本文 敗北のペリ姦
煙の突破が分岐点であった。
助けて、助けて! 谷地要塞!
ランドブレーカーがたくさん!
谷地要塞へ向けての出立は、そう必死に訴える者の通信を契機にしてのものである。
現在、ランドブレーカーに占拠されたその地の解放や人員救助を目的に、ペリカは管理人やチェン・センユーと共に行動を開始する。道中ではウルフガードとも合流して、四人で目的地に足を運ぶが、そこには道を阻むものがあったのだ。
煙が壁のように立ちはだかっていたのだ。
――巣彫。
そこから噴き出すものは単なる煙ではない。
巣彫とはボーンクラッシャーによる支配の象徴で、いわば縄張りをアピールするステイタスとなる建造物だ。
炉のように物を投げ込み、巣彫は何でも燃やしてしまう。
そして周囲に広がる煙は侵食物質を含んでおり、源石装置の動きを抑えてしまう。武器としても、身を隠す目的にも使われるその煙は、向こう側の様子がわからないほど濃いもので、突入した途端に敵が待ち構えていても不思議はない。
煙という名の壁に、ペリカ達四人の道は阻まれていた。
「思い切って通り抜けちゃうの、どう? それか、他の道は」
そう口にしたのはチェンだった。
煙を突破すれば迂回路を探さず済むが、メリットよりもリスクの方が高いだろう。
「中の様子がまったくわからないんだ。他の手段を探すべきだな」
ウルフガードの言葉により、煙の突破は選択肢から外された――はずだった。
背後を突いた襲撃はその時だった。
四人の背に、ランドブレーカーの一軍が現れたのだ。苦戦を強いられるほどの数に押されて、煙と軍団の挟み撃ち。煙を背にした形でじりじりと後退させられやむを得ず、様子のまったくわからない向こう側へ飛び込んだのだ。
それがもたらす結果に、ペリカは眉を顰めていた。
「困ったわね」
結論から言うと仲間とはぐれた。
やむを得なかったとはいえ、濃い煙の中では管理人や仲間の位置を視認出来ず、そしてランドブレーカーはそんな視界の効かない中ですら攻撃の手を緩めてくれない。どうにか煙を突破して、壁の内側に出てきた頃には、チェンやウルフガードの姿を見失い、ペリカは幾人ものランドブレーカーに囲まれ孤立していた。
始めから待ち構えていたのか、騒ぎを聞きつけ急いで陣形を整えたのか。
いずれにせよ、状況は最悪に近い。
「ウルフガードの言っていたように、源石装置が損傷を受けてしまったわ」
アーツユニットの出力が低下している。
数に押されて仕方なくとはいえ、やはり無理な煙の突破は良くなかった。
多勢に無勢、仲間との分断も、管理人の位置が近いのか遠いのかさえわからない。アーツユニットの不調で攻撃力は間違いなく低下しており、不安定なままの仕様で武器が故障する事さえあり得るだろう。
極めて不利な状況に額を冷や汗で濡らし、ペリカは険しい顔でランドブレーカーの群れを見据えた。
仮にもチェンやウルフガードがいたおかげで、始めに後ろを突かれた時と比べて総数は減っている。
しかし、やはり逃げる前提の方が現実的だろう。
(簡単には逃がしてくれないでしょうけど……)
アーツユニットの不具合がある以上、武器の故障よりも早く逃げ切り、どこかへ身を隠して管理人達と合流したい。
(管理人……。みんなも、無事だといいのですが)
脳裏に浮かぶ管理人の顔が気にかかり、早いところ彼の元へ駆け付けたい焦燥で身が急くも、今は人の身より自分の身という状況なのだ。
「へっへっへっ」
「終わりだなぁ? 小娘」
周囲をぐるりと囲むランドブレーカーの一人一人に、すっかり獲物を捕らえた気でいる悪辣な笑みが浮かんでいる。そして群れの中から数人が肩を揺らして、我こそが獲物をひっ捕まえようとばかりに迫って来る。
「終わるつもりなんてないわ」
ペリカはアーツユニットを震って電撃を放ち、そのフラフラと出て来た数人には直ちに地面を抱擁してもらうが、その攻撃の際に違和感があった。
(まさか……)
手応えが違った。
その数人は倒せたかもしれないが、まるで機材やソフトウェアの設定が知らないうちに変わっていて、操作感覚がいつもと異なっているような、妙な出力の違いをやはり感じた。危惧した通り、アーツユニットが不具合を起こしているのだ。
いや、まだ威力は足りている。
あとはここをどう切り抜けるかだ。
「その電気マッサージがいつまで使えるかな?」
そんな時、一人の大男が現れた。
ずかずかと歩む気配で、包囲網の輪が一瞬開き、壁の穴からペリカの前へやって来るのは、他のどのランドブレーカーよりも肩幅が広い、背丈ある屈強な肉体の持ち主だった。
アーツユニットの不具合に気づかれている。
状況がさらに悪化したと感じたペリカは、厄介な大男を少しでも早く倒そうと雷撃を放つも、彼は避けようともせず胸筋で受け止めた。
「気持ちいいねぇ!」
勢いよく距離を詰めてくる大男に、ペリカは続けて攻撃を繰り返すが、他のランドブレーカーなら一撃で倒す威力が通じていない。そして距離を取ろうにも、包囲の輪に囲まれ逃げ場がなく、とうとう剣の間合いまで近づかれ、大男の握る一閃がペリカを狙う。
最初の一撃からペリカは飛び退き、しかし大男はそれを追うように素早く踏み込む。大地を蹴ったペリカに合わせ、まだ体が空中にある瞬間、その本当に一瞬の間に踏み込みを済ませ、横一閃の刃が通っていた。
大男の動きは速かった。
飛び退く動作が完了して、浮かんだ足が着地した時には、既に相手の攻撃もまた完了していた。
「…………っ!」
ペリカは当然、引き攣っていた。
今の一撃でやられたと思ったのだ。痛みも何も感じないのは緊張やアドレナリンのせいであり、本当は肉に刃が通って体から血が出ているはず。自身の体を見下ろせば、服が赤く汚れている事を覚悟したが、チラリと一瞬だけ瞳をやり、さらには刃が通った太ももに意識を傾けるも、どうやら肌が血に濡れた感触も何も無い。
(躱せていた?)
目の前の大男には勝ち誇った笑みが浮かんでいる。
あれはただ、剣速を誇示して自慢げなだけなのか。
その誇らしげな笑顔の理由を悟るのは、大男が次の攻撃を仕掛けた直後だ。また一瞬にして距離が詰まって剣が振るわれ、ペリカはそれを躱そうと必死の反応で飛び退くが、後退していく体に切っ先が追いついたのだ。
剣が最後まで振り抜かれても、やはり痛みも血に濡れる感触も何もなく、てっきり躱しきれたものと思ってみれば、そこではらりと布が落ちていた。
「え……」
地面の上に、大きな布切れが張られていた。
ペリカの装いはワンピースのように上下一体の、そこに上着を羽織ったものだ。そのスカート部分から切り取られた大きな大きな長方形で、服がどんな形に傷つき、そして一体何が見えているのか悟ったペリカは、そんな真似をしてきた大男をじっと睨んだ。
「……余裕ね」
そんな遊びをしてくるとは随分な敵である。
つまり大男が放った刃は、肉も骨も狙わず服だけを切り裂いたのだ。切っ先の通ったスカートは、ちょうどショーツの見える真ん中を綺麗に抜き取り、出来上がった長方形の空間から、下着の色が丸見えになっていた。
「黒かぁ? いいじゃねぇか、似合ってるぜぇ!」
黒いパンストに黒いショーツの色が被って、下着の部位だけの色が濃い、そんな下腹部に対する不躾な眼差しに、ペリカは不快感で顔を歪めた。
「おい、いい趣味だなぁ?」
「俺にも見えたぜぇ?」
「黒たぁセクシーなもんだなぁ?」
周りから下品な言葉が投げかけられ、それがますますペリカの表情を険しくする。
状況は随分悪化した。
有象無象のランドブレーカーなら、不具合を抱えたアーツユニットでも何とかなるが、目の前の大男には電気マッサージにしかなっていない。体が丈夫なばかりでなく、他の面々とは明らかに動きが違う。
(服だけを狙った太刀筋。その腕なら足を斬れたでしょうに、わざとスカートを切り取るなんて)
ここはもう、彼らのためのステージだ。
我らがリーダーが獲物を甚振り、周りの子分はそれを見学して盛り上がる。いかにも悪趣味な舞台の上で、このままでは相手の思惑通りに踊らされる。
(ここは良い方に考えましょう)
ペリカは思考を切り替えた。
(チェンやウルフガードがいる以上、いつまでも分断されたままでは終わらない。管理人だって、そう簡単には倒れない。ある程度持ち堪えれば、助けが来る可能性は充分ある)
本当は自分こそが管理人の元へ駆け付け、一刻も早くその安全を確保したいのに、逆に自分こそが助けを待たなければならず何とも歯がゆい。
大男がまた動く。
突風が吹き付けるような勢いで、一瞬にして目の前にまで距離を縮めて剣を振り、やはりその攻撃は肉体を傷つけない。切っ先がスカートの繊維を攫い、またしても布切れが宙を舞う。
相手の腕は確かだ。
だがペリカは戦った。
剣が振られるたびに飛び躱し、アーツによる反撃を繰り返す。効かないとわかっていても電気を飛ばし、屈強な大男はそれを避けもせず真正面から受け止めて、ニヤけた顔でずかずかと迫って来る。
そして次の瞬間だった。
「アーツ……!」
大男は杖を握っていた。
右手には剣を、左手にはアーツユニットを握り締め、次は今までにない攻撃が来ると思って身構える。
しかし、氷や雷が飛んで来るでも、光線が出るでもなく、ただアーツが使われた波動だけが感じられた。目に見えてわかりやすい、攻撃らしい攻撃は来なかった。
だが……。
かぁぁぁぁ……!
ペリカは急に赤らんで、左手をショーツに押し当てていた。
「おいおい、どうしたんだ? 急に可愛くなっちゃってよ!」
「手で隠してる場合ですかー?」
「敵は待ってくれないぜ?」
「きちんと両手を使って戦った方がいいんじゃないか?」
周囲が一気に盛り上がり、それらの野次にますます羞恥心を煽られる。
「まさか、今のアーツは精神系の……!」
たった今まで、ペリカは何も気にしていなかった。いや、気にしている場合ではなかった。そんな事より現状をどうにかする方で頭がいっぱいで、下着が見えて恥ずかしいなど感じる暇すらなかったのだ。
それが突然の赤面だ。
羞恥心が増幅させられた。
よほど限定的な効果なのか、それとも本当はもっと応用が利くものをそう使っているのか。身の安全に関わる状況だというのに、ペリカの左手はショーツから離れない。戦いでピンチになるより、少しでも下着を隠す方が大事なように、腕がすっかり固まっていた。
「戦いに支障を来している場合では……」
ペリカはショーツから左手を引き剥がし、歯を食い縛って羞恥心を堪え始める。すると大男や周囲の視線がますます気になり、頬が熱を噴き出す勢いとなって表情が歪んでいく。恥ずかしいあまりに、左手どころか両手共々ショーツを気にして、隠したがる仕草が止まらなくなっていた。
「動きが鈍くなってるぜ?」
大男がまた迫る。
一瞬で距離が詰まるスピードで、即座に間合いに入られ剣も振られて、ペリカの飛び退く回避は間に合わない。反応して地面を蹴りこそしていても、大男はそれに合わせて前進して、切っ先を着衣に追いつかせるのだ。
下から上へ、斬り上げる攻撃だった。
今度は胸の間を刃が通った。
やはり肉には傷つかず、服だけを切断する技巧によって、乳房のちょうど狭間に切れ込みが出来上がる。ショーツの次は胸を剥き出しにされかねない危機感で、直ちに反撃を行うものの、ペリカの電撃が大男の攻撃を食い止める事はない。
腕に当てても関係無く、大男は続けて剣閃を繰り出した。攻撃がされるたび、ペリカはそれを躱そうとするのだが、飛び退いても踏み込みで追ってくる。たとえ躱せても、即座に次の踏み込みを行って、二度目や三度目の斬撃を放ってくる。
着衣の切れ込みは増え続けた。
切れ込みと切れ込みが繋がって、四角形や三角形の歪な切り抜きが所々に増えていき、とうとう胸から布切れが落ちた時、乳房が綺麗に露出する。
「なっ……!」
ペリカは慌てて両手で覆い隠した。
胸部だけを綺麗に切り取る形となって、乳房が丸ごと剥き出しだった。肌が、乳首があらわとなり、大きな羞恥心を煽られ真っ赤になり、ペリカはぎゅっと腕の内側に乳房を抱き締めて、歯をキツく食い縛った表情で大男を睨み返した。
「ほーら、アーツを使っちゃうぞぉ?」
大男が握った杖は、ペリカのものと違って正常に稼働して、その出力が大気を揺るがす。風を伝ったような振動で、肌が少し震わされたような気がした直後、ますます顔が赤らんた。
「くっ……!」
やはり精神系のアーツらしい。
その影響を受けたペリカは、まるで頭が沸騰しているように恥じらって、歪み尽くした表情から熱が噴き出す。
(恥ずかしがっている場合じゃ……ないというのに…………)
どうしても乳房を視線に晒す真似が出来ないせいで、アーツユニットを構えようにも左腕が胸に残った。右腕だけを前へ突き出し、ショーツが見えるせいで腰は引っ込み、これでは格好の付かないへっぴり腰だ。
「どうしたんだ? お嬢ちゃんよォ。このまま俺達に捕まったら、慰み者として壊れるまで犯されるぜ? オッパイなんか気にしてる場合じゃないんじゃないか?」
精神系のアーツを駆使した張本人の、嫌みたらしい助言に顔を顰めて、ペリカは唇を内側に丸め込む。恥ずかしさを頭から振り払い、どうすれば目の前の男にダメージを与え、周りのランドブレーカーを蹴散らせるか。包囲網を突破して、ここから逃げ出し管理人達との合流を目指せるか。それだけに神経を集中しようとするが、まるで脳を掴んで引っ張るように、羞恥心が集中を邪魔してくる。
大男がずかずかと、肩を揺らして悠然と迫って来た。
「と、止まりなさい!」
ペリカはそこで股間を狙う。
急所ならばさすがに効くと思ったが、しかし咄嗟に剣で受け止め防がれていた。
「あぶねぇあぶねぇ、こんな度胸試しはできないんでな。今のは防がせてもらったぜ?」
大男が剣を振り上げる。
武器のリーチとしては間合いの外側、相手が腕を突き出しても、切っ先とペリカの間に一メートルは距離が出来るが、地面を蹴って一瞬にして踏み込むスピードを加味すれば、次の瞬間には胴体が真っ二つの射程距離内だ。
(助けが……。管理人がきっと来ると信じて、とにかくこの状況を利用して時間を稼ぐわ)
今の彼らは遊んでいる。
ひと思いに殺すのでも、気絶させて連れ去るのでもなく、悠長に遊んでいる。管理人が、チェンが、ウルフガードがここを見つけて、ペリカのピンチに駆け付けるには、十分過ぎる理由ではないか。
きっと道は拓ける。
そう信じて、ペリカはアーツユニットを構え続ける。
「そら、次の攻撃だぜ?」
大男があからさまに腰を低めて、今から飛びかかると言わんばかりの、わざとらしい予備動作を見せびらかす。そして突風が体の真横をすり抜けたと思ったら――。
――速い!
もうその時には、背後を取られていた。
「このっ!」
背中を斬られないために、ペリカは前へと飛び退いた。さらに振り向き様の反撃まで行うものの、まるで筋肉が分厚い鎧であるように、どうしても電撃は通らない。
「どんどん行くぜ?」
大男は繰り返し繰り返し、玩具を甚振り楽しむために、ペリカの背後を取り続けた。風が横切るような速さで人の後ろへ回り込み、背中を狙って剣を振り、躱そうと思っても躱しきれずに着衣の切れ込みは増えていき、全身の所々から布切れが落ちていた。
もう上着が残っていない。
羽織っていたものは残骸に変わり、切断されたフードや袖が落ちている。ブラジャーの紐やカップの切れ端すら落ち葉のように広がって、もはや裸に近づく一方だ。
ショーツに視線を感じた。
乳房を隠すための左腕、アーツユニットを構える右腕で、どちらの腕もショーツには回せない。視姦させておくしかない部分に、四方八方からいやらしい視線は集まっている。
大男の肩の向こうから、ニヤっとした眼差しが届いてくる。右や左に視線をやっても、下着の視姦をアピールせんばかりに、少しでもあからさまな目つきとなって、自分がどこを見ているかを教えようとしてきている。
そして大男が剣で迫って、ペリカはそれを躱そうとして、しかし躱しきれずに、着衣のどこかに切れ込みが走る事の繰り返しが延々と積み重なる。
やがて背中が剥き出しになった。
剣が振られ続けた末、もはや上下一体のワンピース型の着衣は失われ、本当に裸になってしまった。
靴にグローブ、黒いパンストに黒ショーツ。
もうそれくらいしか、身に着けたものが残っていない。
どれも恥ずかしい部分を隠す用を成さない、強いていうなら尻や性器が守られているだけの、本当に心許ない格好へと追い詰められていた。
先ほどまで、ショーツは前側しか見えず、尻側にはスカートの布が残っていた。そのスカートが完全に消えた今、四方八方のどの角度からでも下着は視姦されてしまう。左腕で守った乳房についても、隠していようと関係無く、その仕草こそが視姦対象であるように見つめる目つきも多々あった。
そして次に大男が間合いを詰めた時、その行動は剣を振るでもアーツユニットを使うでもなく――。
左腕が掴まれた。
「やっ……!」
悲鳴を上げた瞬間、腕が力強く引っ張られた。豪腕によって力尽くで引き剥がされ、見えてしまった乳房を隠すため、ペリカは慌てて右腕で押し潰した。
アーツユニットを構えるはずの右腕を、胸を守るために使ってしまっていた。
「おい、見えたぜ?」
直ちに野次が飛んでくる。
「瑞々しいオッパイだなァ?」
「乳首の色が確認できたぜー?」
「俺の位置からは大きさがわかった」
「なあ姉ちゃん! やっ……! だなんて、可愛い声を出しちゃって!」
「まるで初々しい乙女だぜ?」
「きちんと腕は使った方がいいぜ? オッパイをぷるぷる揺らしながら戦った方が、もう少しまともにやれるんじゃないか?」
それらの言葉に苛まれ、真っ赤になって目尻を震わせ、ペリカは眉間の皺を深める。
「この……! この人達は……!」
羞恥心から怒りが湧いて、一人でも多くのランドブレーカーを倒してやりたい衝動に駆られるも、大男がたびたび迫って来る中で、ペリカには矛先を変える余裕はない。
もう服を斬るのはやめたのか、大男の次の遊びは腕を掴む行為となっていた。
踏み込みを行って、地面を蹴り抜き距離を詰め、そして攻撃というより左腕を掴んでくる。ペリカのガードを引っ張り上げ、力ずくでも乳房を男達の視線に晒し、そのたびに見えた見えたと周囲がはしゃぐ。
「今のはぷるっと揺れてたぜ!」
「ぷるん! ぷるん!」
「可愛いサイズしてるよなァ? リーベリちゃんよォ!」
「アンタの乳首をしゃぶってみてーぜ!」
ペリカは唇を噛み締めていた。
(完全に遊ばれて…………)
アーツユニットの不具合さえなければ、きっと大男にも通じる出力が出るだろうに、本来の調子で戦う事の出来ない歯がゆさと、玩具にされる一方の悔しさで、ペリカの目つきは険しいものとなっていた。
もう何度、乳房を見られた事か。
「さーて、もっとみんなに見てもらおうぜぇ?」
大男は迫って来る。
ペリカはそれから後ずさっていくのだが、包囲の輪が壁となり、あまり長い距離は下がれない。背後のランドブレーカーに近づきすぎないうちに、ペリカはぴたりと足を止め、横へ飛び退くために身構える。
大男が踏み込み、飛びかかる。
その突風の勢いから逃げるため、真横へ飛び退き逃げようとするのだが、しかし大男は素早く方向を転換した。ジャンプした先で、着地ではなくそのまま地面を蹴る形で進行方向を切り替えて、逃げたペリカの背中を追った。
背後から追いつくばかりか、大男は両手を広げて抱きついていた。
「いっ……!」
密着されて、ペリカは大いに引き攣っていた。抱擁という名の拘束の輪に阻まれ、両手が自由に使えない。必死に身を捩って暴れる中、相手の足を踏みつけたり、脛を蹴る真似をしているが、大男はそれを意に介さない。
そして大男はペリカの両手をどちらも掴み、拘束を後ろ手のものにした。握力による力ずくの手錠がかかり、つまり乳房を隠す手段が失われ、ペリカの顔は真っ赤に燃え上がった。
「ひゃっはぁぁ!」
「可愛いオッパイだねぇ!」
「よーく見えるぜぇ?」
ランドブレーカー達がこぞってはしゃいぐ。
「やっ、やっ……!」
その大喜びの表情から、視姦の眼差しから目を背けたい一心で、ペリカは必死に顔を逸らした。瞼をきつく閉ざして身を捩り、拘束から抜け出そうと懸命になるのだが、その抵抗は大男や周囲にとって、ただの可愛い仕草でしかなかった。
「ははは! ぷるぷる揺れてやがる!」
「乳揺れショーですかー?」
「いいもん見せてくれるじゃねーか!」
「可愛いオッパイを駆使したジェスチャーだ!」
視線が殺到してくるばかりか、そんな言葉の数々が投げかけられて、ペリカは顔を硬く歪め尽くした。ぷるぷると震えるほどに真っ赤な頬を力ませて、歯をキツく食い縛っていた。
「そら」
手首が離されたかと思いきや、大男の腕で突き飛ばされる。前へ前へとよろけたペリカは、包囲の輪の端へと至り、次々と伸びるランドブレーカーの手に囚われ、今度は十字にでもかかったように拘束された。
手首を掴まれ、足も掴まれ、腕力と握力による拘束で、身じろぎ程度にしか身動きが取れなくなる。
乳房に突き刺さる視線は大男のものとなり、ニヤニヤと笑った彼が目の前まで迫って来る。
身構えるペリカへと腕が上げられ、肩も背中も一気に硬度を増した途端、今度はその手によって乳房が揺れた。
「ほーれ」
下乳を掬い取るようなタッチでぷるんと揺らされ、触れられてしまったショックと、乳房で遊ばれた屈辱と、揺れる瞬間を視姦されての恥ずかしさ、それら感情が胸中で一度に渦巻く。
「くっ、こんな真似……!」
歯を食い縛る力のあまり、ペリカは顎を震わせていた。
「こんな真似ってのは、どんな真似だ?」
そして大男はわざとらしく、今度は両手で乳房を揺らす。やはり指先で掬い取るようなタッチで下から上へと、弾き上げるようにぷるぷる揺らす。
それが交互に行われた。
右、左、右、左――。
延々と、ぷるんぷるんと、ペリカの乳房は揺らされていた。
「うっ……ぐっ……!」
その屈辱に歯を食い縛り、大男を睨み返していたところ、やがて唐突に、今度はランドブレーカーに突き飛ばされる。包囲の壁から輪の中心へと、力ずくで押し戻され、腕が自由になった途端にペリカは攻撃を試みる。
「――っ!」
だが、ペリカは痛みに呻いた。
振り下ろされたチョップにより、手首を強く痛めつけられ、アーツユニットは右手から叩き落とされていた。
――まずい。
武器を失う戦慄で、直ちに拾おうと手を伸ばすも、大男は即座にそれを踏みつける。足で遠くへ転がされ、とうとう丸腰となった途端、ペリカはまたしても握力に囚われる。
咄嗟に距離を取ろうとはしていたが、それよりも早く腕が掴まれ引っ張られ、ペリカはそれに抵抗した。自身の腕を引っ張り大男から離れようとするものの、あまりの腕力差にいとも簡単に引き寄せられ、抱擁という名の拘束にかけられる。
大男の目的は、ただ抱きつく事ではなかった。
ペリカの体をぐっと引き寄せておく事で、思い通りの姿勢を取らせようとしていた。肩を掴み、二の腕を掴み、力ずくでも体の向きを変えさせたり、下へと引っ張る力で座らせようとしてくるのだ。
必死の身じろぎで抗うも、無慈悲な腕力に従わされ、ペリカの両腕は後ろへ回る。そして背中へ抱きつかれ、ペリカ自身の体と大男の肉体の、その狭間に挟まれた両腕は、後ろ手の手錠も同然に動きを封じていた。
ペリカは座らされていた。
そして後ろ手の両腕は、体と体の間に挟まる圧力によって動かない。手を使わずして腕を封じている以上、ならば大男の両手は自由である。
それを活かして、大男は背後から胸を揉む。
「やっ、やだ……!」
鷲掴みに揉みしだかれていた。指遣いによって捏ね回され、どんなに身じろぎしても脱出できない。ただ揉まれる一方のペリカへと、下品な眼差しがいくらでも集まって、やはり不躾な言葉までかけられる。
「なあなあ、気持ちいいかぁ?」
「乳首が硬くなっちゃうなぁ?」
「感じちゃう? 感じちゃうかぁ?」
最悪なのは、本当に刺激を感じる事だ。こんな形で触られても、楽しむ気持ちなど微塵も湧いて来ないというのに、しかし快楽そのものは薄らと現れる。なまじ優しく丁寧に揉まれるせいで、そのマッサージがしだいしだいに甘い感覚を呼び覚まし、ついには乳首の突起まで始まっていた。
「おいみんな聞け! 乳首だと? 本当に硬くなってるぜ?」
それを大男は大声で発表した。
「おい聞いたかよ!」
「陵辱されて感じちゃうってかァ?」
「よかったなァ? 気持ち良くなれて」
屈辱を煽る言葉の数々に歯噛みして、そんなペリカへの愛撫が切り替わる。全体を揉みしだく手つきから、乳首だけを狙った指の上下となり、硬い突起が転がされ、甘い痺れが迸る。
「ぐっ……!」
「いい反応だぜ? よほど気持ちいいのか、体がモゾモゾと動いちまってる。こんだけ密着してんだからよォ、俺にはそれが如実に伝わってくるぜ?」
全身が挙動を帯びれば、それを大男が発表する。ペリカの反応について知ったギャラリーは、その都度ざわめき騒ぎ立て、それぞれの野次を飛ばしてくる。
「あぁん! 乳首が気持ちいいのォ!」
一人のランドブレーカーがわざとらしく声を裏返して、腰をくねくねと振り動かす。
品のない言葉や行動に苛まれ、周りのランドブレーカーを、もちろん大男の事も、どうにかしてやりたい気持ちでいっぱいになるのだが、それを果たせない悔しさで歯噛みして、ペリカは頬をピクピクと痙攣させる。
「くぅ……! こ、こんな……!」
乳首は完全に突起していた。元々の大きさから少しばかり膨らんで、乳輪も数ミリほど浮き上がり、もはや興奮の象徴のように敏感化していた。そこへ止まらぬ愛撫が施され、いつまでも快楽が走り続けて、先ほどの言葉通りにモゾモゾと、肩が上下左右に蠢くのだ。
体の挙動が止まらない。
胴やら肩やら、どうしても筋肉がよがってしまい、ぴったりと静止している事ができない。ぴくりと右肩が跳ね上がり、その次はビクっと左肩が奥へ引っ込む。そんな身じろぎの繰り返しと、それを周囲のランドブレーカーが視姦する辱めに、ペリカはいつまでも歯を食い縛り、顎を硬く震わせていた。
やがて、その時である。
「やっ……! ま、待って……!」
ペリカは引き倒された。
急に背中が地面にぶつかったかと思いきや、大男は上から覆い被さっていた。足が力ずくで持ち上げられ、無理にでも開脚させられ、こうなれば抱く危機感は一つしかない。
とうとう犯される。
その戦慄でより激しく暴れ出し、ペリカは転がるアーツユニットに手を伸ばそうとするのだが、遥か何メートルも先には届きようがない。
股間が掴まれた。
「いやっ!」
パンストの生地が伸ばされて、引き裂かれて出来た穴から下着の布がずらされる。性器を露出させまいと、もちろんペリカは両手で阻止しようとはしていたが、手首を掴まれどかされた。大男の手に爪を食い込ませるが、お構い無しにずらす作業が継続された。払い退けたり、叩いて邪魔する試みも重ねるが、手こずらせたところで先延ばしにしかならなかった。
それでもペリカの抵抗は止まらない。
「やめて! やめなさい!」
ズボンの中から逸物が解き放たれ、挿入の危機に陥れば、ペリカは身じろぎを活発にした。穴の位置がずれ続ければ、それだけ入れづらいはずだと信じていた。両手も股へと突き伸ばし、肉棒を払い退けたり、体を押し退けようと必死になり、挿入しようとする大男と、それに抗うペリカの格闘が五分、六分と続いていくも、最後には亀頭が膣口にフィットしていた。
もう防ぐ事は出来なかった。
「いやぁぁ……!」
ひと思いに一瞬にして貫く事で、ペリカの下腹部には逸物が収まっていた。
「なるほど、いい具合じゃねぇか」
大男はゆさゆさと腰を振り、膣壁を抉り抜く一方で、両手で乳房をがっしり掴む。たっぷりと指を踊らせ揉みながら、下半身でもアソコを味わう快感に身を浸し、そうして好き勝手に体を楽しまれ、ペリカは苦悶を浮かべていた。
「ぐっ……! こ、このっ、うぐぅ……!」
肉棒が出入りして、乳房は五指の踊りで捏ねられる。
「おーい! 今度はアソコも気持ちいいかぁ?」
「喘いでみろよ! あんあん言ってみろよ!」
「くぅぅ! 俺もヤりたくなってきたぁ!」
それら野次に苛まれ、表情を険しくしながら、ペリカは額に脂汗を浮かべていく。苦しげに首を振り、髪を乱しているうちに、肉棒の出入りがどこか軽やかになり始めた。
濡れてもいないアソコに挿入されて、しかも初めてだったペリカには、始めのうちは痛みがあるばかりだった。だが性器を保護するための粘液が分泌され、潤滑油の力がしだいに負荷を薄れさせ、ただ太いものが入っているから苦しいだけの感覚まで、肉体的には男根が馴染んでいった。
しかし、それは体の反応に過ぎない。
(こんな……人に、私の……体、初めて……!)
痛みがあろうとあるまいと、精神的な苦痛がペリカの顔を歪めている。眉の周りが、口周りが、表情のあらゆる筋肉が硬く強張り痙攣じみて震えている。
「んっ、あぁ……あっ、あっ……!」
やがて快楽を感じ始めて、熱っぽい息遣いになってなお、その面持ちは苦痛に耐えるものから変わらない。
「くっ! あぁ……あっ、あっ……!」
だがどうあれ、ペリカが髪を振り乱す理由は、背筋を駆け上がっていくような、激しさと甘さを帯びた感覚に変わっていた。快楽にこそ振り回され、よがった両手は何かを求めるように開閉していた。
「ひゃっ、ぐぅ……! んっ、んぅあ!」
大男は乳房を揉み続ける。
夢中になって止まる事を知らない指使いで、一心不乱に味わいながら、活発に腰を振り込み男根を射精に近づける。
「くぅ! あっ、あっ……!」
射精感が現れていた。
あともう少しで彼は達する。
「ひゃっ! あぁ……! あっ、あっ……!」
不思議と空気でそれを察して、ペリカは今までにも増して活発に首を振る。中に出されるかもしれない、その危機感が挙動に表れ、せめてそれだけは拒みたい一心で、髪を激しく乱していた。
「あぁ……! あっ、あぁっ!」
だが、それを忖度する彼ではない。
ニヤニヤと、彼はペリカの中に出そうとしていた。彼女に対して何の責任も取る気のない、単なる性処理道具と見做した大男のピストンは、達する瞬間を目指してみるみるうちに活発に、そしてその激しさがペリカの危機感を一層煽る。
「いやぁ! やめて! そ、外に……!」
そう叫んで両手を突き出し、必死になって大男の体を押し退けようにも、ペリカの腕力が彼を突き飛ばす事はない。どんなに力をかけたところで、もたらす結果は単に手の平を押し当てるものに過ぎなかった。
ペリカにそれを止める術はない。
迫る運命を待つ事しか許されない、その事の悲痛を浮かべた表情で、ついにペリカは精液を受け止めた。
「やだ……そんな………………」
肉棒が跳ね上がり、膣内には熱いものが広がっていく。
中に出されてしまった感覚に、ペリカは絶望の眼差しを浮かべていた。瞳を震わせ打ちのめされた放心で、空を見つめて固まっていた。
そんなペリカの中から肉棒は引き抜かれる。
愛液と精液を表面にたっぷり帯びて、根元から先端にかけてまんべんなく粘液が張っていた。亀頭からは糸が垂らされ、性器と性器でしばしの間、繋がりは保たれていた。
「さあ、次はお前らの番だ! 存分に楽しみやがれ!」
大男が両手を挙げて高らかに宣言すると、ランドブレーカーの間に歓声が広がった。
ああ、まだ続くのだ。
管理人、チェン、ウルフガード、ここまで彼らの登場がなかった事で、助けの登場にどれほど期待できるだろうかと、ペリカの中で希望が薄れる。
自分は彼らのアジトに持ち帰られ、慰み者としての扱いを受けるのだ。
暗い運命に瞳が濁り、心が暗く染まっていく。
いいえ、いずれはきっとチャンスが……。
諦めてはいけない。
きっと未来はあるはずだと、耐え忍ぶ道を選ぶペリカへと、包囲の輪がみるみるうちに縮んでいく。何十人とも知れないランドブレーカーの手という手の数々が彼女へ伸びて――。