本文 からかい上手が痴漢され
実は気になる女子がいる。
クラスメイトの高木さんというのだが、なかなか話しかける勇気が出せず、声をかけた事はあまりない。接点がないわけだから、残念ながら高木さんの中での自分など、ただのクラスの男子その一やその二くらいの存在なのだろう。
何とか接近できればいいが、こういう事を気軽に相談できる友達がいない。
それに正直冴えないというか、あまりお喋りではないというか。高木さんどころか、他の女子にも仲の良い相手がいないような自分である。そんな自分に彼女が出来る確率なんて、一体どれほどあるだろうか。
下手に接近を試みて、気持ち悪がられたりしないか、なんてすぐに不安になってしまうから、朝の教室で目が合っても挨拶すらできない始末だ。
しかも、高木さんはしょっちゅう隣の席に絡んでいる。
授業中や休み時間、ふと視線を向けるたび、西片くんに対して何やら仕掛けている。そのせいで西片くんは授業中に大声を出してしまい、それを先生に注意されるのが、たまに見る日常の一幕なのだ。
妙に仲が良くないだろうか。
学校の帰り道、一緒に下校している所も見た事がある。高木さんは自転車で、西片くんは歩きのようだが、高木さんはわざわざ自転車を引いて歩いている。さっさと乗って帰ればいいのに、西片くんに合わせるとは、仲良しの証拠ではないか。
つまり二人は付き合っているのではないか。
たとえ外向的で人当たりが良く、顔や頭が良かったところで、既に仲の出来上がっているところへ入り込むなど、無理なのではないだろうか。
そう思うと気落ちする。
自分にできる事といったら、せいぜい妄想をしながら肉棒を握り、一人寂しくシコシコとティッシュを消費するくらいではないか。
頭の中に高木さんを浮かべ、色んなシチュエーションで股間を勃起に導く日々でも送っているのがお似合いだ。
しかし、そんな自分の前で、驚きの事態が発生する。
自分は今日、高木さんが痴漢される場面を目撃する事になる。
その日は日曜日だった。
映画館にでも出かけようと思って、バス停へ向かったところ、列の中に高木さんを見かけたのだ。黒いシャツとショートパンツの私服姿に、ちょっとだけ得をした気分になるが、目が合っても軽く視線を交わすくらいで、向こうから声がかかってくるでも、こちらから声をかけるでもなく、あとは黙って最後尾に立つだけだった。
単なる知り合い同士に相応しい距離感だ。
ただのクラスメイトであって、それ以上でもそれ以下でもないのだから仕方がない。視線を合わせて、お互いに「あっ」と思って、それで終わりに過ぎないのだ。
もし学校でもう少し上手くやり、もう少し仲良く出来ていたのなら、きっとお喋りくらいは出来ただろうに、自分と高木さんの間には見えない壁があった。大して仲良くもないのに、砕けた調子の会話などというものに発展するはずがない、そういう距離の遠さを自分は感じていた。
これは自分が勝手に感じているだけのものだろうか。
向こうはそもそも、距離だの壁だの、そんなものを意識すらしていない。高木さんにとっての自分は、やはり単なるクラスメイトその一で、モブキャラAで、生きた背景みたいなもので、お喋りの相手などではない。
向こうはこちらに何の興味も持っていない。
こちらが一方的に好意を抱いているだけなので、壁や距離を気にするのもこちらだけだ。
考えれば考えるほど寂しくなる。
気にせず声をかけたなら、意外と何か喋ってくれるだろうか。それがきっかけで多少は仲良くなり、モブキャラから友人その一くらいには昇格できるだろうか。それが出来たらいいのだが、小心者の自分は挑戦すらできずに萎縮して、ただじっと最後尾で立ち尽くしているだけだった。
やがてバスがやって来て、先頭から順番に車内へと流れ込む。
既にいくらか人が乗っていて、席はほとんど埋まっていた。空いている席がないでもないが、知らない人の間に入るより、つり革を掴んで立っている事にした時、ちょうど隣で高木さんもつり革を掴んでいた。
隣同士になってしまった。
(うわっ、嘘……!)
他の乗客が奥へ行ったり、一つだけ空いていた席に座ったりしたおかげで、自分と高木さんの間を隔てる人の壁がなくなったようだ。
少し嬉しい。
だが、話しかける勇気が出ない。こういう時はなんて話しかければいいのだろう。
ああ、そうだ。
普通のどこへ行くのか聞けばいい。
よし、聞こう。
と、思ってはみるのだが、いざ話しかけようと思ったその瞬間、大して仲良くもないのに声をかけても困らせるだけではないか、なんて考えがよぎるので、自分は躊躇いで口を噤んだ。
もっと何も気にせず人に話しかけたり、積極的に友達を作れる性格に生まれていたら、たった今からでも脈が出来たかもしれないのに、自分はなんて冴えない少年なのだろう。
そうやって、一人で気を落としていた時だ。
「……っ!」
高木さんが驚いたような強張ったような顔をして、ぴくっと頭を反応させていた。
(ん? なんだろう)
鼻に虫が止まったりでもしたのだろうか。
まず最初に浮かんでくるのは、そんな呑気な考えだったが、次の瞬間に自分は驚愕した。
高木さんの真後ろに、一人の男がぴったりとくっついているではないか。
満員でもないのに、こんなにくっつく事があるだろうか。
恐る恐る様子を窺うと、男は腕を下にやっている。肩を伝って視線を下へスライドさせると、なんと手の平が高木さんのショートパンツに置かれている。
(痴漢!?)
自分の中で心臓が跳ね上がった。
まさか、犯罪の現場をこの目で拝むことになろうとは、しかもその被害者が高木さんである事に唖然とした。男はお尻をベタベタと触っていて、高木さんは強張った顔のまま固まっていた。
(どうしよう……)
助けるべきだという考えが頭に浮かぶが、人の悪事を注意する勇気など自分にはない。
バスの走行音が静かに響き、窓の向こうで景色が流れる。
高木さん自身も、声を出したり、抵抗をする勇気が出せないのか、顔や体を硬くしたまま、じっと窓の向こうだけを見つめている。嵐が過ぎ去る事を辛抱強く待っているのだ。
自分には何もできない。
声を出そうとするたびに、喉が石のように固くなる。
(だ、大丈夫。きっと……すぐ降りる……)
次のバス停でバスが停まれば、そこで痴漢の男は降りるかもしれない。
だから、大丈夫だ。
知り合い未満の自分ごときが騎士を気取って、急に助けに出たところで、どうせ気持ち悪いだけなのだ。
何も見なかった事にするため、自分はスマートフォンを取り出して、適当にウェブの閲覧を開始する。
その時、ふと邪な考えが浮かんだ。
――犯罪の証拠を撮っておくべきではないか?
それが可能な端末を握った事で、自分はそのような思いつきで指を動かし、気がつけばカメラを起動していた。
そうだ、そうしよう。
カメラを向ける程度の事なら、自分にだって出来るではないか。世の中には音消しアプリというものがあるので、それをダウンロードしてしまえば、誰にも気づかれる事なく動画撮影モードに切り替えられる。
アプリのダウンロードなどすぐ終わる。
撮ろう、撮るんだ。
自分は一歩だけ下がって位置を変え、さりげなくスマートフォンを向けてやる。
すると、男の手の平が画面に収まった。
撮影中の画面の中で、ショートパンツの上に手の平は這い回り、背徳感が一気に全身をせり上がる。
(し、仕方ない……これしか出来ない……)
そう自分に言い聞かせた。
騎士を気取る事より、よっぽど気持ち悪い真似をしていると、心のどこかではわかっているのに、一度始めてしまった行為をやめられない。悪い事をしている快感と、高木さんへの痴漢が動画に収まる興奮で、助けるどころか、もっと大胆なシーンが欲しいとさえ思い始めていた。
なんて汚い欲望だろう。
抱いてはならないものが湧き、それが大きく広がって、抑えようのない衝動となっている。スマートフォンを出したりしなければ、出しても余計な事を思いつかずにいれば、こんな事にはならなかっただろうに、立派な盗撮行為を働いてしまっていた。
画面の中に男の指遣いは収まっている。
ただ撫で回しているだけでなく、尻たぶにぐいっと指を食い込ませるため、少し握力をかける場面があった。片側を握り締め、揉みしだくように変形させていた。
高木さんはじっとそれを堪えている。
周りの人達は気づいているのかいないのか、誰も痴漢を注意しに来ない。
その時だった。
高木さんの肩がビクっと跳ね上がり、自分は衝撃を受けていた。なんと痴漢は一人だけでなく、座席に座っていた男までもが手を伸ばしていた。
太ももに手をやって、平然と撫で回していた。
どうして、ここまで堂々と触れるのかがわからない。
まず、悪い事をする度胸からして信じられない。
やるにしても、バレたら怖いと思いながらやるものではないのか。周りに気づかれる確率が気になったりしないのか。何の恐れもないように、あまりにも自然と腕をやっている光景が信じられない。
バス停が近づき、バスが停まる。
すると、お尻を触る方の男は、あたかも通路を空けるためであるように、高木さんの背中にべったりと密着していた。ほとんど抱きつく形で前へ出て、すると降りようとした他の乗客は、ごく普通にその後ろを通って支払いを済ませていた。
(な、なんでだ!?)
どうして今、誰も注意をしなかったのか。
注意どころか、何かをおかしく思う顔すらしていなかったのか。
(まさか、あんまり堂々と抱きつくから……)
そして、高木さんも強張るばかりで悲鳴を上げたりしないから、周囲の人は二人をカップルと勘違いしたのだろうか。そうでなければ、抱きつく光景が視界に入っていながら、気にも留めない事があり得るだろうか。
さらにバスが発車した時、座席の男が立ち上がった。
高木さんは一歩後ずさる形になり、しかし真後ろの男がぴったりとくっついているのであまり下がれず、前後を痴漢に挟まれるサンドイッチ状態に陥っていた。
(な、なんだこれ……)
正面の男が両手を胸に置いている。
シャツの上から、高木さんの胸を揉んでいる。
(こんな……えっ、こんな…………)
呆然としながら、撮影の手は止まっていない。
自分は相変わらず、高木さんにカメラを向けたままである。手が吸い込まれているように、高木さんを画面に収める角度から変えられない。
さすがに助けを求めているのだろう。
高木さんは周囲をきょろきょろ見渡すように首を振り、その勢いで髪を少し揺らしている。
なのに周りは気づかない。
他人の様子になど興味を持たず、誰も視線を向けていない。
(なんで……どうして誰も……)
ただの一人も助けが現れない事への疑問を、盗撮という真似をしながらにして抱いていた。
シャツがぐにぐに揉まれている。
あまり大きいイメージのない高木さんの、平らに見える部分に両手をべったり張りつかせ、前側の男は好きなように指を踊らせている。
後ろ側の男は手を存分に這い回らせ、ショートパンツを介して形をなぞっている。
それに対する自分は、少し下がった斜め後ろから撮影を行っている。お尻を揉みしだく手を映し、生唾を飲みながら犯罪の証拠を収めていた。
(というか、だいたい……なんで……)
こんな人達が高木さんに触っているのだろう。
犯罪に走る人間が高木さんに触るくらいなら、真面目に生きている自分にこそ、そういう機会が欲しい。自分だって、高木さんに触ってみたい。
(あっ……)
前側の男がシャツを掴み、上にずり上げていた。
本当に大胆だった。
脱がせようとまで思うなど、まったく理解できなかった。
だが、直後に見えた純白の下着に心臓を撃ち抜かれ、すぐに疑問どころではなくなった。平らに近い、薄らとした胸を包むための、カップサイズの小さなブラジャーを撮るために、自分はポジションとカメラの角度を調整する。
すると今度は後ろ側の男がお尻に腰を押しつけて、さらに腕を前へ回していた。なんとショートパンツの留め具に指を絡めて、チャックを下げる真似まで始めていた。
(そんな……そんな事まで……!)
ショートパンツが下へとずれて、白いショーツまで出て来てしまった。
公共バスの中で下着が出ている。
その状況に高木さんの頬がみるみるうちに赤らんで、目尻には涙すら浮かんでいる。
痴漢はエスカレートする一方だ。
ショートパンツが太ももの半端な位置に絡んだら、もちろん下着越しのお尻に手がいって、胸もブラジャーの上から揉まれている。
自分は興奮するばかりである。
助けに入るべき、勇気がないなら、せめて運転手のところへ行って話すべきだと、頭の中には考えが浮かんでいる。なのに行動に移るどころか、むしろ盗撮という形で参加している。
(自分も、痴漢と変わらない……)
さすがに自覚が湧いてきながら、一度始めてしまった行動をやめられない。このスマートフォンに高木さんの痴態を収めておきたい欲望に支配され、悪行に対するブレーキを利かせる事が出来なかった。
それどころか、自分はむしろ悦んでいる。
(ああ、そうか……どうせ脈なんてないし、付き合うとしたら西片くんだろうし……)
高木さんとどうこうなれる可能性がないのなら、せめて痴漢に穢されているところが見たい。暗い欲望が全身を支配して、抜け出す事が出来ない場所まで魂が沈んでいる。
たまたま目の前で痴漢が起こって、見て見ぬフリのためにスマートフォンを握ったという、たったそれだけの事で魂がどん底に転げ落ちてしまったのだ。
どうせここまで落ちたなら、もういいではないか。
そうだ、自分は痴漢の仲間と変わらない。
二人の痴漢は、自分とは無関係の人間だが、こんな風にカメラを向けているのなら、参加しているも同然なのだ。
こうなったら、自分だって高木さんに触りたいくらいだ。
だが、もちろん見知らぬ痴漢の間に割り込み、本当に参加しようとする真似は出来ない。一歩離れて撮影しているのがせいぜいな自分は、興奮の目つきでじっと大人しく高木さんを見つめていた。
高木さんは手でシャツを直そうとしたり、ショートパンツを上げ直そうとしているが、すると前後の男は手首を掴んでそれを阻止する。乱れた服をなかなか直せず、前後から来る計四本の手を相手に、二本しかない腕では抵抗などしきれない。
抗うどころか、後ろ側の男はショーツすら下げていた。急に両側へ指を突っ込み、下着のゴムが尻より下へするっとずらされ、お尻とアソコが露出したのだ。
「やっ……!」
高木さんの顔がさらに赤らむ。
後ろ側の男は生尻に触り始めて、高木さんは戦慄で固まっていた。その次の瞬間にはブラジャーがずらされて、薄い乳房までもがあらわとなり、自分は完全に鼻息を荒くしていた。
こんなバスの中なのに、一体どこまでやるのだろう。
どうして、誰も問題にしないのだろう。
ふと気づいてみれば、座席に座る別の男がニヤニヤしていた。他のつり革を掴んだ青年も、ほくそ笑んだ表情で高木さんの様子を見つめている。
(そうか……きっと、最初から……)
今になって初めて気づいた。
元から集団痴漢なのだ。
無関係の乗客の視線を遮る壁役と、実際に手を付ける痴漢役に分かれて犯行を行っている。
バレる確率は抑えられていたのだ。
(ってことは、自分は……)
自分の隣や後ろにいるのも、もしや集団痴漢の仲間かもしれない。実は犯罪集団に囲まれていないかという想像で、自分はだんだんと青ざめていた。今更になって撮影などしていた事が怖くなり、今すぐにカメラを止めるべきかと思った時だ。
ポン、と。
後ろから、誰かの手が肩に置かれた。
「ひっ……」
ビクっとして凍りつく。
てっきり、犯行現場を勝手に撮影していた事について、何か言われるのだと思っていた。次のバス停で一緒に降りろ、とでも言われて、降りた先で暴力を振るわれるのではないかと想像が膨らんで、足がガクガクと震え始めた。
しかし、背後からかかってくる声は、撮影を責めるものではなかった。
「お前も触ってみるか?」
悪魔の囁きであった。
「え、な……何を……言って…………」
「さっきから撮ってるだろ? 本当は自分も参加したいとか思ってるんじゃないか? なあ、参加してみないか?」
「さ、参加って――」
自分は狼狽していた。
(触るのか? 自分が高木さんに? ほ、本当に痴漢の仲間になって?)
心臓の音が激しくなった。
汗が噴き出て、呼吸も荒れた。
見れば高木さんに触っている二人も、まるで新しい仲間を歓迎するような、悪魔が悦ぶような笑顔を向けてきている。ここで高木さんに手を伸ばせば、傍から勝手に盗撮していた人間から、本当の痴漢一味に変わる事になる。
二人の痴漢役は位置を変え、高木さんの両隣から手を伸ばす形を取った。左右から伸ばした腕で、高木さんの胸やアソコは触られ始めた。
そして、二人は自分を見る。
ほら、好きに触ったらどうだと言わんばかりに、ショートパンツとショーツの下がった剥き出しのお尻を示してくる。
自分は惹かれた。
心が吸われるようにして、だんだんと高木さんの背中へ近づき、自分はお尻へ手を伸ばす。可愛らしい膨らみに手を乗せて、生まれて始めて女の子の恥部に触った感激と興奮で、一瞬にして手つきが変わった。
一心不乱に揉みしだいた。
お尻の張りと柔らかさが手に伝わり、興奮で肉棒がいきり立つ。密着寸前の至近距離まで迫っている事で、髪から漂う香りを吸い込み、さらに興奮しながら手つきを活発にしていった。
(ああ……触ってるんだ……高木さんのお尻に……!)
そして、左右に陣取った二人の男は、それぞれ自分の側にある乳房を揉んでいる。右側の男はさらに下にも腕をやり、アソコを指でなぞっているはずだった。
高木さんは今、どんな気持ちなのだろう。
後ろにいるのがクラスメイトだと、高木さんは気づいているだろうか。もし気づいていなければ、三人もの見知らぬ男に囲まれている事になる。いや、三人のうち一人が知り合いというのも、それはそれで絶望的なものだろうか。
右手でお尻を掴みながら、自分は左手にスマートフォンを握っていた。動画撮影モードのまま、近づき過ぎて何も撮れずにいる状態に気づいてか、左側の男が言ってきた。
「貸せよ」
人のスマートフォンを見ながらそう言った。
痴漢に参加させてもらっているとはいえ、名前も知らない相手にスマートフォンを貸すのは抵抗があったが、小心者の自分はコクっと頷き、本当にあっさりと手渡していた。
スマートフォンを受け取った左の男は、自分からは見えない手前側を撮り始める。
乳房やアソコを間近から撮っているのだ。
自分のスマートフォンに高木さんの体が収まっている興奮に、全身が湧き立って仕方がない。鼻息を荒くしながら、自分はさらに指遣いを活発に、高木さんのお尻を揉みしだいた。
しかし、その時だった。
次のバス停でバスが停車し、ドアが開いた瞬間に、高木さんは急に右側の男を突き飛ばした。慌てふためくように服を直して、悲痛な声で叫んでいた。
「すみません! 降ります!」
必死な思いで出口へ駆ける高木さんの背中に押され、自分も少しだけ後ろに追いやられた。
自分はバスから逃げ出す高木さんを見送った。
しばらくは呆気に取られ、ぼーっと立ち尽くしているばかりだったが、やがて再びバスが動き出した時、周囲の男達が喋り始めた。
「あーあ」
「いい獲物だったのにな」
けらけらと笑いながら、そんな話をしていた。
(ああ、そうか……自分は…………)
こういう人達の中に加わってしまったのだ。
女の子を獲物と見做し、遊び感覚で取り囲んで痴漢する。そんな人間と同じことをやってしまった。
今更になって罪悪感が湧いてくる。
(本当に……今更…………)
好きなだけお尻を触っておいて、後になってからこんな気持ちが湧いてくるとは思わなかった。
「ほらよ」
そんな自分へと、スマートフォンが突き返される。
(こ、この中に……)
自分はやはり、期待感を胸にした。
この中に、高木さんの痴漢される場面が収まっている。下着やお尻、それに乳房やアソコが映っている。あの子の体を手に入れてしまった背徳感に、自分は結局のところ、バスを降りた後でトイレに駆け込んだ。
どれほどの罪悪感があったとしても、それ以上に高木さんの体を視姦したい欲望が自分の中にはあった。動画ファイルを指で叩いて再生して、そこに映る高木さんの後ろ姿に生唾を飲み、自分はじっとそれを見つめた。
最初は後ろ姿だった。
斜めの角度から映した背中へ男が近づき、右手でショーツパンツを触っている。最初は表面を撫で回し、やがて尻たぶをがっしり掴んで揉みしだく。
全身が強張って、痴漢に対して戦慄している様子が画面からでも伝わってきた。
少しだけ場面を飛ばすと、座席に座っていた男が立ち上がり、前後から挟み撃ちにしていた時の光景となる。前側の男がシャツを掴み、後ろ側の男もショーツパンツを下げている。バスの中で女の子を脱がせるとは、よくもここまで大胆な行動が取れたものだと改めて思う。
そして、自分はさらに場面を飛ばす。
男にスマートフォンを貸した結果の、乳房やアソコを舐め回すような映像がばっちりと撮れていた。
シャツとブラジャーがずり上がり、丸出しとなった乳房が大きく映っていた。バスの揺れや腕の動きで、ぴったりと静止するわけではない画面の中に、薄らとした胸は収まり、どちらの頂点でも乳首が突起していた。
(これが高木さんのオッパイ……)
平らにほど近い大きさだが、本当に薄らと膨らんではいる乳房を見て、これが高木さんの胸なのだと感心した。本来なら、恋人でなければ拝むことのない部分を知ってしまい、背徳感に背中がくすぐられた。
そこへ無骨な手が映る。
薄い薄い膨らみを包み込み、指を蠢かせて揉みしだく。乳房に対する愛撫が始まり、自分はますます食い入るように映像を見つめていた。
鷲掴みによって、しばらくは乳房が隠れ、手の甲や指の蠢きだけが何秒も何秒も流れるが、やがては指先での愛撫に変わり、乳首に対する刺激が始まる。突起を上下左右に転がして、あらゆる角度へ向かせ続けるタッチを見ていると、不意にカメラが上へと動き、急に顔を映していた。
(感じてる……)
高木さんは涙目で、明らかに痴漢を怖がっているが、なのに感じてもいる様子であった。恥ずかしさで頬を染め上げ、嫌だ嫌だと言わんばかりに小さく首を振りたくり、ピクピクと頬の筋肉を弾ませていた。
痴漢されて、喜んでいるわけではない。
確かに高木さんは、怖い目に遭っている。
恐怖の感情が働いているのだ。
なのに体が反応している事実に興奮して、自分は肉棒を強く握り締めていた。こうも戦慄している女の子が、それでも生理的な反応を示しているのは、まるで起こってはいけない出来事を見ているような気にさせられる。
乳首への愛撫を見つめていると、急にまたカメラは動き、今度は一気に下へと映像は流れ移った。
アソコが映った。
(これが高木さんの……)
無毛の性器であった。
剃っているのか、それとも元から生えていないのか。どちらにしても、一本の毛も見当たらない、生まれたてのような性器のワレメに、自分は一気に鼻の下を伸ばしていた。
そこへ男の指が置かれる。
見知らぬ人間に性器を触られ愛撫され、無理矢理感じさせられる気持ちというのは、一体どれほどの屈辱なのだろう。太ももがもぞもぞと激しく動き、嫌がっている素振りをいくらでも感じ取れるが、しかしアソコから指が離れてみれば、性器との間には一本の糸が伸びていた。
(高木さんが……濡れたんだ…………)
カメラに見せつけるような糸だった。
という事は、高木さんの性器への愛撫は、愛液をぬるぬると塗り広げるようなるのだろう。縦筋に合わせて指が上下に往復するという、同じ動きの繰り返しを見つめていると、しだいしだいに性器が光沢を帯びていた。
愛液の分泌が進んでいき、さらにそれが塗り広がって、ぬらぬらと光り始めていた。
そして、それだけ性器が濡れたところで、今度は膣内へと指は潜った。
(そ、挿入までしてたのか!)
衝撃を受けながら、自分は食い入るようにそれを見つめる。
一本の指が出入りをすれば、その見え隠れする部分に愛液は付着していた。指の根元から膣内に埋まった先端にかけて、皮膚がまんべんなく濡れているわけだ。
(自分は……この時も…………)
自分のしていた事を思い出す。
痴漢に誘われ、惹かれるようにお尻を触っていたわけなので、この時の高木さんは前後から挟み撃ちにされていた事になる。前からは性器をやられ、後ろからはお尻を触られて、さらにカメラまで向けられていた。
恐るべき辱めの状況に耐えかねて、最後の最後で高木さんは痴漢を突き飛ばし、その時の動きで自分も高木さんの背中に体を押された。
あの時、高木さんは本当に必死に逃げ出して見えた。
あれが高木さんなりの、精一杯の行動だったのだろう。
だが、自分はそんな高木さんの姿を見た後なのに、こうして動画を楽しんでいる。素晴らしい宝物を手に入れたとさえ思っている。
(自分は……そういう人間なんだな……)
自分が最低の人間である自覚が湧いてくる。
興奮が止まらない。
もっともっと、高木さんの痴態を楽しむため、自分は動画を始めから再生して、このトイレの中で幾度とない射精を繰り返す。ようやく自慰行為をやめる時には、本来の外出の予定などとっくに忘れているのだった。