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 その試合を鑑賞している支配人は、エリサの様子にほくそ笑んでいた。
 上質なソファに腰を沈めて、彼は専用の鑑賞ルームから闘技場の様子を見ている。魔法で映像を映し出し、その中継を介して伝わるエリサの焦りは、まさに支配人の思い描いた通りのものだった。
 彼女は実力を発揮してなどいない。
 運動不足の鈍りきった体からパワーやスピードが落ちるのは当然だが、日々の食事にも筋力を抑える薬を混ぜている。魔封じの首輪は外し、魔力の使用は可能にしてあるが、そのコントルールも今は上手くいかないはずだ。
「エリサさん。あなたは今、物凄く弱いんですよ?」
 いくら攻撃を繰り返しても、その一発たりともチンピラには当たらない。
 だが、本人はそれが何故だかわからずに焦っている。
 それもそのはず、支配人は催眠をかけたのだ。
 試合直前、食事に混ぜた薬や呪いなど、複数の方法でかけた能力減衰を一括で解除して、全力を発揮できるように調整すると、エリサには伝えている。魔法をかけ、力を取り戻したかのように錯覚させたが、実際にかけたのは催眠魔法だ。
 自分は全力を発揮できているはずである。
 そう誤認させる魔法によって、自分が弱くなっているとは気づかない。
『おっぱいが揺れてるぜぇぇぇ?』
『ケツが見えた!』
『もっと見せてくれよォ!』
 客席からの野次が映像の中から聞こえてくる。
『うるさい奴らめ……』
 エリサは客席を一瞬気にして、すぐにチンピラに集中し直しつつ、頬の内側では歯を食い縛っていた。
 きっと、必死に考えていることだろう。
 どうして、攻撃が当たらないのか。たかがチンピラごときが自分の攻撃をかわし続けているのか。
 エリサの動きは悪くない。
 冗談のような跳躍力、バク転や宙返りのような軽業に、驚くべき柔軟性……実力を封じた上でこれなのだから、本当は一体どれだけ強いか。チンピラごとき、一秒とかからないのではないか。
 だが、それでも打撃のキレは悪く、動きも大振りだ。
 催眠魔法によって、無意識のうちに攻撃を外すようにもしてあるので、そもそもチンピラが避けなくても、エリサが勝手に目測を誤ることもある。
『へっへっへ、だんだんお前の動きに慣れてきたぜ?』
 チンピラは勝ち誇った笑みを浮かべ始めていた。
 彼とて修羅場は潜っている。
 もっと広い世界では通用しないというだけで、街角の喧嘩では十分強い。その力があれば今のエリサの動きには反応できる。今の弱り切ったエリサが相手なら、反応さえできればかわせてしまう。
『くっ! このぉ!』
 エリサは駆けていき、しきりに打撃を繰り返す。
『ほらほら、当たらないぜぇ?』
 それをチンピラは難なく避ける。
 最初はエリサが勝手に目測を誤っているだけだったが、慣れてきたという言葉の通り、確かな回避を行うようになっている。
 そのうち、エリサは足を引っかけられ、転ばされていた。
「おやおや」
 地面に思いっきりうつ伏せに、顔をぶつけんばかりに倒れかけ、もっとも肘と手の平で受け身は取ったらしい。そのまま乳房が潰れていれば、胸を痛めたことだろうに、どうにかそれは免れていた。
 だが、そこでチンピラはエリサの頭を踏む。
『ぐっ!』
 起きさせないつもりだ。
 立ち上がりを足で阻まれ、四つん這いのようになったエリサの尻から、チンピラは素早くチャイナドレスの丈を捲った。
『ケツ丸出しィィィィ!』
『ひゅー!』
『よくやったぁ!』
『見たかったぜぇ? じっくりとよォ!』
 客席に広がるのは歓声だった。
 見事エリサを辱め、尻まで丸出しにして見せたことで、誰もがチンピラのことを英雄視していた。
 誰もエリサの強さに期待などしていない。
 みんなが見たいのは辱めだ。
 エリサがいかに惨めに恥を晒して、みんなの笑いものになるかが楽しみなのだ。

     *

 エリサは頭を踏まれていた。
 立ち上がることができないように足の力で押さえ込まれて、地べたに頬をなすりつける。その一方で尻にかかった丈は捲られて、丸出しにさせられていた。
「くっ、貴様……!」
 衆目の視線を尻に感じる。
 ここぞとばかりにアングルを変え、丸出しの尻を大きく映していることは想像に難くない。
 もちろん、それは屈辱だ。
 エリサにとっては伝統ある衣装でも、ここに集まる男達は馬鹿にする。コケにされるとわかって着たくはなかったものを着て、結果として尻を捲られたことが惨めでならない。誇りを守ってやれなかったかのようで悔しいのもさることながら、エリサに対する侮辱はこれだけに留まらない。

「闇の一族ってのは弱かったのか?」

 観客からの野次の一つを耳が捉え、エリサはその瞬間に強く歯を食い縛る。悔しくて悔しくて、本当に悔しくてたまらずに、折れんばかりの勢いで激しく噛み締め、必死の形相を浮かべて意地でも立ち上がろうとしていた。
「違う! 弱いものか! 私はッ、私達はッ!」
 自分だけではない。
 一族全てに対する侮辱だ。
 誇りを傷つけられた怒りに、エリサはその両手で力強く地面を押し、精一杯の思いで立ち上がろうとした。
 だが、その瞬間だ。
「よいしょっと」
 背中に、乗られた。
 馬に跨がるようにして、エリサの背にはずっしりと、男の体重が丸ごとかかる。起きようとしていた上半身は、地面に向かって深く沈み、エリサはますます悔しい思いに駆られていた。
「大勝利ィィィィ!」
 チンピラが勝利を宣言していた。
 腕を高らかに振り上げて、観客全ての喝采をその身に浴びる。
「な、なにが……!」
 何が勝利だ。
 こんな奴が、こんな男なんかが。
 認めたくない思いから、エリサは体を揺さぶった。チンピラを揺り落とそうとするわけだったが、するとチンピラは尻を叩いた。

 ぺちん!

 音が響いた。
「くっ!」
「ほれほれ、どうしたどうしたァ!?」
 さらに二度、三度と、尻に手の平からの衝撃を浴びせられ、屈辱で頭の中身がねじ切れそうになっていた。
(こいつは! こいつは!)
 馬を鞭打つかのように、チンピラは腕の片方を後ろ側にして、手の平全体を使って大胆に打ち鳴らす。その軽快な打音は魔法によって拡音され、本来よりも大きな音で客席全てにまで響き渡った。
『弱い! 弱すぎるぞ! 九重エリサ!』
 実況さえもがエリサを侮辱した。
『こうもあっさりと敗北するとは、一族の名折れではないでしょうか! それとも、一族そのものが本当は弱いんでしょうか!』
 怒りで血管が切れそうになる。
 弱いものか、そんなことがあるものか。
 でなければ、そうでなければ今まで何一つとして成せてはいない。巨悪に虐げられる誰かを救ったり、晴らせぬ恨みを晴らすことなど、決してできるはずがないのだ。
 強くなければ出来ないことをやってきた。
 エリサも、その母も、祖母も、先祖も、みんなそうだ。
『ご覧下さい! 彼はただのチンピラ! 騎士の生まれでもなければ、兵士の訓練を受けたわけでもない! まして冒険者でもありません! そんな彼が勝ったという事実は、九重エリサがいかに大したことがなかったかを物語っています!』
「ふざけるな……わ、私は……!」
 否定したかった。
 今すぐにでも目に物見せ、血族を侮辱した者達全員に、エリサの力を思い知らせてやりたかった。
 だが――。

 ぺちん! ぺちん!

 誰から見ても、エリサは敗者である。
 四つん這いの背中に座られて、尻を叩かれている姿など、間違っても勝者の姿などではない。エリサのこんな姿を見れば、誰でもチンピラこそが勝者と思う。それをわかっているからこそ、力で証明してやりたかった。
 今すぐにこいつを倒し、きちんと実力を披露してやれば、今までの言葉全てを撤回せざるを得ないはず。
 しかし、それが出来ないのだ。
 意思はあるのに、体がそのように動かない。

 ぺちん! ぺちん!

 尻に衝撃を感じるたび、アソコがきゅっと疼くのだ。
(なんだ……なんなんだ……)
 怒りの中に困惑が生じていた。
 何か、おかしい。
 叩かれた部分に感じる痺れは、確かに痛みからくるものだ。このまま叩かれ続けていれば、尻には赤い手形が出来かねない。それなのに、何か奇妙な疼きを感じてしまう。
(一体、何だというんだ?)
 エリサはその感覚の正体をすぐには自覚できなかった。
 だが、叩かれているうちにである。

 ぺちん! ぺちん!

(くっ、何だ……何故……なっ、なんで……!)
 困惑からしだいに焦りが生じていた。
 気持ちいいのだ。
 叩かれることで肉体にスイッチが入り、体がおかしな反応をしてしまっている。はっきりと言ってしまえば、性的な興奮に間違いない。
 わからない。
 どうして自分がそんなことになり、こんな状況に興奮を覚えるのか、まったくもってわからない。
(……と、とにかく! このチンピラを許しておけるものか!)
 エリサは改めて身体を揺さぶった。
 まずは背中から揺り落としたかった。
『おおっと! お尻をフリフリ! アピールをしているぞ?』
 それを実況が妙な方向に解釈していた。
(な、なんだと!?)
「おいおいアピールだってよ」
「ってこたぁ何か? 興奮してってか?」
「マジかよ」
「とんだ変態女じゃねーか」
「負けたのもわざとですかー?」
 客席からの野次に苛まれ、エリサは必死になって首を振る。
 違う! 違う!
 何がアピールだ。何が変態だ。こんな風に馬乗りになられ、お尻を叩かれ、それが嬉しいわけがない。冗談を言うにもほどというものがある。
 馬鹿なことがあってたまるかと思う気持ちがいくらあっても、しかし体は現に反応を示していた。

 ぺちん! ぺちん!

 左右の尻たぶがどちらも赤らみを帯びてきて、そのうちに濡れてきていた。
 まだ、触られてもいないアソコがである。
 ワレメの奥から愛液が滲み出て、肉貝の表面にしっとりとした水分の気配を強めていく。それがスパンキングの一発ごとにはっきりと、エリサ自身の感覚だけでなく、外から見ても明確なまでに濡れてきていた。
 それは映像越しにも伝わって、観客達は愛液に気づき始めていた。
「おい、濡れてねーか?」
「間違いねーよ!」
「マジに興奮してやがるぜ?」
「もう言い訳できないなァ?」
 その野次が聞こえた時、アソコがますますキュっと引き締まり、エリサは自分自身の反応に対して顔を歪めた。
(な、何故! どうして!)
 本当に驚きを隠せない。
『濡れています! 九重エリサ! アソコをいやらしい汁で濡らし、その股のあいだに滴らせています! お尻を叩かれ、そして皆さんの熱い声を浴び、彼女は完全に興奮しきっています!』
「や、やめろ……違う……」
 声が震えた。
 否定したくてたまらないが、皮膚に感じる液体の感触は、愛液が出て来た事実をどうしようもなく物語る。
「何が違うんだ? 変態さんよォ」
 チンピラが背中から降り、エリサの胴を蹴り上げた。
「あぐっ」
 腹に感じた痛みにはさすがに喘ぐ。
 しかし、腹部に埋まった爪先の、固い感触の余韻は徐々に快感に変わっていた。確かに苦痛を感じたはずなのに、痛みが快感に変化しているのだ。
(何故? こんなことがどうして!)
 エリサはひっくり返されていた。
 仰向けに倒れたエリサへと、チンピラは向かって来る。
 股のあいだに強引に手を入れられ、エリサは反射的に抵抗するが阻止出来ない。股布の下にあるノーパンのアソコへと、乱暴に指を挿入される。チンピラの腕を掴み、何とか押し退けようとしているのに、力ではまったく歯が立たなかった。
 筋力での不利は魔力で補ってきた。
 だが、今はその魔力コントロールがおぼつかない。意識せずとも、無意識に身体強化を行うように訓練をしているのに、それが何故だか発揮できない。
「なんで!? なんでだ!」
「あぁん? それは何の動揺だ?」
「くっ、うるさい! お前には関係無い!」
「はん。まあいいぜ? 指が入ったことだしよォ」
 チンピラの指がアソコに収まる。
 すぐさまピストンは始まった。
「――あっ、あぁぁ!」
 エリサは仰け反っていた。
 仰向けで背中を反らし、首まで持ち上げてしまうエリサの身体は、さながらアーチのように浮き上がる。腹が浮き沈みを繰り返し、脚も快感によがり回って、チンピラの行う愛撫に一体どんな反応を示しているかは一目瞭然だ。
『指が! 指が入っています!』
 実況が恥辱を煽る。
『恥ずかしくはないのでしょうか! 試合で任された上、観衆の前でアソコを愛撫までされるだなんて、もう完全に戦士失格! こんなことになるようなら、もはや九重エリサ! 一体どうして自分が闘技場で戦えると思ったのか、不思議ですらあるくらいです!』
「くっ、くそぉぉぉ……! あっ、あぁぁぁ…………!」
 言い返したくてたまらなかった。
 その侮辱を撤回させ、本当はこうでないことをわからせたかった。
 しかし、エリサはイカされる。
 しばらくピストンが続いただけで、極限まで膨れ上がった快感が体で弾けた。手足がビクビクと痙攣して、アソコからは潮まで噴き、それを実況にも観客にも、このチンピラにも笑われてしまうのだった。

     *

『さあ続きまして第二ラウンド! しかし九重エリサの股からは、先ほどの絶頂による愛液が膝の内側を伝って流れている。肩も上下に動いており、頬は見るからに興奮で赤らんでいる状態だが、果たしてまともに戦えるのかァ?』

 エリサは再び立ち上がり、チンピラと対峙する。
 とても万全とはいえなかった。
 気持ち良かった余韻が体中に残っており、いたるところに性的なスイッチが入り、敏感になってしまっている。突起した乳首がチャイナドレスの胸を内側から押し上げて、服の上からでも形が浮き上がっていた。
 頭が快感で甘ったるい。
 チンピラに対する敵意も、貶されれば屈辱を感じる心も残っているのに、それと相反するものが心のどこかに芽生えている。もっと虐められたい、辱めを受けてみたい。マゾヒズムのスイッチが入り、頭の中ではどうしようもなく想像をしてしまう。
 また再び敗北して、好きなように嬲られる展開を……。
「戦えるわけねーだろ!」
「だって弱っちいんだぜ?」
「おーい! 手加減してやれよ?」
 観客は好き勝手だ。
 だが、周りの人々はいちいちエリサの事情など知らない。弱くなどない、一族だって皆強かったと知らしめるには、目の前のチンピラを圧倒でもするしかない。
(……くそ)
 できる気がしない。
 四つん這いで馬乗りになられたり、イカされたりした手前、勝利のイメージは浮かんで来ない。
(どうして、何故勝てなかった?)
 エリサはその理由を未だにわかっていない。
 催眠魔法をかけられて、あたかも自分は実力を発揮できているように思わされ、しかし実際には格下に惨敗している。向き合っただけで相手の実力を計れてしまう達人の域で、チンピラのレベルを確かに把握していながら、それを倒せないのは何故なのか。
 脳にかかった思考制限のため、エリサはその答えに行き着くことがない。
 だからこそ、そこらのチンピラを演じているが、本当はとてつもない実力者で、弱いフリをしながら追い詰めてくるのではと、見当違いな予想まで立てているのだ。
『ファイ!』
 再び、勝負は始まる。
(とにかく、やるしかない! 今度こそ!)
 エリサは攻め込み、キックを放つ。
 その一直線に駆けた上、すかさず放つ顔面狙いの回し蹴りは、確かに目にも止まらぬ速さである。数メートルはあった距離が一瞬で縮んだ上、気づいた時には既にキックが放たれて、足が顔に迫っているはずだった。
 しかし、またしても目測を誤った。
 最初から届くことのない位置からキックを放ち、その回し蹴りはチンピラの鼻から一〇センチ以上は離れた宙を空振りしていた。
(なんで……!)
 スピードだけは出ているが、本調子のものではない。
 本当はもっと速いのに、今のエリサはこれを自分の全力だと錯覚している。
「オラァ!」
 チンピラの反撃で、拳が腹に突き刺さっていた。
「ぐっ……!」
 腹筋の内側に、内蔵に重く鈍いものが伝わって、エリサは両手で腹を抱えてしまう。痛みに呻きながら膝をつき、その次の瞬間には側頭部に蹴りを喰らっていた。
『おおっと! 勝負はあっさり決まったか?』
 あまりにも呆気ない。
 エリサはしかし立ち上がり、今度こそ、今度こそ必ずと、必死の思いでチンピラに向かっていくが、どんなパンチやキックを放とうと、そのことごとくがかわされていく。
「おいおい! 当たってねーぜ?」
「素人なのか?」
「喧嘩も慣れてないんですかー?」
 客席からの野次は好き勝手なものばかりだ。
 エリサは素人ではない。人を殺し慣れてすらいる。
 だが、目が肥えきっているわけではない、本人に戦闘経験があるでもない観客達には、エリサがどれほど凄い動きなのかがわからない。催眠という事情など知りもせず、観客はエリサがあれで全力だと思い込んでいる。
 そして、エリサ自身も自分は全力のはずだと錯覚している。
「この! このォ!」
 もうがむしゃらだった。
 あまりにも素直に真正面から突っ込んでいき、ストレートで放つ拳はひらりとかわされ、それどことか背後まで取られている。しかも、避けたついでのようにして、チンピラは尻まで触っていた。
「へっへっへ」
『おおっと! ここで尻を揉んだ! モミモミしたぞォ? エリサは完全に遊ばれちゃっていますねェェェ!?』
 その実況に、エリサはますますムキになる。
「この! この! このォ!」
 右の拳で、次に左で、間髪入れない二連続のパンチを放つも、それさえチンピラは適当に飛び退くだけの動きでやりすごす。その直後には自ら踏み込み、エリサに距離を詰めたかと思いきや、真正面から乳房を揉んだ。
『今度はオッパイだぁ! 正面からモミモミと、その五指を駆使して揉みしだいたァ!』
「やめろォォ!」
 エリサは膝蹴りで腹を打ち、続けて頭突きで鼻を潰そうとするものの、エリサが蹴ったのは腹ではない。蹴りを阻止するための手の平だった。頭突きも軸をずらす形でかわされて、突くどころかチンピラの肩に顔を埋めてしまっていた。
「へっへっへ! 抱いてやるぜぇ?」
 チンピラの両腕が背中に回る。
 ぎゅっと、腕力を込められた。抱擁の力によって締め上げられ、そのまま両手が下へと動き、尻を鷲掴みにされてしまう。五指が蠢き、存分に捏ねまわされ、パンパンと叩かれた挙げ句に突き飛ばされる。
 エリサは仰向けに寝かされていた。
 どうにか受け身は取っていたが、胴に馬乗りになってくるチンピラから逃げられず、体重によって身体を固定されてしまう。起きることも、横に転がることもできなくなって、最悪なことに両腕さえもチンピラの股の下だ。
 脱出できない。
 チンピラの体重をどかす手立てもなく、エリサは胸をいいようにされていた。
「はっはっは! 乳首が興奮してんじゃねーか!」
 衣服の上から乳首をつまみ、チンピラは指先で擦って刺激していた。
「んっ! んぁぁ……!」
「気持ちよさそうな顔しやがって、そんなにいいのか? ええ!?」
 つまみ、転がす。
 やられているのは乳首でも、その刺激は体を伝って股さえ疼かせ、エリサは体中をモゾモゾと反応させていた。髪を振り乱し、足もしきりに動かしていた。
「あっ、あぁ……! あぁぁ……!」
 背中をビクっと、弾ませるはずだった。
 チンピラが跨がっていることで、その体重に抑え込まれて、だから背中が浮き上がることはない。ただ、浮こうとする力だけが籠もり、それと同時に股からお漏らしのように愛液が広がっていた。
『おおっと! まるで失禁! オシッコを漏らしたようにしか見えない!』
 偶然なのか、それともチンピラが意図的に捲っていたのか。
『漏らしたァァァ! 絶頂お漏らし! たっぷりの愛液を放出しました!』
 股布が横へずれ、アソコが丸出しの状態でエリサはイったのだ。性器へのタッチでなく、胸への愛撫だけで絶頂して、その愛液の量はコップに注いだ少量の水をこぼしたほどだ。そんなちょっとした水気の円が股から広がり、まさにオシッコを漏らして見えるわけだった。
 エリサは無力感に打ちのめされた。
 催眠魔法による思考阻害が効いているため、本当はどれほど頭が良く、思考に優れていたとしても、自分の状況を把握することはない。どうして格下にしか見えないチンピラに勝てず、こうまで辱められる一方なのか、答えはわからないままだった。
 運動不足による純粋な体力低下と、絶頂による疲弊が重なって、エリサにはもう戦う気力が残っていない。
 あとはひたずら、チンピラがエリサを愛撫するだけの時間が続いていた。
 エリサは延々と胸や尻を楽しまれ、そうしてこの時間の幕は引く。



 
 
 

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