女の子の肌は宝石のようなものだ。
と、平沢千奈美は思っている。
だって、男が上半身裸になってもオッパイはついていない。誰かにパンツを見られても、女の子ほどの一大事というわけではない。
女の子の体には、おいそれとは見せてはいけない部分がたくさんあって、好きでもない人の前で裸だなんて本当にとんでもない。顔から火がでるような恥ずかしい思いをしてまで、男の子の喜ぶようなことをしてもいいのは、千奈美にとっても大好きな相手だけだ。
愛されるとは、どんな気持ちだろうか。
お互いに激しく相手を求め合うのは、どんなに情熱的で凄いものなのか。
物凄く興味があった。
とてもとても、エッチなことには興味があった。
といっても、一時期は汚くて嫌だなーと、そんな風にも思っていたのだ。
例えば、これは中学二年の頃だったか。
「おい! 何持ってきてんだよ!」
どっ、と突然、教室で男子が湧いた。
男子の一人が猥褻な雑誌を持ってきて、仲間内でそれを自慢げにしていたのだ。友達からのツッコミで「何やってんだよ」と盛り上がり、みんなが大笑いで囃し立てる。
その光景を見たことで、つくづく思ったのだ。
「男子って、嫌だなー」
頭の悪い猿達でも見ているようで、そんな人達に自分の肌を見せたりするなんて、とてもでないが考えられない。
しかし、人は誰だって、そういうことをして生まれてくる。
思春期の年頃で、心の端ではエッチなことは汚いことだと思いながらも、なんだかんだで好きな人というものが出来て、そんな時に思ったのだ。
自分の好きな人。
好きになってしまった男の子。
その人にだって、きっと性欲はあるのだろう。もしも仲良くなって、告白をするかされるかして付き合って、長々と一緒にやっていけば、最終的には必ずセックスに辿り着く。結婚まで行こうものなら、子供も生むことになるのかもしれない。
まあ、さすがに結婚など中学生の歳では実感が無さ過ぎるが。
好きになったはいいけれど、もしその人が彼氏になったら、その人は千奈美にエッチなことを求めてくる。一週間や二週間は早いにしても、ずっと付き合っていれば必ずそうなる。その時の自分は果たして肌を曝け出すのかというのは、女の子にとっては切実というか大切というか、重大案件とでもいうべきが。とにかく、何かしら思うところのある部分だ。
好きな人が出来て以来、何度か悩んだ。
悩みというほど悩ましく思うわけではなくとも、何もすることのないボーっとした時間があると、何となくそういう考え事した。
好きな人には愛されたい。自分のことを見てほしい。
だけど、それはつまり……。
うん。その先にはエッチがある。
だから、自分から男子に告白をするというのは、千奈美的には自ら求めていくかのようで、どこかいやらしい気がしなくもない。もちろん、告白の時点からそういう風に考えを繋げ、いやらしいと想像すること自体が、千奈美の中にある好奇心の証拠なのかもしれないが。
そんなわけで、自分から告白という勇気がなかった。
「俺は平沢千奈美のことが好きです」
中三の冬――。
まさかのまさかで、相手の方から告白され、その時の千奈美は天まで舞い上がるような喜びで、夢でも見ているのかとさえ思った。
千奈美は斉藤健一が好き。
健一も、平沢千奈美が好き。
お互い好き――これって凄い!
静かな頷きで告白を受け入れ、その時からカップルということになった千奈美は、その日の帰宅後に枕を抱えて喜びにのた打ち回った。
さらに嬉しかった出来事は、健一とは志望校が同じだったこと。
自分と相手の心の中身が一致したかのようで、なんだか嬉しかった。
何よりも一緒に合格発表を見に行って、一緒に合格できた喜びといったらなくて、千奈美はその喜びを分かち合うかのようにキスをしていた。これからも同じ学校で、一緒にいられる時間が増えるのだという喜びが、お互いの胸の中に膨らんでいて、キスをすることによって、まるで心の中身を交換するかのように通じえた。
これだ。
千奈美が本当に興味津々なのはこういうことだ。
通じ合う――コミュニケーション。
仲の良い友達とお喋りを楽しむのは普通のことだが、恋人同士の場合はそれが発展に発展を重ねていき、服を脱いでのボディーランゲージにまで進んでいく。男の人を性的に喜ばせてあげたり、愛してもらうということは、恋人同士だけに許される秘密の『交流』なのだ。
つまり千奈美にとって、お喋りでは到底済まされないほどの最高の仲良しと『交流』したいというのが、エッチに対する興味の正体だ。
お喋りを超えたお喋りというべきもので、友達を遥かに超えた恋人という存在でなければ成り立たない。
恋人同士でないと成立不能な究極の『お喋り』なのだ。
勃起、射精。
知識的には知っている。
それらも、やっぱりコミュニケーションの中にあるもので、生理反応さえも駆使する肉体での会話だから、交流不能の相手となんて考えられない。好きな人にしか見せられない、好きな人としかセックスができない気持ちは、そういう部分ということだ。
そろそろ、少しは成立するんじゃないかな?
千奈美が彼氏を部屋に入れ、抱き締め合った状態からお尻を揉むことを許したのは、今ならカラダのお喋りが成り立つ予感があったからだ。
そして、成り立ったことを実感した。
好きだから受け入れようと思う千奈美の気持ちに対して、それを大切に受け取るような手つきをして、健一は千奈美のお尻を味わった。会話のキャッチボールというように、千奈美の投げた気持ちを受け止めて、それを投げ返してくれたのは、立派な成立だと思った。
揉ませてくれてありがとうと思う健一の胸の中身が、特に理屈などなくとも千奈美には伝わって、だから通じ合えたという実感が湧いた。
女の子のお尻やオッパイ。男の子のペニス。
それらはコミュニケーションツールだ。
カラダのお喋りを行うため、人間に宿された大切な器官で、そういうエッチな場所こそが、性行為という名の交流を成り立たせる。
私の方からも、返そうかな。
こちらの投げたボールを健一が受け取り、投げ返したものを千奈美が受け取る。キャッチしたままではキャッチボールにならないから、また千奈美の方から投げ返すのだ。
となると、ペニスかな。
抱き合う身体の密着で、健一の勃起などとっくにわかっていた。男の子のペニスに何かを返してやれれば、より深い部分まで進む気がする。
千奈美が手でしてあげようと思ったのは、そうした流れの中でのことだ。
元々ペニスには興味があった。
自分が子供を生むかの将来なんて、さすがに今からはわからない。結婚するかしないかさえもわからないが、もし生むとしたら、ペニスはそのために使われる器官だ。別に生むことなんてないとしても、最終的には自分の中に挿入されるものなのだ。
それがどういう形状で、太いのか長いのかということは、なんとなく興味があった。
彼氏のペニスとあらば、なおさら知りたいと思っていた。
コメント投稿