱ぐのが早い男二人の、剥き出しのペニスが視界に入り、それすら気恥ずかしく感じるので、真っ直ぐ前を見ていなければ、気がどうにかなりそうだった。
(ジロジロ、見てますよね――耐えきるの、ムズかしそうです――)
 きっと、アウト判定を出されてしまう。
 もうそんな予感を脳裏によぎらせ、ハリセンで尻を叩かれる予感に駆られつつ、アナスタシアはブラジャーを取り外す。露出した乳房を覗き込もうと、隣から注ぎ込まれる視線に意識を取られ、アナスタシアはより高い羞恥の熱に苦悶を浮かべた。
(アーニャ……恥ずかしさで、死んだりしますか? この先、全部脱いで、もっと恥ずかしいことになって、生きていられますか?)
 一体、自分はどれほどの羞恥心に飲み込まれ、どれほどの恥辱を味わい尽くすことになるというのか。今まさに感じている恥ずかしさだけでなく、まだ残っているショーツを脱いだり、この温泉コーナーが終了して、別の撮影に移った時の自分はどうなってしまっているか、未来への不安すら抱いている。
 赤面しきった表情で、乳房を出してもまだ、こんなに恥ずかしいのにアウト判定が出されずに済んでいるわけかと、心の片隅では思いつつ、しかし尻を叩かれるよりはずっといいので、わざわざ何も言わずに黙っている。
 ショーツのゴムへと指を差し込む。
 そして、数秒躊躇う。
 覚悟を決めて下ろしていき、より大きな恥じらいに飲まれながら、後ろに尻を晒した時、放送による音声がその判定を告げてきた。
『アナスタシア! アウトー!』
「だ、ダメでしたか? 叩かれますか?」
 残念そうな悲しそうな、そして屈辱でもある表情で、アナスタシアはロッカーを壁代わりのようにして、そこに両手をついていた。尻を少しばかり突き出し、まもなく現れる黒子のハリセンを受け止める。
 尻に軽い痛みと痺れが走り、アナスタシアは恥辱に表情を染め尽くす。
 叩かれるのは一瞬で、そして腫れるわけでも何でもない。赤らんですらいない尻だが、しかし濃い余韻がいつまでも、皮膚の表面を漂い続けているのであった。


 鷺沢文香もまた、ブラジャーを外す当たりで手を迷わせ、大いに躊躇いながらホックに指を絡めていた。外せば両隣からの視線が生の乳房に突き刺さり、乳首まで観察されてしまうのは目に見えていて、その上でブラジャーを手放すことの、なんと心許ないことか。
(あの時の思い出が……トラウマが……)
 この手の番組は文香の場合、二回目だった。
 異性の中に裸の女の子を放り込み、恥じらわせるという企画には、以前にも参加しており、その時の文香は代役だった。男の子の中に同世代の女の子を投入して、一緒にプールで練習したり、遊んだりする内容を撮るはずが、明らかに世代の合わない文香を立てて、無理のある設定を押し通す滑稽な番組として撮影された。
 身長も異なり、発育も進んでいる。
 小学生という設定で扱うには、百人が百人とも無理があると答える肉体で、それでも男児と同い年という設定の中へと放り込まれて、滑稽かつ屈辱的な撮影の数々をこなしていった。
 その思い出がぶりかえす。
 過去の体験を思い返して、それに対して顔が赤いのか。現在進行形のストリップの方が恥ずかしいのか。自分は一体どちらで恥じらっているわけなのか、文香自身にもわからなくなりそうだった。
(とにかく、脱がなければ……手が止まれば、アウトは確実でしょうし……)
 そう思い、ホックを外す。
 そして、肩紐を一本ずつ下ろしていくにあたって、文香は真っ直ぐに前だけを見つめている。ロッカーに置かれた脱衣カゴだけに視線を突き刺し、左右どちらも視界に入れないように、神経を使っているのは、ちょうどアナスタシアと同じ状況だ。
 右を向いても左を向いても、そこにはペニスがぶらさがっている。
 しかも、文香の両隣は、言っては悪いが気持ちの悪い顔つきで、それがさらにニタニタと口角を釣り上げているものだから、余計に醜悪と化している。おぞましい視線を浴びている事実を意識の外に押し出して、なるべく考えないようにしているのが、今の文香の状況というわけだった。
 ブラジャーを脱ぎきって、乳房を出した瞬間の、感じる視姦の圧といったらない。頬に感じる羞恥の熱で、今にアウトになるのではと、不安でたまらなくなったくらいだ。
 もっとも、乳房を出した時点までは、塩見周子やアナスタシアと同様に、アウト判定が出る気配はない。
 しかし、文香は既に、二度にわたる放送を聞いていた。
『塩見周子! アウトー!』
『アナスタシア! アウトー!』
 二人がどこまで脱いだ上でアウトになったか、位置がバラけている関係上、文香にはわからないが、立て続けにアウトになっているのなら、自分もアウトになりはしないかと、やはり不安は大きく膨らむ。
 不安ながらにショーツを脱ぐ。
 後ろにあるカメラを意識して、まるで尻を見せびらかすかのようだと、余計に恥ずかしくなる事実に気づきながらの脱衣によって、とうとう丸裸になった時、その脱いだものを脱衣カゴへしまった時、無念の判定は下された。
『鷺沢文香! アウトー!』
(そんな……)
 無念に打ちのめされる思いで、文香もまた尻を突き出す。
 現れる黒子のハリセンは、ペチン! と、大きな音を鳴らして、その厚みある尻を打ちのめしていた。


 渋谷凛は気が気でない。
(みんなやられたってことは、この流れだと――)
 もはや確実ではないか。
 凛の脱衣は残りショーツ一枚まで進み、それを脱ぐため、ちょうど指をゴムの内側に差し込んで、鷺沢文香のアウトはそのタイミングのものだった。
(絶対、叩かれる……)
 堪えきり、最後まであっけからんとした顔でいられれば、とは思ったものの、番組は面白くなければ意味がない。ただの一度も罰ゲームがなく終わるはずもなく、これも番組構成と思って諦めるしかないのだろう。
 諦観の念でもって、凛はショーツを下ろしていく。
 その頃にはやはり、凛の両隣もまた全てを脱ぎきり、ペニスをぶら下げながら人の裸を視姦している。女子高生の裸体を前にして、身の周りにいる男の全てが勃起しているなど、これは一体、本当にどういう状況なのか。
『渋谷凛! アウトー!』
 丸裸になった時、やっぱり――と、凛は思いながらも尻を突き出す。
 ペチン!
 と、生尻に響くハリセンの感触は、痛みなど大したことはなかったが、そんなことより屈辱感が酷かった。



 
 
 

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