フォリニックは股を愛液まみれにしていた。
開けた脚のあいだでシーツはぐっしょりと、お漏らしにしか見えない光景を作り上げつつ、出したての体液が持つ温度は、どこか蒸し蒸しとした湿気を漂わせているかのようである。愛液の円はぬかるみの層に厚みを持たせ、肌が触れれば必ず糸が引いていた。
今、男はちょうど手を休め、フォリニックをただ楽しげに眺めていた。
「はぁ……あっ、あぁ……あぁぁ………………」
そして、触られるまでもなく、一人で勝手にアソコをムズムズさせながら、気持ち良さげに目をとろんとさせているフォリニックの顔がそこにはあった。フォリニックはすぐに自分の緩んだ表情に気づいて引き締めて、毅然とした顔を保とうとしているものの、もう何分も前からフォリニックはこうした状態になりやすくなっていた。
その後も、寸止めばかりが続いたのだ。
クリトリスをひとしきり触った後、タイミングを見計らって手を離す。それは一体、もう何十回繰り返されたのかもわからないが、寸止めだけで確実に一時間以上は経過していた。
それでなお、フォリニックは一度として絶頂を迎えていない。
切ない感覚は長時間をかけて蓄積され続け、おかげで放っておいても目がとろける。乱れきった息遣いで肩を上下に動かしながら、油断をすれば色気に満ちた瞳でぼーっと、体に溜まった甘い痺れに浸ってしまう。
(駄目……気を許しちゃ…………)
しかし、それでもフォリニックには意地が残っていた。、
こんな男の思い通りになってたまるか。
その感情をしぶとく残して、緩んでいた表情に人を睨む目つきを取り戻す。
「そろそろ飽きないの?」
フォリニックは強気に言った。
だが――。
「そうだねぇ?」
「ひあっ!」
クリトリスに指が置かれて、たったそれだけで絶頂を予感していた。ただのワンタッチで脳が弾けて、全身がビクっと弾む感覚に、てっきり今のでイクのかと思っていた。
「もう少しだけ、同じことを繰り返してみようかな?」
男はやはり、クリトリスへの愛撫を繰り返す。
そして、絶え間ない寸止めの連続で時間が経って、フォリニックの心からはますます気丈さが薄れていく。どんなに分厚い鉄板も、少しずつ削っていけばいずれ必ず薄くなっていくかのように、フォリニックの心は寸止めによってすり減っていた。
日付が変わるまで、寸止めは続いていった。
寸止めに寸止めを重ね続けて、もう数時間は経ってのフォリニックは、ついに我慢の限界を迎えていた。
「い、いい加減……イカせなさいよ………」
それでも、どこか意地を残していた。
それでいて、絶頂が欲しくてたまらなくなっていた。
「イカせて欲しいのかい?」
わざとらしく、男は尋ね返していた。
「な、何よ! 人をここまで追い詰めておいて! お望み通りでしょう! そうよ! 限界よ! だから早くイカせて頂戴!?」
望み通りの限界を迎え、こうして折れてやっているのだから、早く絶頂させて欲しい。そんなフォリニックの態度を見て、男は口角を釣り上げていた。
「もちろん、イカせてあげても構わないけど、四つん這いになってもらえるかな?」
「……い、いいわ」
この瞬間、フォリニックが想像したのはバック挿入であった。
後ろから挿入されて、肉棒によってイカされる予感に、歓喜であるような、やっと蓄積したものを晴らせる安心であるような、しかし自分が敗者となっているような悔しさも入り交じっての感情で、フォリニックは男に尻を向けていた。
肘を突き、拳ではシーツを握った四つん這いで、尻を高らかにして肉棒を待ち構える。その我慢の限界を超えたフォリニックのワレメは、これまで分泌された愛液を垂らしている。蜜壺に溜まっていたものが重力によって下へと伸びて、滴の玉が糸を引きながら垂れ下がり、濡れ染みの中へと滴は落ちる。
シーツとアソコのあいだに、長々と一本の糸が引いていた。
まるで蜘蛛がそういう糸を張ってしまったように、銀色のそれはランプの明かりを帯びて輝いていた。
「さて」
男はそんなフォリニックの尻に肉棒を突きつけて、丸みを撫でながらも亀頭を埋め込む。先端が刺さっただけでさえ、フォリニックの足腰は異常に震えて、シーツを握る拳には、ぎゅっと力が込められていた。
亀頭が膣内に収まっていた。
(これで……イける……イカせてもらえるけど…………)
自分は折れたのだ。
この男の目論見に負け、ついに絶頂を懇願してしまった。その上で四つん這い、後ろから挿入されるというのは、実に敗北感を煽ってくる。
その上、男はすぐにはピストンをして来ない。
「このままイカせて欲しければ、それ相応のおねだりをして欲しいね」
「何よ……それ…………」
「みっともなく、下品な言葉で必死になって求めてごらん? オマンコをどうして欲しい? このチンポで何をして欲しい?」
「あなた……どこまで…………」
「それとも、寸止めをまだ続けるかい?」
そう言われては、もう何も返す言葉が浮かばない。
(何よ……言うしかないっていうの……下品なおねだりって、どうしろっていうのよ……なんでそんなにふざけたことを思いつくのよ……)
早く、イキたい。
イキたいというのに、先端だけは収まった肉棒が動いてくれない。こうなったら、自分の方から動いてしまおうかと考えが浮かんだもののそれは躊躇い、動けないままでいた。
「……言えばいいっていうの?」
「そうだね。君の堕ちる瞬間を見せてくれ」
「何が堕ちるよ……馬鹿馬鹿しい…………」
そんな下らない満足感のために、ここまで長々と時間をかけたというのだろうか。
下らない、本当にくだらない。
しかし、その下らない満足感を満たしてやらなければ、男の方からは決して動いてもらえない。
「くっ…………」
フォリニックは歯を食い縛る。
これほど悔しいことがあるだろうか。普段は決して使わない、下品な言い回しをさせられた上で、自分から快楽を求める言葉を言わされる。まるで人格を貶められ、品性を傷つけられるようでたまらなかった。
「わ、私の……お、お……オマンコを………………」
最悪の気分であった。
あまりの抵抗感から、フォリニックの言葉はそこで途切れて、すぐには次の台詞を言えずにいたが、数秒の時間をおいてこう吐き出す。
「あなたの……おチンポで、イカせて……下さい…………」
言い終えた瞬間から、胸に吹き荒れるのは敗北感だった。
結局は快楽に屈服させられ、こんな尻を恥ずかしげもなく向けたポーズで、男に勝利を与えてしまっている。振り向いて表情を見たのなら、そこには一体どこまで勝ち誇り、ひどく微笑んだ顔があるのか、目に浮かぶようだった。
「よく言えたね」
男の手の平が尻を撫でる。
その優しくいたわるような手つき一つで、たまらない快感に尻中がぶるっと震える。
ぱん!
そして、ひと思いに一瞬で貫かれた。
「あぁん!」
大きな声が上がると同時に、頭の中で今度という今度こそ、激しい電流が弾けていた。四肢の筋肉さえも弾んでの、一瞬にして全てが真っ白に染まり変わる衝撃は、絶頂に他ならなかった。
「はぁ……あっ、はぁ…………はぁ…………」
ただ肉棒が根元まで収まって、それだけのことでフォリニックは衝撃に目を丸め、そのまま息切れのような呼吸をしていた。
男は両手で腰を掴んで激しく動く。
ぱん! ぱん! ぱん! ぱん! ぱん! ぱん! ぱん!
「あぁぁっ! あん! あぁぁぁん! あぁぁぁあぁああ……!」
フォリニックはたちまち狂ったように喘ぎ散らした。
男の手慣れたグラインドは、尻に腰を打ちつけることによっての打音を鳴らし、長大なペニスがフォリニックの膣をごっそりと抉り抜く。相応の長さが後退して、亀頭だけを膣に収めた状態に移ってから、またすぐに根元まで埋め込むピストンは、その一回に起こる摩擦が平均的なサイズの場合を上回る。
「あぁぁ……! あっ、また……!」
フォリニックは二度目の絶頂を迎えていた。
雄叫びのように首を反り上げ、ビクっと尻を震わせながら、アソコからは潮を噴いているはずだった。その潮吹きに対して男の腰が蓋となり、結果的に飛沫の飛散はしないながらも、噴射そのものは行われ、男の股を愛液で汚していた。
ぱん! ぱん! ぱん! ぱん! ぱん! ぱん! ぱん!
男のピストンは止まらない。
フォリニックがイっていようとお構いなしに腰振り続行して、だから体の休まる暇もなく、続け様に快楽に翻弄されることとなる。
ぱん! ぱん! ぱん! ぱん! ぱん! ぱん! ぱん!
打ち鳴らしている最中に、果ては射精までしていた。
脈打つペニスの先端から、避妊薬をいいことに遠慮無く中に注いで、その射精中でさえもピストンは止まらない。多量の白濁は亀頭によって押し込まれ、あるいはカリ首によって掻き出され、膣口の外へと出て来る一方で、奥に詰め込まれていく分もある。
摩擦によって愛液と精液はかき混ぜられ、たちまち泡立っていた。
白く濁った固まりとなって、それがピストンの摩擦によって膣壁との狭間で磨り潰される。掻き出されて出て来たものは、膣口の周辺を汚していき、いくらかは男の陰毛にも付着していた。
「あぁああああ! あん! あぁぁぁん!」
フォリニックはもう既に、つい先ほどまでの自分自身の感情も忘れている。
嫌悪や屈辱を抱えた中で、それでも我慢できずに懇願して、悔しさと敗北感を味わった。その気持ちは快感の荒波に掻き消され、今のフォリニックは喘ぐ以外の何もできない。与えられる快楽に振り回され、髪でも振り乱している以外、成せることは何もなかった。
「あん! あぁん! あっ、いやっ、あぁ……イクぅ…………!」
三度目の絶頂に合わせて、男もまた射精する。
尻にしっかりと腰を押しつけ、その柔山を押し潰した状態で、子宮を狙わんばかりに放出する。フォリニックもフォリニックで、腰と密着している尻を痙攣させ、腰も上下左右に小刻みに振動させてのビクビクとした反応で、潮吹きをゼロ距離で行っていた。
*
フォリニックは仰向けの男に跨がって、一心不乱に上下していた。
「あぁっ、あぁぁ……!」
もはや自ら快楽を求め、腰を動かしている始末である。持ち上げた腰をどのように沈めれば、膣壁への当たり方がより気持ちいいか。それを探ろうと動く腰使いは、どことなく左右にくねくねとしていた。
そして、勢いを帯びて上下することにより、乳房もまたプルプルと揺れていた。
「あっ、あっ、あっ、あっ、あっ」
「すっかり楽しんでいるね?」
「うっ、うるさ――あっ、あっ、あぁぁぁああ…………!」
薄らとした正気が見え隠れしたかと思いきや、すぐさま脳が快楽に染まり直して、フォリニックは夢中になった。
「あぁ――あぁぁ――あぁぁぁ――――あぁぁぁぁ…………!」
イキそうになるにつれ、その上下運動はペースを増していき、やがてフォリニックは俯きながら肩を震わせ、全身を小さく縮め込む。体中の筋肉を鳴動させ、脚をくねくねと開閉させながらの絶頂を味わうと、次の瞬間には息切れのような呼吸をして、肩からぐったりと力を抜く。
しかし、数分もそうしていれば、また自ら動き出すのだ。
男の方から命じたり、突き上げるまでもなく、フォリニックは自分自身で上下運動を行っている。イキそうになるたびに、同じようにペースを速めて絶頂して、少し休めば再開するということを繰り返した。
そればかりか、男の手でフォリニックを股から降ろし、ベッドに座らせた上、仁王立ちで肉棒を突きつけると、それを咥え始めていた。
「あむぅ……」
口元に差し出されるなり、惹きつけられでもしたように頬張って、フォリニックはフェラチオに耽っていく。頭を前後に動かしながら、肉棒の表面にまぶされた混合液を舌で拭う。愛液と精液の混ざったものが舌に染みつき、味覚を刺激してくるのも構わずに、フォリニックは激しく貪っていた。
「じゅむっ、じゅるるるぅぅぅぅ………………!」
ほとんど、無意識だった。
快感で脳が痺れ尽くした果てに、ぽーっとなった頭の中には、セックスが気持ちいいという感覚しか残っていない。そうまで染まったフォリニックは、自分をここまでイカせてくれたものに対する奉仕をぼんやりと行っていた。
見た目には激しく、意識的にはぼんやりと、唾液の音を鳴らしてしゃぶっていた。
「んぐ……!」
そのフェラチオの最中に、男はおもむろに両手で頭を掴み始める。
男の方から腰を振り、イマラチオによって快楽を貪った。そんな男を主導とした出入りにも、フォリニックは口を大きく開くことによって応じつつ、舌を少しでも激しく踊らせようと苦心していた。
ここまで夢中で快楽を求め、セックスに染まりきったフォリニックは、夜が明けるまで正気を取り戻すことはなかった。快楽に心をやられ、目が色気に染まり変わったままの夜を過ごして、やっとのことで本来の自分に立ち返っても、なおもアソコの中には余韻が満ち溢れる。
膣口がすっかりペニスを記憶しきっていた。
あまり意識をやりすぎると、明晰夢でも見ているように、妙な現実感を伴いながら、男のそれが収まっている時の感覚が蘇る。
シーツがぐっしょりしているのは言うまでもなかった。
お漏らしと変わらない光景となるほどに、大きな濡れ染みの円は広がって、何度かあった潮吹きの、細かな飛沫の痕跡も残っていた。濡れたてのようなぬかるみばかりか、濡れた後で乾いた場所もいくつかあり、そのシーツは本当に体液まみれであった。
膣内にも、子宮にも、優れた避妊薬の効果があるとはいえ、精液は残留していた。
指で掻き出すことなどできっこない、随分と奥に残ったものは、自然に排泄されるのを待つか、シャワーでどうにかするでもない限り、取り出しようがなくなっていた。
「楽しんでくれたようだね」
そんなフォリニックの上に覆い被さり、まだ挿入をしたいかのように、男は股に亀頭を宛がう。
「……別に、あなたの思い通りになってあげただけの話よ」
フォリニックはぷいっと顔を背ける。
やはり、心を許してはいない。
どれほどの快楽を与えられ、何十回という絶頂を味わったとしても、この男がゲスな交渉を持ちかけた人物であることは変わらない。
好意など欠片もなかった。
「さて、ならこうしよう。もう一回するかどうかは、君の意思に任せるよ」
「……なによそれ」
「ほら、先っぽが入っている」
亀頭の先端だけが収まって、男がその気になれば正常位の交わりがまた始まる。体位を変えて何度交わったかも数え切れない中、このまま正常位のセックスを始めれば、この体位が何回目になるのかも、まるで想像がつかなかった。
しかし、あくまでフォリニックの意思に任せようとしてきている。
「なによ。したいなら、すればいいじゃない」
「いいや? 君の気持ちを聞きたいんだが、しかしこうしよう。僕の挿入に対して、沈黙は肯定と見做す」
勝手にルールが設定され、その瞬間から、亀頭がもう少しだけ入ってきた。
「…………」
フォリニックは沈黙を選んでしまっていた。
男は本当に少しずつ、わざとらしい猶予を与えながら入れて来るが、それに対してフォリニックは、仏頂面でありながらも沈黙を守り続ける。拒んだり、用事でも思い出したという口実を吐き出すための時間は、何分もかけて与えられていたのだが、決して何の言葉も発さずに、無言で睨み返していた。
男の設定したルールに従って、沈黙を守っていた。
それでもなお、やはり言いたいことがあるかのように、そして心の中にはちっとも好意がないことを示すため、睨まんばかりの目つきは緩めなかった。
こうなれば、あともう一度だけセックスをしたのは言うまでもない。
挿入によって、睨む目つきはみるみるうちに緩んでいき、数分もすれば快楽に染まり変わった。
フォリニックは多大な快楽を貪り尽くし、シーツに新たな愛液を染み込ませた。そのセックスが終わる頃には、肉棒の抜けた穴からこっぽりと、白濁を垂れ流してさえいるのであった。
*
それから、数週間後。
約束通りに移動手段が手配され、ロドスに帰還を果たしたフォリニック達なのだが、フォリニックの中には延々と余韻が続いていた。
いや、余韻が引いてすら、アソコの方が男のペニスを覚えていた。
思い出そうとすれば簡単に思い出せるほど、深く刻み込まれてしまっただけでなく、あの快楽が夢にも出る。起きた時には下着が愛液を吸っているほど、いやらしい夢を見ながら目を覚ますことが増えていた。
「最悪じゃない。こんなにはしたなくなってしまうだなんて……」
全部、あいつのせいだ。
そんな恨めしさを胸にしながら、日常の中ではアントのことに折り合いをつけていき、元の職務の日々に戻っていく。ウォルモンドで起こった様々な出来事は、心の中で薄らと尾を引いているものの、表面的には何も引きずることなく、そして精神面も今では安定を保っていた。
ただ……。
ある日、例の男がロドスを訪問して、ドクターやケルシー先生を相手に会談の場を設けて来た時、全身がぞくりとした。
そう、彼だ。
快楽の日々を送った相手が、今この基地の中にいる。
その事実だけでも体が快感を思い出し……。
『彼から伝言を預かっている。どうやら、君達を救った当時の彼は、ちょっとした病気を患っていたそうだな。その治療をしてもらったお礼がしたいと、個人的な申し出があった。それで彼への連絡だが――――』
携帯端末にそんなメッセージが入って来た時、フォリニックはすぐさま確信した。
……これは、誘いだ。
あの男が病気や怪我を抱えていた様子などなかったが、嘘で口実を作ったわけだ。そういうことにしておけば、個人的な恩義があっても不自然はなくなる上、しかも彼の連絡先にメッセージを送った結果、パーティへの招待状が電子で届いた。
これなら、フォリニックのことを不自然無く手元に呼び寄せられる。パーティ会場にさえ入ってしまえば、その後のベッドへの誘い方は、どうとでもなるというわけだ。
ロドス基地の近くには、現在彼の飛行艇が停まっている。
そこが開催場所らしい。
快楽の予感を胸にしながら、フォリニックはパーティに出席する。男の作った口実通り、自分は病気の治療をしたに過ぎない顔をしながら、抱かれるために向かって行った。
ただ、決して自分の態度は変わらないだろう。
肉体には快感を覚え込まされ、またセックスをしてみたい欲望はどうしようもなく植えつけられてしまったが、心の中にはやはり好意など欠片もない。
それだけは、変わらない。
変わらないが……。
セックスを楽しみにしてしまう気持ちは、やはり心のどこかにはあるのであった。
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