充電を完了したあたしは、教室へ戻る。
すると、やらしい岡部に呼び出され、教卓の前で次の検査の説明を受けることとなった。こいつ――担任なのだ。
「咲夜君、もう充分に休めましたかね?」
「ええ、先生のおかげで悪夢にうなされました」
「ほほう? そんなにイったのが気持ちよかったかね」
うなされたっつってんだろーが、ヘンな解釈しやがって。
まあ、実際には夢自体を見てないけどさ。そんな捉え方するかなあ?
「まあいいでしょう。次の検査は男女一人ずつでペアを組んで行うものです。だから咲夜君が体調を崩していた関係で、男子一名分の検査が済んでいないわけです」
誰のせいだよ、しかも精液採取なんでしょ?
わざわざ女の子の補助なんで出さないで、一人でシコシコやらせりゃいいじゃないですか。なんならソイツ好みのAVでも支給してやったらどうですか? ってゆーかさ、精液検査なんてしてどうすんですかぁ? ああ、きっと精子の数に異常はないかを見るとか言うんだろうね。まったく、しょーもない建前を考えたことだ。
って、思う。
「君、ちょっと生意気な顔をしているねえ」
「はい?」
心の声が、表情の色に浮き出ていただろうか。
「いやいや、褒めているんだよ。学校側としも、むしろ多少反抗的な子の方が可愛がりがいがあると考えているからね」
ちっ、最っ低。
「では時間を押しても仕方がないので、さっそくお願い致しましょう。内木君! こちらへ来なさい!」
岡部の呼びかけに、その男子はやって来た。
デブで、汗臭い。
それが第一印象となってしまうほど、内木とやらのルックスは醜悪だった。黒縁のダサい眼鏡をかけ、似合ってもいない長髪を伸ばしている。その髪質さえよければまだ救いはあったものの、表面がどうも脂ぎっている。
人を見た目で判断するのが失礼なのは、重々承知なんだけど……。
正直、ゾクっとした。
「やっと咲夜たん帰ってきたよお。僕、ずっと待ってたんだよお?」
声質もなんか……キモイ。
とにかく、容姿に関しては0点どころかマイナス点で、顔面だって誰が見てもキショイ造形をしている。
いや、あたしはこう見えても人を見た目で決め付けないタイプだから、人格さえ良ければマイナスの取り返しもつくところだけど……。
いきなり、「たん」とか付けてきたし。
そもそも、クラスの男子自体が女の子の羞恥心に対してなんらの気遣いもなく、自分勝手に喜びまくっていし、泣いてる子もいたのに裸見放題ではしゃいでたし。
とゆーわけで、性格についても期待出来なさそう。
ついでに、あたしが体操着だっていうのにこいつだけ制服に着替えている。
「では内木君。咲夜君に協力してもらいながら、精液をシャーレに出して提出して下さい」
と、岡部は内木にシャーレを手渡す。
「はい、わかりましたお」
お、って何だ。お、って。
内木はシャーレを受け取って、あたしの向かってやらしいにやつき方をする。顔の作りが醜悪で、髪も眼鏡もダサいことも手伝って、その笑みにはかなりに気色悪さを感じてしまった。
こんな奴の手伝いだなんて……サイアクだよ。
「じゃあ咲夜たん、落ち着いた場所で抜きたいから一緒に来て?」
「どこへ行くっていうのよ」
「トイレだお」
まさか、あたしを個室に閉じ込めようってわけ?
っていうか、女のあたしが男子トイレに入れるわけないんですけど!
「そんな場所じゃなくても良くない?」
「へぇ? じゃあ咲夜たんはやっぱりエッチな子なんだ」
「はい?」
何がどうなってそうなった。
「だって、検査の時もいっぱい感じてたでしょ? 咲夜たんはもしかして、人に見られながらの方が気持ちいいのかな?」
「いや、そんなわけ――」
そんなわけがない。
だいだい、身体の敏感な部分は嫌でも生理的に反応を起こすし、だから感じたくもないのにあんな目に……ああ! 思い出したくもない!
「そういうことならトイレじゃなくてもいいけど? どうする? 咲夜たん」
うぅぅぅ……人に見られながらよりは、申し訳程度にはマシか。
「いいわよ、トイレで。行けばいんでしょ?」
「お? 今のツンデレ? 咲夜たん萌え~」
こいつ…ウゼェ。
こんな人の補助だなんて、悲しすぎる。
あたしは歯軋りしながら、内木と共に教室を出るのだった。
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