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  • シャナ 恥ずかしすぎるセクハラ診察

    
     
         
     
     知識、常識、ルールの置換。
     御崎高校の校医を務める男が持つのは、一定空間の中でのみ、既存の事柄を別の内容に置き換える超能力だ。
     この部屋に入ったら、○○という常識は××という常識に置き換えられる。
     という具合に。
     空間から出て行けば、置き換わっていた頃の記憶はなくなり、元の正しい常識に沿った記憶が自動的に形成される。
     四月末を過ぎた頃、内科検診の時期を迎え、校医は超能力を使った。
     ついでに教員も一人くらいはルールの中に迎えておこう。
     見知った人間の視線がある方が、女子生徒はいい表情をする。
    
         ***
    
     平井ゆかりは存在しない。
     存在を喰われ、トーチとなっていた少女は、別の少女へと存在を挿げ変えられ、その少女こそが平井ゆかりとして認識される。
    「平井ゆかりさんだね」
     校医は小柄な少女を見た。
     机や椅子が一つもない空き教室を利用して、内科検診の場にはプライバシー保護のための衝立が立てられている。
     簡易的な診察空間の中で、
    「では早速」
     校医は言う。
    「パンツ一枚になってもらえるかな」
     圧倒的な迫力と存在感を持つ小柄な少女は、腕を組んだまま校医のことをただ見ていた。
     世間では平井ゆかり。
     坂井悠二は本当の平井ゆかりと区別して、少女のことをシャナと呼ぶ。
     いつもは背中を覆う黒髪ロングは、ゴムによって束ねられ、ポニーテールの尾となって垂れかかっていた。
     結んでなお、尻が隠れて見えないほどに、長い黒髪だった。
    「どうしたのかな? 服を脱ぐ理由はわかっているだろう?」
    「わかっているわ。それより、なんでおまえがいるの」
     シャナが視線を向けるのは体育教師(男性・三十三・独身)だ。
     悪評が定着しているこの体育教師は、陰険かつ横柄、女子生徒をいやらしい目で見ることで、悪評が定着している。
    「ふん。生徒が裸になるんだ。当然だろう?」
    「随分説明が抜けているわ。校医が妙な悪さをしないため、教師の監視を置いておくことで生徒を安心させる、でしょう? それがなんでおまえなの? 女の教師もいるでしょう?」
    「残念ながらこの時間は忙しいそうだ」
    「最悪ね」
    「恥ずかしくて脱げないか?」
    「そんなこと……ないわよ…………」
     フレイムヘイズに食事や睡眠は必要ない。
     今は平井ゆかりだ。
     社会に溶け込んでおくため、健康診断は受けることになる。
     ただ、本当なら必要のない検診で、男の医師に裸を見せることに、シャナは大いに不満を抱いていた。
     先日、無茶な持久走があった時、シャナは一度この体育教師を足蹴にしている。
     体育教師にとって、裸を見てやることで復讐というわけだ。
    (それに、あいつだけじゃなくて……)
     シャナは背後を意識した。
     男は校医だけではない。
     ニタニタとしている看護師、目つきがいやらしい記録係、丸椅子に座る校医。男三人による三角形に包囲され、校医の隣に四人目となる体育教師が立つ。
     男達の視線の中で、脱がなくてはいけない。
     しかも、
    
     三脚台でカメラが立っている。
    
     記録係が用意したもので、診察の記録を残すためらしい。
     シャナにそのレンズが向けられている。
     撮られているとわかって、何の抵抗もなく脱ぐことはできない。
     シャナは大いに躊躇いながら、セーラー服からリボンをほどく。
     リボン一つで、やけに不器用に見えるほど、指がたどたどしく動いていた。
    「恥ずかしそうに脱ぐじゃないか」
     体育教師はシャナの様子を見て喜んでいた。
    「うるさいわよ」
     シャナはムキになる。
     裸を見せるのは死んでも嫌だ、という気持ちはいっぱいだ。
     だからといって、脱がないわけにもいかない。どうせ裸になるなら、躊躇わずに素早く脱いだ方がマシだ。
     次にセーラー服を脱ぐのは、比較的素早く行う。
     脱げばAカップ用のブラジャーが薄い胸を隠していた。
     スカートを脱ぎ、白の下着姿となる。
     露出度が増せば増すほど、シャナの頬は赤くなっていた。表情にも羞恥心が現れて、恥ずかしくないと言い張るのは、もう無理である。
    「いい顔するなぁ」
     体育教師は勝ち誇った笑みを浮かべる。
    「本当に……うるさいわよ」
     ギロっと睨むが、体育教師は「ふん」と鼻を慣らすのみ。
     シャナが下着姿になり、脱衣カゴに二枚の制服が積み重なると、校医のズボンが興奮によって膨らんでいた。
     ズボンをテント張りにするほど、大きく目立つ勃起だ。
     シャナは一瞬それを見て、ぷいっと、顔を逸らす。
    「どうしたのかな?」
    「べつに、なんでもないわよ」
    「ペニスが気になるのかな?」
    「べ、べつにっ、問題ないわよ。医師も男なんだから、女の子が裸になったら少しは興奮するものでしょう? 顔がいやらしくても、多少のことは気にしないってルールじゃない」
     自分の裸で勃起され、本人が何も思わないはずはない。
     ズボンが見るからにテント状になっているのは、後ろに立つ看護師と記録係も同じであった。
    「後ろの彼らも、君に興奮しているよ」
     校医はわざわざ本人に伝えた。
    「…………っ」
     シャナの唇が歪み、その内側で歯が噛み合わされていた。
     いくら検診の場であっても、本心ではエッチなことがしたい男に包囲され、四人の前で裸なのだ。
    「小学生みたいな体で興奮してやってるんだ。全員に勃起してもらえてありがたいと思え」
     体育教師でさえ、ズボンを膨らませていた。
    「だ、だいたいっ、どうしてこういうルールなのよ。皮膚病の検査も兼ねていたり、虐待の跡を確かめたり、視診と触診でないと確かめられない病気も多いかもしれないけど、こんな形で脱ぐ方の身にもなって欲しいわ」
     ぶつぶつと文句を垂れ、シャナは両手を背中に回す。
     長いポニーテールの尾の下で、シャナは指先でホックを探り当て、パチリと外した。
     そして、ブラジャーは脱衣カゴの中へと。
     シャナはパンツ一枚のみとなっていた。
     校医や体育教師の目つきは、見るからに楽しそうで、いやらしいものになり、シャナの裸を視姦する。胸を眺め、パンツも眺める。
     脱衣が終わるや否や、看護師がポニーテールの髪に触れ、お尻を隠す邪魔な尻尾を一瞬だけどかしていた。
    「下着は上下白。胸は平ら、薄いお皿程度には膨らんでいる。お尻は小ぶりながらプリっとしている。脱ぐのにかかった時間は平均より十秒長かった――と」
     記録係の男はバインダー留めの紙にボールペンを走らせる。
    「平井ちゃーん。座ろっか」
     看護師の男の声で、シャナは椅子に着く。
     まずは聴診から始まった。
    「心臓に肺の音を聴いていくからね?」
     金属のひんやりとした感触が、まずは胸の中央にきた。
    (……どうせ健康よ)
     校医は聴診に意識をやり、位置を変えつつ心臓の音を聴く。
    「うーん。なるほど、心雑音無し。乳首がそうだね、スイカの種より少し大きいくらいのサイズだったけど、今は大豆くらいかな?」
    「うっ」
     解説された途端、シャナの口元が歪む。
    「へへっ、乳首が勃起しちゃったか」
     看護師はチャラけていた。
    (むかつく! こいつも! あいつも!)
    「はい、えー心雑音無し。乳首の突起あり――と」
     記録係は淡々と書き込みを行う。
    「平井ぃ、お前も興奮してんのか?」
     体育教師は大喜びで乳首をネタにした。
    「し、してない!」
    「してない? してなきゃ、その乳首の説明がつかんなぁ?」
    「うるさいうるさい! これはちがうのよ!」
     シャナはたまらず胸を隠し、乳首の突起を視線から守ってしまう。
    「あー。続けたいので、後ろを向いてもらえますかね」
     困ったように校医が言う。
     シャナが背中を向けると、ポニーテールの長々とした髪も校医向きに。髪があっては背中に聴診器を当てる邪魔になるので、看護師の男が手で持ち上げ、横にどかした。
     今度は背中に、ぺたりと聴診器が当たる。
    「深呼吸してくださーい? 吸って? 吐いて?」
     校医の合図に合わせて息を吸い、吐き出していく。
     それを右も左も済ませると、次の指示が行われた。
    「側わん症の検査をするので、背中向きのまま立って下さい」
     校医の指示。
     看護師がさらに髪を動かすので、シャナのポニーテールは肩を回って正面の方を隠す形になっている。
     背中も、パンツの尻も、校医に向かって剥き出しだ。
    「平井、気をつけだろう」
     ただの姿勢の指示が、今だけは本当に最悪だ。
     シャナの正面には看護師と記録係が立っているので、今度はこちらに乳房が見える。
     髪で片方の乳房は隠れても、もう片方までは隠せない。
    「本当に最悪! さっさと済ませて欲しいわ!」
     シャナは意識して、アソコを見ないようにしていた。
     全員が勃起して、ズボンをテント状にしているのだ。それが目に入るのは嫌で、なるべく視線を高めにしていた。
     だが、それはそれで、二人の表情が目に入る。
     ニヤニヤ、ニタニタ、どちらもいやらしい。
     自分がどんな風に見られているかを実感する。
    「そういえば先生。側わん症は半ケツでしたよね?」
    「ええ、目視で骨格を確かめ、画像でモアレ処理もします。尾てい骨まで出す必要があります」
    「是非とも、私にパンツを下げさせて欲しい」
    「ああ、どうぞどうぞ」
     シャナの不快感は大きなものだ。
    「勝手に売り渡された気分!」
     そう声を荒げた気持ちそのも。シャナのパンツをどうこうする権利は、まるで我にこそあるように、校医は体育教師に許可を与えた。
    「へへっ、そう言うんじゃない。ただ下げるだけだろう?」
     体育教師の迫る気配をシャナは感じる。
     すぐ、真後ろだ。
     体育教師がしゃがみ込むと、視線の高さがお尻とぴったり一致する。シャナは至近距離からの視姦に震えた。
     視線でじりじりと肌を焼かれる思い。
     
     パン!
    
     叩くかのように、両手を使って、体育教師はシャナのお尻を掴んだ。左右の尻たぶに両方とも指を埋め込んでいた。
    「ひゃ! ちょ、ちょっと!」
     驚きのあまり、一瞬悲鳴を上げ、シャナは大きく背中を反らしていた。
    「おっと? 暴れるなよ?」
     この体育教師にとって、授業中にシャナに蹴られた恨みがある。
     恨みを晴らしているわけだ。
    「わかってるわよ!」
    「なら、説明してみろ。賢い平井なら、暴れちゃいけない理由を、説明すらできないなんてことないよなァ?」
     あろうことか、揉み始めた。
    「そんなの、検査が進まないからでしょう!? 過剰に恥ずかしがったり、暴れたりしたら時間がかかるから! だから我慢してるのよ! 変なことしないでもらえる!?」
     シャナが荒々しい声で説明をしているあいだ、体育教師の指はずっと蠢き、お尻の感触を味わい続けていた。
    「変じゃないだろ? 下げるだけだ」
     体育教師はゴムの内側に指を入れた。両手の四本指を正面から差し込んで、わざわざ生尻に当たる形にして、ずるりと半分ほど下げていた。
    「さ、下がったわね。さっさとどいて!」
    「ケツ出しといて、まだ生意気な奴だな」
     気に入らなかった気持ちを晴らさんばかりに、体育教師はシャナの近くを離れる直前に、ついでのように、あと一回だけ、パン! と叩いて指を埋め、ひと揉みしてから元のポジションに戻っていく。
    「ほんと……最っ低…………!」
     シャナは肩越しに振り向いて、体育教師を睨む。
     お尻の山に、パンツのゴムが食い込んでいた。
    「はーい。姿勢正して。うん、背骨は真っ直ぐ」
     顔を正面に向け直すと、記録係は今の言葉を紙に書き取り、看護師の方はチャラっぽい笑みで乳房を眺めている。
    「両手を合わせて、前屈をして下さい」
     肩甲骨の高さに左右差がないかをチェックするのだ。
     シャナは手の平を重ね合わせ、腕をだらんと前に垂らして前屈する。お尻を突き出すかのようで嫌だったが、この時間から早く抜け出すためにも従った。
    「うん。問題ないかな。あとはモアレ用の写真だ。もう一度気をつけ」
    「余計な写真撮ったら許さないから」
     釘を刺し、シャナは気をつけの姿勢に戻る。
    
     パシャ!
    
     シャッターの音が聞こえると、剥き出しの背中を撮られたことを実感する。
    「はい、あと二枚」
     校医が言うと、
    
     パシャ! パシャ!
    
     二度のシャッターが鳴らされた。
     シャナは気づいていない。気づきようもない。本当に必要だった写真は一枚目のみで、それは問題なく撮れていた。残る二枚はお尻にレンズを近づけて、半ケツの状態を好奇心だけで撮ったのだ。
    「終わったわよね」
     刺のある声で、シャナはすぐさまパンツを戻す。
    「はい。終わったので、次は乳房の触診です」
    「……うっ、絶対やるの?」
     ここまで耐え抜いたシャナは、もう勘弁して欲しい思いで、答えなどわかっていながら、つい尋ねる。
    「やりますよ?」
    「……そう。そうよね」
     シャナは校医に向き直り、椅子に座り直した。
     早速のように両手が伸びて、シャナの乳房に絡みつく。薄っぺらい、わずかな膨らみを包み、揉みにくいものをどうにか揉む。
    「ん……」
     シャナは何かを感じていた。
     校医はじっくりと揉みしだき、時には指先で色んな箇所を押し込んでいる。
     やがて乳首を弄り始めた。
     指先で乳輪をなぞり、乳首の豆を摘まんだり、弾いたり、様々にタッチを変えて、校医はシャナの乳首を触診する。
    「んっ、んぅ…………」
     肩がモゾモゾと動いていた。
    「お? 気持ちいいのか?」
     体育教師が喜ぶ。
    「かもしれませんねぇ?」
     看護師がチャラくテンションを上げていた。
    「ち、ちがうわよ!」
    「感じた様子あり――と」
     シャナの否定などまるで無視して、記入係はそう書き取る。
    「ちがうちがう! 気持ち悪いだけよ!」
    「そうですか。次は太もものリンパを診るので、また立って下さい」
     気持ち悪いという暴言を、校医はまるで気にしない。
    「はいはいはいはい」
     シャナはあからさまに不機嫌に、乱暴に立ち上がる。
    「では」
     校医は内股に手を差し込み、太ももの肉を揉む。リンパの触診として、神経の感触を確かめている。
     アソコのすぐ近くに、男の指はあった。
     内股を揉むために、太ももの隙間に入った手の平は、性器にあたるギリギリの高さをさすり、指の腹を押し込んでいた。
    
     ――きゅぅ、
    
     下腹部が熱く引き締まる。
     片方の太もも、校医から見た左側の脚を済ませると、今度は右側の太ももを両手で包む。
    「平井ぃ、どうした?」
    「どうもしてない」
     体育教師に対して、シャナは険のある顔を浮かべる。
    「やっぱり、腰がモゾモゾしてるよなぁ」
    「気のせいじゃない?」
     何でもない風に装うが、あと数ミリでも位置が変われば、指がアソコに触れるようなところで触診は行われている。
     シャナの意識はアソコにあった。
     今に触られる予感のあるアソコが反応して、きゅっ、きゅっ、と、腹の中で引き締まる。
    (いやだ……なによこのかんじは…………)
    「この後の内容もわかってるな」
    「……当然よ」
    「説明してみろ」
    「めんどくさ」
    「説明すらできないのか?」
    「ああもう! 婦人科にかかるような病気も調べるし、発育状況も確かめるから、性器の検査もやるんでしょう!? 肛門検査もあるし、もっとスムーズにやって欲しいわ!」
     ヤケになって叫んだ瞬間だ。
     校医がとうとう性器に触れた。
    「ひゃん!」
     思いっきり腰を引っ込め、大胆なくの字になりながら、シャナは両手でアソコを押さえた。
    「おいおいおいおい! そんなに刺激が強かったのか? ええ? 平井よぉ」
    「びっくりしただけよ!」
     体育教師を睨みつつ、シャナは校医にも凶眼を向けた。
    「激しい反応有り、と」
    「書かなくていい!」
     記録係にも、怒りと恥ずかしさに満ちた目を向けていた。
    「では一言。性器を調べます。触らせて下さい」
     しゃあしゃあと校医は言った。
    「うっ、ぐぅ……! 本当に本当に気に入らないわね」
     シャナは実に不本意そうに、見るからに仕方がなさそうに、嫌で嫌でたまらない気持ちを隠さない顔で姿勢を戻す。
     すぐさま、校医はパンツ越しの割れ目をなぞり始めた。
    「んっ、んぅ……んぅぅ………………」
     シャナは声を我慢する。
    「ふーむ」
     校医は太ももの隙間に指を出し入れするかのように、腹を天井向きにした指で、前後になぞりこんでいる。
    「な、なんでパンツの上から? どうせ脱がすんでしょう!? ひと思いに直接やって、さっさと済ませなさいよ!」
     シャナは何かに必死だった。
     本当は手でアソコを守りたくてたまらないように、太ももの上に拳を置く。校医の手首を掴み、今すぐやめさせたい思いが二つの拳にありありと詰まっていた。
     固く握り締めるあまり、プルプルと震えていた。
     顔も真っ赤だ。
    「そうだね。このあたりでベッドに上がりましょう。そっちで仰向けになって下さい」
     校医の指示で、シャナはさっさと診察台に上がりに行く。
     診察用のベッドは、ベンチの座板よりも少し幅が広い程度で、人が一人横たわるのに十分な大きさしかしていない。そこに清潔なシーツがかけてある。
     シャナは仰向けになった。
     すぐさま記録係の男が動き、三脚台のカメラを調整する。ベッドを映すように位置を変え、寝そべったシャナが撮れるように角度も変えた。
     シャナが頭を持ち上げれば、ビデオカメラのレンズと睨み合うことになる。
    「ではアソコを調べますからね。先生、パンツの方を取っちゃって下さい」
    「へへっ、平井ぃ、俺が脱がせてやるよ」
     体育教師は待っていましたとばかりにベッドへ近寄り、遠慮もなしの乱暴に、シャナのパンツに手を伸ばす。
    (ううっ、こいつなんかに……)
     悔しくて悔しくてたまらない。
     頬から火が出そうなほど赤らみ、思いっきり体育教師を睨むシャナ。太ももの上に置いた拳は、やはり固く震えていて、本当はパンツを取られることを阻止したくてたまらない気持ちが、ありありと浮かんでいた。
    「悪いな平井。ま、これを期に日頃の生意気な態度を反省することだ」
     いかにもニヤけ、パンツを下げる。
     体育教師はまるで大手柄を立てたかのようにパンツを手にして、クロッチの裏側を手の平に乗せていた。アソコのワレメと触れ合う部分を上に、好奇心たっぷりに眺めていた。
    「なにが反省よ……」
    「で? どうしてこんなに濡れてるんだ?」
     体育教師は布の表面をヌルヌルと、見せびらかさんばかりに触ってみせる。パンツは愛液で濡れていたのだ。
    「そ、そんなの! ただの生理反応じゃない!」
    「ああ、生理反応だなぁ? きちんとヌルヌルにして偉いぞ?」
     体育教師はこれみよがしに愛液をつまみとり、指のあいだで糸を引かせていた。
    「お、おまえぇぇ……!」
     身体の反応までおちょくられ、シャナの頭は沸騰する。
    「はい、平井ちゃん? お股開こうか」
     すかさず看護師が割り込んだ。
     診察台に乗り上がり、シャナの姿勢に指示を出す。シャナは上半身を起こすことになり、背もたれに寄りかかる形で、看護師の身体に背中を預けた。
     看護師の手で、膝を抱え上げられた。
     背中は四十五度の角度に。
     ちょうど、真正面のビデオカメラを中心に、体育教師が、校医が立っている。カメラにも二人の男にも、秘密の部分を見せびらかす形になっていた。
    「いやぁぁぁ……!」
     たまらずに、シャナは両手で顔を覆い隠す。
    「ははっ、可愛い反応だなぁ?」
    「うるさいうるさいうるさい! 平気な方がおかしいでしょう!?」
     大きく声を荒げる。
     覆い隠した両手の下で、シャナの表情は今まで以上に歪んでいた。
    「はーい。診ていきますからね」
     校医はどこ吹く風。
     ぐっとアソコに顔が近づき、シャナにはその気配が伝わる。
    「やだぁ……そんな近くにぃ……!」
    「えーっと、毛の具合はですね。パっと見るとツルツルに見えますが、近くで見ると産毛にしては濃い。高校生にしては遅いが陰毛は発達しています」
     校医による解説。
    「なるほど、発達は遅い……と」
     記入係は情報を紙に書き込む。
    「うっ、くぅ……! くぅぅぅぅ……!」
    「では中身を広げてみましょう。えーっとぉ? なるほど実に健康的な色合いですねぇ? 鮮やかな桃色をしていて、とても綺麗な見た目ですよ?」
    「うぅぅぅぅ……!」
    「特に炎症とかはありませんね。血色はいいし。ああ、ついでに処女膜有り、処女ですね。先ほどの刺激で濡れているので、愛液が反射して、若干キラキラしちゃっています」
    「そんな……言うなぁ……!」
     自分の性器を解説され、シャナは苦悶する。
     手の平に覆い隠した表情の、唯一見えている顎と下唇だけでも、一体どれほど汚辱に歪んだ顔をしているのかが伺える。
    「指を挿入し、内部を確かめていきます」
     すぐに校医の中指が入り込む。
     膣壁に触れることで、炎症や吹き出物を探すタッチである。
    「あらかじめ濡れていたおかげで、指の出入りがスムーズですね」
     やがてピストン状に動くと、クチュ、クチュ、と、水音が鳴った。
    「おい平井、お前がエロいおかげで助かったってよ」
    「ちがう! ただの生理反応! 普通の反応よ!」
    「ええ。普通より少しだけ多いくらいですかね」
     校医が淡々と評した途端だ。
    「ははは! 医師公認で少しだけエッチだってよ!」
    「ふつうだっていってるのに!」
     激しい恨めしさの籠もった目で、シャナは指のあいだから体育教師を睨む。
     しかし、体育教師はニタニタとした笑みを返すばかりだ。
    「はいはいはいはい。もうちょっとで終わるからね? 四つん這いになろうね?」
     看護師の男も存分にニヤけていた。
     当然のように、三脚台のカメラにお尻を向け、しかも頭や胸は下につけるように指示が飛ぶ。こうなれば腰だけが高らかで、割れ目が広がるために肛門も丸見えだ。肛門のわずか数センチ下にはアソコのワレメがあり、下半身の恥部は全て丸出しだ。
    「綺麗な色だなぁ? 平井ぃ!」
     体育教師の視線はシャナの肛門にあった。
    「確かに桃色っぽく可愛いですねぇ?」
    「色合いは桃色、それに皺の本数は――っと」
    「うんうん。みんなで診てあげるからね?」
     校医が、記録係が、看護師が、全員が横並びに、シャナの肛門を眺めていた。
     嫌というほど視線を感じ、シャナはシーツを握り締め、歯を食い縛って震えていた。
    (うぅぅぅぅ! はやく! ジロジロ見てないで、はやく終わりなさいよ!)
    「ではギョウチュウ検査は先生が」
    「へへっ、だとよ? 平井」
     ペリッという、テープを剥がすような音が聞こえるなり、シャナの肛門には蟯虫検査用のセロファンが押し込まれた。
    
     ぐにり、ぐにり、
    
     と、担任は嬉々として指圧する。
    (またコイツにされるなんて!)
     それは診察台の横合いから、お尻がきちんとカメラに写るように行われていた。ギョウチュウ検査の瞬間が体育教師の背中に隠れてはいけなかった。
    
     ぐにっ、ぐにっ、
    
     マッサージを施されていることが、どれほどの屈辱か。
     脳が沸騰でもしているような、激しいまでの恥ずかしさに、もはやシャナの抱える感情は計り知れない。
    「ようし、終わったぞ?」
     フィルムが剥がされ、肛門からペリっと離れる。
     指の感触が遠のいても、シャナの肛門には屈辱の余韻があった。
    「では肛門括約筋、つまり肛門周りの筋肉の動きを見ていきますので、お尻の穴に力を入れて、パクパクと動かして下さい」
    (なんなのよもう! いっそ死にたいじゃない!)
     シャナのシーツを掴む拳は、極限まで堅くなっていた。シーツの顔を押しつける力さえも強まっていた。
    
     きゅっ、きゅっ、
    
     肛門に力を出し入れする。
     皺がすぼまり、脱力と共に広がる。
    
     きゅぅ、きゅぅ、
    
     こんなことをさせられて、シャナの顔は完全に強張っていく。まぶたの筋力が許す最大の力で目は閉じられ、歯を食い縛る力も相当なものになっていた。
    
     きゅっ、きゅぅ、きゅうっ、
     きゅうぅっ、きゅっ、きゅ、
    
     はやく、はやく終わりにして欲しい。
     脳が蒸発する勢いで頭は加熱し、耳まで発火しそうなほどに染まっている。
    「はい、いいでしょう」
     校医は言う。
    「では最後になりますが、肛門に指を挿入し、直腸の方を調べていきます。これで終わりになりますので、頑張って下さいね?」
     言いながら医療用のビニール手袋を嵌め、校医は指先にジェルを取る。シャナの肛門に塗りたくり、滑りをよくして挿入した。
    
     ずにゅぅぅぅぅ…………。
    
     指が、埋まっていった。
     異物が入り、指先で腸壁をこすられている感覚にシャナが悶える一方で、校医は症状の有無を見分けている。  
     惨めだった。
     男の視線に見守られ、体育教師までいる中で、ヌチュリ、ニチュリと、肛門の内側を探られている。
     やっと、その指が抜け出て行った。
    「はーい、終わりましたよ」
    (や、やっと……)
     地獄から解放されるような気持ちだった。
     そんなシャナの尻へと体育教師が迫っていき、
    
     ぺちんっ、
    
     と、叩いていた。
    「ほら、終わったぞ?」
    「もう触らないで!」
     シャナはすぐさま起き上がり、睨みつける。
    「忘れるなよ?」
     手渡されるパンツ。
     勢いよくひったくり、シャナは高速で着替えていた。真っ先にパンツを穿き、大急ぎでブラジャーを着け、元の制服姿に戻るまでものの一分もかからない。
     最後にもう一度だけ、シャナは肩越しに皆を睨む。
     そして、出て行った。
     衝立によって仕切られ、簡易的に作られた空間の中から、早足で去って行った。
    
         *
    
     幸い、シャナにこの記憶は残らない。
     校医が超能力で塗り替える前の、本来の診察手順に基づいた記憶が自動的に形成され、全ての真実は置換されることになる。
     ここで起きた出来事そのものが、なかったことになる。
     ただ、カメラに残った記録という矛盾を残して。
    
    
    


     
     
     

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