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 弟がモスティマに行った脅迫は、それ自体は単純なものである。
 自分達に何かあったら、それは全てロドスの責任になる。自分達の両親は、決してロドスを許さないという言葉であったが、それだけでモスティマが屈服するはずもない。弟の口八丁には、まだまだその続きがある。
 外部からの誘拐の手筈があると、弟は言ったのだ。
 それは両親が用意した刺客であり、自作自演の誘拐にすぎない。二人に対して実際には危害を加えることのない、単なる迎えの一種である。それが二人を攫った場合、モスティマとは別の人物が無事に送り届けるわけだ。
 誘拐グループによる送り届けになる場合、表向きには身代金を払って返してもらったことになるという。その実際のところは、仕事に対する謝礼を受け取るものに過ぎない。
 その一方で、ロドスは職務を全うできず、二人の子供を危険に晒したという汚名を背負う。

「よく考えられているみたいだね」

 全てを聞いたモスティマは、さすがに冷や汗を浮かべていた。
 この誘拐グループの仕組みには、まださらに続きがある。
 子供の安全を見張る影の護衛という兼ねており、にも関わらず危害を加えれば、やはりロドスに迷惑がかかる。言い換えるなら、モスティマから危害を受けた場合、被害者として振る舞うための下準備があるというのだ。
 よって誘拐犯に対する武力行使は取りにくい。かといって、子供達を届ける役目はモスティマ一人だ。双子の行動を絶えず監視し続けたり、周囲を警戒しようにも、一人きりの目では必ず限界があり、わざと捕まりに行かれてはどうにもならない。
 双子に手錠でもかけたりして、拘束して管理する方法もあるにはある。
 が、そうした不当な扱いを行えば、周囲からの監視が報告を入れ、これもまたロドスの不利益に繋がるのだ。
 そして、それらロドスへの責任追及に事態が発展した場合、この双子の両親がどういった要求をするかわからない。単にモスティマを首にするだけで済むならまだいいが、巨額の賠償金という話にでもなって、慈善活動に支障が出れば、もはや迷惑どころの話ではない。
 ロドスへの損害に発展すれば、他の所属オペレーターはもちろん、連鎖的に感染者が不利益を背負う。人を救う医師を邪魔すれば、その分だけ犠牲者が増えるという単純な理屈であった。
(まったく、誰かさんのおかげで道のりが楽になっていたんだと、急に物凄い実感が湧いてきたよ)
 今はいないフィアメッタの顔がモスティマの脳裏に浮かんでいた。
「それで? 二人はそこまでして胸を揉んでみたいのかな?」
 正直、子供相手にそれで済むなら、随分とマシな話にすら思えてきた。
 不幸中の幸いにして、やはり相手は子供に過ぎない。これが大人の男であり、日常的なセックスでも求められた時には、もうやっていられなかっただろう。子供に揉まれるのも嫌には嫌だが、大人同士なら濃密な関係を求められていただろうと考えれば、比較対象に対してなかなか軽い話に思えてくる。

「それじゃあ、モスティマさん? あなたのストリップを見せてくれない?」

 それまで劣勢の顔をして、困り果てていたはずの姉が、急に強気になって命じてくる。
「裸を見てみたいって?」
「そうなの。同じ女の裸が好きなの」
「だとしたら、君とはまた一緒にお風呂に入ってあげるから」
「それも嬉しいけど、服を一枚一枚脱いでいくのがいいんじゃない。是非、今から、ここでストリップをしてくれないかしら」
「どうしたものかなぁ……」
 さすがに困り果ててきた。
 姉一人に見せる分には、それほどの抵抗はない……いや、そういう目で見られるとわかってしまうと、皆無ではなくなりはするのだが。やはり大人の男性が相手だった場合を考えて、その想定と比べれば十分マシだ。
 すると、問題になってくるのは弟の存在だ。
 こちらの視線も、年下の子供な分だけ、抵抗や嫌悪感はいくらか希釈されはするものの、進んで見せたい気はしない。
 モスティマは少年をちらりと見てから、思いつきで試しに言ってみる。
「うん。だったら、お風呂場の前で二人きりになろうか? ね、お姉さん」
 しかし、姉は首を振る。
「駄目よ。ちゃんと、私達二人の前で裸になって?」
「……ははっ、どうしてもかな?」
「どうしてもよ?」
 どうやら、譲る気はないらしい。
 モスティマは考えた。
 この子達を黙らせて、この状況を覆してしまうための、何か良い名案はないものかと。そういった頭はドクターほどには回ってくれず、しかもこの二人の場合、両親が全面的なバックアップまで行っている。
 子供を叱らない、甘やかす親という存在は、何となく漠然と聞いたことはあったのだが、まさか歪んだ性癖を満たすことにまで手を貸す者がいるとは世界は広い。
 名案は出て来ない。
 この子供達の両親と、ロドスとの関係は良好で知られており、モスティマの行動一つでそれが壊れかねない。仕事上の利益より、子供のわがままを優先されたら、それで会社が損害を負うという状況だった。
 そして、平気でそちらを優先する親らしい。
 この子達の証言だけなら信じなかったかもしれないが、残念ながらモスティマにも、ロドスを通じて親馬鹿らしいというある程度の情報は伝わっていた。子供のためだけに城を建て、あんな貧相な村から城に移り住ませようと考えていたらしいのだ。
 結果的には土地を得られず頓挫して、それでも立派な屋敷を用意しているとか。
「……仕方ないね」
 今は折れるしかない。
 すぐには浮かんで来なくても、いずれは何か名案が浮かぶだろうと、ここは恥を忍ぶことにした。

 モスティマは立ち上がり、二人の視線を浴びながらシャツを脱ぐ。

 ベッドに座った姉弟の前に立っての、ちょっとしたストリップショーの開始に、モスティマは妙な気恥ずかしさを味わっていた。もっとケロっとした顔で、あっさりと脱いでしまおうと思っていたのが、想像よりも羞恥心が湧いてきていた。
(はあ、なんでこんなに恥ずかしいやら……)
 自分で自分に呆れつつ、モスティマはシャツをたくし上げていく。
 何も過剰なほどの恥じらいにまでは至っていないが、内側に身に着けていた白色を晒した時、双子の眼差しは明らかに輝いていた。
 おお! これは!
 とでもいうような、宝物を前に感動している瞳がそこにはあった。こんな状況でさえなければ、微笑ましくてたまらない表情のはずだった。
 モスティマはシャツを脱ぎきる。
 脱いだものは床に放って、次は短パンを下ろしていった。
「上下白なんだねー」
 弟が言ってくる。
「いがーい。もっとセクシーなやつかと思った」
「だよねー。姉ちゃん」
「ま、そーゆーのも有りだと思うな」
 品評でもしてくる顔で、姉はそんなことを言ってくる。
「はいはい。すぐに脱ぎ終わるからね」
 モスティマはブラジャーのホックを外し、自分の顔が赤らむことを感じながらも、できるだけあっさりと、呆気なく乳房を晒す。さも羞恥心などないように、さっさとショーツのゴムにも指を入れ、最後の一枚にかけても脱いでみせると、姉弟は本当にニヤニヤと楽しそうに笑っていた。
「わーお、アソコもオッパイも丸見えだー」
 弟が感激の笑顔を浮かべる。
「うらやましーなー」
 姉はわざとらしく羨んでいた。
 こうして、モスティマは裸体に二人の視線を浴びて、胸やアソコを視姦され、その恥ずかしさに耐え忍ぶ。
「で、もういいかな」
 数十秒も経った頃には、モスティマはそろそろ服を着ようと、床に放ったものに手を伸ばし、拾い上げようとしていた。
「まだダメよ?」
 しかし、姉は言う。
「もう十分じゃないのかな?」
「まさか。裸になったら、次はプレイでしょ?」
「君達には早いよ」
「あら、生意気。今の私達に、そんな口を利いてもいいのかしら」
「なら何をしようって?」
「四つん這いになりなさい?」
「…………」
 モスティマは顔を顰めた。
 裸体を視姦だけすれば、それで満足してくれることを期待していたが、どうやらそんな当ては外れたらしい。
 まだまだ楽しみ足りないと、双子達は意地の悪い笑顔であった。

     *

 モスティマは床に両手を突いていた。
 その傍らに立ち尽くし、上から人の背中を見下ろすのは、意地の悪い笑顔で邪悪に口角を釣り上げた姉である。
(さすがに屈辱的になってきたかな……)
 もう仕方ないので、子持ちのパパが子供のお馬さんごっこに付き合うような気持ちにでもなりきって、どうにかやり過ごそうとは思ってみても、全裸でこのポーズを取っているのだ。それをニヤニヤと見下ろして、大人を屈服させた優越感に浸った少女がそこにいるのでは、いくら寛容でいようと思っても、そろそろ自尊心が傷つき始める。
 それにモスティマの身体を挟んで、姉とは反対側にいる弟は、床に膝を突いていた。
 一体、何をするつもりで真横に座り、企みの表情を浮かべているのか。
 その時だった。

 ぱぁん!

 平手打ちからなる痺れが尻に広がり、さしものモスティマもぎょっとしていた。
「え……!」
 お尻を叩かれたのだ。

 ぱん! ぱん! ぱぁん! ぱぁん!

 あまりのことに、モスティマは目を見開いていた。
「なっ、ちょっと……!」
 慌てたような、焦ったような表情は、いかにもモスティマらしからぬものだった。

 ぺちん! ぺちん! ぺちん! ぺちん!

 尻たぶに走る衝撃は、一発ごとに痺れを蓄積していった。腫れるほどではないにせよ、そこそこの力で殴打され、赤らみの手形が出来ているかもしれなかった。
「いい気味ねぇ?」
 姉がモスティマを見下していた。
 立って見下ろしての、物理的なそれだけでなく、人のお尻を叩かれる有様を見ることで、さぞかし良い気分に浸っているに違いなかった。
「気分はどう? 過去にも色んな人達を玩具にしてきたけど、モスティマさんって中でもとびっきりセクシーで、ドキドキさせられちゃうわ」
「過去にって……ああ、そっか……。初めての感じじゃないもんね」
「ま、簡単な話よ? 私達を安全に送り届けるあいだ、そのついでに子供の遊びに付き合ってくれればいいの。何も一生奴隷になれとは言わないわ」
「それはご親切に」
「それにしても、大人のこういう姿を見るのって、本当にいいものよねぇ? 初めてこういうことをした時は、もう本当に本当に悔しそうな顔をしていたけど、モスティマさんはどんな気分なの? ねえ、怒りに震えてる? それとも泣いちゃう?」
「……さあ、どうだろうね」
 いくらなんでも、これで憤りを感じないわけもない。

 ぺん! ぺん! ぺん! ぺん!

 どちらの尻たぶにも平手打ちが繰り返され、左右共々赤らみが蓄積していた。
「今日はこのくらいにしてあげる」
 姉がモスティマの真正面に回り込む。

「――舐めてくれたらね」

 足が眼前に突き出された。
 口元に迫る親指から、モスティマは静かに目を背ける。すると顎で合図でも飛ばしてか、一度は止まったスパンキングが再開され、その打音が鳴り続ける。
 ついにはモスティマも観念して、姉の親指を口に咥えた。
 屈辱の味だった。
 舌に伝わってくるものが、いくら人の皮膚の味であっても、足なんかを舐めさせられる屈辱感で、物理的な味とはもっと異なる何かを感じてならなかった。

     *

 その翌日から、モスティマは二人の玩具にされ始めた。
 人に屈辱的なことを強いたり、恥ずかしいことをさせるのが楽しいらしく、モスティマが朝から強要されているのは、ノーパンノーブラで出歩く行為であった。
 着ているのはシャツ一枚。
 丈が長いシャツがあったおかげで、その長さに尻やアソコは隠せるものの、短パンもなければスカートもない。心許ないにもほどのある状況で部屋から廊下へ、そしてロビーまで向かわされ、二人はそんなモスティマの様子を後ろから面白がる。
 恥ずかしいことこの上ない。
 ブラジャーによる押さえつけがないので、まず乳房が揺れやすい。幸か不幸か、巨乳すぎるほどには大きくないので、際立ちすぎるわけでもないが、乳首でも立とうものならシャツの上からでもわかってしまう。
 シャツの丈の長さというと、ミニスカートよりも数センチ短いほどの、かなりのギリギリの具合で下腹部が隠れている。すれ違う人がどんな顔をするかと思っていると、意外にもモスティマには目も暮れず、せいぜい角の黒いサンクタを珍しがるくらいである。
 きっと思い込みや先入観だ。
 丈で下半身を覆った状態は、穿いていないようには見えても、まさか本当に短パンの一枚も無しにノーパンで出歩いているなど、常識的にいって思いもしない。さしずめ、そんな固定観念に救われて、奇異に眼差しがあからさまに向いてくることはなかった。
 だからといって、落ち着かない。
 普段ならあるはずの、ブラジャーによる押さえ込みがなく、ただ歩行しているだけの振動で乳房はぷるぷると揺れている。丈もひらひらと捲れやすいのが気になって、手でさりげなく押さえていなければ歩けもしない。
 歩行によって足を前後に動かし続ける。
 たったそれだけの、普通は何も気にせず無意識に行う動作ですら、丈の捲れ具合が気になって仕方がない。階段のように傾斜があると、下から見えかねない危機感は余計に増して、なかなか平静を装っていられない。
 しかも、気になるのは丈の長さや下着の有無だけではない。

 アソコにディルドを咥えているのだ。

 黒光りする反り返ったフォルムを挿入して、まるで膣口を栓で閉ざしてしまったように、咥えたもので入り口が塞がっている。下半身に何も穿いていないこと自体、意外にも気づかれる様子がないのだから、ならばディルドなど普通にしていれば周りからはわかりようがないのだが、それにしたって落ち着かない。
(よく思いつくものだ……)
 逆に関心すらしたくなるアイディアだ。
(それに、あの歳でこういう玩具を持っているなんて)
 自分が同じくらいの歳の時には、性的な好奇心が芽生え始めていたのがせいぜいで、こういうものの存在にはまだ辿り着いていなかった。
 それを所持までしているとは、まったく末恐ろしい子供である。
 しかも――。

 ブィィィィィ…………!

 遠隔式のリモコン操作で、双子がスイッチを握っている。
 いつどんなタイミングで振動するかもわからない、太いディルドが入ったままに出歩く緊張感で、絶えず顔が引き攣りそうだ。
 ロビーから外へ出て、モスティマは外を出歩く。
 屋内ですら落ち着かず、挙動不審になりそうだったのに、屋外まで歩かされるなどたまったものではなかったが、振り向けば双子が見張り続けてくる。
(……はいはい。行けばいいんでしょう?)
 困ったことに、買い物まで命じられていた。
 先ほどスイッチの入ったディルドは停止して、今は鳴りを潜めているが、それがまたいつどのタイミングで振動するか。気が気でないままに歩いていけば、そこそこに人の多い道のりで、さすがにモスティマへの視線は集まってきた。
 いくら思い込みや先入観で、下半身に何も穿かないはずがないと思う人が多くても、シャツの丈だけで下腹部を守っているのだ。たとえ短パンを穿いたとしても、見た目には穿いていない風に見えるため、チラチラとした注目が集まらないこともない。
「おうおう。痴女っぽくね?」
「はは、まさか」
 二人組の男とすれ違う時、モスティマに対する冗談めかした言葉を言い交わす。
「やだ……なにあれ……」
「彼氏にやらされているのかもね」
 カップルとすれ違う時、女の方があからさまに引いた顔をして、その隣の彼は冷静な分析を行っていた。もしかしたら、このカップルに関しては、モスティマの恥ずかしい状態を察してきたのかもしれず、羞恥で頭が熱っぽくなりそうだった。
 だいたい、こうなるとだ。
 見知らぬ他人にわざわざ言って来ないだけの話で、本当はモスティマの状態に薄々と気づいていて、痴女かプレイ中かどちらかだと思っているのが、想像よりもいるのかもしれない。意外とバレていないのではなく、意外とバレている方の可能性を感じた時、余計な恥ずかしさが湧き起こり、耳まで染まっていきそうだった。
 行き先はアダルトショップだ。
(はぁ……あたしゃ完全に痴女じゃないか……)
 モスティマの深い深い事情など、他人がいちいち知るはずもない。通行人や店に居合わせた一般人から見えるのは、ただ刺激的な格好をしているだけの、やはり痴女なのだ。
 バイブやピンクローターが陳列され、ローションやコンドームが棚に並んだ店に入れば、一般人からの視線もさすがに変わる。
 きっと、ますますプレイに見えるのだ。
 先ほどのカップルの発想に倣うなら、さしずめ彼氏に命令されて、恥ずかしい買い物をさせられている。シャツ一枚で出歩かされた彼女にでも見えるだろうか。
 チラチラと集まる視線の圧は、明らかに強まっていた。
「へえ?」
 などと、人の体つきを見て関心してくる声が聞こえた。
「なるほどねぇ?」
 何を納得してなのか、そんな呟きが聞こえて来た。
 並んだ商品を眺めていた客達の、誰も彼もがさりげなく視線を送り、モスティマのことを盗み見ていた。
(困ったね……)
 野外よりも屋内の方がマシだと思っていたのだが、アダルトショップの店内という環境のせいなのか。女に集まる好奇の視線は、道端で感じたよりもずっと如実で、一人一人があからさまにそわそわしていた。
 さっさと何かを買って出て行こう。
 適当なバイブを手に取って、早足でレジに向かうと、清算を行う店員が明らかに人を見てニヤニヤしていた。会計のやり取りで値段を告げてもらい、その金額に合わせた金を財布の中から出している時、店員は言ってきたのだ。

「ノーブラですか?」

 まさか、直接聞かれる機会があるとは思わなかった。
「……まさか」
 即答しなければ、かえって怪しまれると思っての、できるだけ平静を装った笑顔であった。
 そんな時にである。

 ブィィィィィ…………!

 アソコの中で、再び振動が始まった。
 その刺激に顔が反応しそうになってしまって、モスティマは咄嗟に表情を取り繕う。
「へえ」
 追求されでもしようなら、ブラジャーが緩い、肩紐が傷んでいる。何かそういう言い訳でもしておこうと考えている手前、店員はバイブを紙袋にしまっていた。その袋詰めが済まされて、商品が手渡された時である。

「え……」

 モスティマは目を丸めた。
 急に隙を突かれたことで、咄嗟に反応できなかった。

 店員は商品を手渡すついでのように、銃口を向けてきていた。

 水鉄砲だ。
 殺傷力も何もない、ただ水を飛ばすだけの銃口だった。

 びちゃっ、

 と、撃ち出された水がかかってくる。
 モスティマの白いシャツが濡らされたら、一体どういうことになってしまうか。水気を吸った布の下から、直ちに肌色と乳首が浮き上がり、モスティマはみるみるうちに染まり上がった。
「な……あぁ……!」
 モスティマは引ったくるように商品を受け取って、即座に背中を向けていた。さっさと店を出てしまおうと、早足で進み出したその直後、もう一発の水が発射され、それは尻へとかかってきた。
 尻が同じように透けていき、これでもうモスティマは、ノーパンノーブラの状態を誤魔化すことができなくなった。
 帰り道は最悪だった。
 片腕で胸を守って、もう片方の手を尻に回すが、それで誤魔化しきれるわけではない。腕の隙間からはどうしても上下にはみ出て、尻の面積も片手だけでは覆いきれない。透けているのは隠しきれずに、だから次にすれ違う人々には、どうしようもなく下着無しの格好がバレていき、見る人見る人、その次から次へとに、ヒソヒソと何かを言われ続けた。
 痴女呼ばわりや変態呼ばわりであろう言葉になど、いちいち耳を傾けることはせず、少しでも早く部屋に戻ろうと、モスティマはとにかく早足だった。



 
 
 

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