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     グロッタの町の中。
     替えの衣類を調達するため、下着売場を訪れるマルティナは、意外な顔と鉢合わせて目を丸めた。
    「あなた達は」
     マルティナの視線の先には二人の女がいた。
    「あらぁ? マルティナね?」
    「勝ち進んでるみたいじゃない?」
     ビビアンとサイデリアだった。
     仮面武闘会に出場している美人ペアで、まだこの二人とは当たっていないが、油断ならない腕の持ち主だ。
    「そうね。いずれ決勝で会えるかも。お二人が勝ち上がって来られればの話だけど」
     いつ当たるとも知れないライバルに、マルティナは挑発的な言葉をかける。
    「言うわねぇ?」
    「でも、今は楽しいお買い物」
     ふと二人が手に持つ下着に目をやると、揃って派手な金色を選んでいた。
    「……派手ね」
     ただ一言、そのままの感想をマルティナはこぼす。
    「装備効果が狙いなのよ?」
    「セクシーかつ強くあれるブラ。案外普通よ?」
    「そうなの?」
     二人の言葉にマルティナは首を傾げるが、ビビアンとサイデリアはそれぞれ何か可愛いものを見るかのような、人のがことが微笑ましいような目を向けてくる。
    「どんな下着だって、理由があるものよ?」
    「見えないオシャレを楽しんだり」
    「Tの方が締め付けがなくてラクだと感じたり」
    「装備効果もね」
     そんな風に言われると、変わった下着だからと奇異の目を向けた自分が間違っていたような気になってくる。
    「あなたにもオススメがあるわ」
     と、ビビアン。
     どうやら二人は、せっかくだからマルティナに良い装備を紹介しようというわけらしい。敵に塩を送っていいものかと気になったが、どうせならと誘いに付き合い、二人の案内のままに見本を見に行った。
     マネキンに着せられた下着はパープルだった。
     やけに布が少なく、ブラジャーの三角形は十センチもない。ショーツもアソコの布が剣のように細く、尻の側に至っては単なる紐だ。
     ブラジャーのカップとカップを結ぶ中心には、鮮やかな模様を輝かせた漆黒の蝶が添えられている。ショーツの後ろ側、T字の交点にあたる部分も、同じような蝶が輝き、しかも紐で結ぶタイプである。
     こうした下着を身につけたことがない。
    「これはどういう装備になるのかしら」
     マルティナは尋ねてみる。
    「攻撃力!」
    「そして魅力!」
     答えを聞き、マルティナは品定めを行った。
     攻撃力については、近くにあった商品説明の札にもある。値段を見ても、特に躊躇うほどの価格はしていない。
    「そうね。次の試合の役に立つでしょうし、気に入ったわ」
     案外普通だというのなら、買いやすい価格で装備効果にも魅力のある下着は欲しくなる。
    「あら? 試合だけじゃなくてよ?」
    「例のマッサージを受けるなら、刺激的なものでないと」
     マッサージ?
     そういえば、腕のいいマッサージ師の話を聞いた覚えがある。
     武闘会に出場する猛者の疲労をたちどころに回復させ、次の試合を万全の状態で戦える。それどころか調子が伸びて、いつも以上に動けるという。単なる回復は薬草でも行えるが、筋肉や骨の調整なら、専門家の施術を受けた方が良いわけだ。
    「あれは気持ち良かったわぁ」
    「ええ、本当に」
     ビビアンとサイデリアは、妙に顔が火照っているというべきか、目がとろけて、ただマッサージが気持ち良かったにしては色香を醸し出している。
     よほどの上手、ということだろうか。
    「そんな凄いのかしら」
     マルティナはマッサージに興味を持った。
    「もう最高」
    「病みつきかもぉ」
     やたらに腰をくねくねと動かして、身を抱きしめてみせる仕草は何なのか。気になるところはあるのだが、そこまで薦めるのなら、行ってみてもいいかもしれない。
    「是非楽しむといいわ」
    「下着もそれがいいと思うわ。良い時間を」
     二人はそんな言葉を残し、マルティナの前から去って行く。
     楽しむ? 良い時間?
     いくらマッサージが気持ち良くても、体をほぐしてもらうのに、楽しい、つまらないということがあるのだろうか。
     首を傾げながらも、翌朝には店に向かい、施術を受けてみることにした。
    
         *
    
     マッサージ屋の看板を見つけ、受付でゴールドを支払うと、まもなく施術室に案内される。
     施術用ベッドを中心に、その周りの壁際には観葉植物のプランターが並んでいる。棚を見れば、薬液の入った小瓶が並んでいる。
    「ようこそマルティナさん。お噂はかねがね聞いております」
     施術を行うのは中年の男らしい。
    「私もこの店の評判を聞いて来たわ」
    「ありがとうございます。参考までに、どなたかからのオススメを聞いてきたりはしていますか?」
    「ビビアンとサイデリアよ」
     答えた瞬間、中年はニヤっと口角を釣り上げていた。その表情がなんなのか、マルティナには図りかねたが、二人が絶賛していた店はここに間違いない。
    「ああ、あのお二人ですか。彼女達はとても素晴らしいお客様で、いつも大変に気持ち良さそうにしてくれますよ? 本当にね」
    「なら楽しみね。よろしくお願いするわ」
     マルティナは既に先ほどの表情など気にも留めず、単に良い接客態度だとしか思っていない。
    「お任せ下さい。精一杯の施術をさせて頂きます」
     中年は優しげでにこやかだ。人の良さそうな柔らかい空気が客を安心させる。
     しかし、本当は思う。
     全身を触らせることになるのだから、できれば女性の施術師がいれば良かった。もっとも、受付で聞いてみるに、基本的には中年一人で施術を受け持つというから仕方がない。
    「ところで、手で触れた感触で筋肉や骨を確かめるわけですが、衣服が妨げになりやすいのです。とはいえ、慣れない方に全部というわけにもいきません。腰のものを一枚だけでいいので外して頂けますか?」
    「ええ、いいけど」
     マルティナはまるで腰に巻き付けるマントのようにして、緑色の布をかけている。そのベルト状になった部分の金具を外し、言われた通りに一枚を手放すと、その後はグローブや前腕の布も取るようにと告げられて、それらも取り外した最後には、ブーツを脱いでベッドの上に横たわる。
     仰向けとなったマルティナは、天井の模様を真正面に捉え、何気なく見つめていた。
    「では施術に入ります。お体に触れていきますので、不快感の強いところがありましたら、どうぞ遠慮なく仰って下さい」
     中年は頭上に回り込み、仰向けの姿勢からすれば真上から、両肩に指を置いてくる。黒いタンクトップのかかった部位を指圧でさすり、鎖骨の様子も探る中年は、実に穏やかな調子で言う。
    「女性ですと、当たり前ですが、手がバストに近づくのを嫌がる方も多いです」
     肩の関節を調べるためか、タンクトップの布が及んでいない、剥き出しの部分が手の平に包まれた。
    「一方で、施術ならばと考える方もいらっしゃいます。際どいところに触れる時は、こちらからも尋ねていきますので、繰り返しになりますが、ご不快な場合は遠慮なくどうぞ」
     受付で男しかいないと知った時、微妙な思いをしたのが正直なところだが、実際に施術が始まってみれば、なかなかに物腰丁寧である。
    「そうね。覚えておくわ」
     これなら、安心して身を任せられるだろう。
     マルティナの中で警戒心が和らいで、身体を探られることへの不快感も薄らいだ。
    「ではまず、お体の具合を調べていきます。最初は肩から指先にかけて、次に足の指先から太ももにかけて調べていきます。太ももは不快感が強いでしょうから、我慢が無理だった場合は申し出て下さい」
     中年は二の腕を両手に包み、上から下へだんだんと移動しながら揉んでいき、さらには指の一本一本にかけても細かく探る。両腕ともに揉み終わると、今度は足の指や裏側が始まり、アキレス腱や膝にかけてを手の平で圧する。骨や関節に沿って指圧する。
     両足の膝まで済むと、いよいよ太ももに手が置かれた。
    「どうです? 問題ありませんか?」
    「平気よ。思っていたほど不快感じゃないわ」
     欠片も不快でないとまではいかないが、これだけ丁寧な確認だ。あくまで施術なのだから、多少の不快感よりも身体の調整の方が大切だ。
    「わかりました。では一旦、香を焚かせて頂きます」
     すぐに太ももへの施術がくるかと思いきや、中年は一度マルティナの傍から離れ、香の準備を始めていた。ほどなくして香りが漂い、思わずうっとりとするような、このまま眠ってしまいたくなる甘く華やかなものが鼻腔に流れ込む。
     一瞬、頭がくらっとした。
    「いい香りね」
     気のせいだろうか。
    「でしょう?」
     にこやかな中年は、改めてベッドへ近づき、右の太ももに手を置いた。肌を優しくさするタッチに始まり、すぐに指圧混じりの揉み方になり、若干痛いほどに親指が深く食い込む。
    「マッサージ効果を高めるための香でしてね」
     中年の手は緑色のホットパンツまで及ぶ。
    「マルティナさん。良い鍛え方をしているのがよくわかりますよ? どれくらい力があるか、どれくらい筋肉にストレスが溜まっているかも」
     中年はベッドの左側に回り込み、左の太ももにも指圧と手圧を施し始める。
    「どんな状態かしら」
    「やはり関節と筋肉が疲れてますね。本人は元気なつもりでも、無意識のうちに蓄積していく疲れがありますから」
    「なるほどね」
    「もう少し詳しく調べますので、うつ伏せになって頂けますか?」
    「こうかしら」
     身体の向きを変え、今度は枕に顔を埋め、自分自身の体重でバストを潰す。
     背中に手圧が行われ、指先が肩甲骨を探り始める。体重をかけんばかりに肋骨に圧力をかけ、さらには背骨に沿った指圧も、うなじから骨盤にかけて行われ、ぐいぐいと押し込まれる痛みを感じ続けた。
    「だいたい把握してきましたよ」
     手が骨盤に沿い始めた。
    「疲労の蓄積ポイントを見極めたので、一つずつケアしてこうかと思いますが」
     腰骨のラインに合わせ、まるでピアノを弾くかのような両店四指の置き方で、探るために撫でられる。やはり、ぐいぐいと指圧もされ、さらにもう少しだけ、数センチだけ下へとずれ、指は尻へと近づいた。
    「脚の動きにはお尻の筋肉も大きく関わっていまして、確かめてもよろしいでしょうか」
    「お、お尻?」
    「もちろん、お嫌でしたらやめておきますが、お体の調子を整える意味では、なるべくやった方がよろしいかと」
     しばし迷う。
     施術のためとはいえ、みだりに触らせていいものか。
    「わかったわ。お願いしようかしら」
     迷いつつも、マルティナは尻への接触を許す。
     緑のホットパンツへと、中年の両手は置かれた。ぐにぐにと筋肉を潰そうとするような手圧が行われ、痛いほどに指が食い込む手つきには、いやらしさを感じない。純粋に体の状態を知ろうとするタッチをマルティナは信用していた。
     不快感はないでもないが、我慢しよう。
    「なるほどぉ」
     何かに納得しながら、中年はひとしきり撫で回した。
    「マルティナさん。できれば専用のオイルを使いたいのですが、そうしますとお洋服を汚してしまうわけで、つまり脱いで頂くことは可能でしょうか」
     丁寧な腰の低さで、しかし中年が求めてくるのは脱衣であった。
    「脱ぐって……。どこまでかしら」
    「下着までで構いません。もちろん無理にとは言いませんが、まずは理由を聞いて頂いて、それからの判断でも遅くはないかと思います」
    「まあ、そうね。聞かせてもらうわ」
     マルティナがそう返すと、中年は説明を開始した。
     一体、マルティナの身体から、どんな具合の疲労を見つけ、それはどういった症状であるのか。そのケアにはいかに専用オイルが重要であり、魔法効果が宿ったオイルなら、たちどころに癒やしてみせるか。身振り手振りを交えて語ってみせ、マルティナはその話術に飲み込まれていた。
     接客営業の中年は、長年の経験で話術に長け、客に自分の話を信じ込ませることに慣れているのだ。
     マルティナは納得してしまっていた。
    「わ、わかったけど……。下着までよ?」
    「ええ、それで構いません」
    「脱いでいるあいだだけでも、向こうを向いてもらえるかしら」
     脱衣を飲み込んだとはいえ、異性に肌を見せたことのないマルティナには、下着姿を晒すことさえ恥ずかしい。
    「承知しました」
     中年の背中が向いたところで、マルティナは脱ぎ始めた。
     まずは胸にかかった緑色を、その下にある黒いタンクトップをたくし上げ、上半身はブラジャーのみとなっていく。ホットパンツの留め具を外し、チャックを下げ、脱いでいき、完全な下着姿となったマルティナは恥じらいに頬を染め変えた。
    「……脱いだわ」
     椅子に座るかのように足を下ろして、マルティナもまた中年に背中を向けていた。
    「では仰向けでお願いします」
     そう言われ、横たわる。
     紫色の下着は布が少なく、ブラジャーの方には乳輪よりも数センチ大きいだけの三角形がかかっている。ショーツの方も、普通よりは三角形の形が細く、両サイドをリボン結びで留めるヒモタイプだ。
    (少し、変かしら……)
     しかし、案外普通――らしい、はず。
     戦いの旅の中で生きてきたマルティナは、性的な事情には疎い部分があり、装備効果で選んだこの下着は、だからそうおかしくはない――はずと信じていた。。
    「おや、とてもセクシーですね」
     ところが中年そう言われ、頬が一気に熱くなる。
    「そ、そうかしら……」
    「ええ、なかなかいらっしゃいませんよ? こういう下着の方は」
    「なかなかって……」
     羞恥が込み上げながら、さらには不安の感情もせり上がる。ではマルティナの今の下着は、よほど特殊だというのか。
    「とても素晴らしい。よく似合っていらっしゃる」
     中年は特に嫌味もなく、明るく褒め称えてみせながら、手の平にはトロリとしたオイルを垂らし始める。
    「ひやっとしますよ?」
     手の平に溜めたオイルを腹に乗せ、ねっとりとした手つきで広げ始めた。へその周りをぐるぐると回り続けるタッチでしだいに円を広げていき、腰のくびれも掴んで上下に撫でる。中年の手によって、まずは皮膚がしっとりとしたところで、さらにオイルが足されて広げられ、ヌルヌルとした光沢によって腹とくびれはコーティングされていく。
     つま先から太ももにかけても塗り伸ばされた。指先から肩にかけても塗り伸ばされた。施術が進めば進ほど、ぬかるみによる皮膚のパックは広がっていた。
    「うつ伏せでお願いします」
     背中を向け、その瞬間だ。
    「いやはや、Tバックですか」
     中年が感嘆していた。
     まるで物珍しいものを見たかのようだ。
    「意外と、普通だと思ったのだけど……」
    「はははっ、普通ですかね」
    「おかしい、かしら……」
     ヒモでしかないものが、大きな尻の割れ目に飲み込まれ、丸出しと変わらないことになっている。それをまじまじと見られているだろう感覚に、マルティナはしだいに耳を桃色に変え、羞恥の気配を強めていた。
    「ところで、お背中にはなるべく全体的に塗っていきたいので、ホックを外しても構いませんか?」
    「えっ」
    「もちろん前を見せろとは言いません」
    「外すだけよ? 本当に……」
     うつ伏せでいる限り、乳房が見える心配はないのだろうが、背中に触れる指がホックを弄り、外しにかかってくる感覚は、完全な丸裸に近づく気がして落ち着かない。外れたホックは左右にどかされ、ついでのように肩紐も少しずらされ、マルティナの背中は剥き出しとなっていた。
    「このオイルは、先ほどから香っている香との相性が良くてですね。しだいに体が火照るような感じがしてくるかと思います」
     中年に言われてみれば、自分の体温が上がっていることにマルティナは気づく。
    「では伸ばしていきます」
     瓶から直接垂らされて、マルティナの背骨の溝にオイルが溜まる。まるでコップの水が溢れそうで溢れない時のようにして、表面張力のようにぷっくりとした丸みが円を広げ、粘性ある水溜まりが出来上がる。
     そして、手の平が触れ、中年によってオイルは伸ばされる。
    「背中もこうしてまんべんなく、ヌルヌルにしていきますからね?」
     滑りよくスムーズに這い回る手は、肩甲骨や脇の下にまで塗り込んで、皮膚の表面はオイルという名の粘膜に覆われていく。
     ひとしきり塗り伸ばし、マルティナは自分の背中がオイルの光沢にまみれたことを実感する。
    「では背中も済んだところで――」
    「っ!?」
     今度は尻にオイルを垂らされ、マルティナはぎょっとしていた。
     瓶から尻たぶの山頂へと、透明なオイルが円を広げる。大きな大きな膨らみの、山の角度にそってゆっくりと、ナメクジのようにのろのろと、表面を流れていく。
    「お尻の許可は頂いていますからね」
     もう片方の尻たぶにもオイルは垂らされ広がっていく。
    「でも、直接なんて……」
    「大丈夫ですよ。マルティナさんなら」
     中年は優しそうな穏やかな声で言いながら、Tバックの尻に両手を置き、大胆に撫で回してオイルを塗る。尻肉に指を食い込ませ、揉みもする手つきに、マルティナは動揺めいて瞳を揺らす。
    「あの、ちょっと……」
    「大丈夫ですよ」
     何が大丈夫なのかがわからない。
     驚いているあいだにも、尻の表面をくすぐるタッチは続く。流れ落ちたオイルは割れ目に沈み、肛門にまで染みていく。さらに割れ目からも流れ伝い、アソコの布にも吸い込まれた。
    「お尻の筋肉って、太ももに繋がってるでしょう? その先には膝があって、足があります。一カ所が悪くなると、連動しと他の部分も悪くなる。マルティナさんの場合はお尻の筋肉を癒やしてやることがとても重要なんですね」
     解説をしながら、中年は指先で皮膚の表面をくすぐるように何やら探り、ここだというポイントを見つけるたびに深く押し込む。ツボ押しによって刺激を与え、痛んだ部分には癒やし魔法をかけていく。
    「た、確かに、良くなっているみたいね……」
     鍛錬によって己の体を把握して、調子の良し悪しを器用に感じ取れるマルティナである。皮膚の向こうに隠れた筋肉繊維の、目視ではわからない疲労を手で見つけ、その都度癒やす中年の技巧を実感していた。
    (やっぱり、ちゃんとした施術にすぎないの? だったら、我慢した方がいいじゃない……)
     疑う余地がないあまり、何も言えずにマルティナは受け入れる。最初に繰り返された、不快なら申し出て良いという言葉を思い出すが、お尻を触られている気持ちと、この機会にしっかりとケアした方が良いのだろう点で、二つを天秤にかけているあいだにも、お尻はまさぐられ、膨らみのあらゆる角度へ指圧は行われた。
     それは太ももや膝の位置まで及んでいき、お尻へのタッチが過ぎ去ったことへの安心に、マルティナはホッとした息をつく。
     足の裏側まで丁寧に揉み込んで、ツボ押しを行う中年により、砂粒のように細やかな疲労が一つずつ除去されていた。
    (足が軽くなってきたわ)
     しかし、下着姿を見られ、お尻も触られた。
     損なのか特なのか、正直なところわからない。
     そして、だからマルティナは気づいていない。
    
     ――へへっ、何も疑っちゃいないんだなぁ?
    
     うつ伏せで枕に顔を置いているマルティナは、一体どんな邪悪な欲望に満ちた眼差しを向けられているのか、気づく由もない。
     中年の邪悪を知らず、マルティナとしては、どうせここまでされたのだから、いっそ最後の最後まで、全てケアしてもらおうと考え始める。
    「ではちょっとね。次は全身の体重をかけながら、お尻から背中にかけてやっていきます」
    (またお尻……)
    「この際、器具を使用するので、お尻に何か当たっても驚かないようにお願いします」
    「わかったわ」
     しかし、器具とは何だろう。
     中年がベッドに上がり、太ももに馬乗りにかるかのようにして、マルティナの上に座ってくる。次の瞬間には硬い何か尻に乗せられ、器具の正体がわからずにマルティナは頭の中に疑問を浮かべる。
    「どんな器具なのかしら」
     硬い感触なのだが、マルティナはそれに加えて熱っぽい温度を感じる。それも何か皮のようなものに包まれた物体は、果たしてどういうものなのか。
    「魔法道具の一種ですね。マルティナさんのお体は、お香とオイルで施術用の魔力が通りやすくなっていますから、これを擦り付けることで、ますます流れを良くします」
    「まあ、まかせるわ」
    「はい。ではやっていきますね」
     中年が始めた行為は、両手で尻たぶを寄せ上げて、棒を割れ目に挟もうとする行為であった。
    
     ……ぎしっ、
    
     ベッドが揺れる。
     腰を動かす中年の前後運動に伴い、棒の器具もまた前後に動く。
    
     ……ぎしっ、ぎしっ、
    
    (何を、しているの?)
     マルティナには中年の行為がわからない。
     どうもそれは腰の動きに連動して前後している。両手で尻たぶを触っているから、器具を手で持った状態でもないはずだ。
    「これはですね。ベルトに棒状の器具を取り付けていまして、気になるようでしたら後でお見せしましょうか」
    「別にいいわよ。そんな」
    「そうですか?」
     急に器具が離れていき、同時に中年の腰も浮く。太ももに座られていた圧迫感が消え去ると、今度はお尻に何かが降りかかった。
    「また、何かオイルを? 温かいようだけど」
     熱っぽい粘液の固まりがかかっている。左右の尻たぶに感触は散らばって、温度が皮膚に染み込んでくる。
    「そうですよ? オイルです。オイル」
     中年はそう言って、マルティナの尻に『オイル』を塗り伸ばし、肌に浸透させていく。
    「んっ、んんぅ……」
     マルティナはまだ自覚していない。
    「どうしました?」
    「いえ、なんでもないわ」
     疼きを、自覚していない。
    「では続けていきますよ」
     中年も何も知らないように、膝立ち気味の姿勢で体重を使い、背中に圧をかけていく。手の平が押し込まれ、指が埋まり、痛みや圧迫を感じて過ごすばかりの時間がひたすらに流れていく。
     それからだ。
    「ブラジャーを取って頂けますか?」
    「ブラって、ちょっと……」
     さすがにそれはと、マルティナは拒否をしかける。
    「ああ、もちろん胸は見えないように配慮しますよ?」
    「それなら……」
     マルティナはそう答えてしまう。
    「では一度起きて頂いて――」
     中年の指示に従うと、身体を起こして足だけを下ろし、ベッドを椅子代わりに座った姿勢を取ることとなり、その真後ろに中年はつく。まるで背もたれに背中を預けるように、マルティナは中年の肉体に密着しなければならなかった。
    「さて、やっていきますよ」
     こうして、背後からの乳揉みが始まった。
    「あっ、んんっ、んぁ……ふぁ…………」
    「どうしました?」
    「いえ、なんでも……」
     頭がぼんやりとしてくる。どうしてこんなことになっているのだろう。
     判断力の低下をマルティナは自覚していない。
     本当なら許さなかったかもしれない乳揉みにより、乳房は自由に揉みしだかれ、中年の指遣いによって変形している。
    「くひぃ……!」
     乳首への刺激にいたっては、明らかにおかしな声まで出てしまった。
    「大丈夫ですか?」
    「だ、だいじょ――んんぅ……んぁ……あっ、んぅぅぅ…………」
    「乳房もね。肩の筋肉と距離が近いし、胸筋が土台になりますから、戦う体ならケアは重要なんですよ」
     中年は乳首をつまみ、軽やかな加減で転がしていく。
    「あぁぁっ、だっ、めぇ……」
    「だいぶ効いてきましたかねえ?」
    「効いたって……」
    「ああ、もちろんマッサージですよ。終わる頃には肩がいつも以上に軽いですよ?」
    「はふぁっ、あっ、あぁぁぁ……」
     背中が中年に密着して、仰け反りようなどないマルティナは、なおも体を反らそうとしてしまっている。密着の度合いを増し、首まで反らして頭を中年の肩に乗せてしまう。天井に向かった顔から喘ぎを上げ、マルティナ自身の肩はどこかピクピクとしていた。
    「ではまた器具を使います」
     中年の身体が離れていく。
    「あっ、熱い……」
     何か棒状のものがあたってきた。先ほど尻に当てられたものと同じ感触だが、それが一体何なのか、マルティナにはわからない。
     ただ違和感はあった。
     背中に押し当てられ、擦るようにしてくる動きが、まるで腰をくっつけてくるかのようなのだ。身体をゆさゆさと押してくる重心がわかる。ベルトに括り付けた棒状の器具だとは言っていたが、そんなものがあるのだろうか。
     ぷにりとした先端がうなじの近くをくすぐって、肩甲骨をなぞってくる。
    「またオイルを足しますよ」
     棒が離れて、ピュッと、何か温かいものが背中にかかる。それは手の平によって擦り込まれ、肌に染み込んでいくのだった。
     さらにはまたポーズを変えさせられ、マルティナは四つん這いになっていた。それも頭は下にして、顔を枕に埋めながら、猫の背伸びにも似た姿勢を取らされ、お尻をよく目立たせているに違いない自分の有り様に羞恥心が込み上げた。
    「よーく濡れてますねぇ?」
     下腹部を覗き込む中年の視線が気配でわかる。
    「オイルは付いているでしょうけど……」
     ショーツのアソコなだ、あまり見ないで欲しい。
    「いえいえ、もっと別の――ああいえ、なんでもありません。続けましょうか」
     またしても中年はベッドに上がり、お尻の割れ目に棒を当ててきた。それも先端でくにくにとやるような押し付け方で、肛門を攻めてくるのだ。
    「あっ、やぁ……」
     さらには棒の側面を使って尻たぶを撫で回す。
    「はい、かけますよ」
     ピュッ、ピュッと、尻たぶに何かがかかる。マルティナはその正体もわからずに、ただオイルと信じて受け入れている。中年の手ですきなだけ尻を触られ、撫で回されても、何の口答えもしなかった。
    (私、どうして何も言わないのかしら……頭もずっとクラクラして……)
    「仰向けになって下さい」
    「ええ……」
     乳房が見えることを嫌がっていたはずが、とっくにブラジャーはなくなっているのにマルティナは従った。
    「では少し、タオルをかけさせて頂きます」
     中年が用意したタオルは、折り畳まれて顔へとかけられ、マルティナの視界は暗闇に包まれる。何も見えない、ただ音で気配を感じるのみとなり、そんなマルティナの上に中年は跨がってきた。
    「また器具を使いますのでね」
     乳房のあいだに棒が置かれ、中年は挟み始めた。
    「え……」
    「大丈夫ですよ?」
     安心させるような言葉をかけられると、何故だかすんなり納得して、浮かびかけていた疑惑が沈んでしまう。中年の両手に乳房を掴まれ、そして胸を使って棒をしごいていることに、本当は違和感がないでもない。
     だが、マルティナは違和感さえも飲み込んで、ただ身を任せるままにしているのだ。
     跨がる中年の両脚に挟み込まれて、マルティナは腕が動かせない。体重で身動きを封じられながらの腰振りで、オイルの滑りもあって棒はスムーズに前後する。
    「ではまたオイルを」
     ピュッ、ピュッ、と、乳房にも振り撒かれ、手で塗り伸ばされている。
    「んっ、んぁぁぁ……あっ、あぁぁぁ…………」
    「脚を開いて下さい?」
     中年の腰がマルティナを離れる。
    「んっ、こうかしら……」
     マルティナは開脚していた。
     M字の股は中年に弄くられ、すぐにでも布をずらした剥き出しの性器をなぞられる。その刺激にマルティナは悶え、より色気ある声を吐き散らした。
    
    「では器具を挿入します」
    
     アソコに棒の先端が触れ、マルティナは全身を緊張で固めていく。
    (挿入ってまさか……)
     おかしいのでは、もうマッサージではないのでは。
     ……いや。
     あれだけ丁寧に気を使い、不快感があれば申し出ていいとも繰り返した。そんな中年がおかしなことをするはずはない。
     ならば、これもマッサージの一貫だ。
     そうだ、そうに違いない。
    
     ずにゅぅぅぅぅぅ――
    
     棒がワレメの中に押し込まれ、みるみるうちにマルティナの内側へと収まっていく。中年の腰がぶつかり、お互いの下腹部が密着し合ったとわかったところで、急にタオルがとりさられ、マルティナは驚愕していた。
    「え――――――」
     器具などではない。
     挿入されたのは他ならぬ男のペニスだ。
    「え? そ、そんな――あなた何を――――」
    「大丈夫ですよ? こうして内側をほぐし、ツボを突こうとしているだけですから」
    「で、でもこれって……!」
    「はーい。動きますよ?」
     お構いなしに、さもマッサージの一種であるように言いながら、中年はゆっくりと腰を動かし始める。
    「んぁぁぁぁぁ…………」
     マルティナは悶えた。
     中年はのろのろと腰を引き、前進するにも時間をかける。ピストンの一回一回が長々と、それだけにじっくりと味わい尽くされている感覚に全身が疼いてしまう。
    「あっ、あうっ、ふっ、んぅぅ……」
     マルティナはうなされるかのように、しかし快楽に飲まれた顔で悩ましく頭をもぞつかせ、亀頭が奥に届くたび、ピクッと脚や腹を弾ませる。
    「オイルとお香でね? 今のマルティナさんはとても感じやすくなっています。内側から刺激を与え、全身を癒やしますので、是非とも快楽に浸って下さい」
    「そんな……これはっ、あっ、あぁぁ……やぁぁ……」
    「ほら、これもマッサージですから」
     中年の腰使いが少しばかり活発になると、ちゅくり、ちゅくりと、小さな水音が聞こえてくる。
    
     ずるぅぅぅぅぅぅ……
    
     ゆっくりゆっくり、いかにも時間をかけて亀頭が子宮から遠ざかる。
     そして――
    
     ずん!
    
    「あぁっ!」
     勢いよく貫かれ、マルティナは背中を弾ませ喘ぎ散らした。
    「あぁぁ……あふぅ……あっ、あっ、あぁぁぁ……」
    「ああ、いいですよ? マルティナさん、わたしもとてもいい気持ちです」
    「んんんっ、んぁぁ……ああっ、あぁぁぁ……あん、あっ、あぁぁ……」
     マルティナも浸ってしまっていた。
     挿入には目を丸め、抵抗するはずだったのに、中年を押しのけようとする気持ちが本人さえ知らないうちに消えていた。
    「あぁぁ……なにか……! わ、わたし……!」
    「おや、来そうですか? では同時に果てましょう」
    「来るって、なに……あぁぁ……!」
     マルティナは言葉の意味もわからず、ただただ下腹部に何かが集まり、今にも弾け飛びそうな予感だけに見舞われていた。
    
    「あぁぁ――――」
    
     そして、弾けた。
     全身を震わせた勢いでベッドががたりと揺れた後、マルティナの膣内には温かな精液が広がっていた。瞬く間に子宮が満たされ、入りきらない白濁は膣壁と肉棒の隙間を通って、ワレメの外に零れてしまう。
     マルティナは危険日だった。
     しかし、遠慮なく奥に出されたことと、絶頂を味わっての余韻に浸ってぐったりと、マルティナは手足をだらけさせていた。
    
         *
    
     私、どうしてあんな……。
     思い返せば、途中からは明らかにおかしくなって、そして最後には挿入されてしまったわけだ。判断力が低下して、マッサージだと言い切られれば何も言えず、違和感だけは感じながらも施術を受け続けた。
     しかし、不快感があれば申し出て良いと、何度も言ってきたことも事実で、受け入れてしまったのは自分の方ではないかとさえマルティナは悩む。
     だが、何よりの悩みは……。
    「できて、ないかしら」
     腹に出された熱い精。
     戦いの旅は続くというのに、命を宿してしまってはいないかの不安は、マルティナにとって深刻なものだった。
    
    
    


     
     
     


  • 終 マルティナの検問陵辱

    作品一覧

    
    
    
     マルティナは図書館を訪れていた。
     あれから、淫紋に苦しみ続けるマルティナは、定期的にオナニーをしなければやっていけなくなっていた。夢の中で男とまぐわい、目覚めてみればシーツが濡れ、アソコがうずうずと切ないような日が続き、発散して鎮めなければまともにものも考えられない。
     だが、鎮めても鎮めても、淫紋が輝く間隔は短くなっていき、一日に二回以上はしなければ我慢ができないようになっていた。
     仲間達との合流もしたいのに、このままでは合流してもまともな戦力にはなれないだろう。
     マルティナが図書館を訪れ、魔法に関する書物を探して本棚に視線を走らせているのは、淫紋を解く方法を探すためだ。宿に籠もったところで、入り込んできた輩がいる。部屋が安全とは限らない。
     人が少なく、ちょっとした騒ぎも目立つ静かな空間なら、あるいは安全だろうという目算もあり、仲間達の情報を探すのはセーニャに任せ、マルティナは淫紋解除のための情報に集中していた。
     今のマルティナは安物の服を着ていた。
     また汚れることになってはたまらない。
     できるだけ買い換えやすい、安めのものを選んだマルティナは、簡素なボタン留めのシャツを着て、短なスカートを穿いていた。今までの経験から、露出の多い男に目をつけられやすそうな服は避けたかったが、セーニャが見て回ってくれた店の中では、これが一番気軽に買い替えやすいものだったらしい。
     下着はしっかり隠れるが、階段の上り下りの時に気になるスカート丈は、少し走っただけでも中身が見える。
    (あったわ。紋章と魔法の関連書が)
     マルティナはそれらしい本を見つけて、その場でページを開いて読み始める。身体に紋章を刻む種類の魔法についての解説があり、これならと期待したマルティナは、瞬く間に文章の世界に入り込む。
     だから気づいていなかった。
     そもそも、図書館ならば誰も目立った行動は取らないだろうという目算からして、盲点があった。
    
     ジィィィ……。
    
     一人の男がスカートを覗き込んでいた。
     それも、床に両手を突き、四つん這いじみた姿勢で行う覗きは、見るからに目立つ行為である。周りに人がいれば注目されるに決まっているが、覗きにとっては幸いに、今日の図書館は人が少ない。
    (なるほどね)
     マルティナはただひたすら、内容を頭に取り込んでいる。
     集中しているマルティナの後ろで、周りに人がいないからこそできる大胆な覗きは、息を潜めて気配も殺し、実に静かに行われている。誰かがページを捲る音、本棚を行き来する際の靴の音、そういった物音しかない中で、静寂に溶け込んでいる男の行為は、誰かが直接目撃するのでない限り、誰にもバレようがない。
     マルティナ自身が気づけば早いのだが、集中しきっているのだ。
     男は好きなだけ視姦していた。
     マルティナの下着はセーニャに借りたものだ。セーニャにはぴったりでも、マルティナの大きな尻にはサイズが小さい。慣れないうちは締めつけが気になったのもさることながら、巨尻の割れ目に漆黒のショーツは飲み込まれてしまっている。
     フルバックのはずのショーツは、いくらかTに近づいていた。ゴムの部分の、尻たぶにV字にかかる部分には、薔薇を模した飾りつけがなされている。イバラがくねり、赤い花びらも小さく施した、柄付きのゴムが巨尻を柔らかに潰している。ゴムの食い込みによる尻山の凹みは、男の性癖を大いにくすぐっていた。
     男は目を血走らせ、鼻息さえ荒げていた。
     さらには姿勢を変えてスカートをそっと持ち上げ、真正面から尻を眺めた。バレやしないか、今にも振り向いてこないかとスリルに身を浸し、ドキドキとしながら、豊満な尻の景色を目に焼き付けていた。
    (勉強になるけど、いまいち手掛かりが……。でも、少しずつやっていくしかなさそうね)
     まだ、マルティナは気づいていない。
     集中しているせいでもあるが、男もまた十分すぎるほどに気配を殺し、荒いような鼻息もあまり音を立てていない。
    (ん?)
     やっと、何かの気配を感じて振り返る。
    (……気のせいかしら)
     しかし、先を読んだかのように、男は姿を消していた。
     手を引いたわけではない。男は本棚を回り込み、本棚を介した真正面にポジションを取っていた。この辺り一帯の本棚は、木組みのものを背中合わせに並べているが、一段ごとに細い板を貼り付けている。本さえ抜けば向こう側が覗けるもので、男はだからとあるチャンスがないかと心待ちにしているのだ。
    (次の本も見てみましょう)
     マルティナがしゃがんだ。
     これこそが男の待ち望んだチャンスである。体育座りに近い、少しばかり脚を開いたポーズははしたないものだったが、周りに人がいないと思ったマルティナは、つまり油断していた。
     本のあいだに隙間を作り、向こうを覗けば、しゃがみ姿勢のクロッチが見えた。望み通りのものにありつき、男は当然のように視姦して、ハァハァと興奮しきっていた。
     クロッチにはまんべんなくイバラが茂り、トゲと花が散りばめられ、赤と黒の組み合わせからなる大人らしいセクシーさが現れている。
    (これと、これも参考になりそうね)
     やはり、マルティナは気づいていない。
     目的に夢中で向こう側の気配を気にもせず、いかにも無警戒なのは、それだけ図書館の静けさを信用しているからだ。
     男としても、そう読んでの行動である。
     気配にさえ気づかれなければ警戒はされないと、実のところ常習犯である男は学んでいる。過去何度も覗きに成功し、まだ一度もバレたことはない。
     そして、だからこそ気が大きくなりもする。
     マルティナが三冊ほど本を抱え、テーブルへ移動していく後ろ姿を追いかけて、男は大胆にも隣の席に座り込んでいた。
    
         *
    
     男は調書の購入者だった。
     マルティナの顔や名前は知っていて、それどころか武闘大会の準優勝者であることさえ、人伝に聞いて知っている。図書館での覗き常習犯たる彼にとって、お楽しみの空間に獲物の方から来てくれた喜びほど大きいものはない。
     テーブル席へ向かうマルティナを追い、わざわざ隣に座ってみると、ぎょっとした反応こそ見せはするが、気にないように本を開いて読み始める。これだけ静かな空間で、自分自身が騒ぐことを恐れてか、何も言わないようだった。
     何度かチラチラと視線をやり、鬱陶しそうにはしてきたので、どいては欲しいのだろう。
     しかし、マルティナは静かにページを捲り始めた。
     男はそんなマルティナの美麗な横顔を見つめ、美人ぶりを目に刻み、いよいよ太ももに手を伸ばす。いつも覗き見しかしたことのない、バレない行動だけに徹してきた男にとって、未知の冒険を行うスリルで冷や汗さえも吹き出てくる。
     伸ばす手を近づけて、太ももとの距離が縮まるにつれ、心臓の鼓動は早まっていく。今にも胸の中身が破裂するのではないかと恐怖に見舞われ、何度も手を引っ込めようとはしながらも、引きかけた手はやはり近づけていくのだった。
     やがて、ついに手を置いた。
    「っ!」
     ぎょっとした反応で、頭がピクッと弾んでいたが、何故だか何も言って来ない。
     男は非常にホッとしていた。
     思ってもみれば、もしも騒がれたらどうしよう、抵抗されたら怖いといった気持ちを抱いていたはずで、それでも触ってしまうほど、男は欲望に魅入られていた。触れれば爆発するとわかっていながら爆弾に触る心境で、何も起きなかったことに安心した。
     我ながら馬鹿みたいだが、ともかくマルティナの太ももを手で味わう。
     ……いい感触だ。
     何故抵抗しないのだろう?
     マルティナが騒げば、男はたちまち痴漢として確保され――もっとも、魔物に支配されているこの町は、憲兵がまともに機能していない。犯罪者が見逃されることもある実態があればこそ、マルティナも面倒を嫌って騒がずにいるのかもしれない。
     という男の想像は、半分は当たっている。検問で散々な目に遭って、町の中でも陵辱を受けた境遇から、男を犯罪者として突き出しても、かえってマルティナが不利になるような展開になるかもしれないと、本人はそう恐れている。
     だが、他にも理由はあった。
    「……んっ」
    (なんだ? なんか、色っぽい声がしたような)
    「ん、あっ……」
    (やっぱり、感じてる?)
     男は興奮しながらも、調書にあった淫紋のことを思い出す。
     マルティナには淫紋が刻まれており、性的刺激に反応しやすくなっている。少しのタッチでアソコが濡れ、戦慄しきって固まっている反応を、男は完全には掴みかねている。人前で絶頂したり、放尿してしまったトラウマから、まずは動揺してしまい、手で払いのけるような抵抗ができずにいるわけだが、男はそこまでは理解していない。
     ただ、淫紋があるから、この女は簡単に感じる。
     こうなると男は強気になり、恐る恐るとしていた手つきは一変して活発に、スカート越しの太ももを好きなように撫で回す。それどころかスカートに手を入れて、股の隙間まで狙い始めていた。
    「んっ、んぁっ、やめっ……」
    「どうした? 我慢しないと声が出ちゃうぞ?」
    「んんっ」
     マルティナはすぐさま口を押さえ、声を我慢し始めていた。
     守りに入ったマルティナへと、さらに攻めを強める男は、ついにアソコへ指を届かせ弄り始める。
    「んぅぅ……!」
     マルティナは反射的に、ビクっとしたように背中を丸める。
    「気づかれたら怖いぞ?」
     男はクロッチ越しに上下になぞり、指先に愛液を絡め取る。指の表面と生地の表面とで、みるみるうちに滑りは良くなり、上下の愛撫はスムーズなものとなっていた。
    「んんっ、んんっ……」
    「周りに人が少ないから、騒ぎが目立ちやすいって思うかもしれないけど、アンタってマルティナだろ?」
     名前を呼んでみた瞬間、衝撃に瞳が震えていた。
    「俺も調書の写し買ったんだよ」
    「んぅぅ……んんっ、んぅぅ……」
    「俺がこういうことしてるって周りに知れたら、他の奴らも便乗して参加すると思うぜ?」
     不安を煽るような囁きを聞かせてやり、一方で愛撫の手は休めない。
     そのうちにマルティナは男の腕を掴み、押しのけようとしてくるが、こうも今更になって行われるか弱い抵抗では、男の指遣いが止まるはずもない。
    「んっ、んんっ、んぅぅっ、んぅぅ……!」
     マルティナの感じ方は滑稽だった。
     足がやたらに動き回って、床中を踏みつけている。口を必死に塞ぎながら、背中を丸めては伸ばし、丸めてはは伸ばしてくねり動く。男の腕を引っ張ることで、股から引き抜きたいようだが、まるで力が入っていなかった。
    「ほら、イッちまえよ」
     絶頂を期待しながら、男は攻めを続けた。
    
    「んっ! んぅくぅぅぅ……!」
    
     マルティナはテーブルに額を擦らんばかりに背中を丸め、太ももを内側に引き締める。股で男の手を締め付けながら、ビクビクと足腰を痙攣させ、そして男の指先にはおびただしい愛液の温度が広がっていた。
     だが、それだけではなかった。
    「おい、お前……」
     男は絶句していた。
     マルティナは放尿していたのだ。自らの下着を汚し、スカートさえも濡らして、男の手などお構いなしに、椅子に尿を広げている。
    「こんな…………」
     悲しんでいるのか、悔やんでいるのかもわからない、消えてしまいたくて仕方のなさそうな表情で、マルティナは男から顔を背けた。
    「あーあー。お前、いくつだ?」
    「あ、あなたが……」
    「お漏らしした上に言い訳か? みっともないな」
    「うぅ…………」
     何も言い返せないマルティナは、男から背けたままの顔で俯く。
    「こりゃもう、余計に注目を集めるわけにはいかないんじゃないか?」
     男はさらに愛撫を続けようとした。
     マルティナはもう自分の獲物だ。このままとことん楽しんで、存分に嬲り尽くしてやる。
    
         *
    
     マルティナは立ち上がり、男から逃げ出した。
     このままではどこまでされるかわからない。最後までされるかもしれない恐怖と、絶頂によって淫紋の効果が少しは衰えたうちに逃げたい思いで、小走りで駆けていくものの、本棚のあいだに入ってから、足がもつれて転んでしまう。
     うつ伏せとなったマルティナへと、男は早足で迫ってくる。
    「こ、来ないでっ」
     小声しか出せない。先ほど男が言ったように、騒ぎを聞きつけた他の人間達が陵辱に参加してはこないかと恐ろしく、とてもでないが大声は出せなかった。
     四つん這いとなり、みっともなく逃げようとするマルティナだが、すぐさま追いついてくる男に腰を掴まれ捕らわれる。
    「くう……!」
     淫紋が改めて働き、ただ腰を掴まれただけで脚が震えた。
    「神聖な図書館でお漏らししたんだもんなぁ?」
     男の言葉が突き刺さる。
     痴漢さえされなければ、そもそも放尿などしなかったが、そんな理屈で割り切りケロッとしていられるような事柄ではない。言葉ではっきりと責められれば、耳が赤く染まるほどには大きな恥なのだった。
    「おら」
     尻に股間が押し当てられ、硬い逸物の感触が如実にわかる。男性器を意識させられ、それが当たっている不快感と、挿入されかねない予感に凍りつく。
    「デカい尻しやがって、犯してくれっつってるようなもんじゃねえか」
     男にスカートを捲り上げられ、尻を見られる羞恥に赤らむ。
     セーニャからの借り物で、サイズが合わずに布が半分近くまで割れ目に食い込み、コーン状の細長い三角形と化すばかりか、ゴムの食い込みで尻山の丸みが凹み、たっぷりとはみ出たかのようである。
     男はそんな黒いショーツをずらし、ずっぷりと無遠慮に挿入した。
    「あぁぁぁ……!」
    「気をつけろよ? あんま声出すと、俺だけじゃ済まなくなるぜ?」
     男の言葉を聞くに、マルティナは口を押さえた。
    「ん! ん! ん! ん! ん! ん!」
     マルティナは声を必死に堪えながら、男のピストンがもたらす快楽に耐えていた。好きなように腰を打ちつけられ、四つん這いの上半身を前後に揺らされ続ける屈辱に、涙さえ滲ませていた。
    「ん! ん! ん! ん! ん! ん!」
     すぐに両手を突いていられなくなり、床に突っ伏してしまうマルティナは、さらに両足を引っ張られ、うつ伏せに押し潰されてしまっていた。
    「エロいもん穿きやがって!」
     尻に跨がるような、そして背中に抱きつかんばかりの体勢となって、男はひたすら腰を振り、マルティナの膣を抉り抜く。
    「んっ! んっ! んんん!」
     マルティナはイっていた。頭を真っ白にしながら、愛液を滝のように垂れ流し、二度目の放尿まで行う。太ももを伝った滝から愛液混じりの円は広がり、男のズボンまでもが汚されていた。
    「おい、なにしてくれてるんだ?」
     ずん! と、男は腰を打ちつける。
    「んんんん!」
     マルティナは大いに仰け反った。
     体中が淫紋の力に満たされ、イったばかりにも関わらず、またしても絶頂しそうになっている。男に腰を振られれば振られるほど、快感に全てを押し流され、もうまともにものも考えられなくなっていく。
    「んんっ! んっ! んんん! ん、おっ、あっ!」
     意識さえ朦朧として、それでも塞ぎ続けている手の中から、おかしな喘ぎ声が漏れ続けた。
    
         *
    
     マルティナは思い出す。
    「こちらをどうぞ」
     前日の晩。
     売られていた調書の存在や町の人からの情報で、マルティナの境遇を知ってしまったセーニャは、尿や精液に汚れた衣服に代わり、自分の下着を何着か貸してくれたのだ。
     そして、着替えの時。
     マルティナは三着ほどベッドに並べ、どれにしようかと選んだのだ。
     薄桃色の布をベースに、イチゴをヘタな種まで実物に似せたプリントを施し、いくつも散りばめた柄がある。黒とグレーのチェック模様で、ショーツとブラジャーの共にフロントリボンを施したものがある。
     そして、黒色布地に薔薇を飾った大人らしい柄に惹かれて、マルティナはそれを選んだのだ。
    「ありがとう。セーニャ」
     感謝の念を抱きながら、マルティナは黒色のブラジャーを身につけていた。背中の後ろでホックをかけ、胸のきつさでサイズの違いを感じながらも、せっかくの厚意に対して贅沢は言えない。
     ショーツを穿く時、後ろ側の布は割れ目に食い込んできた。尻山がゴムに潰され、ブラジャーよりもさらにきついと感じたが、他に下着がないので仕方がない。自分のお尻がゴムをヨレヨレに伸ばしてしまったらどうしようと、不安もありながら着替えを済ませ、次の朝から図書館に出かけたわけだった。
     そして、見知らぬ男が隣に座ってきた時、ぞっとした。
     気にしないように本を読み、いつまでもどかないようなら自分が移動しようかと思っていたら、急に太ももを触ってきたのだ。淫紋の効果を思うと、ちょっとした愛撫だけでも自分がどうなってしまうかわからず、まずは動揺してしまった。
     静かに過ごすべき図書館で、あろうことかアソコまでも触られて、名前さえ知らない相手のごつごつとした指の不快感に耐えるうち、すぐさま気持ちよくなっていた。下手に騒げば痴漢されている場面が他の利用者に知れ渡るかのように思ってしまい、必死に声を抑えてしまった。
     一体、どこでどうしていれば、こうならずに済んだのだろう。
    
     マルティナは拘留されていた。
    
     鉄格子の内側で、図書館の椅子を汚した罪で捕らわれたのは、それから男がマルティナを司書に突き出したためである。散々犯し尽くした上、射精でショーツを汚した挙げ句の告発に、マルティナも男が痴漢や強姦をしたと訴えたが、男の主張だけが採用され、憲兵も聞く耳を持たなかった。
    「……ごめんなさい」
     放尿罪、だそうだ。
     格好がつかないにもほどがある。
    「本当に、ごめんなさい。巻き込んだし、それにどんな顔をしたらいいかも……」
     固い石の床にしゃがみ込み、見るからに鬱々とした顔でマルティナは落ち込んでいた。いや、落ち込むなどという生易しいものではなく、いっそうのこと死にたいほどの感情に沈みきっていた。
    「いいえ、わたくしなら大丈夫です」
     隣にはセーニャもいた。
     旅の仲間は同罪らしい。
     セーニャ自身は何もしていないというのに、ただマルティナの連れというだけで、マルティナの罪に巻き込まれてしまったのだ。
    「でも……」
    「マルティナさま。心を強く持って下さい。魔物の支配のせいで、この町では悪い人間や自分勝手な人ばかりが大きな顔をしているのです。負けてはいけません」
    「……そうね。そうかもしれないわね」
     だが、セーニャに借りた下着を放尿で汚したのだ。買ってもらった服も汚れてしまい、着替えさせてもらっていないマルティナは、臭いだってあるだろう。
    「それに、いい知らせがありますわ」
     気にも留めず、セーニャは優しい言葉をかけてくれていた。
    「いい知らせ?」
    「はい。勇者さまの行き先が、町の名前までわかりました」
    「本当に!?」
     その瞬間、マルティナの目が輝いた。
    「本当です。ですから、ここを出たら勇者さまの元へ行きましょう」
    「ええ、そうね。ありがとうセーニャ、少し勇気が出たわ」
     曇りきっていたマルティナは、表情を晴らしつつあった。
     その時だ。
    
    「マルティナ、お仕置きの時間だ」
    
     一人の看守が兵士を引き連れ、二人の鉄格子の前に姿を現していた。
    「それを受けたら、ここを出られるのかしら」
     マルティナは立ち上がる。
    「そうだぞ? お漏らし女」
    「……っ」
     立ち向かうかのような姿勢を見せた途端、看守の返してきた言葉に、マルティナは歯を噛み締めていた。
    「二人ともに受けてもらう」
    「二人って、そもそもセーニャは関係ないはずよ!」
    「関係なくても旅の仲間なら同罪、ここではそうなってるのさ」
    「……滅茶苦茶ね」
     検問や衛兵がまともではないのだから、監獄がまともなはずもない。出られるだけマシとでも思うしかないのだろうか。
    「大丈夫ですわ。わたくしも、共にお仕置きを受けましょう」
    「セーニャ……」
    「マルティナさま、乗り越えましょう」
     検問では泣きそうにさえなっていたセーニャが、強い瞳でマルティナを励ましてくる。ならば乗り越えなくてはと、マルティナも心を強く持とうと決意した。
    
         *
    
     ぺん!
    
     まさしく、お仕置きだった。
    
     ぺん! ぺん!
     ぺん! ぺん!
    
     マルティナが、セーニャが、それぞれの男にお尻を叩かれていた。男が床に膝を立て、二人はその脚に腹を乗せ、四つん這いに近い姿勢でスカートを捲り上げられている。
     マルティナの黒いショーツは、尿や愛液の香りを残したまま、まだアソコにはたっぷりと湿り気もある状態だ。染み込んだ水分の侵食が尻にも進み、布が皮膚にぴったりと貼り付いてしまっている。
    
     ぺん! ぺん! ぺん!
    
     そんな巨尻は、ゴムからはみ出た肉を振動させていた。
    「わ、わたし……こんな辱めを受けるだなんて……」
     セーニャのスカートも捲られていた。
    
     ぺん! ぺん! ぺん!
    
     緑色を羽織った形の、白と緑からなるワンピースは、足首まで隠さんばかりの長い丈のスカートであったが、それが無情にも全て捲りきられている。その内側にあった赤いショーツの上から、セーニャの尻はペンペンと叩かれているのだ。
    「せ、セーニャ……巻き込んでしまって……」
    「いいえ、ここは耐えましょう。わたしも頑張りますから、マルティナさまも」
    「そうだったわね」
     励まし合う言葉の合間にも、ペン! ペン! と、打音は鳴り続けていた。
     セーニャのショーツは赤の布地に黒を足し、黒い薔薇を刻んだものだ。マルティナとは色違いの、やはりゴムの部分がイバラを模したデザインで、クロッチ周りの布にもイバラとトゲは伸びている。そんなイバラのあいだから、黒い薔薇がいくつも咲いているのだった。
    
     ぺん! ぺん!
     ぺん! ぺん!
    
     二人は交互に叩かれていた。
     いつしか男同士でリズムを取り、マルティナが、セーニャが、二人の尻はリズミカルに打ち鳴らされ、楽器か玩具の感覚で遊ばれていた。
    (やだ、わたし……)
     セーニャの身体はしだいに反応してしまい、ほのかな湿り気がショーツのアソコに浮かびつつあった。
    「んっ、くっ、んぅっ、んぅぅぅ…………」
     淫紋のあるマルティナに至っては、とっくにびしょ濡れになっていた。まだ乾ききっていなかったクロッチが、新しい水分を吸い込んで、内股のあたりまでしっとりと、愛液の気配を広げている。
    
     ぺん! ぺん!
     ぺん! ぺん!
    
     やがて、マルティナは大きく背中を反らしながら、全身をプルプルと震わせていた。足腰を硬直させ、ショーツに滲む愛液の量が見るからに増えていた。
    「こいつ尻叩かれてイキやがったぜ」
     マルティナの男がケラケラ笑う。
    「おやおや、アンタのお仲間は随分とはしたないなぁ?」
     セーニャの尻を叩く男は、そんな風にマルティナを蔑んでみせていた。
    「マルティナさまを悪く言わないで……」
    「うるせぇぞ?」
    
     ぺん! ぺん!
     ぺん! ぺん!
    
     セーニャの言葉など聞く耳を持たず、男は尻叩きを繰り返す。
    「気をつけろよ? ここで漏らしたら、また放尿罪にしてやるからよ」
    「はははっ、だってよ? セーニャさん。仲間のせいでアンタの刑期が何日か延びるかもしれないぜ?」
    
     ぺん! ぺん!
     ぺん! ぺん!
    
     屈辱的な言葉を聞かせながら、男達は叩き続ける。
    
     ぺん! ぺん!
     ぺん! ぺん!
    
     それをセーニャとマルティナの二人は、ただただ耐え忍んでいるしかなかった。
     そして、最後にはショーツの没収を言い渡された。
     軽罰と罰金によって釈放するが、高額なゴールドを支払う代わりに、脱ぎたてのショーツを手渡すことで許してやるという、実に理不尽な条件で、二人は脱ぐ選択を取らざるを得ないのだった。
    
         *
    
     検問所。
     そこでは金髪憲兵が腕を組み、長身憲兵と巨漢憲兵の二人を左右に従えていた。
    「悪いなぁ?」
     金髪憲兵は実に嬉しそうにニヤついていた。
    「規則ってやつでな。前科持ちを町から出すにもチェックがいるのさ」
     いやらしい顔で書類を片手に、これみよがしに読んでみせている。きっと牢屋でも調書は作られ、その内容が三人の手にも渡っているのかもしれない。
    「マルティナは放尿罪。セーニャもその罪に巻き込まれ、二人揃ってお尻ペンペンされてきたってわけか。笑えるなぁ? 片方はそれでイったんだってな」
     わざとらしく大声で内容を声に出し、マルティナとセーニャの二人に聞かせてくる。
    「……そうよ。悪い?」
    「わたしたちはこのような仕打ちには屈しません」
     だが、二人は強気であった。
     セーニャはマルティナを支えるため、マルティナはセーニャに励まされ、心を強く保とうとしている二人は、これを試練として乗り越えようとしているのだ。
    「やけに勇ましいが、滑稽だよなあ? そんなパンツ見せながらよォ」
     と、金髪憲兵はせせ笑う。
     二人はスカートをたくし上げていた。
     マルティナは安物のスカートを、セーニャはワンピースのロングスカートを、それぞれショーツが見えるように持ち上げて、今日の下着を晒している。
     そういう目的だとわかっていながら、従わなければ門を開いてもらえない。そうしなければ町を出られないがため、二人は屈辱を噛み締めて、下着を見せているのだった。
     マルティナの下着は青だった。
     深海を思わせる暗い色から、太陽が海面を照らした明るさへの、グラデーションがかかった布に、星を散りばめたような輝きが貼り付けられている。キラキラとしたショーツは、これもセーニャからの借り物で、お尻のサイズが合っていない。今は前しか見せていないが、後ろ側は肉がはみ出ているはずだ。
     セーニャの下着は紫だった。
     パープルの生地を使い、腰と足のゴムの部分には黒を使った色合いで、薔薇の刺繍を刻んでセクシーに仕上がっている。クロッチに咲く大きな一輪は、紫の上にさらに紫を縫い付けて、手縫いで地道に仕上げた一品だ。
    「なかなか大人っぽい」
    「いいねぇ?」
     長身憲兵と巨漢憲兵は、それぞれのショーツを目で楽しむ。
    「お前ら、調べてやれ」
     金髪憲兵が命じる。
    「なら、こっちは貰おうかな」
    「へへっ、俺はセーニャちゃん」
     二人の憲兵はニヤニヤと獲物を品定めして、それぞれの好きな方に向かって行く。長身憲兵はマルティナの背後に回り込み、巨漢憲兵もセーニャの背中に抱きついた。後ろから胸を揉み、体中をまさぐり回すタッチは、彼らに言わせればボディチェックなのだ。
    「あっ、くぅ!」
     淫紋が働くマルティナは、いとも簡単に喘いでしまう。
    「そっちは感じやすいみたいだねぇ?」
     セーニャをまさぐっている巨漢憲兵は、羨む眼差しでマルティナの方を眺めつつ、股間を尻に押しつける。やがて右手がアソコへ行き、左手で乳揉みをしながらの、ワレメへの愛撫が始まった。
    「んぅ……んっ、んぅぅ…………」
     セーニャの声は控え目だ。
    「んんんぅ! んっ、やめっ、あぁ……!」
     対するマルティナは、唾が飛びそうなほどに大きな口を開いている。存分に喘ぎ散らして髪も振り乱している有様は、淫紋のないセーニャとは対照的な感じようだ。
    「そうそう。言い忘れていたが、前科者には通行料の仕組みもあってな。一人あたり十万ゴールドになる」
    「じゅっ、十万って――あぁっ、あうううっ…………」
     法外な金額を示され、金髪憲兵を睨もうとするマルティナだが、ショーツの中にゴツゴツとした手が入り、自分自身の喘ぎ声が言葉を遮ってしまっていた。
    「さ、最低です! んっ、んぅ……!」
     セーニャも声を荒らげる※、やはり感じてきてしまい、巨漢憲兵の指先で声を淫らにしているのだった。
    「マルティナぁ、アンタならもうわかってんだろ? 払わずに済む方法が」
    「くっ……」
    「どうするよ。どうにかして、二人合わせて二十万ゴールドを稼いでくるか、今すぐに別の方法で払って町を出るか」
     そこに選択の余地などない。
     セーニャが手に入れた情報は、日数が経てば経つほど古くなり、せっかく滞在中の町の名前がわかっていても、辿り着く頃には別の場所へ移動してしまっているだろう。
     しかし、マルティナにとって、自分一人だけの決断では済まない。
     一体セーニャはどう思うのか、その表情を横目に伺った。
    「……か、構いません」
     セーニャはたどたどしく、本当は抵抗感が大きくてたまらない様子で、それでも毅然とした眼差しから言い切っていた。
    「セーニャ……」
    「本当は嫌です。物凄く嫌ですが、わたしも耐えてみせます。ですから、わたしはマルティナさまの決断に従います」
     強い意志の宿った目がマルティナを向く。
    「……すぐに出ましょう」
     マルティナが答えた瞬間だ。
    「決まりだな。お前ら、ヤっていいぞ?」
     金髪憲兵はすぐに許可を出していた。
    「おら、壁に手を突け!」
    「セーニャもだ!」
     二人の憲兵は乱暴に背中を突き飛ばし、荒っぽく壁際に押しやった。
     マルティナとセーニャは覚悟を決めた顔をして、けれど最悪の試練に耐えなくてはならない悲痛の思いで、それぞれ壁に両手をつく。尻を突き出したポーズを取るなり、スカートは捲り上げられ、すぐさまショーツも引き下げられた。
     男達がズボンを脱ぐ。
     ベルトが外れ、チャックが下がっていく音を、二人はただ黙って聞いている。これから犯してもらうため――いや、通行料を払うため、静かに大人しくしているのだ。
     長身憲兵の亀頭がマルティナのワレメに触れる。
     セーニャのアソコにも巨漢憲兵の肉棒が当たり、二人してピクっと、腰で驚くような反応を見せていた。
     そして、二人の憲兵は挿入した。
    「あぁぁぁ……! あっ、んんぅぅ……!」
     マルティナは大きく喘ぐ。
    「やっ、そんな……あぁ……あっ、んぅ…………!」
     セーニャはもう少し苦悶しながら、悲しげな顔で答えていた。
    「お? こっちは処女だ!」
     巨漢憲兵は大いに喜びながら、さっそくのように腰を振り、セーニャのナカを味わい始める。
    「マジか。そいつは勿体ないことしたぜ」
    「ま、後で変わってやるって」
    「一度入ったらもう中古だろうがよォ」
    「おおっと、それもそうか」
     二人の憲兵はそんな談笑を交わしながら、いかにも楽しそうなピストンで膣を抉って、長身の方はマルティナに下品なまでの喘ぎ声を吐かせている。腹部に輝く淫紋で、イキやすくなっているせいもあり、簡単に愛液が滴っていた。
     初めてのセーニャは感度が低いが、その代わり太いものを出し入れされる苦しさで、悩ましく堪える声を漏らしていた。
    「くっ、くふぅ…………んんんぅぅぅぅ…………んっ、んうぅ…………」
     耐えるセーニャの背中を見下ろしながら、巨漢憲兵は腰を大胆に打ちつける。
    「へへっ、最高だなぁ」
     長身憲兵は片手でポニーテールの髪を掴んで腰を振り、小刻みなピストンで尻をリズミカルに振動させる。
    「俺、そろそろ」
    「おい、ナカに出すなよ?」
    「わかってるって」
     二人の憲兵は示し合わせたように肉棒を引き抜いて、それぞれの背中に白濁を振りまいた。セーニャの金髪に染み込んで、マルティナのポニーテールにも付着して、背中がまんべんなく汚れていた。
     そして二人は女を取り替え、今度は長身がセーニャに挿入して、巨漢がマルティナの膣を楽しむ。
    「あぁぁぁ! イク! イクぅぅぅぅ!」
    「あっ、ふぁ……く、くるしいです……お願いしますっ、少し……ゆっくり……」
     出て来る声は、あまりにも対照的だ。
     セーニャの股には破瓜の血が滴っているのに対し、マルティナは愛液が膝にまで伝っている。ポタポタと雫が立て、床に何滴もの染みまで作り始めている。
    「おい二人とも! 最後は俺もヤるんだからよ。中出しは絶対するなよ?」
     金髪憲兵が釘を刺す。
     だからか、二度目の射精の直前も、二人の憲兵は素早く肉棒を引き抜いて、改めて背中に振りまいていた。衣服に染み込み、髪にも染み込み、ぐったりと座り込んでしまうセーニャの横で、イキ果てたマルティナは頬を蒸気させた火照った顔で膝を突き、まだアソコが切ないような、物足りないような顔をしているのだった。
    
         *
    
     最後に金髪憲兵が二人を楽しむ時、マルティナとセーニャはテーブルの上に並べられ、まるで商品のように陳列されていた。股を大きく開くポーズを命じられ、恥じらいながらもアソコを丸出しにする二人は、片膝にショーツのかかった状態で、一体どちらを先にやろうかと楽しみそうに時間をかけて迷う金髪憲兵の肉棒をただただ待ち続けるしかない。
    「決めた。セーニャからだ」
    「あぁぁ……!」
     金髪憲兵はセーニャの膣に肉棒を押し込んで、さっそくピストンを開始した。
    「あっ、ふぅ…………んっ、くぅぅぅ…………」
     脂汗をかくセーニャの隣で、マルティナはいかにも何かを言いたげに、実に不満そうに金髪憲兵のことを睨んでいる。
    「どうした? 早く欲しいか?」
    「違うわ。セーニャは初めてなのよ? せめて早めに済ませて、あとは私にしなさい」
     無論、マルティナとしては仲間を庇うための発言だ。
    「へえ? そんなにチンポが恋しいか? ヤり足りないってか?」
     憲兵の側に、マルティナの意思をそのままに受け取る義理はない。自分勝手に解釈して、セックスがしたくてたまらない女というレッテルを目で貼り付けるだけだった。
    「ま、待ってろ。こいつに中出ししたらお前にもくれてやる」
    「な、中って!」
     セーニャが驚愕する。
    「嫌なら稼いでからもう一度ここに来るか? せっかくここまでしたのになァ?」
     今まで耐えてきたことが無駄になる展開をチラつかされ、黙るしかないマルティナは、孕まされるかもしれない恐怖にただただ怯えながら、全てが過ぎ去るまでを静かに待ち続けることしかできなかった。
    「おら!」
     ドクドクと熱い白濁が放たれて、それはセーニャの体内に浸透していく。
    「あぁ……本当に…………」
    「あなたって人は!」
     マルティナは憤るが、次はお前だとばかりに肉棒をアソコに突きつけられると、快楽と絶頂の予感にマルティナは直ちに固まる。
    「あぁぁぁ……!」
     マルティナは仰け反りながら喘ぎ散らした。
    「あぁぁ! あっ! あっ! あん! あん! あぁん! あん!」
     ピストンのたびに背中が浮いては沈み、浮いては沈み、そんな反応がために、まるで背骨を使ってテーブルを叩き続けているかのようである。
     やがて、マルティナが絶頂すると同時に解き放ち、こちらの子宮の中にも精液が溢れかえった。
     肉棒を引き抜く。
     金髪憲兵が離れてみると、そこに広がる光景は、二人のM字開脚の女が自分のアソコから白濁をこぼし、放心した目が虚ろな表情を浮かべるものだった。
    
         *
    
     そして、二人は町を去って行く。
     勇者達一行の足取りを追い、今度こそ合流できる希望を抱きつつ、腹に出されたために妊娠したかもしれない、そんな深刻な不安を抱えていた。
     それだけではない。
    
     二人とも、『ひもの水着』を着ていた。
    
     元の衣服も、下着も、通行料の名の下に取り上げられ、代わりに別の衣服を与えられはしたものの、こんな紐状のものを着ただけの、裸同然の格好で放り出されたのだ。上は乳首しか隠しておらず、ショーツの方もヒモが前後のワレメに食い込み、アソコの肉貝も、お尻も丸見えだ。
     旅の資金、武器、道具。
     それらを没収しないだけでもありがたいと思え、という最低の言い分の元に、二人は自分達の行く末をあらゆる形で案じていた。
     すれ違う旅人には、一体どんな目で見られるのか。町に着いたら、もちろん新しい服を調達したいが、それまではこの格好で歩き回っていなければならないのだ。それに、旅の途中で通る予定の町で、またしても検問があったりしたら、こんな格好でやって来た変質者をまともに通してもらえるかもわからない。
     いや、もしまた、あの町のような最低な検問だったら、再び陵辱されるかもしれない。
     そんな暗い未来を想像して、不安を抱えながらでも、マルティナとセーニャは旅に足を進めていく。
     全ては勇者との合流を果たすため――。
    
    
    


     
     
     


  • after マルティナの検問陵辱

    作品一覧

    
    
    
     ようやく手に入れた手掛かりがあった。
    「そういえば、旅の途中ではぐれた仲間を探してるって女の子に会ったよ。色んな仲間の特徴を言われて、ちょうどアンタみたいな黒髪で長いポニーテールって聞いた時には、この町のことを教えたっけな。たしか、名前はセーニャとか言ったか」
     恥辱の検問を行き来して、やっと掴んだ手掛かりにマルティナは町を出る。馬車や旅人が往来する長い長い道のりも、町を離れれば離れるほど、危険な魔物の数は増えていく。
     せっかく綺麗にした服も、戦闘で汚れと臭いが気になり始め、森に着いたマルティナは木陰を見つけてメダ女の制服へと着替えていた。
     そして、足腰を休めて旅へ戻り、木漏れ日に照らし出された固い土の道を行く。何十年もかけて、何千何万という旅人や行商人によって踏み固められてきたこの道は、馬車が通るにも不自由ないほど幅は広く、しかし枝がしっかり伸びているせいか、緑が天井を成している。
     道のりの中、森の中からまたしても魔物が飛び出し、マルティナは装備した槍を振る。刃によって貫いて、見事倒してみせた時だった。
    
    「マルティナさま?」
    
     おしとやかな声がかかってきて、マルティナは目を丸めた。
    「セーニャ?」
     声の主に目を合わせた途端であった。
    「マルティナさま! よかった! ご無事でなによりですわ!」
     セーニャは小走りで駆け寄って、ようやく会えて仲間の顔が懐かしいように覗き込む。
    「あなたも無事みたいね」
    「ええ、どうにか」
    「それに、お揃いみたい」
     マルティナがお互いの衣服について触れた時、セーニャは少しだけ赤らんでいた。
    「……そのぉ……少し臭ってきましたので、綺麗な服に着替えましたの」
     セーニャも制服だった。
     揃って同じものを着ていることに苦笑し合い、二人は今までの旅路について語り合う。離れ離れになってから、一体どう過ごしてきたか。どうやってここまでたどり着いたか。
    「そうですわ。この先の町に、勇者さまがいらっしゃるかもしれません」
    「なんですって?」
    「きっと、おりますわ。マルティナさまの情報を聞いてから、ここまで来る途中、何人かの旅人とすれ違いましたの」
    「それで、聞いたってわけ?」
    「はい。勇者さまらしき人を見た、おそらくあの町にいた、間違いないだろう、と」
     吉報だった。
     マルティナがいくら探しても見つからなかったのは、町の広さもあるだろう。情報が間違っていたか、古くなったかしたのだろうと、諦めの念さえ沸いた。
     しかし、セーニャの情報でもあの町を示しているなら、きっと間違いない。たとえ既に立ち去った後でも、いたことさえ確かなら、行き先を突き止めて追いかけたい。
    「そうね。見つかるといいけど……」
     ただ喜ぶばかりではいられない。
     またあの町に入るには、恥辱の検問を受ける必要がある。最後には挿入までされた悪夢を思い出し、マルティナは身震いした。
    「どうなさったのです? 嬉しくはないのですか?」
    「まさか、手掛かりはよかったけど、あの町はね……」
     マルティナは検問の酷さを伝えた。
     いや、全ては言えない。
     犯されたこと、失禁してしまったこと、口が裂けても言えない過去はぼかして、少なくともスカートを上げさせられたり、服の中身を確かめられたり、いやらしくて辛い検問があるとは教え、するとセーニャは青くなっていく。
    「町に入るのは、やめておく?」
    「いいえ、そうはいきませんわ。勇者さまと合流できる可能性があるのなら、行くしかありません」
    「わかったわ。覚悟していきましょう」
     本当はどこまでされるかわからない、ひょっとすればセーニャまで犯されるかも知れない事実を伏せるのは、やはり後ろめたいことだった。
    「もし……」
     マルティナは言う。
    「もし、さっき話した以上の、もっと辛くて恥ずかしい目に遭うとしても、行くかしら」
    「当然です」
     きっぱりと答えるセーニャ。
     あの体験を全て洗いざらい吐いたとしても、答えは同じなのだろうか。
     やはり後ろめたいままに、マルティナはセーニャと共にあの町へ向かう。
     
         *
     
     町の出入り口となる石造りのアーチには常に門番が控え、旅人を必ず検問部屋に案内する。
     二人もまた検問室を訪れていた。
    「さすがにもう来ないと思ったぜ? しかも綺麗な連れまでいるとはな」
     金髪憲兵の顔を見るなり、マルティナは身構えた。
    「……うっ」
     いやらしい目を向けられ、セーニャも引き攣っていた。
    「聞きたいんだけど」
    「おう、なんだ?」
    「長期滞在はできないのかしら」
    「支払いしだいでは日数を増やしてもいい。何日伸ばせるかはアンタらしだいだ」
    「わかったわ。ひとまず、始めて頂戴」
     手順は前と変わらない。
     テーブルに持ち物を並べて行き、武器や薬草の数が調書に書き込まれる。三人の憲兵のうち、誰が書くかはあまり決まっていない様子で、今回は長身憲兵が物品を調べ、巨漢憲兵が書き込みにあたっていた。
     そのあいだ、金髪憲兵がボディチェックを執り行う。
    「さーて、アンタはセーニャとかいったか」
    「……はい」
    「ま、じっくり調べてやる。町に入りたいなら、せいぜい我慢することだ」
    「わかっていますわ。始めて下さい」
     セーニャも、マルティナも、制服姿で並び立ち、後頭部に指を絡ませ両手を組む。
     最初はまだ、純粋な検査の手つきで、衣服の上からポンポンと叩いていく。腰周りから脇下へと、肩の周りに背中側、まともなボディチェックに見えたのも束の間、太ももを触るころにはいやらしい手つきに変わっていた。
    「いい尻だな。ええ? セーニャちゃんよ」
     金髪憲兵はスカート越しの尻を撫で、カーブに沿って手の平は上下に動く。手つきに応じてスカートの布も上下にずれ動き、布地を摩擦するスリスリという音が聞こえた。
     お尻だけでもセーニャは唇を強く噛み締め、真正面から胸を揉まれる頃には、いつ泣き出すかもわからない涙目になっていた。
     マルティナは慣れていた。
     不快な気持ちには違いないまでも、犯されてなおここに来ただけの精神力で、どこを触られようともじっと堪える。同じようや手つきで尻をやられ、真正面から胸を揉まれても、静かに睨み返していた。
    「ようし」
    「終わりですか?」
     セーニャは解放されて安心のような、やっと終わった明るい声を上げていた。
    「なに言ってんだ? パンツをまだ見せてもらってないだろ?」
    「えっ」
     絶望したような、引き攣ったような、頬も顎も震えた表情で、カクカクとした動きでセーニャはマルティナに視線を向けた。
    「ここ、そういうところなの」
    「……そ、そうなのですね?」
     今にも泣きそうな顔をしていて、マルティナは心を痛める。
    「おら、わかったら早く捲れ」
     やるしかない。
     渋々の思いでマルティナはスカート丈を握り、それを見たセーニャも、実に悲しげに恥ずかしそうに持ち上げる。
     セーニャのショーツは白銀だった。
     一見、純白が輝いて見えながら、まるで光る砂でも散りばめたようにキラキラとした輝きで飾られて、生地全体も滑らかな光沢を帯びている。白ではない、銀色の上質なショーツであることが見て取れた。
     マルティナのショーツはグレーだった。
     動きやすさを重視した通気性の良い材質で、ゴムの部分は黒色となっている。よく見れば横に縞々模様が入っており、濃いグレーと薄いグレーによって柄付けが成されている。
    「どこで買った?」
     それはマルティナにとって、既に何度も聞かれた想定済みの質問だ。
    「どこって……」
     初めてのセーニャには、予想もしないセクハラだろう。
    「この町の中で、出る前に買ったものよ。汗が乾きやすいって聞いたし、材質的も履き心地が良くて気に入っているわ」
     赤らみながらも答えるマルティナに、セーニャは横でぎょっとしている。
     しかし、答えるのが普通なのだと学んだように、彼女もまた答え始めた。
    「魔除けの魔法がかかっていると聞き、魔物との戦いを減らすために買いました。キラキラとしていて、とても綺麗だと思いますので、店でこれを見た時から欲しくなりましたの」
     セーニャはマルティナ以上に羞恥していた。
     明らかに頬が力んだ表情で、唇も震えている。まぶたでさえも振動を帯びんばかりに、涙の浮かびかけた表情は、マルティナにより一層の罪悪感を募らせる。
     調書には当然のように書き込まれた。
     あの紙面には、下着の色も柄も記録され、これから起こる『入場料』の支払いのことも書かれることになるだろう。
    「ではアソコに何か隠していないか検査しよう」
     と、金髪憲兵はおもむろにセーニャへ迫り、何の遠慮もなしに突如として、太い指先でアソコをなぞった。
    「きゃっ!」
    「動くなよ? 下手に逆らえば町への攻撃と見做して兵隊を呼ぶ」
     権力を振りかざし、お前達などいつでも罪人に仕立て上げられると言外に忠告すると、セーニャは震えながら受け入れる。悲しい運命に嘆いた顔で、目尻に溜まった涙がもうすぐ溢れ出しそうな粒にまでなり、もうマルティナは堪えきれなかった。
    「ちょっと!」
     マルティナは声を荒げた――勝手に下げるわけにはいかないスカートは上げたまま、ショーツが丸見えのままに怒る滑稽さは、かえって憲兵達を失笑させ、面白い光景なので喜ばせもしているのだった。
    「なんだ? 異論でも唱えるのか?」
    「いいえ、違うわ。あなた達は支配者のやり方に乗っかっているようだけど、どのみち『入場料』は取れと命じられているんでしょう?」
    「よくわかってるな。なら、何故止める?」
    「私が一人で払うわ。セーニャは先に通してあげて」
     その言葉にはっとして、驚いたような顔でセーニャはマルティナを見る。
    「お前一人でか?」
    「そうよ」
     マルティナは毅然としていた。
    「あのっ、大丈夫なのですか?」
     いかにも不安でならない声を伸ばすセーニャに、マルティナは強く笑ってみせる。
    「大丈夫よ。心配しないて、先に町に入っていて頂戴」
    「は、はい……ですが……」
    「いいから、行きなさい。それでいいでしょう?」
     マルティナは言葉で背中を押しながら、憲兵達にも確認の意思を示す。
    「ま、いいだろう。一人で頑張ってみろよ」
     金髪憲兵は邪悪に笑う。
    「望むところよ」
     対するマルティナの、決して負ける気のない態度は、これから決闘でも始めるかのようだった。
    
         †
    
     マルティナ一人が残った検問部屋で、金髪憲兵はニヤニヤと抱きつくと、背中にかかったロングポニーテールを弄び、次の瞬間には唇を奪い取る。
    「んんっ!?」
     激しいキスにマルティなは目を見開く。
    「はじゅっ、ずるぅ――じゅっ、ちゅぅぅぅ――――――」
     強引に舌をねじ込み、口内を味わい尽くすキスだった。後頭部をがっしりと手で掴み、逃がさないように頬張って、舌先でマルティナの舌を突き回す。歯茎をなぞり、唾液を送り、息継ぎのために唇が離れれば、舌同士のあいだに糸が引く。
     金髪憲兵は下の方にも手をやった。
     指はショーツ越しに絡みついたが、すぐに内側へ潜ってワレメを捏ね、指さえ穴に入れていく。巧みな技にマルティナはすぐにでも感じ始めて、喘ぐ口には唾液を押し込まれた。
     じっくりと舐め回り、マルティナの口内をよく味わう。指には愛液が染み付いて、ショーツにも付着していく。
     自分の口が味わい尽くされている感覚と、指に犯される恥辱に震えていると、やがてマルティナは壁に背中を押し付けられた。後ろに逃げ場のない形にされ、ショーツを下にずらされると、金髪憲兵はいい気になって命じて繰る。
    「ヤらせてもらう。とりあえず片足を上げろ」
     マルティナが左足を持ち上げて、片側だけのM字を作ると、金髪憲兵はズボンを脱いで肉棒を押し入れる。
    「ぐぅぅぅ……」
     痛みではない。また辱しめを受けている感覚に、マルティナは呻くのだった。
    「あっ、あん! あん!」
     それでも快楽の喘ぎが出てしまうまで、そう時間はかからない。
     さらに金髪憲兵は、もう片方の足も上げさせた。腕力で脚を持ち上げ、彼の両腕に対して、M字の形がフックとなる。マルティナは背中を壁に押し付けられ、言ってみるなら壁をベッド代わりにした正常位で攻められていた。
    「仲間思いだなぁ? 自分だけが犯されればいいなんてよぉ?」
     金髪憲兵は楽しそうに腰を振り、それを見守る後ろの手下もニヤニヤと勃起している。
    「あぁぁ! あん! あぁん!」
     壁に向かって行うピストンをしばし続けるうちに、不意にそうしたくなったのか、体位を維持しながらもマルティナの身体を運んでいく。
    「お前ら、今のうちに順番決めとけよ?」
     金髪憲兵は見せてやっていた。
     後ろに控えさせているだけでは、きっと自分の尻をしか見えないだろう。見ても面白くもない男の尻より、マルティナの後ろ姿の方がよほど見ごたえはあるはずだ。
     そんな『思いやり』を受け取って、長身憲兵と巨漢憲兵の二人はマルティナの背中を鑑賞する。制服を纏った後ろ姿に、長いポニーテールの尾が揺れる。金髪憲兵のピストンによってか、マルティナ自身の動きなのか、どちらによってスカートの尻が弾んでいるかの区別はつかない。
     ただ、姿勢のために宙から垂れ下がっているスカート丈は、お尻のバウンドに合わせてバサバサと揺れている。旗を振り回したり、洗濯物のシーツを広げる時に似たような、布が空気を鳴らす音は絶えることなく続いている。
    「あうっ、んぅ! ん! んじゅう!」
     急に喘ぎ声が塞がるのは、金髪憲兵が再び唇を貪り始めたためだった。
     
     ドクッ、ビュルゥゥ――!
     
     金髪憲兵は何の遠慮もなく膣内に放出する。
     マルティナがテーブルの上に下ろされ、寝かされると、次は自分とばかりに巨漢憲兵が迫っていく。
     全員の相手が済むまで、マルティナはセックスをさせられていた。
    「仲間思いに免じて、滞在日数を増やしてやるよ」
     そんなサービスを金髪憲兵はしてきたが――。
     
         *
     
    「マルティナさま! 大丈夫でしたか!?」
     検問所を出て町へ入れば、長いあいだ待ってくれていたセーニャが駆け寄ってきた。
    「え、ええ。平気よ」
     マルティナはケロっとはしてみせるが、いつも通りの入場料も取られている。セックスが済むなり下着を取られ、着替えの間もなく町へ入れられてしまったマルティナは、実のところノーパンだ。
     このメダ女の制服はスカートの丈が長い。中身が見えるアクシデントなど、そうそう起こるものではないが、生尻の肌にスカートが触れている感覚は慣れないもので、気になって気になって仕方がない。
    「なにか疲れているようですわ。よほど酷いことをされたのでは」
    「大丈夫よ、心配しないで」
     確かに三人もの相手をして、体力を削り取られた。今日は早いところ宿を取り、明日に備えて休憩したい。
     もう何度も通い慣れている町だ。
     マルティナはセーニャを宿まで案内し、すぐにゴールドを払って部屋を取る。シャワーを浴びて身を清め、脱衣場の鏡に映る自分の姿にマルティナは目を伏せた。
    「こんなものまで付けられて……」
    
     マルティナの下腹部には淫紋があった。
    
     三人もの相手をしたばかりか、金髪憲兵は魔法の籠った石を使って、マルティナに呪いをかけた。町の支配者が操る魔法を宿していることを自慢され、何か淫らな術をかけられたのだ。
     どんな術かはわからないが、ろくでもないに決まっている。
    「とにかく、仲間の情報を集めないと」
     今は休もうと着替えを済ませ、ベッドにつく。
     
         *
     
     翌朝。
     手分けして情報を集めることにしたマルティナは、淫紋の不安を抱えて聞き込みをしていると、「あの武器屋へ行くといい。あそこの店主は記憶力がいいから、客の特徴をいちいち覚えてるんだ。あんたの仲間が一度でも入っていれば、何か教えてもらえるだろう」と教えられ、マルティナは店へ向かう。
     ドアを開いて声をかけ、話を聞き出そうと試みた時だ。
    「おや、アンタはあれだね」
     店主はカウンターの下にしまっていたらしい一枚の紙を取り出し、その内容を読み始める。
    「黒いショーツ。両サイドをリボン結び、ヒモでウェストを調整する。クロッチには蝶が大きく刺繍されている。蝶の部分は光沢を帯びる素材を使っていたため、羽模様が黒光りしていた」
     何故、紙に下着の特徴が書いてあり、わざわざ読み上げたのか、理解ができなかった。若干の遅れを伴い、紙の正体に検討がついた途端、マルティナは瞬く間に赤らんでいた。
    「あなた! 検問所の調書を!」
    「あれなぁ、写しを金で買えるんだよ。アンタほどの美人なら、人気も高いんじゃないか?」
     脳がくつくつと煮えそうだった。
     しかも、何かおかしい。
     確かに検問所での記録が販売され、金で入手可能というのは信じられない。あれらの出来事が知れ渡るなど最悪だが、この恥ずかしさは何なのか。
     調書の写しを握られていることが、まるで裸を視姦されているような羞恥を煽ってくる。
    (嫌でも慣れているはずなのに)
     恥ずかしい目にはいくらでも遭い、犯されまでしているのに、紙に書かれた文章で恥ずかしがる神経が、いくらなんでもここまで強く残っているのか。
    「そうそう、仲間の情報だったな。特徴さえ言ってくれれば、ここ一ヶ月以内に俺の店に来てれば思い出せる。俺から情報が出なければ、この店にゃ来てないことになる」
    「た、頼もしいわね。是非お願いしたいわ」
    「では情報料として、パンツを見せてくれ」
    「え? パンツって……!」
    「金ならいらんぞ? パンツじゃなきゃ教えん」
    「……わかったわ」
     こうなったら、やるしかない。
     マルティナは制服の長いスカート丈を持ち上げて、今日の下着を見せつける。ピンク色のレース付きに視線が刺さり、羞恥心を刺激されると、みるみるうちに頭が熱くなる。脳が燃えそうな心地に顔を歪めて、初めてマルティナは悟っていた。
    (淫紋のせいなの!?)
     下着は確かに恥ずかしいが、今更ここまでではないはずだ。
     やっと淫紋の力を思い知り、頭の焼ける気持ちを味わううちに、下腹部がヒクヒクと反応を示していた。急にアソコが何かを欲しがり、ヨダレを垂らし、クロッチには愛液が広がり始めていた。
    (ま、まずいわ! なにか凄く、嫌な予感が!)
     これ以上見せては、決定的な何かが起こる。
     マルティナは慌てて隠そうとするものの、動作を取ろうとするよりも一瞬早く、マルティナは決壊した。
     
     ――じょぉぉぉぉぉ!
     
     失禁していた。
     ただパンツを見せただけで、人の店の真ん中で、木製の床に小便を広げてしまう。びちゃびちゃと跳ね返る黄色い飛沫に、自分自身の靴さえ汚し、マルティナの頭は爆発していた。
     
    「――いやぁぁぁぁぁぁ!」
     
     もしも恥ずかしさで身体の一部が欠損する現象が存在したら、頭が消し飛んでいるといっても過言ではない。人前で、人の店で、営業に支障をきたしかねない真ん中で放尿してしまったショックは、誰にも計り知れないものだった。
     
    「――ちーっす、新しい剣を――なにぃ!?」
    「おいおい、なんで小便くせぇんだ?」
     
     銀髪剣士と茶髪剣士の二人組が、こんな時に入店してきて、マルティナはますます悶えていた。脳の中身が蒸発して消えかねない勢いだった。
     
         *
     
    「へえ? 最新の調書にゃ、そう書かれてんのかい」
     何かに感心する店主。
    「そーゆーわけ」
    「だが、小便漏らしたのは事実だし、お仕置きとかした方がいいんじゃねーの?」
     二人組の剣士は、昨日の最新調書の購入者だった。
     だからマルティナが失禁した理由を知っていて、店主に説明してくれたわけなのだが、逆に言うなら、調書には説明があるのにマルティナ自身には何も説明がなかったのだ。
     これが淫紋の力だった。
     必要以上に恥ずかしさを感じるようになり、羞恥心に応じてアソコも反応する。オシッコが溜まっていれば、失禁する恐れもある。
    「そんな……淫紋の解き方、あなた達は……」
     請うよう二人組を見るのだが、銀髪も茶髪も首を振る。
    「知らないね」
    「そりゃ、知ってりゃ教えてもいいけど、タダじゃあ教えないと思うぜ?」
     二人はそれぞれそう答えた。
    「で、お前さん。漏らしたのは事実だ。まあ可哀想な話なんで、替えのパンツをあげてもいいが、お仕置きは受けてもらうよ?」
     店主の言葉に、オシッコを漏らした立場では逆らえない。
     
     ペン!
     
     それがお仕置きだった。
     片膝を立てた店主の脚で腹這いに、四つん這いに近いポーズで、スカートを全て捲りきられた状態で叩かれる。
     
     ペン! ペン!
     
     そして、二人組の剣士は鑑賞していた。
    「淫紋のせいとはいえ」
    「お漏らししたお仕置きでケツ叩きか」
     同情よりも、滑稽な運命を辿る姿を見て楽しむ。そんな視線が辛かった。
     
     ペン! ペン!
     
     叩かれる屈辱は大いにあるが、こんな姿を見られているのも、辱しめの一部であった。
     やがて、店主が満足するまで叩かれ続けたマルティナは、お尻の肌にヒリヒリとした感じを引きずっていた。
     店を出る前に、厚意から替えの下着をもらえた。武器屋が片手間に防具を置いていた一環で、装備効果のある女性下着がたまたまあったのだ。
     それはTバックだった。
     紐と紐を繋げただけの、クロッチの布なら辛うじてアソコを隠しうる卑猥な下着は、決して好きで穿きたいものではなかった。
     
         *
     
     それでも、マルティナは情報を探し続ける。
    (めげてばかりもいられない……)
     聞き込みをしていくうちに、マルティナは恥ばかりをかいていた。
     
    「お? ねーちゃん! この調書の人だろ?」
    「アンタ、これで読んだことあるぜ?」
    「へへっ、俺にもサービスしてくれよ」
     
     調書が出回っているのだ。
     通行人に声をかけると、調書で読んだ通りの女だと喜び始める。ここに書いてあることは本当かと、好奇心に満ちた目で聞かれる。見知らぬ人から野次まで飛ばされ、行く先々で言葉のセクハラを受けていた。
    (くっ、いちいち反応して!)
     そのたびに淫紋の力が働き、言葉によってアソコが気持ち良くなってくる。
     そして――。
     やめるわけにもいかずに、辛抱強く調査をするおり、露店のカウンターに手を突きながら、その店員に聞き込みを行っていた時のこと。
    「へえ? いたかなぁ? そんな奴」
    「どんなことでもいいわ。覚えがあったら思い出して欲しいの」
    「うーん」
     やり取りをしているあいだ、マルティナは隙だらけだった。
     周りを歩く通行人の一部がチラチラと盗み見て、ついには痴漢目的で迫っていく男が現れても、マルティナはその気配に気づかない。尻が突き出て、スカート丈を介してムンムンと色気を放っているのが、本人の知らないうちに男を引き寄せているというのに、まるで警戒できていなかった。
     その男はスカートを捲り上げた。
    「え!?」
     マルティナはまず驚く。
     お尻に触れる風の感じに、周囲から聞こえるどよめきと、何よりもスカート丈を持ち上げている男の存在に、自分の尻が丸見えにされていることを悟って、マルティナは一瞬にして脳を沸騰させていた。
     丸出しと変わらない、ただ尾てい骨あたりにあるT字の交点に紐が見えるから、辛うじて穿いていることはわかる下着は、遠目にノーパンであると勘違いする者がいくらでもいた。
    (いやぁぁぁぁぁ!)
     アソコが疼き、すぐさま愛液をたっぷりと分泌していた。軽い絶頂で身体が震え、そんな様子を見た男達から、様々な野次が飛ぶ。
    
    「あんなエロいもん穿いて、見られてイったのか?」
    「なんつーエロ女か」
    「はしたないのう?」
    「おい! アンタ! いいケツしてるぜ!」
    
     ますますアソコが反応する。
     マルティナ自身の気持ちなど関係なく、淫紋が言葉の数々を吸収して、嫌でもアソコに快楽を与えてくる。
    「やめなさい! 見ないで!」
     慌ててスカート丈を抑え、マルティナはその場を逃げ去った。
    
         †
    
     気を持ち直し、聞き込みを再開するまで、随分と時間がかかった。
    (こんな呪いと付き合いながらなんて、本当に最悪よ)
     こうなったら、淫紋を解く方法についても聞き込みをしようと思い、そんなおりにマルティナは喫茶店の前を通りかかった。
    (ここなら、どうかしら)
     マルティナは店に入ると、カウンターの席に座って聞き込みを開始した。
    「探している人がいるんだけど」
    「ご注文は」
    「そうね」
     先ほどの、オシッコを漏らしてしまった恐怖から、出来れば飲み物は避けたいマルティナだが、注文無しではマスターも応じてくれない様子である。仕方がなく紅茶を頼み、ティーカップに注がれた香り良い味を啜ると、マルティナは仲間達の特徴を伝え始める。
     その時だった。
     マルティナの背後に忍び寄り、密かにポニーテールの髪を掴んで持ち上げている男がいた。
    「ああ、悪魔の子とか呼ばれている奴なら、ここに一度来たらしい」
    「本当!?」
    「その後、どこに行ったか。いつのことだったかも、ちょっと思い出せないな」
    「どうにか思い出せない? なんでもいいのよ」
    「そうだなぁ」
     もちろん、マスターには見えている。
     マルティナの背後で何かをして、ニヤニヤと楽しんでいる男の存在が見えないはずもなかったが、男はゴールドを手の平でチラつかせていた。だからマスターは黙認しつつ、会話でマルティナの注意を引きさえしている。
     男はペニスを取り出し、髪を巻き付けオナニーしていた。
    「はあっ、はぁ……! いい髪ぃ、気持ちいい……!」
     髪コキという、変わった趣味の変態が興奮していた。荒い鼻息を立て、血走った目で必死にしごく男のことを、周りの誰も止めようとしていない。
    
     ――あーあー。
     ――あれ、例のエロい調書の女だよな?
     ――なら仕方ないんじゃね?
    
     止めるどころか、ニヤニヤしたり、呆れた目で眺める男ばかりであった。
     髪の中に射精され、精液が染みついても、マルティナは最後まで気づかない。
     しかも、髪コキの男が離れていくと、お次は自分とばかりにまた別の男が近づいて、マルティナの隣に座るなり、何の遠慮もなく太ももに手を置いた。
    「なあ、話は聞かせてもらったぜ? 俺の知ってる情報を教えてやろうか?」
    「あ、あなたっ……」
    「情報料はちょいとアソコを触らせてもらうとか」
     男は返事も聞かないうちから太ももの狭間に手を入れる。スカート越しの性器をなぞられると、みるみるうちに愛液が溢れ出し、スカート丈には大きな染みが出来上がる。
    「あぁ……! あっ、やめっ!」
     抵抗できずにいた。
     身体がよがってしまい、まともに力が入らない。押しのけようとしてみても、腕は弱々しく、ただ男のボディにタッチをしているだけになってしまう。
    
    「――あぁん!」
    
     マルティナはイった。
     愛液が染みただけでも、お漏らしと区別がつかない染みが、それは大きく広がっていた。
    
     ジョロロロロロロロ…………。
    
     その上、本当に失禁した。
     先ほどは立った状態での失禁で、スカートも捲っていたから、まだしも制服は汚さずに済んだところを、今度はスカートも小便にまみれ、椅子からも流れ落ちていく。
    「あいつ! 小便漏らしてるぜ!」
    「きったねーの!」
     周囲の視線は数多く、野次馬の輪も出来上がり、マルティナは地獄に落ちていた。恥ずかしくてもう死にたい、ここから消えたい。ありとあらゆる思いが巡り、脳を沸騰させ続けていた。
    
         †
    
     早いうちから宿に戻った。
     あの後、店の備品を小便で汚したことを謝罪させられ、観衆の前でお尻叩きの刑にまで遭わされて、もうこの日は活動の気力を失ってしまったのだ。
     今度は着替えを用意してもらえる厚意もなく、オシッコで汚れたまま放り出され、惨めなびしょ濡れの状態で宿に帰れば、他の客達の視線という視線が痛い。
     部屋に戻って、すぐさまシャワーを浴びた後、マルティナはまだ汚れていない二着目の制服に着替えていた。
     セーニャはまだ戻っていない。
     マルティナは一人、ベッドにうつ伏せて……。
    
    「よし」
    
     一人の男が、マルティナの部屋に入り込む。
     とっくに眠りについた彼女は、侵入者に気づくことはない。そもそも、鍵をかけているはずなのに、出入りなどできないはずだ。
     この侵入者の男は、宿屋の店主にゴールドを支払ったのだ。
     調書でマルティナのことを知り、喫茶店での失禁騒動から尾行を行い、泊まっている宿を突き止め、すぐさま店主に交渉した。結果としてマスターキーでドアの鍵を開けてもらい、あとは好きにしろとばかりに去って行く背中へと、男はニヤっと礼を述べ、そうしてマルティナの肉体にありつこうとしているわけだった。
    「おーう? ぐっすり寝てるねぇ?」
     ベッドに上がり、布団をどかすが、起きる様子はなさそうだ。
    「どれどれ?」
     中身を楽しみにしながらスカートを捲っていくと、紫色のショーツが姿を現す。それも布面積が少ないタイプの、二等辺三角形から尻肉がはみ出たもので、細い三角形はやろうと思えば割れ目の中に埋め込んでTバック同然にできるだろう。
    「まずはこのケツから楽しもうか」
     男は尻を揉みしだいた。
    「おいおい、いいもん持ってんじゃねーか」
     揉み心地に興奮した男は、燃え上がった感情のままに尻たぶをペチペチと叩き、ショーツ越しのアソコに指をやる。せっかくだから起きないように気をつけて、ゆっくりと楽しみながら愛撫をするが、思いのほか早く濡れて来た。
    「淫紋の効果ってか?」
     うつ伏せの、それも脚の閉じた隙間を覗き込み、ワレメをどうにか上下にしていると、指先に愛液の感触が付着してくる。滑りの良さに合わせて続けていくと、指を離す頃には長々と糸が引くようになっていた。
    「はぁ…………っ、はぅ………………」
     マルティナの寝息も、どこか色っぽくなっている。
    「へへっ、そろそろ頂きますかねぇ?」
     男はズボンを脱ぎ捨てて、マルティナの内股に狙いを定める。太ももの隙間を通過して、器用に膣口を探り当て、思い切った挿入を行った。
    
     ずん!
    
     と、勢いよく打ちつけた。
    「やぁあ!」
     さすがのマルティナも、悲鳴なのか喘ぎ声か、背中を弾み上げていた。
    「よう! 起きたか?」
    「だ、誰よ! あなた――あっ、あ! あ! あん!」
     挿入によって起こされて、体勢のために顔を見ることさえできない恐怖は、マルティナにとって一体どれほどのものになろうか。
    「さあ、誰だろうな!」
     男は大いに楽しげに、尻の上に腰を打ちつけ、長いポニーテールの髪を掴んだ。まるで手綱を握って馬を操る気分にでも浸ったように、面白おかしい気持ちいになって大胆にピストンを行っていた。
    「あぁん! あん! あん! あん!」
    「おら! 喘げ喘げ!」
    「あぁああ! あっ、あぁあああ!」
     マルティナは全身を痙攣させ、失禁の勢いで愛液を広げていた。ベッドシーツに大きな染みが出来上がり、男はなおも腰を振る。
    「ああああ! あっ、もう! もうイった! やめっ、もう――」
    「ならもっとイけよ! おら!」
    「あぁっ! あぁぁぁぁぁぁ――――――!」
     マルティナは大胆に背中を反らし、海老反りのままに固まり筋肉を震わせる。再びイってもなお男は腰を振り、やっとの射精で制服の背中を汚しても、まだ挿入し直しては膣を味わう。
    「あぁあああ! あっ! あん!」
     時間が経つにつれ、ベッドシーツにたっぷりと染み込む愛液の香りが満ち溢れ、外出しの精液で制服も染みだらけになっていく。
     自分がどれほど犯されて、何回射精されたのかも、とっくにわからなくなっていた。
    「あぁあああ! あん! あああん!」
     イって、イって、大量の愛液を噴き出し、ついには失禁までして尿を広げて、酷い有様になるまで解放されることはなかった。
    「おらよ」
     と、男がたった1ゴールドだけを枕元に投げていき、満足そうな顔で部屋を出て行くと、後に残ったマルティナの全身が精液にまみれていた。髪にも精液はかけられて、それが乾いたせいでポニーテールの中に固まりが出来ていた。
    
    「ま、マルティナさま! どうなされたのですか!」
    
     帰って来たセーニャが駆け寄って、慌てて介抱を行ったのは、それから数十分後のことだった。
    
         †
    
     知ってしまいましたわ。
     マルティナさまが検問所でどのような目に遭われていたか。町の人々に調書を持っている方達がおりましたし、わたくしも何度か嫌な言葉をかけられました。
     ああ、服もこんなに汚されて――。
     これでは着替えもほとんどありません。我慢して着るしかないのでしょうか、それでは臭いが気になります。
     勇者さまや他の仲間達のこともわかっていないのに、それでもこの町に滞在し、情報を探し続けるべきなのでしょうか。
     わかりませんわ。
     一体、どうしたら……。
    
    
    
    


     
     
     


  • マルティナの検問陵辱

    作品一覧

    
    
    
     とある検問所。
     旅人の出入りを管理するため、所持品をチェックし、訪問理由を調書に取るのが憲兵の仕事である。
     石造りの一室。テーブルに槍や薬草の数々が並び、金髪憲兵はそれらを紙に書き取ると、持ち主へ視線を流す。
    「こっちも仕事なんでな」
     彼は下品な笑顔を向けた。
    「わかっているわ。支配者に従わないと、あなた達も悪い目に遭わされるんでしょう?」
     検問を受けているのは、黒髪の長いポニーテールを垂らし、緑の衣装を身につけた美貌の女――マルティナだった。
     彼女は後頭部に両手を組み、検問の指示に粛々と従っている。
    「ま、そういうわけだ」
     彼の立場は確かにそうだ。
     勇者の剣が魔王に奪われ、世界崩壊が起こった後、町は魔物に支配され、検問方法も変更された。憲兵には家族や友人を人質に取られた者が多く、逆らえない。
     だが支配者は、自分に組みする人間に甘い汁を与える。
     特に検問所の憲兵は特をしていた。
    「悪く思うなよ?」
     巨漢憲兵がマルティナの背後に立ち、スパッツ越しに尻の形を確かめる。
    「これでも人質の命を守ってるんだ」
     長身憲兵は真正面から、緑の衣類に包まれた胸を揉む。
     マルティナは目を瞑り、屈辱を堪え、こんな検問を受け入れている。お尻を這い回る手の平はスパッツの表面ですりすりと、胸を揉む指は弾力を味わっている。
    「町に来た理由は、はぐれた仲間の情報集め。この町に何か知っている人間がいるらしいと聞きつけた。間違いないな?」
    「ええ、その通りよ」
    「見つかるといいなぁ?」
     金髪憲兵が読み上げたのは、町に来た理由を聞き取った調書である。内容を声に出し、本人の確認を済ませたところで、彼はテーブルに書類を放る。
    「みんなの事情もわかるわ。だから我慢しているけど、もう十分のはずよ?」
     堪えきれないかのような、怒りと悔しさに震えた声だった。
     マルティナが受ける検査は、衣服の下に何かが隠されていないかのチェックも含まれる。
     体中をまさぐる検査を甘んじて受け入れたが、衣服の部分は全て撫で尽くし、これ以上の所持品は何一つないと、とっくにわかっているはずなのだ。
    「十分かどうかは俺達が決める」
     金髪憲兵が近寄り、巨漢と長身に目配せすると、彼らはさっと離れて獲物を明け渡す。今度は彼が胸を揉み始め、まだ続くのだと悟るマルティナは、眉間に皺を寄せて耐え忍ぶ。
    「これでも親切なんだぜ? 本来、支配者様には女は全裸にしろと言われているからな」
    「あら、お気遣いがあったのね」
    「まーな。ところで」
     金髪憲兵は不意に手を止め、マルティナの首輪に触れる。緑の衣装を脱がせると、黒い布地が乳房の形に沿い合わさっていた。
     頂点と思わしき部分には、豆のような突起がある。
    「こいつはなんだ?」
     金髪憲兵は突起をつまむ。
    「……んっ、んぅっ」
     その刺激に彼女は身じろぎした。
    「なんだと聞いている」
     繰り返しの質問に、彼女は目を背ける。
    「答えた方が身のためだぜ?」
    「全裸が嫌ならな」
     長身憲兵が、巨漢憲兵が、悪辣な忠告を送った。
     だからといって、おいそれとは答えられず、開きかけた唇を恥じらいに閉ざす。言おうとしながら、言えずに俯くばかりであった。
    「おい、マジで脱いでもらうぞ?」
     金髪憲兵が脅しを重ね、突起弄りの指を活発にする。
    「んっ、んぅ……ま、待って……言うわ…………」
     マルティナは悔しげだった。
     わかっているのだ。
     わざと尋ね、言わせようとしている。その手で触っておきながら、突起の正体がわからないはずがない。
     冗談じゃない、最悪だ。そんな気持ちは彼女の中に大いに膨らむ。怒りも膨らみ、耐え難さに肩が震えるも、全裸になることと、突起の正体を白状すること、二つを天秤にかけるなら、言う方がマシだった。
    「おう。なんだ?」
     金髪憲兵が目をニヤつかせ、その背後に控える二人もヘラヘラとしたゲスな笑いを投げかける。そんな彼らの下品な欲望を満足させ、高笑いをさせてやるためのエサを自分から与えてやるようで、屈辱しかない選択だ。
    「………………乳首よ」
     と、告白した。
    「へぇぇ? なんだって? 聞こえなかったなぁ?」
     金髪憲兵の笑顔が明るくなり、二人の憲兵にも邪悪が増した。
    「乳首よ! 乳首の! さあ、言ったわ! 満足でしょう!?」
     マルティナは声を荒げた。
     悔しさに満ち溢れた表情を浮かべていた。
    「なるほど! 乳首か! 念のために確認させてもらう!」
    「くっ、いいわ。見なさいよ」
     彼女は金髪憲兵を睨み返す。
     ヘソ出しのタンクトップの腹を指でなぞられて、身震いするマルティナは、何でもないとばかりに気丈に振る舞う。タンクトップに指が潜り、持ち上がった布地から、ぷるっと乳房が現れても、表情は決して変えない。
     もっとも、頬の赤みは増していた。
    「確かに乳首だな。どうして突起してる」
    「胸を揉まれて、感じたからよ」
     だからどうしたと言わんばかりの、何でもない風を装い、強気に答える。
    「おい、書いとけ。検問中にエロい興奮をして、乳首が大きくなり、触ると気持ちよさそうだったってな」
    「あなた……!」
    「おおっと、まだ終わっちゃいないぜ?」
     金髪憲兵が生乳を揉みしだくと、まるで耐え忍ぶ使命があるように、マルティナは大人しく気を静める。
    「まだ何かあるっていうの?」
    「念のため、スパッツの中を確かめる。特別な効果を持った下着装備ってこともあるからな」
     金髪憲兵がしゃがみ込むと、今度はスパッツをずり下ろす。
     顎に指を当て――ほーう? と、関心したような、品定めするような目で、下着をしばし眺めた後、マルティナの背後に回り、背中に抱きつく。
    「やっ! 何を――」
    「大人しくしろ。最後の調査だ」
     彼はマルティナの肩に顎を乗せ、耳に囁きかけながら、アソコの部分へ手を伸ばし、手始めにショーツ越しの愛撫を始める。
    「い、いやっ! そんなところ!」
    「お前ら! 調書だ!」
     金髪の命令を受け、長身憲兵が書類を手に、巨漢憲兵が質問を開始する。
    「いいパンツだ。どこで買った?」
    「どこって……」
     質問に戸惑う隙に、ショーツの内側に右手は潜る。
    「どこだ」
    「んっ、あっあぁ……」
     金髪憲兵の指がワレメを直接撫でていた。
     彼女が穿くのは黒いショーツだ。両サイドをリボン結びに、ヒモでウェストを調整する。クロッチには蝶が大きく刺繍され、アソコのワレメに止まったかのようの羽を広げている。光沢を帯びる素材を使って、羽模様が黒光りしていた。
    「くっ、んっ、ぎょ、行商人に……途中で会って、そこで…………」
    「なるほど、ここに来る途中か」
     巨漢憲兵はニヤつきながら乳房と下着を交互に眺め、マルティナが感じている様子も楽しんでいる。指の挿入でくの字に折れ、腰を左右にモゾモゾとさせる姿に、長身憲兵も卑猥な目つきで書類にペンを走らせていた。
    「エロいデザインだ。そういうのを穿いた娼婦を知ってるぞ」
     巨漢憲兵はせせ笑う。
    「娼婦って――」
    「何故それにした? 値段か? 装備効果か?」
    「デザインが素敵だと思ったから……」
    「ほう? そのエロティックなデザインが素敵ねぇ?」
    「では『エロいデザインを選び購入』と書いておこう」
     長身憲兵は文面を発表しながら書き込んでいく。
    「おい、『アソコがびちゃびちゃ』とも書け。『感じながら腰を折り曲げ、まるでケツを俺のチンポに押しつけるみたくなっていた』ともな」
     金髪憲兵は嬉々として指を活発に、クチャクチャと水音を立て始める。愛液は内股を伝って流れ出し、皮膚の表面で光を反射していた。
    「そんなっ、いやらしいこと――」
    「事実だろうが!」
     反論を許さないかのように、穴に入れていた指をクリトリスに移した時、マルティナの腰はさらに折れ曲がる。くの字に突き出た尻は、まさしく金髪憲兵の言う通りだ。股間には大きな尻がぐにりと当たり、マルティナにも熱い勃起の形状が伝わっていた。
    「んっ! く! んぁん!」
     まるでチョロっと、少しばかり放尿したように、布地に染みる水分は一気に広がり、内股に流れる愛液も量を増す。
     手でイカされ、彼女は絶頂したのだった。
    「『検査中に絶頂』」
     それさえ、書かれた。
     マルティナはへたり込み、大きな敗北を味わったように石床に視線を落とす。固い拳を震わせながら、一度目の検査を終えた。
    
         †
    
     町の滞在期間は二日までと決まっており、二日を超える場合、延長手続きをするか、一度町を出て再入場という形になる。
     マルティナは再入場を行っていた。
     町中で聞き込みを行い、有力な情報を得たと思いきや、情報の持ち主は町を出ていた。急ぎ追いかけてみるも、その内容は『悪魔の子の目撃者が町の○○にいる』というもので、逆戻りだ。
     おかげで再び検問を受けていた。
    「メダ女の制服か」
     金髪憲兵はいいものを見たような顔を浮かべた。
     そして、彼女の身体には長身と巨漢の憲兵が群がり、二人して体中をまさぐっている。腰のくびれをなぞり、首に通したリボンを弄び、胸を揉み、スカートの上から尻や太ももを撫で回す。その全てをボディチェックと心得て、マルティナは後頭部に両手を組み、静かに従っていた。
    「前の服は臭ってきたから、変えたのよ」
    「確かに、くせぇな」
     テーブルに並ぶ装備やアイテムの列には、以前着ていたスパッツやタンクトップも置かれている。着替え類さえチェックを受けるわけだったが、そこには一度目の検問で見せた黒いショーツが見当たらない。
     いや、金髪憲兵が持っていた。
    「この『入場料』にも香りが残ってるぜ? アンタ、絶頂してたからな」
     彼は勝ち誇った顔でショーツを手に、鼻に近づけ嗅いでいる。自分の下着がいいように扱われる光景に耐えきれず、マルティナは顔を背けていた。
     検問には入場料の徴収もある。
     本来、ゴールドで払うのが一般的だが、彼らは不当に金額を釣り上げていた。とても払えない額を提示され、下着を捧げればチャラともなれば、他に選択肢がないと同じだった。
    「魔物なんかに従って、本当にそれでいいの?」
    「どうしろって? それより、スカートをたくし上げろ。下着をチェックする」
    「……卑怯者」
     マルティナはスカート丈を掴み、持ち上げていく。
     長い丈が徐々に太ももの範囲を広げ、見えてくる下着の色は、青をベースに白や薄水色を吹きかけたものだった。雲の漂う空だ。空のショーツというべきものがあらわとなり、三人の視線は一気にそこへ集中した。
    「どこで買った?」
     金髪憲兵が訪ねる。
    「この町よ。着替えが欲しかったから」
    「で? どこが気に入ったんだ?」
    「どこがって……」
    「何かあるだろ。オシャレだと思ったのか?」
    「……それは、そうよ……オシャレじゃない。空みたいに出来ていて綺麗だし、効果もすばやさが上がるから」
     下着について喋らされ、しかもその下着に視線を受けている。マルティナはふて腐れたように答え、耳を桃色に染めていた。
    「通行料だ。高額なゴールドを支払うか、パンツを差し出すか、好きな方を選べ」
    「……そんなの、選択肢なんてないじゃない」
     マルティナは歯噛みして、険しい顔でスカートの中身に指をかけ、ショーツをするすると下ろし始める。たくし上げをやめてしまえば、長い丈はあっという間に中身を隠すが、その変わり感じるのは、ショーツが膝まで脱げたことで、尻に直接スカートの生地が触れる感覚だ。
     ショーツを床まで下げきると、足を一本ずつ抜き取っていく。
    「ノーパンになっちまったな」
     金髪憲兵は嬉しそうに手招きして、指でよこせと告げてくる。
    「どうぞ。変態さん」
     マルティナはせめてもの言葉を返し、眉間に力の入った表情で、唇を噛みつつも下着を手渡す。
     金髪憲兵はさっそく弄び、匂いを嗅いだ。
    「体温が残ってるねぇ? 残り香もあるぜ?」
     自慢でならない顔を向けられて、彼女は目を背ける。
    「……そう」
    「っと、あとはアソコの穴も調べないとな」
     金髪憲兵はマルティナの背後に回り込み、抱きつくように、密着して手を回す。後ろからスカートを掴んで巻き上げ、何も穿かないアソコに手をやると、彼は愛撫を始めた。
    「んんっ」
    「早いな。いきなり感じるのか」
    「ちがっ、そんなわけ――んんぅ……!」
     マルティナは即座に否定するが、アソコへのタッチに腰は震え、脳のとろけた表情を簡単に浮かべてしまう。
    「お? いい顔したな」
    「もっと見せてくれよ」
     巨漢憲兵が、長身憲兵が、下品に喜んでいた。
    「簡単なもんだな。女ってのは」
     金髪憲兵にとって、愛撫さえしてしまえば、マルティナなど小娘にすぎない。しだいに手が愛液にまみれ、指を挿入すればその出入りもスムーズになっていく。いとも簡単に絶頂へもっていかれて、ぐったりと四つん這いとなって膝をつく。
     まるで敗北させられたかのようで、彼女は歯を食い縛って顎を震わす。
    「ところで、通行料の値上がりを言い忘れていた」
     金髪憲兵は突如として言い出すなり、パンツだけでは全額分の支払いにはならないと、残りの支払いに必要なゴールドを告げる。その金額はとても納得のいくものではなく、マルティナは肩越しに彼を睨む。
    「あなた……!」
    「決めたのは俺じゃない」
    「そうでしょうけど……」
    「もっとも、俺達にちょいとばかり奉仕できたら、やっぱり全額分を免除してやる」
     金髪憲兵はスカートの尻に手を置いて、既にそのつもりで撫で回していた。
    「……好きにしなさいよ。卑怯者っ」
     いかにも悔しげな同意であった。
    「ようし、んじゃ、さっそく」
     彼は嬉しそうにスカートを捲り上げ、何も穿かない生尻を剥き出しに、まずは尻山を揉みしだく。
    「ジャンケンで勝たせてもらったんでな。俺が先だ」
     さらに巨漢憲兵がマルティナの眼前に膝をつくなり、ベルトを外して中身を取り出す。長大な逸物を彼女の唇に押しつけ、彼は目で命じていた――咥えろ、と。
    「へへっ、尻の穴が丸見えだぜ」
     後ろからは金髪憲兵が尻たぶを鷲掴みに、親指で割れ目を開き、汚い部分を視姦する。排泄気孔を覗き見られる羞恥に耳を染め、脳が煮えるような気持ちになりながら、マルティナは観念したように逸物を頬張った。
    「おおっ、すげぇぜ。べっぴんさんのフェラチオはよォ!」
     巨漢憲兵は大喜びだ。
    「こっちも遊ばせてもらうぜ」
     金髪懸命は再びアソコに指を入れ、マルティナは二つの穴にものを入れられていた。膣穴には指がピストンして、唇には肉棒が見え隠れしていた。
    「んずっ、じゅぅ……んっ、んぅ…………」
     口にものが入っているせいで唾液が出て、後ろからも愛液がかき混ぜられて、水音は二重に響く。
    「んっ、んぅ……んっ、んんっ、んぅっ、んっ、んぅ…………」
     喘ぎ声は肉棒によって塞がれて、呻き声のようになっていた。
    「うーん。いいねぇ? 最高だぜ」
     巨漢憲兵はうっとりとにやけ、やがて射精感を高めてマルティなの口内に放出する。青臭いものを出されたことで、マルティナは「うっ」と呻いて顔を顰め、それと同時であった。
     ペチン!
     と、尻が叩かれた。
    「飲め」
     金髪憲兵の命令だった。
    (最低……!)
     マルティナは泣きたい思いで喉を鳴らし、屈辱に満ちた味を飲み込む。
    「じゃあ次は俺、頼むぜ?」
     入れ替わるように長身憲兵が膝を突き、口元に肉棒を差し出す。きっと全員分のものを咥えなければ、法外な通行料を払う羽目になる。マルティナは涙ながらに奉仕を行い、二本目を口内に迎えていく。
     四つん這いで咥える彼女は、背後で指のピストンを受けながら、前後に上半身を揺する形で肉棒に刺激を与える。唇の中から出し入れして、それに伴いアソコの穴もピストンを受けて熱を上げ、うずうずと汁を滲ませる。
    「んんっ、んずぅ……んっ、んむっふぁ…………じゅぅ………………」
     動いているのは自分でも、好きでしている奉仕ではない。
     口に陵辱を受ける気持ちになり、恥辱に濡れた眼差しで唾液を流し、それがフェラチオの音を際立たせる。
     クチュ、クチュ、と、アソコからも音が聞こえる。
    「ほうら、飲んでくれるんだよなぁ?」
     長身憲兵も射精した。
     口内に解き放たれ、嫌な味に顔を顰めてマルティナは精液を飲み干す。
     二人へのフェラチオが終わった。
     あとは――。
    「俺のも頼むぜ?」
     金髪憲兵は手での愛撫をやめ、立ち上がるなりベルトを外す。そんな金具の音を背中で聞き、振り向けば肉棒がそそり立っていることを悟り、マルティナは最後の奉仕を行った。
    
         †
    
     三回目は覚悟の上だった。
     結局、滞在期間のうちには情報は手に入らず、さらにはゴールドを稼ぐための魔物退治に町を出て、再入場の形となる。
     検問に訪れた時、金髪憲兵は二枚のショーツを嗅いでいた。
     始めに取られた黒色と、二回目の時に手放した空のショーツを、両手で鼻に近づけ、これみよがしに匂いを確かめている。
    「今日はどんなもんを穿いてきた?」
     人の顔を見るなり、金髪憲兵の第一声はそれだった。
    「失礼ね。好きで見せたり渡しているわけじゃないのに」
    「嫌なら払ってくれてもいいんだぜ?」
    「…………」
     マルティナは何も言葉を返せない。
     目の前で自分のものだったショーツを嗅がれ、好きなように弄ばれる屈辱感に、ただただ心を震わせるばかりであった。
    「今日も制服か。調べてやれ」
     彼の命令により、巨漢憲兵と長身憲兵の二人が動く。
     マルティナは頭の後ろに両手を組み、巨漢憲兵はその後ろをまさぐる。肩に触れ、背中を撫で、腰のくびれを撫で回す。前側を行う長身憲兵も、腰を撫で、脇下のラインをさすり、いよいよ胸を揉み始める。
     後ろの手も、尻に集中し始めた。
     制服越しの乳房が指遣いによって揉み潰される。お尻からはすりすりと、手の平でスカートを擦り続ける衣擦れの音が聞こえる。
    「ここいらで、そろそろ今回のパンツを拝見しよう」
     金髪憲兵はマルティナに命じる。
    「壁に両手を突け」
     彼女が手の平を壁につけ、腰を突き出す姿勢を取ると、これから受ける行為は大したことがないように強気に振る舞う。
    「さあ、早くしなさい」
    「乗り気みてーだな」
    「とんだ勘違いね。不愉快だけど耐え抜くだけよ」
    「そうかい。だが案外気分が変わるかもしれないぜ?」
     金髪憲兵の手でスカート丈は持ち上がり、ショーツをまとった尻が剥き出しになった時、彼ら三人は少し驚きながらも、その目の丸まった表情は、みるみるうちに下品な微笑みへと移り変わった。
    「刺激的だなぁ?」
     Tバックだった。
     黒い紐を割れ目に通し、尾てい骨にある小さな三角形には赤い薔薇の飾り付けが施されている。黒紐のラインが尻の割れ目を綺麗に区切り、二つの尻山を際立たせる。
    「おい、なんて書く?」
     金髪憲兵は背後の二人に問う。
    「そうだなぁ」
     巨漢憲兵が頭を捻る。
    「パンティによる飾り付けで、綺麗なヒップがより際立つ。なかなかに芸術的で見る者のチンポはそそり立つってのはどうかな?」
     大喜びで文面のアイディアを出し、金髪憲兵が手でゴーサインを出してやると、ペンが紙を素早く引っ掻く。
    「なんてことを書くの……」
     彼女にとって、Tバックをまじまじと見られている羞恥もさることながら、そんな書き方で調書が作成されてしまうのも、言い知れないものがある。
    「なんてものを穿いてるんだ? 俺達に見せに来たのか?」
    「そんなわけないでしょう!?」
    「なら、何故だ?」
     金髪憲兵は生尻に手を置くなり、好きなように撫で回す。
    「装備効果があるから……力が上がるのよ……」
    「なるほどなぁ? だが他のパンツの方がまだ良かったんじゃないか?」
     彼がテーブルに視線をやると、そこにはアイテムや装備の数々に、下着類の着替えまで並んでいた。
    「失っても惜しくないものを選んだ結果よ」
    「ははっ、おかげでエロいもんを拝むことができたってわけだ。素晴らしいねぇ?」
     改めて撫で回し、ひとしきり揉んでから、金髪憲兵はショーツを下げる。Tバックが膝に絡むと、彼はとある薬を用意した。ポケットに潜ませていたチューブから、透明なクリームを指に押し出す。
     マルティナは気づいていない。
     クリームの乗った指が近づき、ひやっとしたものがワレメの皮膚に乗り、マルティナは初めて何かの薬を使われていると気づいていた。
    「な、何を塗って……!?」
    「心配すんな。ただの気持ちいい薬さ」
     金髪憲兵は指をくねり動かして、ワレメにマッサージを施し始める。
    「んっ、あぁ……」
     順調なまでに濡れたアソコの表面は、しだいに滑りが良くなって、ワレメを撫でる指腹はヌルっとした滑らかさでよく動く。表面で滑らんばかりのタッチを施すうちに、マルティナは徐々に尻を震わせていた。
    「あっ、うぅ……んぅ…………!」
    「どうした? なにか我慢でもしているのか?」
     彼は指を膣穴に差し込んでいく。
    「んんんぅぅぅ――――!」
     マルティナは仰け反っていた。
    「お? こいつはマジで効いていやがる。すげぇもんだな」
     関心したようにニヤけた彼は、尻の震える様子を見ながら、少しずつ活発なピストンを行っていく。刺激にやられ、脚をピクつかせている彼女は、指が奥まで来るたびに、壁に縋りつかんばかりになっていた。
    「くっ、もう……」
     マルティナは何かを焦り始めた。
    「どうした?」
    「これ以上――だ、駄目っ、まずいの――」
     今すぐに許して欲しくてたまらない、そうでなければまずいかのような、危機感を帯びた懇願を彼女は漏らす。
    「何がまずいんだ?」
    「トイレに――――」
    「後にしろ」
     やめる気などなさそうに、嬉々としてピストンを続けていく。それどころか、もう片方の手をクリトリスにやり、二点の刺激さえ施していた。
    「あぁぁ……! だ、だめっ! 本当に!」
     マルティナは激しく腰を揺さぶる。
    「おうおう。それだけ気持ちいいってことだろ? 好きなだけ感じろよ」
    「ちがっ、そういう――だめ! ダメダメ! 本当に! あぁっ…………!」
     マルティナの懇願は、ついに叶うことはなかった。
    
     プシャァ!
    
     と、潮が吹いた。
     まるで口に水を含んで噴き出すような激しさで、勢いある愛液がスプレーとなって床を汚し、金髪憲兵の服にもかかる。
     直後だった。
    
     チョロロロォォォ……。
    
     黄金の水までもが垂れ流され、膝に絡んだショーツのクロッチをマルティナ自身が濡らしていた。
    「はっはっはっはっは!」
     金髪憲兵は高笑いしていた。
    「おいおいおいおい」
     巨漢憲兵も喜んでいた。
    「失禁! イった上に失禁! きちんと書いておくぜ? こいつを上に提出して、他の人間にもアンタの記録を読んでもらうのさ!」
     長身憲兵に至っては、一体どれだけの人間が調書に目を通し、マルティナという一人の女について想像を膨らませるか。何人がニヤけるかといったことを語ってみせる。
    「お漏らしにはお仕置きもしないとな」
     そして、金髪憲兵はベルトを外し、ズボンの中から肉棒を取り出していた。
     人前でオシッコをしてしまったショックを受け、言葉による責め苦にも苛まれ、放心気味になりながら屈辱に打ちのめされていたマルティナには、そんな背後の気配に気づく余地もない。アソコに亀頭が迫り、ずにゅぅぅ――と、挿入されて初めて犯される危機感を覚えていた。
     危機感が湧く頃には、もう穴に入り込んでしまっていた。
    「おら!」
     金髪憲兵が腰を打ちつけ、それが生尻にパツンと当たり、良い音が打ち鳴らされる。
    「あぁぁっ! あ! あん! やめ! やめぇっ、あぁぁん!」
     マルティナは激しく喘いだ。
    「効いてるぜ! おい、どうだよ! 媚薬の味は!」
    「あぁぁ! そんな――ひきょぅ――――んんんぅ――!」
     激しいピストンによって尻は打たれ、よく震え、マルティナの身体も壁に向かって前後する。「おい、かなりの使い心地だぜ! こいつはよォ!」
     金髪憲兵はポケットから二枚のショーツを取り出した。
     戦利品を手にいい気になって、彼はわざわざ嗅ぎながら腰を振る。マルティナのものだった下着がそこにある。取られたショーツをいいようにされながら、しかも犯されている彼女の屈辱は計り知れないはずだった。
     好きなように膣を味わい、やがて腰振りを激しくして、彼は尻に射精した。白い素肌をより白く精液に染め上げて、ついでのようにイったマルティナは、その場に膝を落としてへたり込むのだった。
    「そうそう、また通行料は値上がりしたんだった。前回みてーにフェラじゃ足りねぇから、二人にもマンコを使わせてやれ」
     金髪憲兵はそう言い残し、三枚目のショーツを奪って去って行く。
    「小便でくせぇが、一応貰っておくぜ?」
     そんな言葉を最後に彼が姿を消した後、残る二人はジャンケンを行っていた。どちらが先に穴を使い、射精するかの争いだった。
     こうして三人とのセックスをする羽目となり、しばし呆然としていたマルティナは、こうなったら意地でも有力な情報を手に入れて、決して四回目の検問は受けずに済むようにしてみせると、強く固い決意を抱いていた。
     その決意が実るか否か、それはまだわからない。
     全ては運と、彼女しだいだ。