王に奉仕する湊耀子

   





 んぢゅるっ……ぢゅう……じゅるる……

 暗がりの廃工場に、唾液を練り合わせたようなねっとりとした水音が反響していた。
 男の股座に膝をつき、根元を握るスーツの女性は、熱心に頭を動かしている。上目遣いで男の顔を伺いながら、顎を大きく広げた唇の輪でそれを飲み込み、唇が肉茎を擦るようにして男に刺激を与えていた。
 奉仕をするのは、湊耀子。
 その相手は駆紋戒斗だ。
 元より、自身で黄金の果実をというよりも、王に相応しい男の運命に寄り添いたかった耀子の中では、いつしか戒斗こそが王と成り得る存在と思えていた。
 耀子の好む、強い男。
 初めは呉島貴虎に付き従い、彼を見限り戦極凌馬へ、そして今では駆紋戒斗と、思えば随分転々としてきたが、彼の背中を追ううちに予感がしていた。
 この人こそが、本命だと。
 これまで、誰が耀子の王となるのか。品定めをしてきたが、何者にも媚びず屈せず、誰が相手でも立ち向かう姿勢の戒斗を見ているうちに、胸がきゅんと引き締まった。
 ……この人だ。
 まるで運命の王子を見つけたように、胸の底では熱い感情が沸いてきて、堪らなくなっていた。
 気がつけば、性的なアピールさえも行っていた。
 二人きりの瞬間を狙ったスキンシップと、胸元のボタンを外して見せるセクシーアピール、上目遣い。あらゆる女の武器を利用し、戒斗の視線を自分に向けさせ、とうとう戒斗の中に一つの意識を芽生えさせることができた。
 ――耀子は俺のものだ。
 そう思ってくれていることを確信した。
 こうなると、いてもたってもいられない。
 ますます感情の燃え上がった耀子は、自ら奉仕を申し出て、王の股座へ従う気持ちで口に一物を受け入れた。
「――じゅっ、じゅぱ……ぢゅるぅ……」
 じっくりと唾液を塗り込んで、亀頭から滲む先走りの汁を味わう。先端からチュウチュウ吸っては、再び肉棒全体を飲み込んで、頭を前後に動かし続ける。
「――じゅぱっ、じゅっ、じゅう……」
 この行為に耀子は熱意を込めていた。
 戒斗に対する忠誠心と、胸に膨らむ切ない気持ちをこの行動に全て込め、戒斗にそれをわかってもらう。メッセージを込めるかのような舌遣いで、懸命なまでに刺激を与え、耀子は戒斗に尽くしていた。
「出すぞ。耀子」
 一言と共に。
 ――ドクン! ドクッ、ドク……ビュルン!
 熱い精液が弾き出され、耀子の口内一面がまんべんなく白い色で満たされる。舌全体に精子の味が広がって、これが戒斗の味なのだと、耀子は大切そうに飲み込んだ。
 喉をつたって、精が腹まで落ちていく感覚に深く浸った。
「どうだったかしら」
「ああ、悪くない快楽だった」
「次は? まだまだしたいでしょう?」
「当然だ。俺がお前の王だというなら、俺はお前の全てを手に入れる。全て脱いでもらうぞ」
 王からの命令だ。
「わかったわ。戒斗」
 いよいよ、全てを捧げる時だ。
 耀子はシャツのボタンを外し、スカートと下着を脱いで一糸纏わぬ姿となる。
 戒斗に抱いてもらうことは、もう決めていた。
 ヘルヘイムの毒を乗り越え、死の運命さえ超越した戒斗であれば、きっと黄金の果実へ辿り着ける。
 そんな強い男と肌を重ねる。
 それが耀子にとっての念願だった。
「いくぞ」
 横たわる耀子の中へ、戒斗の腰が沈んでいく。膣壁をかきわけるようにして肉棒が埋まりきり、ピストン運度が開始されると、耀子は広げきった両脚をビクつかせた。
「――あぅっ、うあぁ!」
 喘いだ。
 我が物であるかのような味わい方の手が胸を揉み、腰を引いては貫く戒斗の動きは、耀子を一心に喘がせて、リズミカルに背中を仰け反らせた。