後編 空閑旭姫の肉体調査

 この一連の映像を空閑旭姫は見せつけられていた。
 まぶたの動きを封じられ、目の前に浮かぶホロスクリーンの中の出来事を何も出来ずに見届ける。
 映像での旭姫はオナニーを始めていた。
 研究者達の指示に従い、意のままの人形としてベッドへと横たわり、きっちりと脚をM字に開いた卑猥なポーズで、右手をアソコへ伸ばしている。左手では乳房や乳首を虐めつつ、右手ではしきりにワレメをなぞり、快楽を貪っているのだ。
「やだ! やだやだ! あたしがこんなことしてたなんて!」
 映像を否定したいと、嫌だ嫌だとばかりに首を振るが、左右に顔を振りたくっても、旭姫の顔はすぐさま正面向きへと修正される。何らかの力が働いて、顔を逸らすことさえ許されず、強制的に拝まされているのだ。
「あなたはいつもしてたでしょう?」
「宿とか、アジトとかで」
「誰もいないのをいいことにエッチなことをね」
 プライベートを暴かれている事実に戦慄して、旭姫は激しく赤らんだ。
 ゲームの世界だ。
 恥ずかしさで顔から火が出る設定を組み込んだら、今の旭姫なら簡単に炎を撒き散らすことになるだろう。
「そんなの! 誰も見てないからだもん! 人前でなんてしないよ!」
 映像の中でのオナニーは、表情の変化に乏しい。意識が朦朧としていたせいか、旭姫の記憶として残っているのは、何か恥ずかしい体験をしたような『気がする』ことと、気持ちいいことをしていた『気がする』という、何ら内容を伴わないものだけだ。
 何かそういう夢を見ていた気はするが、内容を思い出せるわけではない。
 その程度の記憶しかない旭姫は、しかしはっきりとした現実を前に、耳まで真っ赤に染め上げていた。
「君がなんと言おうと、人前でシちゃったんだよ」
「ほーら、現実の肉体も一緒に見せてあげよう」
「ああ、数時間前の記録だからね? 今は何もしていないから安心してね」
 慰めになどならない言葉と共に、もう一つのスクリーンには旭姫の現実の肉体が映し出され、まるでオナニー映像と対応しているように、アソコに染みを広げている。
「ほら、現実の肉体だよ?」
「君が生存している以上、本当はどうなっているか」
「君自身、知りたかったんじゃないかい?」
 オナニー映像の中では、肩や太ももがモゾモゾと動き出し、指の動きもしだいに活発になっている。いつしか膣に挿入して、より激しい快感を貪り始めていた。快楽電流によって腰がピクピクと、わずかながらに浮き上がり、尻が軽く弾む反応さえもが見受けられた。
 それにつれ、現実を映す映像では、眠る肉体のショーツが染みを濃くし続ける。
「やめて! こんなの見たくない!」
「では――」
 研究者の一人が、赤縁眼鏡がパチリと指を鳴らす。
 その瞬間だ。
「やっ! やぁ……!」
 旭姫の身体が勝手に動く。
 本人の意思とは関係なしに、手足の可動を赤縁眼鏡の意思で操作され、両手で隠していた恥部が解放された。そればかりか、まるで後ろ手の拘束をするかのように、両手は後ろに回ってしまう。
 さらに脚がM字を形作って、開脚姿勢で培養液の中を浮かされて、研究者から見れば肛門さえもが丸見えになっていた。
「やめて! こんなのダメだよ! 見ないでってば!」
 旭姫は自分の取らされたポーズに激しい恥じらいの火を放ち、四肢でもがいて抵抗するが、見えない力に固定され、それは小さな身じろぎにしかならなかった。
「じゃあ、自分の恥ずかしい記録をこのまま見続けるかい?」
 赤縁眼鏡は意地悪く尋ねてくる。
「やだ!」
「言うことを聞いたら、映像を止めてあげるよ」
「言うことって……」
「今ここでオナニーをするんだ」
「……お、オナニーって」
「ああ、そっか。オナニーという言葉を知らないか。簡単だよ。自分一人でエッチなことをするんだ。映像の中と同じことを、宿やアジトでしていたことを、ここでオジサン達に直接披露してくれればいいんだ」
「やだ! ぜったいやだ! そんなことするわけないじゃん!」
 当然の拒否をする。
 しかし、絶対の立場にある三人組にとって、旭姫の叫びは実に可愛いものにすぎない。
「だったら、この映像を最後まで拝むことだ」
「そのエッチでたまらないポーズをしながらね」
 黒縁眼鏡と銀縁眼鏡がいやらしく口角を釣り上げる。
 自分のポーズを変えることさえできず、三人組の思い通りでいるしかない旭姫は、嫌でも映像記録を視聴し続けることとなる。

     *

 現実の肉体を見守るスタッフ達は、この部屋に運び込んだモニターを介して、ゲーム内での出来事を確認していた。
 あちらでの空閑旭姫は意識を朦朧とさせ、ほとんど人形のような状態だが、命令系統への反応はきちんと示す。羞恥心が現れて、頬が赤らむ反応は確かにあり、それは現実の肉体にも反映されていた。
 六年ものあいだ眠っている肉体だ。
 ろくな運動もせず、衰弱しきっている身体は、普通に比べて手足が細い。それなりの設備で管理して、相応の栄養を点滴して、健康管理にも気を遣っているため、、外見にはまだしも救いがある。もっとミイラのように痩せ細っても良さそうなところ、少し細すぎる程度で済んでいる。
 無論、筋力が著しく低いのは言うまでもない。
 目を覚まし、通常の生活に戻るとしたら、リハビリは必須だろう。
「だいぶ濡れてますよ。これは」
 スタッフの一人はアソコを見守り、ショーツの湿り具合を観察していた。
 モニターに目をやれば、あちらの旭姫は中指を穴に突き立て、処女穴を活発に貪って、快楽を味わっている。さぞかし気持ちがいいことだろう。乳房の感度もそれなりなのか、乳首を転がす指遣いも元気なものだ。
 そして、現実の肉体を見てみるに、薄めのお椀程度の乳房から、乳首は突起しきっている。
 息遣いは荒く、人前でのオナニーを無意識のうちにはわかっているので、赤らみが耳まで及んでいる。意識が覚醒していたら、どんなに楽しい反応をしていたことか。
「んっ!」
 それは現実の肉体から聞こえる声だった。
「絶頂か」
 じわっと、ショーツの湿り気が広がり、これは替えてやる必要があるだろうと、スタッフは当然のように手をかけて、躊躇いもなく脱がしてしまう。薄らとした産毛程度にしか陰毛が生えていない、幼いアソコが剥き出しに、ワレメは愛液によって光を反射し輝いていた。
『今度はそちらのアソコを弄ってもらえるかな?』
 ゲームの中からこちらへと指示が来る。
 モニターを見れば、イったところでオナニーをやめ、だらりと手を伸ばしている旭姫の姿があるのだった。
「了解。現実の肉体に刺激を与えます」
『頼んだよ』
 指示を受け取ったスタッフは、それが職務であるように手を伸ばし、現実のワレメを指先でくすぐった。ぬるっとした感触で既に滑りが良い。ひとまず上下になぞっていると、幼い肉芽が突起していた。
「クリトリス確認」
『こちらもクリトリスが突起している』
「では刺激します」
『了解』
 そんなやり取りをこなし、スタッフは右手でワレメをなぞりつつ、左手の指で肉芽を優しく扱った。ツンツンと軽い力で、強くしないように気をつけながら、デリケートなものを扱うタッチで撫で始める。
 豆腐の角を崩さないように擦る感覚で、丁寧にやっているうちに、現実の肉体は太ももをモゾモゾと動かしていた。
「感じている様子を確認」
 膣への挿入を試みると、指はあっさりと飲み込まれ、根元にかけて温かい肉ヒダの感触に包まれる。ピストンすればクチュクチュと音が鳴り、処女膜のデリケートなヒダが指にあたるが、柔軟性があるおかげか、指だけでは損傷しないらしい。
『うむ、こちらの旭姫も同様に性的刺激に反応している。バイタルが感度上昇を示しているよ』
「このまま続行しますか」
『いいや、十分だ。こちらの検証が終わった後は、手や太ももなら使っても良いと許可が出ている。休憩時間になったら好きに射精するといい』
「ありがとうございます」
 いかにも事務的なやり取り
で、この現実の肉体を性処理に使うことを示唆していた。
 ……使っているのだ。
 この決して逃げも隠れもせず、反応も示さない肉体を相手に、処女を奪っていないだけ良心的と言わんばかりに、素股で体に精液をかけ、手に握らせる真似もしている。
 本人にとっては知らない方が幸せな真実の一つだろう。
 そして、モニターの中では『研究』は続いていく。

     *

 銀縁眼鏡が処女膜をチェックしていた。
 ベッドの端に腰を置かせて、腰の下には枕まで敷いたM字開脚は、脚が左右に平らにならんばかりに大きく広がり、あまりにも大胆に恥部を晒している。目は虚ろでありながら、心などなさそうな瞳に反して、顔は赤面しきっているのだった。
 枕で腰の角度が上向きに、肛門まで丸見えである。
「やぁ………………」
 小さな声の反応も、無意識のものだろう。
 しかし、ここまで朦朧としていても、表情は羞恥に歪んでいる。恥じらいだけは発揮しているのが中々に面白い。
「こちらの様子も現実と変化せず、か」
 二つの親指でぱっくりと、ワレメを左右に開きつつ、銀縁眼鏡はその隣に小さなホロスクリーンを出現させていた。目の前にある性器と比べるため、現実の肉体から撮影した性器を並べると、当然だがまったく同じだ。
 現実の性器を反映しているから、ゲームの中でも同様の処女膜が付いている。
 それら同一の性器をチェックするのは、万が一にも変化はないか、旭姫のオナニー遍歴によって膜の損傷や変形はないかといった意味合いが大きい。
 変化はなく、完全に同一のものが並んでみえる。
 片方がグラフィックで、片方が生身の実物だが、その区別はほとんどつかない。
「ではこちらでも」
 銀縁眼鏡は膣口に指を入れ、軽くピストンを開始した。
「んんぅ………………んぅ………………」
 声は実にかすかなもので、しかし感じた様子は窺える。
 出し入れを行うにつれて解析は進んでいき、読み取ったデータのログは溜まっている。ここに指が入った合計時間は何分何秒に及び、感度を数値化すればどれほど気持ち良くなっているかまで、本人でも把握することのない性的データせさえも蓄積されている。
 この事実を知ったら、本人はどう思うだろう。
 天羽陽翔とイベントでダンスをしてから、明らかに性的興奮のリズムが変化し、その後のオナニーの感度指数も上昇しているなど、旭姫自身ですら知ってはいまい。
 こうしたことさえ、センスの覚醒を考察する資料の一部となる。
 研究の一環には間違いないが、性器に触れる以上は『遊び』の要素も多分にあった。
「いやぁ、気持ちよさそうだね」
 黒縁眼鏡が旭姫の頭に回り込み、上から片乳を揉み始める。
「絶頂時に覚醒度合いが上がっているから、イカせたりすると目を覚ますかもしれないけどね」
 そうは言いつつ、赤縁眼鏡も胸を揉む。
「んぅ……んぅぅ…………! んっ、んぁぁ………………!」
 息遣いの荒さから、喘ぎじみた声が聞こえてくる。ゆっくりと頭を左右に、脚をモジモジと動かして、いかにも快楽に浸っている。
 かといって、波形表示を見れば嫌悪指数も上がっており、見知らぬ男にやられているのは、やはり無意識にはわかっているらしい。
「ではお尻の穴も調査しようかね」
 銀縁眼鏡は膣口から指を抜き、その下にあるもう一つの穴を視姦する。
 赤ちゃんのように可愛らしい、とても綺麗な桃色の雛菊皺は清潔感に溢れている。ここでは菌など関係ないから、尚更に綺麗に思えてしまう。銀縁眼鏡は抵抗なく指で突き、指腹でぐにぐにと揉みしだく。
「ま、ここを使った形跡はないか」
 さすがにアナルオナニーは未経験らしい。
 知識がなくとも、好奇心か何かで試しに触っている可能性もあると思ったが、天理の解析で得られる情報には何もない。
 ともあれ、せっかくだから指を挿入する。
 愛液をまとった指は、それを活性油にヌルゥゥゥ……と、根元まで潜り込む。肛門括約筋の締め付けを感じつつ、銀縁眼鏡はピストンを行った。
「ほーら、お尻に指が入っているよー」
 と、呼びかける。
「おおっ」
「反応した反応した」
 波形に反応が見受けられると、揃って満足そうにニヤけていた。
 内部の生温かい感じを指先で確かめながら、ヒクっとするような締め付けも感じ取る。もう片方の手でクリトリスを触ってみると、そんな締め付けのリズムは早まり、表情は悩ましげなものへと変化していた。
「んぅ……やっ、だ…………」
「ほう? 嫌かね」
「や、め……て…………」
 意識活動はしていない。
 朦朧としたままだが、覚醒度は少しばかり上がっていた。
「では刺激はこの辺りにしつつ――」
 銀縁眼鏡は肛門から指を抜く。
 しかし、直後だ。
「四つん這いになりなさい」
 すぐさま命令した。
 旭姫の身体が裏返り、姿勢の変更によって銀縁眼鏡へと尻が向く。赤縁眼鏡と黒縁眼鏡の二人組へと頭が向く。
「うーん」
「よしよし」
 二人して、犬でも可愛がるように撫で回し、その手を乳房に及ばせていた。
 その一方でお尻の方は、両の尻たぶを銀縁眼鏡によって掴まれて、割れ目を左右へと広げられている。改めて肛門を観察して、皺の本数さえもデータの中に取り込んでいる。
 銀縁眼鏡はホロスクリーンを表示した。
 この肛門に並べる形で、先ほどのように現実の肉体から撮った写真を出すと、バーチャルの肛門も生身のそれと区別がつかないことがわかる。細やかな色合いから、放射状に窄まる皺の数さえ一致している。
「ふむ、特に変化はなし」
 チェックを済ませた後は、少しばかり楽しむために尻を撫で、しばらくは弄ぶ。三人で思い思いに体を味わい、満足したところで身体の清掃を開始した。
 これから培養槽に閉じ込める。
 現実でいうなら、皮膚に薬品を使うため、余計な菌が邪魔にならないように予め除菌する行為に当たる。およそ、そういった目的でウォッシュペーパーを取り出して、各部を丁寧に拭き取るのは、この空間においてはデータの調整だ。
 身体の表面にウォッシュペーパーの水分を染み込ませ、培養槽の液体成分が浸透しやすいようにする。浸透率を上げるための処理を表皮に施している。
 これらの作業は言うまでもなく恥部にも及んだ。
 銀縁眼鏡は尻をまんべんなく拭いたあと、あたかもトイレの世話であるように、肛門さえも丁寧に清掃していた。ペーパー越しの指で皺を一本ずつなぞらんばかりに、必要以上に時間をかけてじっくりと、水分を浸透させるのだった。

     *

 空閑旭姫は培養槽に格納された。
 円柱状のガラスの内側にたゆたって、粘土の高い液体で意識を朦朧とさせている。覚醒状態からは遠いまま、無意識には羞恥や嫌悪の反応を示す旭姫は、この中でも培養液のスライムめいた感触に不快感を覚えているようだ。
「さて、それではより詳しい解析をしていこう」
 銀縁眼鏡がホロスクリーンを表示して、タッチ操作のボタンを押すなり、培養槽の内側に触手が生えた。
 地面からにょきりと伸びる幾本もの触手は、パイプ状の装甲を何重にも連ねた装いだ。内側に大量の関節駆動を組み込むことで、結果的にロープのように自由自在に曲がりくねる。装甲には数センチ毎の継ぎ目があり、自由な動きを阻害しない。
 そのうちの二本が乳房へ向かった。
 ヘビが獲物を狙う姿勢に酷似して、鎌首をもたげて乳首へと先端を向けるなり、その先っぽからはさらに細かな触手を伸ばす。一本一本が糸のように細やかながらに、プログラムに沿って自在に動くそれらは、旭姫の乳首へ食らいつき、執拗な愛撫を開始していた。
「んっ……! んっ、んぅぅ…………!」
 旭姫の肩がピクピクと、乳房からの快楽に反応している。
 実に何十本もの細い毛先が艶めかしく乳首をつつき、乳輪をなぞり回しているのだ。普通では味わうことのない、触手ならではの刺激には、これまでにない反応を示していた。
 三本目の触手がクリトリスへ向かう。
「んんんんぅぅぅぅ………………!」
 反応が上がった。
 三点からの刺激には、さすがに身悶えの様子が強まり、腰もくねくねと左右に振られる。脚のもぞつきも活発になっている。
 だが、単に辱めているのではない。
 三人組の研究者は、それぞれの手元にホロスクリーンを浮かべていた。
「おおっ」
「これはこれは」
「かなりの量だな」
 触手から読み取ったデータが無数に書き込まれているのだ。
 旭姫を解析してのおびただしい量の文字列が、秒間何百文字とも知れない勢いで活発に書き込まれ、ホロスクリーンの画面が文字数の膨らみによってスクロールを続けている。
 四本目の触手がうねり、それは膣口へと迫った。
 バーチャルかもしれない。本物の喪失ではないのだろう。
 しかし……。

 ――ずぷりっ、

 旭姫の処女はあっさりと、いとも簡単に奪われていた。
 膣口に触手は埋まり、出入りを始め、旭姫の顔に苦悶が浮かぶ。覚醒には至らないまでも、痛みは感じているようだ。
 もっとも、痛覚などすぐに消え去る。
 設定によって破瓜の痛みは鎮められ、直ちに快感へと書き換わり、旭姫は甘い喜びに肉体を満たされていく。
「あぁ……あぁぁ………………」
 苦しげに聞こえる声でか細く喘ぎ、内股には愛液を滲ませる。幼い蜜は培養液に触れるが否や溶け込んで、アソコの周りだけをわずかに濁らせていた。
「少々刺激を強めようか」
 銀縁眼鏡が指を鳴らす。

 ブィィィィィィ……!

 触手に振動が加わった。
 小刻みにプルプルと、膣壁を揺らすバイブが刺激を強め、旭姫の四肢をよがらせる反応が見るからに強まっていた。バイブを帯びたピストンのたび、電流でも浴びたかのようにビクビクと肩や脚を震わせていた。
「んっ、んぅ――んぅ――――んぅぅぅ――――――」
 来る。
 おそらく、これはもうすぐだ。
 触手の動きそのものは変わらない。それぞれが乳首を弄り、クリトリスを嬲り、膣口には一定のリズムで出入りを続けている。
 ただ、旭姫の反応だけは、電流にピクっと痺れて体を弾ます挙動が連続して、延々と積み重なっていくことで、あたかも滑稽なダンスを披露しているようになっている。乳首が気持ちいいあまりに背中が反れ、無意識に背中を逃がそうとして、腰も同じく引っ込める。股は閉じたり開いたり、いかにも奇妙な振り付けと化していた。

「――――――――――っ!!!」

 そして、首で大きく仰け反った。
 カっと大きく目を見開き、まるで絶叫でもするように大きく口を開きながら、そこから声は出ていない。背中もろとも反らしての、ブリッヂめいた曲線を全身で作り上げ、しばしのあいだ固まっていた旭姫は、急にだらりと元の直立に近い姿勢となって、猫背で下を向いてしまう。
 絶頂したのだ。
 ここまで快感を積み重ね、それが弾けて旭姫はイった。
 全身で脱力して、絶頂を察知した触手達は旭姫の身体を離れていく。
 破瓜の血が漂っていた。
 バーチャルにおける再現に過ぎないが、ここでの処女膜は触手に破られ、旭姫は初めてを失っていた。

     *

 そして、これら記録を見た現在の旭姫は──。
「あっ、あ……やだ……なにこれ……」
 受け止めがたい事実を前に、絶望に目を見開き、力なく首を振る。
 現実の肉体まで弄ばれ、調べられている事実はむごすぎた。処女膜の写真を撮られ、肛門まで観察されている事実は辛すぎた。何よりも、いかにバーチャルの出来事とはいえ、性器に異物を挿入されたショックは、思春期の少女には強すぎた。
「どうかな」
「受け止められるかい?」
「全て忘れて、何もなかったことにでもしたくはならないかい?」
 映像が終了して、スクリーンの消えた向こうから、三人組のにやけた目つきが突き刺さる。
「やだ……もう、もう見ないで……」
 今の旭姫も肉体を操作され、全ての恥部が見えるポーズを取らされている。旭姫自身の意思では小さな身じろぎにしかなりはせず、そんな動きでさえも、力を抜けば元の角度に修正される。
「君の全てを解析した」
「性的刺激から得られたデータも興味深い」
「実に参考になったよ」
 三人組は煽らんばかりの勝ち誇った表情で、見せびらかしたいがためにホロスクリーンを出現させる。改めて旭姫の前に浮かぶのは、処女膜の付いた性器と、喪失後のやや幅の広がった穴を並べたものだ。
 さらには肛門を大きくアップしたものが浮かぶ。
 乳房をアップしたものが浮かぶ。
 一つ一つが旭姫の羞恥を煽り抜き、耳が染まりきっている。
「やだやだやだやだ!」
 激しく首を振りたくり、本当は目も逸らしたい旭姫であるが、首もまぶたも直ちに修正されてしまう。
 それでも、まぶたに力が入っていた。
 見たくない、見たくない、そんな気持ちの条件反射で、閉じることのない目を閉じようと、眼球の周囲に力の籠もった表情が出来上がる。
 羞恥が激しく膨らんでいた。
 三人組の手元にある波形では、かなりの羞恥反応が検出され、揃って軽い驚きを見せていた。
「やっぱり覚醒状態だと違うものだ」
「恥じらいをきっかけに目覚めるセンスがあったら」
「かなりパワーアップしちゃいそうだねぇ」
 三人揃ってニタニタ笑う。
「うううううう!」
 顎が震えていた。
 力いっぱい歯を食い縛り、頬の強張りきった顔つきで、真っ赤な顔から涙が溢れる。目尻は震えて、閉じたくて仕方のない脚までピクピクとしているのだった。
「むふふっ、可愛らしいお姿だけど」
「そろそろ段階を進めないとね」
「それじゃあ、改めて意識をぼんやりさせようか」
 旭姫にはナハシェの洗脳がかかっている。
 それが解けているわけではない。
 今はただ、効力が調整されているだけだ。旭姫に植え込まれた洗脳の種は深部に潜み、非活性となっている。あえて意識を覚醒させ、今までの映像を見せつけたのは、本人に拒絶してもらうためだ。
 受け止めたくない現実、信じたくない真実。
 それらを突きつけることで、より確実に旭姫の自我を消し飛ばす。洗脳による意識の剥奪の効果を深め、決して自己意識が回復しないように落としてやる、
 これこそが、旭姫にショックを与えた意味。
「では今一度」
 銀縁眼鏡が手をかざす。
 それに伴い現れるのは、旭姫にとっては映像の中で見た、研究者にとっては二度目の使用となる触手の数々だ。
「やだよ! やめて! おねがい!」
 喉の裂けそうなほどの叫びが切実になる。
 しかし、研究者達は旭姫の声など顧みない。
「ではイってもらおう」
 すると、二本の触手が乳首へと食らいつく。さらに一本はクリトリスへ、さらに一本は尻たぶを撫で回し、そして一本は膣口へ潜り込む。
 一斉に襲いかかった触手に対し、旭姫には動揺の暇さえない。
「あああああああ!」
 絶叫するほどの快感に襲われていた。
 感度ゲージを操作され、全身が性器と化した今の旭姫は、指を擦られてさえ必要以上に快楽を感じてしまう。
 絶頂には時間などかからなかった。

「――――――――っ!!!」

 ものの数秒で全身を仰け反らせ、指先まで痙攣させ、まるで雄叫びを上げるように口を開いているが、喉からは何も絞り出せてはいない。
 この一瞬、旭姫の頭は真っ白になっていた。
 ここで洗脳が活性化し、旭姫の意識を一気に奪う。もはや朦朧としたものさえ残さずに、まるで脳が停止したかのような、ぷっつりスイッチの切れた眼差しで、全身をだらけさせていた。
 もちろん、本当に脳停止しては意味がない。
 これは意識の停止なのだった。
 受け止めがたい現実を用意しせ、その上で絶頂させて真っ白に、まさにこのタイミングを狙った洗脳の活性化は、旭姫の心を奥底まで食い潰す。
「これでもう、戻らないでしょうね」
「彼らが仮に現れても」
「空閑旭姫は奪還できない」
 研究者達はほくそ笑む。
 光を失った瞳は魂の存在を感じさせず、旭姫に眠るセンスだけが、これからグノーシスに都合良く利用されることとなる。
 果たして、スバルは旭姫を救出できるのか……。